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第一話 荷物持ち、勇者パーティーから追放される
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「グレン、お前はクビだ! この勇者パーティーから出て行け!」
冒険者ギルドの中に勇者――アレスさんの声が響き渡る。
一方、俺はアレスさんからの追放宣言に驚いてしまった。
どうして俺がいきなり勇者パーティーをクビになるんだ?
と思った俺は慌ててアレスさんに尋ねた。
「待ってください。いきなりクビなんてひどすぎます。それに今すぐ出て行けって……」
そうだ、いくら勇者とはいえひどすぎる。
俺は今までパーティーの荷物持ちとして頑張ってきたんだ。
それなのに突然のクビから追放なんてダブル・コンボは鬼の所業だ。
ああ、考えたら腹が立ってきた。
とりあえず、顔だけは必死な弱者を演じて心の中で勇者を罵倒しよう。
「くそっ、ウゼえな。たまたま上級モンスターを狩れてSランクの冒険者になったくせに。そんで、たまたま功績が認められて国王から勇者に指名されたくせに。前から思ってたけど、お前ら全員クズだぞ。勇者パーティーに認定されたからって毎日毎日ハメを外しやがって。特に勇者、てめえだよ。毎晩毎晩、気が狂ったように娼館に行くってどれだけ股間の息子の節操がねえんだよ。バーカ、バーカ……ふう、ちょっとは落ち着いたな」
次の瞬間、アレスさんは腰の剣を抜きながら立ち上がった。
「な、何だと! てめえ、もういっぺん言ってみろ!」
そして両目を血走らせながら、剣の切っ先を俺に向けてくる。
あ……まずい、これって心の声が口から出ていたパターン?
「この無能の荷物持ち! あなた、誰に向かって言っているのか分かってんの!」
次に俺を怒鳴り散らしたのは僧侶のコレットさんだ。
金髪碧眼の17歳で巷では聖女とも呼ばれている。
ちなみに勇者のアレスさんと寝んごろな関係なのは俺も知っていた。
「コレットの言う通りだ! 俺たち勇者パーティーに何の恩恵も与えなかったクズのくせに、あろうことかリーダーであるアレスの悪口を言うとは……無能とはまさに貴様のためにある言葉だ!」
なんて怒声を浴びせてきたのは、全身鎧を着た重剣士のバトーさんだ。
確か年齢はアレスさんと同じ20歳だったかな?
そんで中肉中背のアレスさんと違って、正直なところバトーさんは熊が鎧を着ているようにしか見えない。
そんなバトーさんは剣士とタンクの役割を兼ねたパーティーの要であり、文字通り勇者のアレスさんを身体を張って守ることを生きがいとしていた。
ちなみにバトーさんもアレスさんと夜の関係を持っている。
こればかりはマジで知りたくはなかったけどね。
どっちが攻めでどっちが受けなんだよ……ってたまに考えてしまう。
まあ、それはさておき。
俺の不注意で場の雰囲気は一気にヤバイ感じになってしまった。
周囲にいた冒険者たちも、ハラハラしながら俺たちの様子をチラ見している。
「もう我慢ならねえ! おい、グレン! さっさとこの場から出て行け! それとも俺に叩き斬られたいか!」
いや、まずはクビの理由を説明しろよ。
いきなりクビです、はい追放です、はさすがに通らないだろうが。
「アレスさん、俺をクビにする理由を教えて下さい。でないと納得できません」
仕方なしに俺は下手に出て訊くと、アレスさんは聞く耳を持たないとばかりに大声を上げた。
「そんなもん、決まってるだろ。てめえが荷物持ちとしての働きが出来なかったからだよ。それに俺たちは晴れて国から認められた勇者パーティーになったんだ。もうてめえみたいな無能をパーティーに入れておくにはいかねえんだよ」
そんな前口上をキッカケに、アレスさんは俺がいかに荷物持ちとして無能だったのかを口に出していく。
「――とにかく、グレン・スコフィールド。てめえは今日限り、俺たち勇者パーティーの【封魔滅却煉獄百花繚乱・改】から追放する!」
俺はやれやれと嘆息した。
「相変わらずクソ長いパーティー名だな。それに改って何だよ改って。お前ら勇者パーティーになる前から改って付けてただろ? 普通は勇者パーティーに晴れてなったときに付けるんじゃないのか? そういうところが頭が悪いんだよ……おっと、またさっきと同じ過ちを繰り返すところだったぜ。今度こそ、こいつらに聞かれないように心の中で留めないとな」
「だから、ずっと心の声がだだ漏れてんだよ!」
アレスさんはいきなり剣を水平に薙ぎ払ってきた。
「うわっッ!」
俺は後方に仰け反りながら、何とかアレスさんの斬撃を躱した。
しかし、咄嗟のことだったので俺は体勢を崩して尻もちをついてしまう。
「失せろ、この無能が! 二度と俺たちの前に姿を現すな!」
何て理不尽な奴らだ。
パーティーの荷物持ち兼雑用として今まで頑張ってきた俺を、寄ってたかってこんな無下に扱うなんて。
いよいよ堪忍袋の俺が切れかけてきた俺は立ち上がり、周囲の冒険者が注目する中で堂々とアレスさんたちに言い放った。
「退職金は出るんですよね!」
「失せろ!」
そして荷物持ちの俺――グレン・スコフィールドは勇者パーティーを追放され、お母さんが待つ家路についたのだった。
冒険者ギルドの中に勇者――アレスさんの声が響き渡る。
一方、俺はアレスさんからの追放宣言に驚いてしまった。
どうして俺がいきなり勇者パーティーをクビになるんだ?
