28 / 78
第三章 元荷物持ち、記憶を取り戻したことで真の力が戻る
第二十八話 草薙数馬の破滅への言動 ⑥
しおりを挟む
一体、どうしてこうなった?
草薙数馬こと俺は、目の前で繰り広げられている光景に絶句していた。
「いやああああああああ――――ッ!」
「ぐあああああああああ――――ッ!」
薄暗い室内には、先ほどから聞き知った男女の悲鳴が響き渡っている。
俺はふと数時間前のことを思い出す。
湿地エリアの一角で目的の連中のアジトらしき場所を見つけた俺たちは、そいつらのアジトの証拠写真を撮ろうとした矢先、どこからか現れた黒マントたちに見つかって拉致された。
やがて連れて来られたのは、地下に掘られた巨大な空間の奥――牢屋みたいな薄暗くジメジメとしたこの場所だった。
俺は数時間前の俺を殴りつけたい。
数時間前、俺は黒マントの連中に見つかったときある決断をした。
多勢に無勢ということもあり、ここは一旦大人しく捕まって逃げる機会を待とうと俺は美咲と正嗣にアイコンタクトしたのだ。
すると美咲と正嗣はアイコンタクトで「OK」と了承してきた。
俺はそれを見て心中で「よし」とうなずいた。
探索者たるもの、闇雲に闘うのは得策ではない。
じっと機が熟するのを待ち、ここぞという場面を見極めて行動することこそ最良の策。
要するに「適当なところで逃げようぜ」と思ったのだ。
マジで数時間前に偉ぶった考えをした自分自身を殴りつけたい。
もしもあのとき。
連中のアジトの1つだったこの地下空間に連れて来られる前に必死で抵抗しておけば、もしかすると逃げ延びていた可能性は万に1つはあったはずだ。
そう、せめてあのときに命を賭けて闘っていれば――。
俺は血がにじむほど下唇を噛み締める。
だが、すべては遅かった。
どれだけ悔やんでも時間はもう戻らない。
「助けて! 誰か助けて!」
俺はハッと我に返り、自分から見て右のほうに顔を向けた。
そこにいるのは美咲だ。
探索中でも身だしなみは必要だと、いつでもキューティクルや化粧を欠かさなかった美咲。
そんな美咲は見る影もないほど無残なありさまと化している。
無理もない。
現在、美咲は何人もの黒マントの男たちにレイプされているからだ。
その際に金色の髪を引っ張られたり、顔や腹を殴られたりと無法の限りを尽くされていた。
「頼む! もうやめてくれ!」
思考が半ば停止していた俺は、続いて美咲のいる場所から数メートル左のほうを見た。
そこには男が1人いて、腹の底から苦悶の声を上げている。
男は正嗣だった。
普段は寡黙で相手の言葉をオウム返しするのが特徴的ないけ好かない男だったが、今の状況を眺めているとさすがに同情心が込み上げてくる。
正嗣は半殺しにされていた。
美咲をレイプしている黒マントの男たちと同様、同じく黒マントを身に着けている男たちに殴る蹴るの暴行を加えられている。
もちろん、2人も探索者の端くれだ。
相手が迷宮街のスラム街にいるチンピラ程度だったら黙ってやられる(犯される)わけがない。
しかし、2人とも手錠と足枷をつけられて行動を制限されていた。
そのため、2人は黒マントの男たちに好き勝手にされていたのだ。
そして黒マントの男たちはチンピラではなかった。
〈魔羅廃滅教団〉。
ダンジョン内でもっとも危険な思想と行動力を持つカルト教団であり、教祖や幹部連中にはダンジョン協会から高額な懸賞金が掛けられている。
くそっ、くそっ、くそっ、くそっ!
俺は馬鹿か!
どうしてこんな危険な連中に関わろうとした!
こういう結果になることも大いにわかっていたはずだ!
俺は室内の奥で身体を激しく動かそうとする。
けれども俺の身体も制限があって自由に動かない。
俺も2人と同じく手足を拘束されているからだ。
どうする?
どうすればこの窮地から脱することができる?
