88 / 104
最終章 ~華やかで煌びやかな地下の世界・元勇者の消滅編~
道場訓 八十八 勇者の誤った行動 ㉚
しおりを挟む
空手家。
その言葉を聞いただけで怒りが込み上げてくる。
「おい、詳しく聞かせろ」
俺は白装束の1人に尋ねた。
「な、何だお前は?」
「俺のことなんてどうだっていい。脱獄した女は空手家なのか、それともサムライなのかどっちだ?」
俺は白装束の1人の襟元を掴む。
しかし、俺は勢い余って手首に力を入れ過ぎた。
次の瞬間、襟元を掴んだ状態で俺の手首は360度回転したのだ。
白装束の1人は大きく目を見開いた。
「まさか、お前は適合者なのか!」
「適合者?」
俺が頭上に疑問符を浮かべると、ソドムが「新魔薬で魔人の力を得た奴のことだ」と教えてくれた。
「適合者か……勇者よりも世間受けする名前じゃねえな」
そう言って俺は襟元から手を離した。
白装束の1人は何度も咳き込む。
しかし、俺はそんな白装束の1人を見下ろしながら催促した。
「それで? 脱獄した女は空手家なのかサムライなのかどっちなんだよ?」
「か、空手家だ。そしてその女は武器を使わず、どういうわけか牢屋から外へ出て堂々と脱獄したんだ」
「どういうわけって何だよ? 無理やり格子か鍵を壊して脱獄したんだろ?」
違う、と白装束の1人は答えた。
「鉄格子も鍵も壊された形跡はなかった。それどころか、鍵もきちんと掛かったままだったんだ。見張りの連中も気味悪がっていたよ。牢屋の中にはその女しかいなかったし、まるでこの世から消えて牢屋の外に現れたようだって……」
何だそりゃ?
俺はふんと鼻で笑った。
「鉄格子も鍵も壊されずに脱獄された? 馬鹿言うなよ。そんなこと普通の人間に出来るわけないだろ。まさか、その女は失伝した空間転移の魔法を使ったとでも言うのか?」
自分で言ってみて何だが、それこそあり得なかった。
たかが空手家の女が空間転移の魔法など使えるわけがない。
白装束の1人は「俺たちもわけが分からん」と顔を歪めて答える。
「まあ、何にせよ普通の女じゃないってことか」
いいだろう、と俺は言った。
「面白え。その脱獄した女は俺が捕まえてやるよ」
「キース、あんまりここで勝手な真似をされたら困るぜ」
そう言ってきたのはソドムだ。
「おいおい、勝手な真似をしているのはその脱獄した女のほうだろうが。それに話を聞く限りでは、逃げられたままで困るのはお前らのほうじゃねえのか?」
「それはそうだが……」
「だったら決まりだな」
俺はニヤリと笑った。
「生かして捕まえるか、殺して捕まえるかは俺が決めさせて貰うぜ」
その言葉を聞いただけで怒りが込み上げてくる。
「おい、詳しく聞かせろ」
俺は白装束の1人に尋ねた。
「な、何だお前は?」
「俺のことなんてどうだっていい。脱獄した女は空手家なのか、それともサムライなのかどっちだ?」
俺は白装束の1人の襟元を掴む。
しかし、俺は勢い余って手首に力を入れ過ぎた。
次の瞬間、襟元を掴んだ状態で俺の手首は360度回転したのだ。
白装束の1人は大きく目を見開いた。
「まさか、お前は適合者なのか!」
「適合者?」
俺が頭上に疑問符を浮かべると、ソドムが「新魔薬で魔人の力を得た奴のことだ」と教えてくれた。
「適合者か……勇者よりも世間受けする名前じゃねえな」
そう言って俺は襟元から手を離した。
白装束の1人は何度も咳き込む。
しかし、俺はそんな白装束の1人を見下ろしながら催促した。
「それで? 脱獄した女は空手家なのかサムライなのかどっちなんだよ?」
「か、空手家だ。そしてその女は武器を使わず、どういうわけか牢屋から外へ出て堂々と脱獄したんだ」
「どういうわけって何だよ? 無理やり格子か鍵を壊して脱獄したんだろ?」
違う、と白装束の1人は答えた。
「鉄格子も鍵も壊された形跡はなかった。それどころか、鍵もきちんと掛かったままだったんだ。見張りの連中も気味悪がっていたよ。牢屋の中にはその女しかいなかったし、まるでこの世から消えて牢屋の外に現れたようだって……」
何だそりゃ?
俺はふんと鼻で笑った。
「鉄格子も鍵も壊されずに脱獄された? 馬鹿言うなよ。そんなこと普通の人間に出来るわけないだろ。まさか、その女は失伝した空間転移の魔法を使ったとでも言うのか?」
自分で言ってみて何だが、それこそあり得なかった。
たかが空手家の女が空間転移の魔法など使えるわけがない。
白装束の1人は「俺たちもわけが分からん」と顔を歪めて答える。
「まあ、何にせよ普通の女じゃないってことか」
いいだろう、と俺は言った。
「面白え。その脱獄した女は俺が捕まえてやるよ」
「キース、あんまりここで勝手な真似をされたら困るぜ」
そう言ってきたのはソドムだ。
「おいおい、勝手な真似をしているのはその脱獄した女のほうだろうが。それに話を聞く限りでは、逃げられたままで困るのはお前らのほうじゃねえのか?」
「それはそうだが……」
「だったら決まりだな」
俺はニヤリと笑った。
「生かして捕まえるか、殺して捕まえるかは俺が決めさせて貰うぜ」
0
お気に入りに追加
419
あなたにおすすめの小説
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る
神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】
元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。
ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、
理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。
今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。
様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。
カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。
ハーレム要素多め。
※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。
よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz
他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。
たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。
物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz
今後とも応援よろしくお願い致します。
スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!
果 一
ファンタジー
二人の勇者を主人公に、ブルガス王国のアリクレース公国の大戦を描いた超大作ノベルゲーム『国家大戦・クライシス』。ブラック企業に勤務する久我哲也は、日々の疲労が溜まっている中、そのゲームをやり込んだことにより過労死してしまう。
次に目が覚めたとき、彼はゲーム世界のカイム=ローウェンという名の少年に生まれ変わっていた。ところが、彼が生まれ変わったのは、勇者でもラスボスでもなく、本編に名前すら登場しない悪役サイドのモブキャラだった!
しかも、本編で配下達はラスボスに利用されたあげく、見限られて殺されるという運命で……?
「ちくしょう! 死んでたまるか!」
カイムは、殺されないために努力することを決める。
そんな努力の甲斐あってか、カイムは規格外の魔力と実力を手にすることとなり、さらには原作知識で次々と殺される運命だった者達を助け出して、一大勢力の頭へと駆け上る!
これは、死ぬ運命だった悪役モブが、最凶へと成り上がる物語だ。
本作は小説家になろう、カクヨムでも公開しています
他サイトでのタイトルは、『いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!~チート魔法で無双してたら、一大勢力を築き上げてしまったんだが~』となります
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる