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第1章
50.隠れ里
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◆
天幕の外から久々に活気溢れる亜人たちの喜びの声が聞こえてくる。
そんな喜びの声をよそに、小角鬼族の長であるラプラールがイオスという冒険者に対し、白髪が交じりかけた頭を下げている様子が天幕の中には見受けられた。
「ラオから聞きましたぞ。八面六臂のご活躍だったとか。イオス殿おひとりでかなりの戦果を上げられたそうですね」
「なに、たいしたことはしておらんよ。たまたま灰色狼の群れに出くわしてな。灰色狼は大断崖地帯に棲息する魔物の中では弱い部類。そこまで難儀するような相手ではなかっただけだ」
「いやいや、ご謙遜を。しかも、ほかの者たちが危ない状況になるや、すぐに助力に駆けつけ窮地を救っていただいたという話ではないですか。誠、イオス殿には感謝の念に堪えませぬ」
「普段からこういった魔物狩りを生業にしているんだ。多少周りにも気を配る余裕があるさ」
「最初、不平不満をこぼしていた連中もそれでずいぶんと大人しくなったとか」
「どこの誰ともわからぬ流れ者が、いきなり出しゃばるような真似をしたからな。多少不満に思うのも仕方あるまい」
「そうは申されましても、我々は武器すらろくに手にしたことがないような者ばかり。熟練者であるイオス殿の指示に従うことのいったいどこが不満だったのか」
「まあ、たいした怪我人も出なく、順調にことが運んだんだ。それだけでこちらも助力した甲斐があるというものさ」
「それもこれもすべてイオス殿のおかげかと。これであと何日かは飢えを凌げそうです」
一見したところ、頭を下げられたイオスという冒険者より、ラプラールのほうが年長者のようにも見える。それに冒険者という立場は周りから尊敬されるような立場でもないはず。
にもかかわらず、ラプラールのほうが遜った態度だったのはイオスが避難民ではなく、あくまで助力のためにこの場所に残っていることも関係しているのだろう。
ただ、それだけではないのかも知れない。
元々、小角鬼族という種が強い者に対して畏敬の念を抱きやすい性格をしていたこともある。
イオスの腕周りを見てもラプラールの太ももぐらいはありそうだったし、ほかの亜人と比べてもイオスの背丈は頭ひとつ分ぐらい抜けている。
鎧の下に見える大胸筋だって明らかに盛り上がって見えていたし、ラプラールがイオスという亜人から強者の風格を感じ取っていたとしても何らおかしくはなかった。
「だが、今回得られた成果と残された食料だけでは、持っておそらく一週間といったところだろう。それに今回はたまたま上手いこと獲物が捕れただけで、次回もこうなるとは限らんからな」
「毎度、毎度こう上手くはいかないと?」
「そうだ。特にこれから先、冬場に入るのでな。そうなってくると一日中獲物を探し回っても、まるで見つからない日のほうが多いと思ったほうがいいだろうな」
「ふうむ……」
そんなイオスの悲観的な言葉を聞き、ラプラールが顎に手を当てて考え込む。
魔物狩りに向かった男衆が大量の獲物を持ち帰ってきたことを喜んでいたのも束の間、イオスの口から飛び出したのはほんの少しばかり手厳しい言葉だった。
「差し出がましい忠告だということもわかっているが、何か別の手を考えたほうがいい。クリスティーナ様から頂戴した食料のほうも残り少なくなってきているのだろう?」
「ええ。イオス殿のおっしゃられるとおり、このままではじり貧になるのが目に見えています。かといって、これといった手だてがあるわけでもなく……」
「手立てがまったくないわけでもないがな」
「それはいったいどういう話なのでしょうか?」
手立てがあるというイオスの言葉にラプラールが顔を上げる。
イオスはひと呼吸置くと、逆にラプラールに対して質問を返していた。
「皆で別の場所に移り住み、その場所で新しい生活を始めてみようという気は?」
「むろん、そういう話も以前一度出ましたが、一から村を作るとなれば相当な苦労を背負うことになります。いや、苦労だけで済むのならば我らとて厭いませんが、断りもなく亜人である我らが村を作れば、その土地を治める領主から攻め込まれるだけだろうと」
「マガルムーク国の領土内ならば、そうなる可能性が高いだろうな」
「はい? 我々に国外の土地に向かえとでも?」
ラプラールの顔に驚きの表情が浮かぶ。
イオスの言わんとしていることが、祖国であるマガルムークを捨てろという意味であることを理解したからだろう。
「そういうことになるな。そこまでマガルムークという国に愛着を持っているようには見えぬが」
「確かにそこまで愛着を持っているとは言えませぬが、いくら何でもそれは……。それに魔物による被害が少なく、比較的安全とされる土地にはほぼ間違いなく先住者が住みついております。そんな都合よく、我々が安全に暮らせる土地が見つかるとも思えませぬ」
「だが、いつまでここに居座り続けるつもりだ。たとえこのあと戦争が終わったとしても、ここの領主が避難民を受け入れてくれるという保障はどこにもない。その場合、帰る場所がない者はどうするのだ? 住んでいた村から追い出された者も多いと聞くが」
「最初から亜人の我々が安全に暮らせる場所などどこにも……」
「もし、この俺にそういった場所に心当たりがあると言ったら、どうする?」
「我々が飢えもせず、安全に暮らせる場所にイオス殿は心当たりがあるのですか?」
「ああ、そうだ。それにある程度村としての基盤が整っているので、苦労して一から村を作る必要もない」
その言葉を聞き、ラプラールが怪訝そうな面持ちでイオスのことを見つめる。
イオスのことを信用している様子のラプラールであっても、さすがにその言葉には引っ掛かるところがあったらしい。それどころか、ラプラールにはイオスに対して警戒心を強めた様子があった。
「イオス殿。まさか、あなたはマクシミリアン侯爵の……」
「ラプラール殿。あなたが今何を考えているのかわからなくもないが、さすがにそれは考え過ぎだ」
「我々がここに避難してくる前にも、村にマクシミリアン侯爵の使者を名乗る人間がやって来て、亜人のためにもなることだと甘言を弄し、一部の者を戦争に連れていったのですが……」
「俺が避難民をまるめ込んで戦争に駆り出そうとしているのなら、マガルムーク国外に行けというのはいささかおかしくないか? 戦力になりそうもない避難民を他所の土地に追いやって、いったい何の意味がある?」
「それはそうなのですが」
「では、何が気になるというのだ?」
「イオス殿のことを疑うわけではございませんが、先住者が居なく、村としての基盤が整っている場所などそう簡単に見つかるはずがないかと」
「何らかの理由があって廃村になった場所ならあるだろうよ」
「ということは、そこは廃村なのですか?」
何か裏があるのだろうと言わんばかりのラプラールの態度に、イオスが鼻を鳴らす。
だが、そのあとイオスの口から出たのは、やんわりとだがラプラールの言葉を肯定するようなものだった。
「そうだな。実際に移り住むとなれば、どうせわかることだ。ここは正直に話したほうがいいのかも知れないな」
「となると、やはり何か問題が……」
「問題というかだな。故あって詳しい事情を話せぬが、その場所はとあるお方の所有地でな。ただ、以前住んでいた住民が他の場所に引っ越しており、現在は誰も住んでいないというわけだ。そこに住み着くということは、すなわちそのお方の支配下に置かれるということにもなる」
「なるほど。要は農奴というわけですか。マガルムークを捨て、その人物に忠誠を誓えば、飢える心配だけはしなくて済むと」
今のイオスの話に納得がいったのだろう。
ラプラールの顔からは疑念の表情がほとんど消えていたが、手放しで喜んでいるともいえないような微妙な顔。
どうやらイオスの提案が解決策になるとはあまり思っていない様子だった。
「まあ、そういうことだな。人族ではあるが、亜人にも寛容なお方でな。飢える心配どころか、今までの生活よりもずいぶんと暮らしやすくなるはずだぞ」
「農奴なのは別に構いません。元々、ほとんどの者が賤民でしかないのですから。ただ、新たに人族に従えと言われてもおそらく拒絶する者が多いでしょう」
「マガルムークの王だって人族なのだ。そこに抵抗を感じるのはおかしいと思うが。まあ、そうは言ってもすぐに答えを出せる話でもない。それにこちらから無理強いするつもりはないのだ。そういう選択もあるという程度だ」
「今の話を仲間たちに喋ってしまっても構わないので?」
「ああ。その場所の周りには結界が張ってある。案内もなしにその場所を見つけることなど不可能だからな。マルカの状態を見てくるので俺はこの辺で失礼するが、そんな場所もあるということを一応頭の片隅にでも入れておいてくれ」