と思った俺は慌ててアレスさんに尋ねた。
「待ってください。いきなりクビなんてひどすぎます。それに今すぐ出て行けって……」
そうだ、いくら勇者とはいえひどすぎる。
俺は今までパーティーの荷物持ちとして頑張ってきたんだ。
それなのに突然のクビから追放なんてダブル・コンボは鬼の所業だ。
ああ、考えたら腹が立ってきた。
とりあえず、顔だけは必死な弱者を演じて心の中で勇者を罵倒しよう。
「くそっ、ウゼえな。たまたま上級モンスターを狩れてSランクの冒険者になったくせに。そんで、たまたま功績が認められて国王から勇者に指名されたくせに。前から思ってたけど、お前ら全員クズだぞ。勇者パーティーに認定されたからって毎日毎日ハメを外しやがって。特に勇者、てめえだよ。毎晩毎晩、気が狂ったように娼館に行くってどれだけ股間の息子の節操がねえんだよ。バーカ、バーカ……ふう、ちょっとは落ち着いたな」
次の瞬間、アレスさんは腰の剣を抜きながら立ち上がった。
「な、何だと! てめえ、もういっぺん言ってみろ!」
そして両目を血走らせながら、剣の切っ先を俺に向けてくる。
あ……まずい、これって心の声が口から出ていたパターン?
「この無能の荷物持ち! あなた、誰に向かって言っているのか分かってんの!」
次に俺を怒鳴り散らしたのは僧侶のコレットさんだ。
金髪碧眼の17歳で巷では聖女とも呼ばれている。
ちなみに勇者のアレスさんと寝んごろな関係なのは俺も知っていた。
「コレットの言う通りだ! 俺たち勇者パーティーに何の恩恵も与えなかったクズのくせに、あろうことかリーダーであるアレスの悪口を言うとは……無能とはまさに貴様のためにある言葉だ!」
なんて怒声を浴びせてきたのは、全身鎧を着た重剣士のバトーさんだ。
確か年齢はアレスさんと同じ20歳だったかな?
そんで中肉中背のアレスさんと違って、正直なところバトーさんは熊が鎧を着ているようにしか見えない。
そんなバトーさんは剣士とタンクの役割を兼ねたパーティーの要であり、文字通り勇者のアレスさんを身体を張って守ることを生きがいとしていた。
ちなみにバトーさんもアレスさんと夜の関係を持っている。
こればかりはマジで知りたくはなかったけどね。
どっちが攻めでどっちが受けなんだよ……ってたまに考えてしまう。
まあ、それはさておき。
俺の不注意で場の雰囲気は一気にヤバイ感じになってしまった。
周囲にいた冒険者たちも、ハラハラしながら俺たちの様子をチラ見している。
「もう我慢ならねえ! おい、グレン! さっさとこの場から出て行け! それとも俺に叩き斬られたいか!」
いや、まずはクビの理由を説明しろよ。
いきなりクビです、はい追放です、はさすがに通らないだろうが。
「アレスさん、俺をクビにする理由を教えて下さい。でないと納得できません」
仕方なしに俺は下手に出て訊くと、アレスさんは聞く耳を持たないとばかりに大声を上げた。
「そんなもん、決まってるだろ。てめえが荷物持ちとしての働きが出来なかったからだよ。それに俺たちは晴れて国から認められた勇者パーティーになったんだ。もうてめえみたいな無能をパーティーに入れておくにはいかねえんだよ」
そんな前口上をキッカケに、アレスさんは俺がいかに荷物持ちとして無能だったのかを口に出していく。
「――とにかく、グレン・スコフィールド。てめえは今日限り、俺たち勇者パーティーの【封魔滅却煉獄百花繚乱・改】から追放する!」
俺はやれやれと嘆息した。
「相変わらずクソ長いパーティー名だな。それに改って何だよ改って。お前ら勇者パーティーになる前から改って付けてただろ? 普通は勇者パーティーに晴れてなったときに付けるんじゃないのか? そういうところが頭が悪いんだよ……おっと、またさっきと同じ過ちを繰り返すところだったぜ。今度こそ、こいつらに聞かれないように心の中で留めないとな」
「だから、ずっと心の声がだだ漏れてんだよ!」
アレスさんはいきなり剣を水平に薙ぎ払ってきた。
「うわっッ!」
俺は後方に仰け反りながら、何とかアレスさんの斬撃を躱した。
しかし、咄嗟のことだったので俺は体勢を崩して尻もちをついてしまう。
「失せろ、この無能が! 二度と俺たちの前に姿を現すな!」
何て理不尽な奴らだ。
パーティーの荷物持ち兼雑用として今まで頑張ってきた俺を、寄ってたかってこんな無下に扱うなんて。
いよいよ堪忍袋の俺が切れかけてきた俺は立ち上がり、周囲の冒険者が注目する中で堂々とアレスさんたちに言い放った。
「退職金は出るんですよね!」
「失せろ!」
そして荷物持ちの俺――グレン・スコフィールドは勇者パーティーを追放され、お母さんが待つ家路についたのだった。
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