俺は脳みそが沸騰するほど思考した。
幸いなことに俺はまだ暴行も凌辱もされていない。
最初はなぜかと思ったが、途中で俺は気づいた。
美咲をレイプしている男たちや、正嗣を痛めつけている男の何人かが行為の最中に俺を見てニヤニヤと薄ら笑いを浮かべていたのだ。
連中は仲間がいたぶられている様を先に見せつけ、最後にリーダーの俺をメインディッシュとして悪逆の限りを尽くそうというのだろう。
くそったれが!
などと心中で怒りを露わにしたところで状況は変わらない。
どうする?
このままだと次は俺の番だ。
「お願いします! もう、やめてください!」と美咲。
「俺たちが悪かった! だから、もうやめてくれ!」と正嗣。
2人は本音で黒マントたちに懇願したが、黒マントの男たちはまったく聞く耳を持たない。
先ほどからずっと見ていたのでわかった。
まるで黒マントの連中はロボットのようだ。
誰かに「こうしろ」や「ああしろ」と命令されて動いているように見える。
とはいえ、そんなことはどうでもよかった。
俺はひたすら考える。
もう美咲と正嗣はダメだ。
このままだと2人の心身はどこかで必ず壊れる。
そうなればもう終わりだ。
2人は俺が1人だけで逃げるための囮にも使えない。
そう思いながら俺が歯噛みしたときだ。
バンッと出入り口の扉が勢いよく開いた。
俺を含めた黒マントの連中の視線が扉へと向けられる。
すると黒マントの連中に異変が起こった。
突如、美咲へのレイプや正嗣への暴力を止めたのだ。
それだけではない。
黒マントの連中(一部は黒マントだけで全裸)は顔の横ではなく、胸の前で敬礼するような見慣れないポーズを取る。
「ぬはははははははは」
そして奇妙な笑い声を上げて室内に入ってきたのは、黒マントを羽織った全身黒ずくめの筋骨隆々とした男だった。
年齢は50代後半ぐらいか。
身長は2メートル近くもあり、自分で剃ったのだろう髪の毛は1本もないスキンヘッドだ。
だが、俺はスキンヘッドよりも男の顔に注目した。
彫りの深い顔の中に、頭部がチ〇コの形をした異様な蛇のタトゥーが彫られていたのだ。
俺の全身が凄まじく粟立った。
そのチ〇コ蛇のタトゥー男の顔には見覚えがあった。
ダンジョン協会の玄関ロビーの掲示板には、懸賞金付きの犯罪者の顔写真が貼られている。
その犯罪者の顔写真の中に、チ〇コ蛇のタトゥー男の顔があったからだ。
「うむうむ、懸命に励んでいるのであ~るな」
マーラ・カーン。
〈魔羅廃滅教団〉の教祖であり、ダンジョン協会から5000万円の懸賞金が掛けられている凶悪集団の親玉だった。
草薙数馬こと俺は、目の前で繰り広げられている光景に絶句していた。
「いやああああああああ――――ッ!」
「ぐあああああああああ――――ッ!」
薄暗い室内には、先ほどから聞き知った男女の悲鳴が響き渡っている。
俺はふと数時間前のことを思い出す。
湿地エリアの一角で目的の連中のアジトらしき場所を見つけた俺たちは、そいつらのアジトの証拠写真を撮ろうとした矢先、どこからか現れた黒マントたちに見つかって拉致された。
やがて連れて来られたのは、地下に掘られた巨大な空間の奥――牢屋みたいな薄暗くジメジメとしたこの場所だった。
俺は数時間前の俺を殴りつけたい。
数時間前、俺は黒マントの連中に見つかったときある決断をした。
多勢に無勢ということもあり、ここは一旦大人しく捕まって逃げる機会を待とうと俺は美咲と正嗣にアイコンタクトしたのだ。
すると美咲と正嗣はアイコンタクトで「OK」と了承してきた。
俺はそれを見て心中で「よし」とうなずいた。
探索者たるもの、闇雲に闘うのは得策ではない。
じっと機が熟するのを待ち、ここぞという場面を見極めて行動することこそ最良の策。
要するに「適当なところで逃げようぜ」と思ったのだ。
マジで数時間前に偉ぶった考えをした自分自身を殴りつけたい。
もしもあのとき。
連中のアジトの1つだったこの地下空間に連れて来られる前に必死で抵抗しておけば、もしかすると逃げ延びていた可能性は万に1つはあったはずだ。
そう、せめてあのときに命を賭けて闘っていれば――。
