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第九話 そのポーター、自分の真の正体を知って驚愕する
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「あなたは本当は何者なんですか?」
両腕を組んで仁王立ちしている僕の目の前には、顔をボコボコに腫らして涙目になっている自称・神様と抜かすおっさんが正座している。
「お、俺は本当にこの世界を管理している神様なんです。ですから、お願いだからもう殴らないでくだちい」
ふざけた語尾に僕は再びキレそうになった。
だが、こんなアブラギッシュなおっさんに触れるのはこれ以上ごめんだ。
「では、100万歩譲ってあなたが神様だとしましょう。で? その神様が僕に何の用なんですか?」
「え~と、君に【神のツッコミ】スキルを与えようと思って来ました」
僕は首をかしげた。
「【神のツッコミ】スキル? 僕の発動したスキルは【ツッコミ】スキルとやらじゃないんですか?」
おっさんは「違う違う」と慌てて手を振る。
「本来、異世界からの転生者である君が得たのは【神のツッコミ】っていうこの世で1つしかない天下無双級の超絶レアスキルなんだ。ただ、ちょっとしたこっちの手違いで君は劣化版の【ツッコミ】スキルのほうが先に発動してしまったんだよ。だからこうして神様である俺が、直接君のところへ詫び入れと本物のスキルを与えに来たってわけ」
………ん? ちょっと待って!
【神のツッコミ】スキルがどうこう言う前に、僕が異世界からの転生者ってどういうこと!
「ずばり説明しよう!」
いきなりおっさんは立ち上がると、僕の心を読んだのか人差し指をビシッと向けてくる。
「カンサイ、実は君はこの世界とは別の次元に存在するチキュウという世界の人間だったんだ。そしてチキュウの中に存在する数多ある国の中で、君は二ホンという国で暮らす平凡極まりない青年だったのだよ」
おっさんのなぜかドヤ顔の説明に僕は耳を傾ける。
どうやら僕は異世界にある二ホンという国の中でも、オオサカと呼ばれる場所で【漫才】を生業としていた20代半ばの男だったという。
名前は田中凛太郎。
どこからどう見ても、平凡を絵に描いたような青年だったらしい。
【漫才】というのは異世界のジョブのことらしく、互いに相方と呼ばれる2人1組になって滑稽な掛け合いや言い合いを行い、お客さんを笑わせてお金をもらう寄席演芸の一種と聞かされた。
そして、この【漫才】では基本的にとぼけ役の「ボケ」とその「ボケ」がわざとする間違いを平手などで叩いて指摘する「ツッコミ」という役割があるとも。
さて、ここからが話の本題。
僕はどうやら「ツッコミ」の役割を担当していたらしく、あるときそれなりのお客さんが入っている演劇会場で相方が言ったボケに僕は平手打ちをして「ツッコミ」を入れた。
しかし、その瞬間に僕の頭上にあった天井が崩壊。
落下してきた天井の一部に圧し潰されて僕は命を落としたという。
おっさん曰く、この田中凛太郎の死亡は手違いだったため、神様と呼ばれる人たち(神様って1人じゃないんだって!)の協議の結果、田中凛太郎をこの世界――アルガイアに転生させて何不自由なく暮らしてもらおうということになった。
ただチキュウからの転生者には特別なスキルを与えなくてはならないというルールがあるらしく、これも協議の末に「チキュウで「ツッコミ」役をしていたんなら【神のツッコミ】スキルでいいんじゃない?」とメチャクチャ軽いノリで決まったという。
ちなみに【神のツッコミ】スキルは【鑑定】や【付与】などという名前と効果が一致するスキルとは根本的に違う神様たちが創ったオリジナルなスキルであり、ナビゲーターと呼ばれる音声認識ガイド(これは僕もわからない)の案内に従ってキーワードを発言すれば、発現者である僕が望む様々な特殊効果が代償なしで使えるというこの世界の常識を覆すスキルだった。
「かくして君の魂は晴れてアルガイアへと転生。大貴族の長男として何の不自由もないぬくぬくな第二の人生を歩むことになった……はずだったんだけど、そのさいには転生変更登記っていう書類を書いて全宇宙八百万同盟に提出しないといけなかったんだよ。ちなみにその書類を書くのはこの世界を担当している俺ね」
おっさんは豪快に笑いながら、自分のハゲ頭をポリポリと掻く。
「でも、俺はついうっかり転生変更登記の書類を書くの忘れてしまったのよ。そんで気づいたら提出期限はとっくに過ぎていて、君の転生変更登記は何の事情も知らない全宇宙八百万同盟の事務員が勝手に記入して提出しちゃっていてさ。まあ、そういうことで無事に転生された君は大貴族の長男じゃなく、貧乏な両親に捨てられて施設に預けられた〝カンサイ〟という少年になりましたとさ……いや~、めでたしめでたし」
「ふざけるなあああああああああああああああああ――――――――ッ!」
僕はおっさんの腹に、全体重と怒りを乗せた前蹴りを放った。
両腕を組んで仁王立ちしている僕の目の前には、顔をボコボコに腫らして涙目になっている自称・神様と抜かすおっさんが正座している。
「お、俺は本当にこの世界を管理している神様なんです。ですから、お願いだからもう殴らないでくだちい」
ふざけた語尾に僕は再びキレそうになった。
だが、こんなアブラギッシュなおっさんに触れるのはこれ以上ごめんだ。
「では、100万歩譲ってあなたが神様だとしましょう。で? その神様が僕に何の用なんですか?」
「え~と、君に【神のツッコミ】スキルを与えようと思って来ました」
僕は首をかしげた。
「【神のツッコミ】スキル? 僕の発動したスキルは【ツッコミ】スキルとやらじゃないんですか?」
おっさんは「違う違う」と慌てて手を振る。
「本来、異世界からの転生者である君が得たのは【神のツッコミ】っていうこの世で1つしかない天下無双級の超絶レアスキルなんだ。ただ、ちょっとしたこっちの手違いで君は劣化版の【ツッコミ】スキルのほうが先に発動してしまったんだよ。だからこうして神様である俺が、直接君のところへ詫び入れと本物のスキルを与えに来たってわけ」
………ん? ちょっと待って!
【神のツッコミ】スキルがどうこう言う前に、僕が異世界からの転生者ってどういうこと!
「ずばり説明しよう!」
いきなりおっさんは立ち上がると、僕の心を読んだのか人差し指をビシッと向けてくる。
「カンサイ、実は君はこの世界とは別の次元に存在するチキュウという世界の人間だったんだ。そしてチキュウの中に存在する数多ある国の中で、君は二ホンという国で暮らす平凡極まりない青年だったのだよ」
おっさんのなぜかドヤ顔の説明に僕は耳を傾ける。
どうやら僕は異世界にある二ホンという国の中でも、オオサカと呼ばれる場所で【漫才】を生業としていた20代半ばの男だったという。
名前は田中凛太郎。
どこからどう見ても、平凡を絵に描いたような青年だったらしい。
【漫才】というのは異世界のジョブのことらしく、互いに相方と呼ばれる2人1組になって滑稽な掛け合いや言い合いを行い、お客さんを笑わせてお金をもらう寄席演芸の一種と聞かされた。
そして、この【漫才】では基本的にとぼけ役の「ボケ」とその「ボケ」がわざとする間違いを平手などで叩いて指摘する「ツッコミ」という役割があるとも。
さて、ここからが話の本題。
僕はどうやら「ツッコミ」の役割を担当していたらしく、あるときそれなりのお客さんが入っている演劇会場で相方が言ったボケに僕は平手打ちをして「ツッコミ」を入れた。
しかし、その瞬間に僕の頭上にあった天井が崩壊。
落下してきた天井の一部に圧し潰されて僕は命を落としたという。
おっさん曰く、この田中凛太郎の死亡は手違いだったため、神様と呼ばれる人たち(神様って1人じゃないんだって!)の協議の結果、田中凛太郎をこの世界――アルガイアに転生させて何不自由なく暮らしてもらおうということになった。
ただチキュウからの転生者には特別なスキルを与えなくてはならないというルールがあるらしく、これも協議の末に「チキュウで「ツッコミ」役をしていたんなら【神のツッコミ】スキルでいいんじゃない?」とメチャクチャ軽いノリで決まったという。
ちなみに【神のツッコミ】スキルは【鑑定】や【付与】などという名前と効果が一致するスキルとは根本的に違う神様たちが創ったオリジナルなスキルであり、ナビゲーターと呼ばれる音声認識ガイド(これは僕もわからない)の案内に従ってキーワードを発言すれば、発現者である僕が望む様々な特殊効果が代償なしで使えるというこの世界の常識を覆すスキルだった。
「かくして君の魂は晴れてアルガイアへと転生。大貴族の長男として何の不自由もないぬくぬくな第二の人生を歩むことになった……はずだったんだけど、そのさいには転生変更登記っていう書類を書いて全宇宙八百万同盟に提出しないといけなかったんだよ。ちなみにその書類を書くのはこの世界を担当している俺ね」
おっさんは豪快に笑いながら、自分のハゲ頭をポリポリと掻く。
「でも、俺はついうっかり転生変更登記の書類を書くの忘れてしまったのよ。そんで気づいたら提出期限はとっくに過ぎていて、君の転生変更登記は何の事情も知らない全宇宙八百万同盟の事務員が勝手に記入して提出しちゃっていてさ。まあ、そういうことで無事に転生された君は大貴族の長男じゃなく、貧乏な両親に捨てられて施設に預けられた〝カンサイ〟という少年になりましたとさ……いや~、めでたしめでたし」
「ふざけるなあああああああああああああああああ――――――――ッ!」
僕はおっさんの腹に、全体重と怒りを乗せた前蹴りを放った。
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