そう言い残して、天幕から颯爽と出ていくイオス。
その場に残されたラプラールはしばし呆然となりながらも、イオスから聞いた思いがけない提案について頭を巡らせていた。
◆
激しい乱戦のさなか、一頭の騎馬が戦場を駆け抜けていく姿があった。
重厚そうな鉄製の馬鎧をその身に纏った白馬が、馬上の騎士と一心同体となり、進行方向に居る邪魔な敵を、まるで草木でもあるかのごとく軽々となぎ倒しながら駆け抜けていく。
そんな勇猛無比な一騎の奮闘に、その騎士を倒すために集まっていたマクシミリアン侯爵直属の騎士ですら、恐れおののいて道を空けたほどだ。
噂とたがわぬガウルザーク将軍の活躍ぶりに、さきほどまで優勢を誇っていたはずの反乱軍の勢いも一気に崩れていく様子があった。
「閣下! ご無事で」
「グレイン、シアード殿下は?」
ひととおり乱戦の中で暴れ回ったあと、悠々と自陣に戻っていったガウルザーク将軍に副官のグレインが話しかけてくる。
ガウルザーク将軍はそこで愛馬を休ませるために地上へと降り立つと、桶に入った水を馬へとやりながらグレインからの報告を受けていた。
「首尾よく逃げおおせられたそうです。ですが、敵の奇襲により本隊の被害は甚大な様子。おそらく300から400はやられたかと」
「そうか。まあ多少の損害は仕方あるまい。シアード殿下さえご無事ならば、このあといくらでも立て直しが効くのだ」
「それにしても……。わざわざ殿下ご自身が出馬されずとも、前線は閣下に任せて大人しく後方に下がっていてくださればこんなことにはならなかったのに」
「そう言うな、グレイン。いまだシアード殿下の王位継承を疑問視する声もあると聞く。シアード殿下としては、そんな口を閉ざさせるだけの戦果が欲しかったのだろうよ」
「そりゃあそうかも知れませんがね。何でも本陣にあった補給物資まで鹵獲されてしまったとか。我々が援軍に駆けつけていなければ、今頃総崩れしてもおかしくないところでしたよ」
「補給物資を相手に奪われたのは少しばかり痛いな。たしかドーソン卿が守っていたはずだが?」
「敵にまんまとおびき寄せられたそうです。裸同然でろくに武器を持たぬ亜人部隊という囮に釣られ、ドーソン伯爵の部隊が突出したところを後方から別動隊に襲われた、と。その報告を伝令から受けたときには自分の耳を疑いましたよ」
「それはなんとも軽挙な真似を。だが、そうなってくるとウルシュナ平原からは一度撤退したほうがよさそうだな。ガルバイン砦辺りまで一旦引くか?」
「はっ。それが現時点では最良の策かと」
「とはいえ、反乱軍だってむざむざこの好機を逃すはずがない。私の部隊がしんがりを務めて全軍が撤退する時間を稼ぐので、全軍早急にガルバイン砦まで撤退するように伝令を出してくれるか?」
「よろしいので? 軍の指揮権はシアード殿下に取り上げられたままですよ?」
「構わん。あとで問題になっても責任はこの私が取る」
それだけをグレインに伝えると、ガウルザーク将軍は再び馬上の人となり、戦場へと駆けていく。
自陣に残ったグレインのほうはすぐさま伝令を呼ぶと、全軍に撤退命令を出すように指示を出していた。
◆
「マクシミリアン様。どうやら敵軍は撤退する模様です。どうか追撃のご指示を!」
ウルシュナ平原に設置されたマクシミリアン陣営の天幕の中。
マクシミリアン陣営きっての武闘派として知られているアドミラール将軍が、血気盛んな様子でそんな大声を出していた。
その場に居並ぶほかの将校たちも、皆一様にアドミラール将軍の意見に賛意を示しており、ここが千載一遇の好機だとばかりに戦意に溢れた顔が並んでいる。
それもそのはず。
これまで散々、ガウルザーク将軍に煮え湯を飲まされてきたのだから。
アドミラール将軍がガウルザーク将軍のことを穴倉の鼠とよく揶揄するように、こちらがいくら挑発しようとも無理に攻めてこようとはせず、ガウルザーク将軍が堅実な戦術に徹していたせいで、味方の損害ばかりが増えていたからだ。
元々数に劣るマクシミリアン陣営からすれば、そうなってしまえば劣勢を覆しようもなく、あとはただいたずらに兵を消耗していくのみ。
ガウルザーク将軍の戦術は何の面白みもない無難な用兵に過ぎなかったが、マクシミリアン陣営としてはこれでは打つ手がないというのが正直なところだった。
