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幕間 ~物事には光があれば闇があり、表があれば裏がある~
道場訓 三十二 ギルド長との個人的な契約
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アリアナ大草原の攻防戦から3日後――。
俺とエミリアは他の冒険者たちと同じく、今回の一件で犠牲になった冒険者たちを手厚く葬る作業を手伝っていた。
そして作業が一段落を迎えた頃、俺だけギルド長に呼ばれてギルド長室へと足を運んだ。
「ケンシン・オオガミ、このたびは本当に助かった。重ね重ね、礼を述べさせていただきたい」
長机を挟んでギルド長の対面に座るなり、五十過ぎのギルド長は俺に深々と頭を下げてくる。
「頭を上げて下さい、ギルド長。俺としても弟子のために参加しただけで、そんなに感謝される立場じゃありません」
そうはいかない、とギルド長は頭を左右に振る。
「副ギルド長の独断だったとはいえ、君がいなければこの冒険者ギルドに所属している冒険者たちは全員死んでいただろう。先の戦魔大戦の英雄である君がいなければな」
「そのことなんですが、俺が戦魔大戦に参加していたことは他の冒険者たちには内緒にしておいて欲しいのです」
ギルド長は眉間に深くしわを寄せた。
「なぜだ? 今回の件と合わせれば君の功績は凄まじいものになるのだぞ。それこそ、巷で流れている君が勇者パーティーをクビになったことなど払拭できる。それどころか、上位ランカーの冒険者たちはこぞって君をスカウトに来るだろう」
ギルド長はずいっと身を乗り出してくる。
「そうなれば君は再び上位ランクのパーティーに返り咲くことが出来る。もちろん、サポーターとしてじゃない。れっきとした戦闘要員としてSランク……いや、SSランクのパーティーに入れるのも夢じゃないぞ」
「興味ありません」
俺はきっぱりと自分の本音を伝えた。
「正直なことを言えば、もう俺は冒険者を辞めようかと思っています」
「冒険者を辞める!」
これにはギルド長も心の底から驚いたようだ。
「ま、待ってくれ。君ほどの逸材が冒険者を辞めるのは、私たち冒険者ギルドにとって大きな損失だ」
バンッ、とギルド長は感情任せに長机を叩いた。
「何が不満なのかね? 勇者パーティーを不当に解雇され、追放された噂を流されたことか? だったら、私に任せてくれないか。私の権限でSSランクの冒険者たちに協力してもらい、キース・マクマホンたち勇者パーティーを……」
「やめてください。それにキースたちは国から正式に認められた勇者パーティーです。もしもキースたちに手を出そうものなら、あなたたち冒険者ギルドもタダでは済まなくなりますよ」
「分かっている。分かっているが、その勇者パーティーも君がいたからこそ勇者パーティーとして国に認められたことは、上位ランカーの冒険者ならば誰でも知っていることだ。私が動かなくとも、いずれ彼ら自身が独断で動くとは思うがな」
「そのときこそ、ギルド長権限で止めるべきです。あいつらのために他の冒険者が国から狙われることなんてあっていいはずがない」
そう言うと俺はすくっと立ち上がり、出入り口の扉へ向かって歩き出した。
「どこへ行くのかね? まだ、話は終わっていないぞ」
俺は立ち止まり、顔だけを振り向かせる。
「もう、あなたと話すことはありません。あの副ギルド長が言っていたように俺の冒険者ライセンスは剥奪してもらって結構ですし、出来れば今後は俺たちに構わないでいただきたい」
本気で言っていることが伝わったのだろう。
ギルド長はため息を漏らすと、「これからどうするのか?」と訊いてくる。
「師匠であった祖父の墓参りも兼ねて、弟子とともに故郷に帰ろうかと思います。そこで弟子に空手を教えながら自分の技を磨こうかと」
「ヤマト国へかね?」
