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3.祝日のお祭り

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  自室に戻ると、満面の笑みを浮かべたニケが、部屋の入り口の扉の影に潜んでいた。
  その違和感に、僕だけでなくナギとルイも疑問に思ったようで、二人とも首をかしげている。

  ニケに何があったのかを聞いてみると、僕たちが医療センターに行っている間、ニケはニケのお父さんであり、宮廷魔法師団の団長を務めている、アルノルトさんの元で、ちょっとした内容の簡易なお手伝いをしていたらしい。

  そして、お手伝いが終わって、アルノルトさんの傍を離れているタイミングで、フィツェアさんに遭遇してしまい、ニケが学園の幼年部に通っていたことに対する、やっかみを言われたらしい。

  最初の内は、いつもの事だと思って聞き流していたらしいけど、だんだん、事実無根な話や荒唐無稽な話が混ざり始めて、イライラしていたのだとか。

  一応、相手のフィツェアさんは、準王族扱いになっているため、王家に仕えるニケから喧嘩を吹っ掛けるわけにもいかず、悶々としていたところを、通りすがりでありながら一瞬で状況を把握したリーナさんが、間に入って仲裁しようとしてくれたらしい。

  それでも、興奮しきっていたフィツェアさんは止まらなかったどころか、リーナさんにまで、やっかみの火の粉を飛ばしてしまったらしく、ブチ切れたリーナさんによって殴り飛ばされたのだとか。

  その顛末のあまりの爽快感に、未だ溢れ出る笑みが止まらないらしく、ニケは人目につかないよう、ひっそりと隠れていたのだそうだ。


  その話を聞いて、ナギと僕は顔を見合わせる。
  そして、ついさっきまで、近い話をしていたことを思い出しながら、その内容をニケに話すと、ついに堪えきれなくなったのだろうニケが、大きな声をあげて笑い転がっている。
  きっと辛かったんだろうなぁ、って思うと同時に、意外と身近に英雄学園の幼年部に通っていた人物がいることに驚く。
  というのも、幼年部の一期の定員15人は、三部刻合わせての15人だから、二人が通っていたであろう昼刻の定員は5人。
  毎年、入試の倍率は、簡単に1万を超えるそうで、合格できる人なんてほとんどいない。
  だから、「学園に通っている」という言葉は、一般的には、幼年部のことを含まないのだ。
  幼年部から学園に通っている人の約5割は、英雄学園を卒業するよりも前から、王家に仕える国家公務員として活躍しているのだとか。


  英雄学園の幼年部に通っていた人物の中で、僕の知っている人は、二人を除くと、サーシャさんとセルシェーダさんだけ。
  他には、僕の魔法の家庭教師に決まった、アルスさんくらいだった。
  ・・・・・・・・・本当に少ないんだなぁ。
  まぁ、英雄学園の幼年部に入学できる人は、文官としての才覚が高い人が多いそうなので、文官の方で探してみれば、そこそこの人数が見つかるらしいんだけどね。


  ちなみに、セルシェーダさんは基礎教育部までは英雄学園に通っていたらしい。
  でも、高等部にはお父さんが進学していて、ラスタリアさんも高等部の入学試験を受けるという話が出ていたので、二人から逃げるように、司法法律学院に進学したのだとか。
  セルシェーダさんも、大変だったんだなぁ。
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