「うむ。追撃を許可する。見事、シアードの小倅を討ち取った者には、余から多大な褒賞と、しかるべき地位を与えようぞ」
「はっ!」
「マクシミリアン様、お待ちを」
「ん? サイードよ、何か意見でもあるのか?」
「ええ。多少の追撃なら構いませぬが、あまり深追いはしないほうがよろしいかと。ここは敢えてシアード殿下を逃したほうが得策ではないかと愚考致します」
突然、灰色のローブの中にすっぽりと顔を隠した魔導士らしき男が口を挟む。
その言葉に、いまにも天幕から飛び出していきそうになっていたアドミラール将軍が立ち止まり、サイードという灰色の魔導士に向かって食ってかかっていた。
「馬鹿な! いきなり何を言い出すかと思えば、まこと異なことを。今、シアード殿下を討ち取らずして何とするのですか!」
「アドミラール将軍。それは少しばかり短慮というものではないですかね。今は敵味方に別れているとはいえ、あちらも元々は我らと同じマガルムーク人。やり過ぎはのちのちの遺恨を残すだけなのでは?」
「なっ! そもそもシアード殿下を戦場へとおびき寄せるという策略は、サイード導師によるものと、この私は伺っておりますが?」
「然り。ここまでは私の計画どおりだと言えましょうな。ですが、この後首尾よくシアード殿下を討ち取ったとしても、あちらの連中からすればほかの王族に首を挿げ替えれば済む話。それよりもおめおめと戦場から逃げ帰ってきた無能者だと、悪評をバラまいたほうが実りが大きいかと」
「ふむ。その結果、こちら側に寝返る貴族連中も増える、というわけか」
「ですが、ここでシアード殿下を討ち取ったとしても、同じようにこちらに寝返る連中が出てくることは必定。だというのに、わざわざ見逃すというのも……」
「古来からドラゴンの身体にゴブリンの頭と、よく申すではありませぬか。無能者が頂点に居座っていたほうが、こちらとしても何かと都合がいいのですよ」
「ふむ。サイードの進言にも一理あるようだの。だが、このままシアードの小倅が逃げ延び、再びガウルザーク将軍の元に軍権が戻ってしまえば、元の木阿弥になるのではないのか?」
そう言ってマクシミリアン侯爵が腕を組んで考え込む。
どちらかといえばマクシミリアン侯爵としては、アドミラール将軍の意見のほうに気持ちが傾いていた。
だが、この反乱の当初からマクシミリアン侯爵に加担し、度重なる献策を行ってきたサイード導師の進言を無視するわけにもいかない。
どちらの進言を用いるべきなのかマクシミリアン侯爵が迷っていると、自分の意見を押し通すような形でサイードが言葉を繋げてきた。
「ということは、ガウルザーク将軍さえ居なくなれば、あらかたの問題がなくなるということでもありますな」
サイードがそんな発言をしてすぐ、その後ろ側で靄のような影が立ち昇るのが見えた。
その靄がだんだんと集まり、やがて人型の真っ黒な影へと変わっていく。
と、突然サイードがその場に膝を付くと、床へとひれ伏し始める。
これまでマクシミリアン侯爵相手ですら、サイードが平伏する姿を見たことがない。
そのサイードが突然頭を下げたのだ。
周りに立ち並ぶ将校たちも何事が起きたのかわからず、しばし呆然となってしまったほど。
誰も靄のような真っ黒い影の正体とサイードの奇行の意図がわからず、その場は沈黙に包まれていた。
が――、
「サイードよ。まさかお主が申す英雄とやらは、こやつのことではあるまいな? なかなか歯ごたえのある相手だと聞いたからこそ、わざわざ我自らが赴いたのだぞ」
突如、恐ろしげな声がその場に轟く。
その声を耳にして、その場に居た将校たちは皆動けなくなっていた。
まるで金縛りにでもあったかのように。
いや、おそらく手足を動かすことができなかったのだろう。
アドミラール将軍の様子を見ても、口を大きく開けたまま目玉だけをぎょろぎょろと動かし、必死に身体を動かそうとしているのがわかる。
最初から影の存在に気付いていたらしいサイードと、すぐに影に向かって軽く一礼したマクシミリアン侯爵だけは多少様子が違っているようにも見えたが。
そんな中、その場に居た将校たちの視線がある一点に集中していた。
ここが戦場だとはとても思えない煌びやかな絨毯の上に、ぽたり、ぽたりと何かの血が滴り落ちる。
どうやら、不意に現れた影が右手に持っているものから、その血が滴り落ちているらしい。
その怪しい影が無造作に右手に掴んでいたもの。