はい、と俺は答えた。
するとギルド長は両腕を組み、「分かった」と頷いた。
「そこまで強く決意しているのなら、私からはもう何も言わん。君の要望通り、勇者パーティーに何かすることもやめよう。しかし、冒険者ライセンスはそのままにしておく。どこかで君の気が変わるかも知れないからな」
ただし、とギルド長は真剣な表情を向けてくる。
「今回の一件の報酬はきっちりと受け取ってもらうぞ。冒険者を辞めて故郷へ帰るのなら、金はいくらあっても構わないだろう?」
「先ほども言った通り、俺は弟子のために今回の緊急任務に参加しただけで報酬を受け取るつもりはありません」
「報酬はいらない?」
「ええ、その報酬は今回の件で犠牲になった冒険者たちの遺族にでも渡してください。そのほうが有意義な使い道でしょうから」
「なるほど……世間では神剣を賜ったキースを英雄になる男などと持てはやしているが、真の英雄というのは君のような男を言うのだろうな。しかし、故郷へ帰るほどの貯えはあるのかね?」
「手持ちの金はあまり多くはありませんが、冒険者以外でも路銀を稼ぐことはできる。それこそ、護衛なんかの仕事をしながら故郷へ帰るつもりです」
そのとき、ギルド長の瞳が強く輝いた。
「護衛の仕事なら引き受けるつもりはあるのだな?」
突然、どうしたのだろう。
やけにギルド長は俺に食いついてくる。
「はい……そのつもりですが」
俺がやや口ごもりながら答えると、ギルド長は「ならば君に護衛の仕事を頼みたい」と切り出してきた。
「いえ、ですから俺はもう冒険者は――」
「分かっているとも。冒険者としての仕事は受けないのだろう? だから、これは私から君への個人的な依頼で冒険者としての仕事ではない。どうだ? 話だけでも聞いてくれるか?」
あまりにも真剣な顔だったため、俺は事情だけでも聞こうと了承した。
立ち話も何だったので、椅子に座って再びギルド長と顔を合わせる。
「この街から北にヤマト人たちの街――ヤマトタウンがあるのは知っているだろう。実はそのヤマトタウンにある武士団ギルドが危機的状況に陥っていてね。私が今回不在だったのは、そのためにヤマトタウンヘ行っていたからなんだ」
武士団ギルド。
名前はよく知っている。
ヤマトタウンの人間だけで構成された武闘派ギルドだ。
仕事内容は主にヤマトタウンの治安維持と護衛任務の斡旋であり、冒険者ギルドのようにダンジョンに潜って入手したアイテムの換金などは行わないという。
あくまでもヤマトタウンの発展や治安維持に特化した仕事を斡旋、請け負う特殊なギルドとして周囲に知られている。
そしてギルド長が依頼してきた仕事の内容とは、最近になってヤマトタウンで表立った事件を起こすようになったある組織と事を構えている武士団ギルドの手助けをして欲しいとのことだった。
だが手助けと言っても武士団ギルド自体を守ることではなく、その武士団ギルドのギルド長の男を護衛してほしいというのが依頼だったのだ。
大まかな内容を聞いたとき、俺は思わず首を傾げてしまった。
「おかしな依頼ですね。武士団ギルドのギルド長ともなれば、手練れの一人や二人、護衛としてそばに置いているでしょう? わざわざ、よそ者の俺が護衛をする必要なんてないのでは……それに武士団ギルドに闘いを挑むような組織なんてありましたか?」
ある、とギルド長は語気を強めて言った。
「よその人間には分からないが、その組織と言うのは昔から武士団ギルドと敵対している任侠団たちだ。しかし、そいつらだけなら武士団ギルドに所属しているサムライだけでも対処できるだろう。問題なのは最近になって任侠団たちが裏で手を結んだという別の組織のことだ」
「その別の組織とは?」
一拍の間を置いたあと、ギルド長はおそるおそる口を開いた。
「〈暗黒結社〉だ」
また、あいつらか。
魔法に関する犯罪事件の裏には必ずいる、という〈暗黒結社〉。
風の噂によると、戦魔大戦にも関わっていたという話もある。