俺は血がにじむほど下唇を噛み締める。
だが、すべては遅かった。
どれだけ悔やんでも時間はもう戻らない。
「助けて! 誰か助けて!」
俺はハッと我に返り、自分から見て右のほうに顔を向けた。
そこにいるのは美咲だ。
探索中でも身だしなみは必要だと、いつでもキューティクルや化粧を欠かさなかった美咲。
そんな美咲は見る影もないほど無残なありさまと化している。
無理もない。
現在、美咲は何人もの黒マントの男たちにレイプされているからだ。
その際に金色の髪を引っ張られたり、顔や腹を殴られたりと無法の限りを尽くされていた。
「頼む! もうやめてくれ!」
思考が半ば停止していた俺は、続いて美咲のいる場所から数メートル左のほうを見た。
そこには男が1人いて、腹の底から苦悶の声を上げている。
男は正嗣だった。
普段は寡黙で相手の言葉をオウム返しするのが特徴的ないけ好かない男だったが、今の状況を眺めているとさすがに同情心が込み上げてくる。
正嗣は半殺しにされていた。
美咲をレイプしている黒マントの男たちと同様、同じく黒マントを身に着けている男たちに殴る蹴るの暴行を加えられている。
もちろん、2人も探索者の端くれだ。
相手が迷宮街のスラム街にいるチンピラ程度だったら黙ってやられる(犯される)わけがない。
しかし、2人とも手錠と足枷をつけられて行動を制限されていた。
そのため、2人は黒マントの男たちに好き勝手にされていたのだ。
そして黒マントの男たちはチンピラではなかった。
〈魔羅廃滅教団〉。
ダンジョン内でもっとも危険な思想と行動力を持つカルト教団であり、教祖や幹部連中にはダンジョン協会から高額な懸賞金が掛けられている。
くそっ、くそっ、くそっ、くそっ!
俺は馬鹿か!
どうしてこんな危険な連中に関わろうとした!
こういう結果になることも大いにわかっていたはずだ!
俺は室内の奥で身体を激しく動かそうとする。
けれども俺の身体も制限があって自由に動かない。
俺も2人と同じく手足を拘束されているからだ。
どうする?
どうすればこの窮地から脱することができる?
俺は脳みそが沸騰するほど思考した。
幸いなことに俺はまだ暴行も凌辱もされていない。
最初はなぜかと思ったが、途中で俺は気づいた。
美咲をレイプしている男たちや、正嗣を痛めつけている男の何人かが行為の最中に俺を見てニヤニヤと薄ら笑いを浮かべていたのだ。
連中は仲間がいたぶられている様を先に見せつけ、最後にリーダーの俺をメインディッシュとして悪逆の限りを尽くそうというのだろう。
くそったれが!
などと心中で怒りを露わにしたところで状況は変わらない。
どうする?
このままだと次は俺の番だ。
「お願いします! もう、やめてください!」と美咲。
「俺たちが悪かった! だから、もうやめてくれ!」と正嗣。
2人は本音で黒マントたちに懇願したが、黒マントの男たちはまったく聞く耳を持たない。
先ほどからずっと見ていたのでわかった。
まるで黒マントの連中はロボットのようだ。
誰かに「こうしろ」や「ああしろ」と命令されて動いているように見える。
とはいえ、そんなことはどうでもよかった。
俺はひたすら考える。
もう美咲と正嗣はダメだ。
このままだと2人の心身はどこかで必ず壊れる。
そうなればもう終わりだ。
2人は俺が1人だけで逃げるための囮にも使えない。
そう思いながら俺が歯噛みしたときだ。
バンッと出入り口の扉が勢いよく開いた。
俺を含めた黒マントの連中の視線が扉へと向けられる。
すると黒マントの連中に異変が起こった。
突如、美咲へのレイプや正嗣への暴力を止めたのだ。
それだけではない。
黒マントの連中(一部は黒マントだけで全裸)は顔の横ではなく、胸の前で敬礼するような見慣れないポーズを取る。
「ぬはははははははは」
そして奇妙な笑い声を上げて室内に入ってきたのは、黒マントを羽織った全身黒ずくめの筋骨隆々とした男だった。
年齢は50代後半ぐらいか。
身長は2メートル近くもあり、自分で剃ったのだろう髪の毛は1本もないスキンヘッドだ。
だが、俺はスキンヘッドよりも男の顔に注目した。