――それは身体から切断されたガウルザーク将軍の頭部だった。
天幕の外から久々に活気溢れる亜人たちの喜びの声が聞こえてくる。
そんな喜びの声をよそに、小角鬼族の長であるラプラールがイオスという冒険者に対し、白髪が交じりかけた頭を下げている様子が天幕の中には見受けられた。
「ラオから聞きましたぞ。八面六臂のご活躍だったとか。イオス殿おひとりでかなりの戦果を上げられたそうですね」
「なに、たいしたことはしておらんよ。たまたま灰色狼の群れに出くわしてな。灰色狼は大断崖地帯に棲息する魔物の中では弱い部類。そこまで難儀するような相手ではなかっただけだ」
「いやいや、ご謙遜を。しかも、ほかの者たちが危ない状況になるや、すぐに助力に駆けつけ窮地を救っていただいたという話ではないですか。誠、イオス殿には感謝の念に堪えませぬ」
「普段からこういった魔物狩りを生業にしているんだ。多少周りにも気を配る余裕があるさ」
「最初、不平不満をこぼしていた連中もそれでずいぶんと大人しくなったとか」
「どこの誰ともわからぬ流れ者が、いきなり出しゃばるような真似をしたからな。多少不満に思うのも仕方あるまい」
「そうは申されましても、我々は武器すらろくに手にしたことがないような者ばかり。熟練者であるイオス殿の指示に従うことのいったいどこが不満だったのか」
「まあ、たいした怪我人も出なく、順調にことが運んだんだ。それだけでこちらも助力した甲斐があるというものさ」
「それもこれもすべてイオス殿のおかげかと。これであと何日かは飢えを凌げそうです」
一見したところ、頭を下げられたイオスという冒険者より、ラプラールのほうが年長者のようにも見える。それに冒険者という立場は周りから尊敬されるような立場でもないはず。
にもかかわらず、ラプラールのほうが遜った態度だったのはイオスが避難民ではなく、あくまで助力のためにこの場所に残っていることも関係しているのだろう。
ただ、それだけではないのかも知れない。
元々、小角鬼族という種が強い者に対して畏敬の念を抱きやすい性格をしていたこともある。
イオスの腕周りを見てもラプラールの太ももぐらいはありそうだったし、ほかの亜人と比べてもイオスの背丈は頭ひとつ分ぐらい抜けている。
鎧の下に見える大胸筋だって明らかに盛り上がって見えていたし、ラプラールがイオスという亜人から強者の風格を感じ取っていたとしても何らおかしくはなかった。
「だが、今回得られた成果と残された食料だけでは、持っておそらく一週間といったところだろう。それに今回はたまたま上手いこと獲物が捕れただけで、次回もこうなるとは限らんからな」
「毎度、毎度こう上手くはいかないと?」
「そうだ。特にこれから先、冬場に入るのでな。そうなってくると一日中獲物を探し回っても、まるで見つからない日のほうが多いと思ったほうがいいだろうな」
「ふうむ……」
そんなイオスの悲観的な言葉を聞き、ラプラールが顎に手を当てて考え込む。
魔物狩りに向かった男衆が大量の獲物を持ち帰ってきたことを喜んでいたのも束の間、イオスの口から飛び出したのはほんの少しばかり手厳しい言葉だった。
「差し出がましい忠告だということもわかっているが、何か別の手を考えたほうがいい。クリスティーナ様から頂戴した食料のほうも残り少なくなってきているのだろう?」
「ええ。イオス殿のおっしゃられるとおり、このままではじり貧になるのが目に見えています。かといって、これといった手だてがあるわけでもなく……」
「手立てがまったくないわけでもないがな」
「それはいったいどういう話なのでしょうか?」
手立てがあるというイオスの言葉にラプラールが顔を上げる。
イオスはひと呼吸置くと、逆にラプラールに対して質問を返していた。
「皆で別の場所に移り住み、その場所で新しい生活を始めてみようという気は?」
「むろん、そういう話も以前一度出ましたが、一から村を作るとなれば相当な苦労を背負うことになります。いや、苦労だけで済むのならば我らとて厭いませんが、断りもなく亜人である我らが村を作れば、その土地を治める領主から攻め込まれるだけだろうと」
「マガルムーク国の領土内ならば、そうなる可能性が高いだろうな」
「はい? 我々に国外の土地に向かえとでも?」
ラプラールの顔に驚きの表情が浮かぶ。
イオスの言わんとしていることが、祖国であるマガルムークを捨てろという意味であることを理解したからだろう。