「その〈暗黒結社〉が任侠団と手を組み、武士団ギルドに真っ向から敵対しようとしていると?」
ギルド長は「そうだ」とばかりに首を縦に振った。
「私は今回の〈魔の巣穴事件〉の後始末に追われてしばらくは動けない。だから、頼む。私の個人的な護衛任務を引き受けて欲しい。武士団ギルドのギルド長は私の親友なんだ。君のような凄腕の武人に護衛してもらえるなら私は安心できる」
ギルド長は長机に額をつけるほど頭を下げて懇願してくる。
さすがにここまでされると俺も迷ってしまう。
それにこの国での最後の仕事と考えれば、同じヤマト人のために一働きするのも悪くはない。
「分かりました。お引き受けしましょう」
俺が今回の護衛任務を引き受けると、ギルド長は顔を上げて満足そうな笑みを浮かべた。
「ですが、本当に部外者の俺でいいんですか? いくら旧友の仲であるギルド長からの推薦とはいえ、向こうの側近であるサムライたちが納得しないでしょう」
「そのことなんだが、実は護衛任務とは別にもう一つ頼みたいことがあるんだ」
「何です?」
「それは――」
俺はギルド長からもう一つの頼みごとを聞くと、眉間に深くしわを寄せた。
「なるほど……そういうことですか。ある意味、部外者である俺が適任ですね」
しかも話の内容から護衛任務は表向きのことであり、実はこっちのほうが重要な仕事だった。
「こちらも引き受けてくれるかね?」
俺はこくりと頷いた。
「その代わり、仕事が終わったあとの報酬は弾んでいただきますよ」
「もちろんだ。ついでに〈世界冒険者連盟〉に君のことを推薦してSSランク……いや、SSSランクの称号を貰えるように配慮もしようじゃないか」
「それは結構です」
俺はきっぱりと断ると、ヤマトタウンに向かうため立ち上がった。
「もう行くのかね? だったら向こうのギルド長に会うまで案内人をつけよう。彼女がいれば武士団ギルドの連中も君をすんなりと受け入れてくれるはずだ」
「彼女?」
頭上に疑問符を浮かべた俺に対して、ギルド長は「ああ、君も知っている人間だ」と言った。
「キキョウ・フウゲツだよ」
俺とエミリアは他の冒険者たちと同じく、今回の一件で犠牲になった冒険者たちを手厚く葬る作業を手伝っていた。
そして作業が一段落を迎えた頃、俺だけギルド長に呼ばれてギルド長室へと足を運んだ。
「ケンシン・オオガミ、このたびは本当に助かった。重ね重ね、礼を述べさせていただきたい」
長机を挟んでギルド長の対面に座るなり、五十過ぎのギルド長は俺に深々と頭を下げてくる。
「頭を上げて下さい、ギルド長。俺としても弟子のために参加しただけで、そんなに感謝される立場じゃありません」
そうはいかない、とギルド長は頭を左右に振る。
「副ギルド長の独断だったとはいえ、君がいなければこの冒険者ギルドに所属している冒険者たちは全員死んでいただろう。先の戦魔大戦の英雄である君がいなければな」
「そのことなんですが、俺が戦魔大戦に参加していたことは他の冒険者たちには内緒にしておいて欲しいのです」
ギルド長は眉間に深くしわを寄せた。
「なぜだ? 今回の件と合わせれば君の功績は凄まじいものになるのだぞ。それこそ、巷で流れている君が勇者パーティーをクビになったことなど払拭できる。それどころか、上位ランカーの冒険者たちはこぞって君をスカウトに来るだろう」
ギルド長はずいっと身を乗り出してくる。
「そうなれば君は再び上位ランクのパーティーに返り咲くことが出来る。もちろん、サポーターとしてじゃない。れっきとした戦闘要員としてSランク……いや、SSランクのパーティーに入れるのも夢じゃないぞ」
「興味ありません」
俺はきっぱりと自分の本音を伝えた。
「正直なことを言えば、もう俺は冒険者を辞めようかと思っています」
「冒険者を辞める!」
これにはギルド長も心の底から驚いたようだ。