「そういうことになるな。そこまでマガルムークという国に愛着を持っているようには見えぬが」
「確かにそこまで愛着を持っているとは言えませぬが、いくら何でもそれは……。それに魔物による被害が少なく、比較的安全とされる土地にはほぼ間違いなく先住者が住みついております。そんな都合よく、我々が安全に暮らせる土地が見つかるとも思えませぬ」
「だが、いつまでここに居座り続けるつもりだ。たとえこのあと戦争が終わったとしても、ここの領主が避難民を受け入れてくれるという保障はどこにもない。その場合、帰る場所がない者はどうするのだ? 住んでいた村から追い出された者も多いと聞くが」
「最初から亜人の我々が安全に暮らせる場所などどこにも……」
「もし、この俺にそういった場所に心当たりがあると言ったら、どうする?」
「我々が飢えもせず、安全に暮らせる場所にイオス殿は心当たりがあるのですか?」
「ああ、そうだ。それにある程度村としての基盤が整っているので、苦労して一から村を作る必要もない」
その言葉を聞き、ラプラールが怪訝そうな面持ちでイオスのことを見つめる。
イオスのことを信用している様子のラプラールであっても、さすがにその言葉には引っ掛かるところがあったらしい。それどころか、ラプラールにはイオスに対して警戒心を強めた様子があった。
「イオス殿。まさか、あなたはマクシミリアン侯爵の……」
「ラプラール殿。あなたが今何を考えているのかわからなくもないが、さすがにそれは考え過ぎだ」
「我々がここに避難してくる前にも、村にマクシミリアン侯爵の使者を名乗る人間がやって来て、亜人のためにもなることだと甘言を弄し、一部の者を戦争に連れていったのですが……」
「俺が避難民をまるめ込んで戦争に駆り出そうとしているのなら、マガルムーク国外に行けというのはいささかおかしくないか? 戦力になりそうもない避難民を他所の土地に追いやって、いったい何の意味がある?」
「それはそうなのですが」
「では、何が気になるというのだ?」
「イオス殿のことを疑うわけではございませんが、先住者が居なく、村としての基盤が整っている場所などそう簡単に見つかるはずがないかと」
「何らかの理由があって廃村になった場所ならあるだろうよ」
「ということは、そこは廃村なのですか?」
何か裏があるのだろうと言わんばかりのラプラールの態度に、イオスが鼻を鳴らす。
だが、そのあとイオスの口から出たのは、やんわりとだがラプラールの言葉を肯定するようなものだった。
「そうだな。実際に移り住むとなれば、どうせわかることだ。ここは正直に話したほうがいいのかも知れないな」
「となると、やはり何か問題が……」
「問題というかだな。故あって詳しい事情を話せぬが、その場所はとあるお方の所有地でな。ただ、以前住んでいた住民が他の場所に引っ越しており、現在は誰も住んでいないというわけだ。そこに住み着くということは、すなわちそのお方の支配下に置かれるということにもなる」
「なるほど。要は農奴というわけですか。マガルムークを捨て、その人物に忠誠を誓えば、飢える心配だけはしなくて済むと」
今のイオスの話に納得がいったのだろう。
ラプラールの顔からは疑念の表情がほとんど消えていたが、手放しで喜んでいるともいえないような微妙な顔。
どうやらイオスの提案が解決策になるとはあまり思っていない様子だった。
「まあ、そういうことだな。人族ではあるが、亜人にも寛容なお方でな。飢える心配どころか、今までの生活よりもずいぶんと暮らしやすくなるはずだぞ」
「農奴なのは別に構いません。元々、ほとんどの者が賤民でしかないのですから。ただ、新たに人族に従えと言われてもおそらく拒絶する者が多いでしょう」
「マガルムークの王だって人族なのだ。そこに抵抗を感じるのはおかしいと思うが。まあ、そうは言ってもすぐに答えを出せる話でもない。それにこちらから無理強いするつもりはないのだ。そういう選択もあるという程度だ」
「今の話を仲間たちに喋ってしまっても構わないので?」
「ああ。その場所の周りには結界が張ってある。案内もなしにその場所を見つけることなど不可能だからな。マルカの状態を見てくるので俺はこの辺で失礼するが、そんな場所もあるということを一応頭の片隅にでも入れておいてくれ」
そう言い残して、天幕から颯爽と出ていくイオス。
その場に残されたラプラールはしばし呆然となりながらも、イオスから聞いた思いがけない提案について頭を巡らせていた。
◆
激しい乱戦のさなか、一頭の騎馬が戦場を駆け抜けていく姿があった。
重厚そうな鉄製の馬鎧をその身に纏った白馬が、馬上の騎士と一心同体となり、進行方向に居る邪魔な敵を、まるで草木でもあるかのごとく軽々となぎ倒しながら駆け抜けていく。
そんな勇猛無比な一騎の奮闘に、その騎士を倒すために集まっていたマクシミリアン侯爵直属の騎士ですら、恐れおののいて道を空けたほどだ。
噂とたがわぬガウルザーク将軍の活躍ぶりに、さきほどまで優勢を誇っていたはずの反乱軍の勢いも一気に崩れていく様子があった。
「閣下! ご無事で」
「グレイン、シアード殿下は?」
ひととおり乱戦の中で暴れ回ったあと、悠々と自陣に戻っていったガウルザーク将軍に副官のグレインが話しかけてくる。
ガウルザーク将軍はそこで愛馬を休ませるために地上へと降り立つと、桶に入った水を馬へとやりながらグレインからの報告を受けていた。
「首尾よく逃げおおせられたそうです。ですが、敵の奇襲により本隊の被害は甚大な様子。おそらく300から400はやられたかと」
「そうか。まあ多少の損害は仕方あるまい。シアード殿下さえご無事ならば、このあといくらでも立て直しが効くのだ」
「それにしても……。わざわざ殿下ご自身が出馬されずとも、前線は閣下に任せて大人しく後方に下がっていてくださればこんなことにはならなかったのに」
「そう言うな、グレイン。いまだシアード殿下の王位継承を疑問視する声もあると聞く。シアード殿下としては、そんな口を閉ざさせるだけの戦果が欲しかったのだろうよ」
「そりゃあそうかも知れませんがね。何でも本陣にあった補給物資まで鹵獲されてしまったとか。我々が援軍に駆けつけていなければ、今頃総崩れしてもおかしくないところでしたよ」
「補給物資を相手に奪われたのは少しばかり痛いな。たしかドーソン卿が守っていたはずだが?」
「敵にまんまとおびき寄せられたそうです。裸同然でろくに武器を持たぬ亜人部隊という囮に釣られ、ドーソン伯爵の部隊が突出したところを後方から別動隊に襲われた、と。その報告を伝令から受けたときには自分の耳を疑いましたよ」
「それはなんとも軽挙な真似を。だが、そうなってくるとウルシュナ平原からは一度撤退したほうがよさそうだな。ガルバイン砦辺りまで一旦引くか?」
「はっ。それが現時点では最良の策かと」
「とはいえ、反乱軍だってむざむざこの好機を逃すはずがない。私の部隊がしんがりを務めて全軍が撤退する時間を稼ぐので、全軍早急にガルバイン砦まで撤退するように伝令を出してくれるか?」
「よろしいので? 軍の指揮権はシアード殿下に取り上げられたままですよ?」
「構わん。あとで問題になっても責任はこの私が取る」
それだけをグレインに伝えると、ガウルザーク将軍は再び馬上の人となり、戦場へと駆けていく。
自陣に残ったグレインのほうはすぐさま伝令を呼ぶと、全軍に撤退命令を出すように指示を出していた。
◆
「マクシミリアン様。どうやら敵軍は撤退する模様です。どうか追撃のご指示を!」
ウルシュナ平原に設置されたマクシミリアン陣営の天幕の中。
マクシミリアン陣営きっての武闘派として知られているアドミラール将軍が、血気盛んな様子でそんな大声を出していた。
その場に居並ぶほかの将校たちも、皆一様にアドミラール将軍の意見に賛意を示しており、ここが千載一遇の好機だとばかりに戦意に溢れた顔が並んでいる。
それもそのはず。
これまで散々、ガウルザーク将軍に煮え湯を飲まされてきたのだから。
アドミラール将軍がガウルザーク将軍のことを穴倉の鼠とよく揶揄するように、こちらがいくら挑発しようとも無理に攻めてこようとはせず、ガウルザーク将軍が堅実な戦術に徹していたせいで、味方の損害ばかりが増えていたからだ。
元々数に劣るマクシミリアン陣営からすれば、そうなってしまえば劣勢を覆しようもなく、あとはただいたずらに兵を消耗していくのみ。
ガウルザーク将軍の戦術は何の面白みもない無難な用兵に過ぎなかったが、マクシミリアン陣営としてはこれでは打つ手がないというのが正直なところだった。
「うむ。追撃を許可する。見事、シアードの小倅を討ち取った者には、余から多大な褒賞と、しかるべき地位を与えようぞ」
「はっ!」
「マクシミリアン様、お待ちを」