「ま、待ってくれ。君ほどの逸材が冒険者を辞めるのは、私たち冒険者ギルドにとって大きな損失だ」
バンッ、とギルド長は感情任せに長机を叩いた。
「何が不満なのかね? 勇者パーティーを不当に解雇され、追放された噂を流されたことか? だったら、私に任せてくれないか。私の権限でSSランクの冒険者たちに協力してもらい、キース・マクマホンたち勇者パーティーを……」
「やめてください。それにキースたちは国から正式に認められた勇者パーティーです。もしもキースたちに手を出そうものなら、あなたたち冒険者ギルドもタダでは済まなくなりますよ」
「分かっている。分かっているが、その勇者パーティーも君がいたからこそ勇者パーティーとして国に認められたことは、上位ランカーの冒険者ならば誰でも知っていることだ。私が動かなくとも、いずれ彼ら自身が独断で動くとは思うがな」
「そのときこそ、ギルド長権限で止めるべきです。あいつらのために他の冒険者が国から狙われることなんてあっていいはずがない」
そう言うと俺はすくっと立ち上がり、出入り口の扉へ向かって歩き出した。
「どこへ行くのかね? まだ、話は終わっていないぞ」
俺は立ち止まり、顔だけを振り向かせる。
「もう、あなたと話すことはありません。あの副ギルド長が言っていたように俺の冒険者ライセンスは剥奪してもらって結構ですし、出来れば今後は俺たちに構わないでいただきたい」
本気で言っていることが伝わったのだろう。
ギルド長はため息を漏らすと、「これからどうするのか?」と訊いてくる。
「師匠であった祖父の墓参りも兼ねて、弟子とともに故郷に帰ろうかと思います。そこで弟子に空手を教えながら自分の技を磨こうかと」
「ヤマト国へかね?」
はい、と俺は答えた。
するとギルド長は両腕を組み、「分かった」と頷いた。
「そこまで強く決意しているのなら、私からはもう何も言わん。君の要望通り、勇者パーティーに何かすることもやめよう。しかし、冒険者ライセンスはそのままにしておく。どこかで君の気が変わるかも知れないからな」
ただし、とギルド長は真剣な表情を向けてくる。
「今回の一件の報酬はきっちりと受け取ってもらうぞ。冒険者を辞めて故郷へ帰るのなら、金はいくらあっても構わないだろう?」
「先ほども言った通り、俺は弟子のために今回の緊急任務に参加しただけで報酬を受け取るつもりはありません」
「報酬はいらない?」
「ええ、その報酬は今回の件で犠牲になった冒険者たちの遺族にでも渡してください。そのほうが有意義な使い道でしょうから」
「なるほど……世間では神剣を賜ったキースを英雄になる男などと持てはやしているが、真の英雄というのは君のような男を言うのだろうな。しかし、故郷へ帰るほどの貯えはあるのかね?」
「手持ちの金はあまり多くはありませんが、冒険者以外でも路銀を稼ぐことはできる。それこそ、護衛なんかの仕事をしながら故郷へ帰るつもりです」
そのとき、ギルド長の瞳が強く輝いた。
「護衛の仕事なら引き受けるつもりはあるのだな?」
突然、どうしたのだろう。
やけにギルド長は俺に食いついてくる。
「はい……そのつもりですが」
俺がやや口ごもりながら答えると、ギルド長は「ならば君に護衛の仕事を頼みたい」と切り出してきた。
「いえ、ですから俺はもう冒険者は――」
「分かっているとも。冒険者としての仕事は受けないのだろう? だから、これは私から君への個人的な依頼で冒険者としての仕事ではない。どうだ? 話だけでも聞いてくれるか?」
あまりにも真剣な顔だったため、俺は事情だけでも聞こうと了承した。
立ち話も何だったので、椅子に座って再びギルド長と顔を合わせる。
「この街から北にヤマト人たちの街――ヤマトタウンがあるのは知っているだろう。実はそのヤマトタウンにある武士団ギルドが危機的状況に陥っていてね。私が今回不在だったのは、そのためにヤマトタウンヘ行っていたからなんだ」
武士団ギルド。
名前はよく知っている。
ヤマトタウンの人間だけで構成された武闘派ギルドだ。
仕事内容は主にヤマトタウンの治安維持と護衛任務の斡旋であり、冒険者ギルドのようにダンジョンに潜って入手したアイテムの換金などは行わないという。
あくまでもヤマトタウンの発展や治安維持に特化した仕事を斡旋、請け負う特殊なギルドとして周囲に知られている。
そしてギルド長が依頼してきた仕事の内容とは、最近になってヤマトタウンで表立った事件を起こすようになったある組織と事を構えている武士団ギルドの手助けをして欲しいとのことだった。
だが手助けと言っても武士団ギルド自体を守ることではなく、その武士団ギルドのギルド長の男を護衛してほしいというのが依頼だったのだ。
大まかな内容を聞いたとき、俺は思わず首を傾げてしまった。
「おかしな依頼ですね。武士団ギルドのギルド長ともなれば、手練れの一人や二人、護衛としてそばに置いているでしょう? わざわざ、よそ者の俺が護衛をする必要なんてないのでは……それに武士団ギルドに闘いを挑むような組織なんてありましたか?」
ある、とギルド長は語気を強めて言った。
「よその人間には分からないが、その組織と言うのは昔から武士団ギルドと敵対している任侠団たちだ。しかし、そいつらだけなら武士団ギルドに所属しているサムライだけでも対処できるだろう。問題なのは最近になって任侠団たちが裏で手を結んだという別の組織のことだ」
「その別の組織とは?」
一拍の間を置いたあと、ギルド長はおそるおそる口を開いた。
「〈暗黒結社〉だ」
また、あいつらか。
魔法に関する犯罪事件の裏には必ずいる、という〈暗黒結社〉。
風の噂によると、戦魔大戦にも関わっていたという話もある。
「その〈暗黒結社〉が任侠団と手を組み、武士団ギルドに真っ向から敵対しようとしていると?」
ギルド長は「そうだ」とばかりに首を縦に振った。
「私は今回の〈魔の巣穴事件〉の後始末に追われてしばらくは動けない。だから、頼む。私の個人的な護衛任務を引き受けて欲しい。武士団ギルドのギルド長は私の親友なんだ。君のような凄腕の武人に護衛してもらえるなら私は安心できる」
ギルド長は長机に額をつけるほど頭を下げて懇願してくる。
さすがにここまでされると俺も迷ってしまう。
それにこの国での最後の仕事と考えれば、同じヤマト人のために一働きするのも悪くはない。
「分かりました。お引き受けしましょう」
俺が今回の護衛任務を引き受けると、ギルド長は顔を上げて満足そうな笑みを浮かべた。
「ですが、本当に部外者の俺でいいんですか? いくら旧友の仲であるギルド長からの推薦とはいえ、向こうの側近であるサムライたちが納得しないでしょう」
「そのことなんだが、実は護衛任務とは別にもう一つ頼みたいことがあるんだ」
「何です?」
「それは――」
俺はギルド長からもう一つの頼みごとを聞くと、眉間に深くしわを寄せた。
「なるほど……そういうことですか。ある意味、部外者である俺が適任ですね」
しかも話の内容から護衛任務は表向きのことであり、実はこっちのほうが重要な仕事だった。
「こちらも引き受けてくれるかね?」
俺はこくりと頷いた。
「その代わり、仕事が終わったあとの報酬は弾んでいただきますよ」
「もちろんだ。ついでに〈世界冒険者連盟〉に君のことを推薦してSSランク……いや、SSSランクの称号を貰えるように配慮もしようじゃないか」
「それは結構です」
俺はきっぱりと断ると、ヤマトタウンに向かうため立ち上がった。
「もう行くのかね? だったら向こうのギルド長に会うまで案内人をつけよう。彼女がいれば武士団ギルドの連中も君をすんなりと受け入れてくれるはずだ」
「彼女?」
頭上に疑問符を浮かべた俺に対して、ギルド長は「ああ、君も知っている人間だ」と言った。
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