「ん? サイードよ、何か意見でもあるのか?」
「ええ。多少の追撃なら構いませぬが、あまり深追いはしないほうがよろしいかと。ここは敢えてシアード殿下を逃したほうが得策ではないかと愚考致します」
突然、灰色のローブの中にすっぽりと顔を隠した魔導士らしき男が口を挟む。
その言葉に、いまにも天幕から飛び出していきそうになっていたアドミラール将軍が立ち止まり、サイードという灰色の魔導士に向かって食ってかかっていた。
「馬鹿な! いきなり何を言い出すかと思えば、まこと異なことを。今、シアード殿下を討ち取らずして何とするのですか!」
「アドミラール将軍。それは少しばかり短慮というものではないですかね。今は敵味方に別れているとはいえ、あちらも元々は我らと同じマガルムーク人。やり過ぎはのちのちの遺恨を残すだけなのでは?」
「なっ! そもそもシアード殿下を戦場へとおびき寄せるという策略は、サイード導師によるものと、この私は伺っておりますが?」
「然り。ここまでは私の計画どおりだと言えましょうな。ですが、この後首尾よくシアード殿下を討ち取ったとしても、あちらの連中からすればほかの王族に首を挿げ替えれば済む話。それよりもおめおめと戦場から逃げ帰ってきた無能者だと、悪評をバラまいたほうが実りが大きいかと」
「ふむ。その結果、こちら側に寝返る貴族連中も増える、というわけか」
「ですが、ここでシアード殿下を討ち取ったとしても、同じようにこちらに寝返る連中が出てくることは必定。だというのに、わざわざ見逃すというのも……」
「古来からドラゴンの身体にゴブリンの頭と、よく申すではありませぬか。無能者が頂点に居座っていたほうが、こちらとしても何かと都合がいいのですよ」
「ふむ。サイードの進言にも一理あるようだの。だが、このままシアードの小倅が逃げ延び、再びガウルザーク将軍の元に軍権が戻ってしまえば、元の木阿弥になるのではないのか?」
そう言ってマクシミリアン侯爵が腕を組んで考え込む。
どちらかといえばマクシミリアン侯爵としては、アドミラール将軍の意見のほうに気持ちが傾いていた。
だが、この反乱の当初からマクシミリアン侯爵に加担し、度重なる献策を行ってきたサイード導師の進言を無視するわけにもいかない。
どちらの進言を用いるべきなのかマクシミリアン侯爵が迷っていると、自分の意見を押し通すような形でサイードが言葉を繋げてきた。
「ということは、ガウルザーク将軍さえ居なくなれば、あらかたの問題がなくなるということでもありますな」
サイードがそんな発言をしてすぐ、その後ろ側で靄のような影が立ち昇るのが見えた。
その靄がだんだんと集まり、やがて人型の真っ黒な影へと変わっていく。
と、突然サイードがその場に膝を付くと、床へとひれ伏し始める。
これまでマクシミリアン侯爵相手ですら、サイードが平伏する姿を見たことがない。
そのサイードが突然頭を下げたのだ。
周りに立ち並ぶ将校たちも何事が起きたのかわからず、しばし呆然となってしまったほど。
誰も靄のような真っ黒い影の正体とサイードの奇行の意図がわからず、その場は沈黙に包まれていた。
が――、
「サイードよ。まさかお主が申す英雄とやらは、こやつのことではあるまいな? なかなか歯ごたえのある相手だと聞いたからこそ、わざわざ我自らが赴いたのだぞ」
突如、恐ろしげな声がその場に轟く。
その声を耳にして、その場に居た将校たちは皆動けなくなっていた。
まるで金縛りにでもあったかのように。
いや、おそらく手足を動かすことができなかったのだろう。
アドミラール将軍の様子を見ても、口を大きく開けたまま目玉だけをぎょろぎょろと動かし、必死に身体を動かそうとしているのがわかる。
最初から影の存在に気付いていたらしいサイードと、すぐに影に向かって軽く一礼したマクシミリアン侯爵だけは多少様子が違っているようにも見えたが。
そんな中、その場に居た将校たちの視線がある一点に集中していた。
ここが戦場だとはとても思えない煌びやかな絨毯の上に、ぽたり、ぽたりと何かの血が滴り落ちる。
どうやら、不意に現れた影が右手に持っているものから、その血が滴り落ちているらしい。
その怪しい影が無造作に右手に掴んでいたもの。
――それは身体から切断されたガウルザーク将軍の頭部だった。
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