彫りの深い顔の中に、頭部がチ〇コの形をした異様な蛇のタトゥーが彫られていたのだ。
俺の全身が凄まじく粟立った。
そのチ〇コ蛇のタトゥー男の顔には見覚えがあった。
ダンジョン協会の玄関ロビーの掲示板には、懸賞金付きの犯罪者の顔写真が貼られている。
その犯罪者の顔写真の中に、チ〇コ蛇のタトゥー男の顔があったからだ。
「うむうむ、懸命に励んでいるのであ~るな」
マーラ・カーン。
〈魔羅廃滅教団〉の教祖であり、ダンジョン協会から5000万円の懸賞金が掛けられている凶悪集団の親玉だった。
75
お気に入りに追加
328
あなたにおすすめの小説
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
パーティーから追放され婚約者を寝取られ家から勘当、の三拍子揃った元貴族は、いずれ竜をも倒す大英雄へ ~もはやマイナスからの成り上がり英雄譚~
一条おかゆ
ファンタジー
貴族の青年、イオは冒険者パーティーの中衛。
彼はレベルの低さゆえにパーティーを追放され、さらに婚約者を寝取られ、家からも追放されてしまう。
全てを失って悲しみに打ちひしがれるイオだったが、騎士学校時代の同級生、ベガに拾われる。
「──イオを勧誘しにきたんだ」
ベガと二人で新たなパーティーを組んだイオ。
ダンジョンへと向かい、そこで自身の本当の才能──『対人能力』に気が付いた。
そして心機一転。
「前よりも強いパーティーを作って、前よりも良い婚約者を貰って、前よりも格の高い家の者となる」
今までの全てを見返すことを目標に、彼は成り上がることを決意する。
これは、そんな英雄譚。
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました
四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。
だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
死んで全ての凶運を使い果たした俺は異世界では強運しか残ってなかったみたいです。〜最強スキルと強運で異世界を無双します!〜
猫パンチ
ファンタジー
主人公、音峰 蓮(おとみね れん)はとてつもなく不幸な男だった。
ある日、とんでもない死に方をしたレンは気づくと神の世界にいた。
そこには創造神がいて、レンの余りの不運な死に方に同情し、異世界転生を提案する。
それを大いに喜び、快諾したレンは創造神にスキルをもらうことになる。
ただし、スキルは選べず運のみが頼り。
しかし、死んだ時に凶運を使い果たしたレンは強運の力で次々と最強スキルを引いてしまう。
それは創造神ですら引くほどのスキルだらけで・・・
そして、レンは最強スキルと強運で異世界を無双してゆく・・・。
追放?俺にとっては解放だ!~自惚れ勇者パーティに付き合いきれなくなった俺、捨てられた女神を助けてジョブ【楽園創造者】を授かり人生を謳歌する~
和成ソウイチ
ファンタジー
(全77話完結)【あなたの楽園、タダで創ります! 追放先はこちらへ】
「スカウトはダサい。男はつまらん。つーことでラクター、お前はクビな」
――その言葉を待ってたよ勇者スカル。じゃあな。
勇者のパワハラに愛想を尽かしていたスカウトのラクターは、クビ宣告を幸いに勇者パーティを出て行く。
かつては憧れていた勇者。だからこそここまで我慢してきたが、今はむしろ、追放されて心が晴れやかだった。
彼はスカルに仕える前から――いや、生まれた瞬間から決めていたことがあった。
一生懸命に生きる奴をリスペクトしよう。
実はラクターは転生者だった。生前、同じようにボロ布のようにこき使われていた幼馴染の同僚を失って以来、一生懸命に生きていても報われない奴の力になりたいと考え続けていた彼。だが、転生者であるにも関わらずラクターにはまだ、特別な力はなかった。
ところが、追放された直後にとある女神を救ったことでラクターの人生は一変する。
どうやら勇者パーティのせいで女神でありながら奴隷として売り飛ばされたらしい。
解放した女神が憑依したことにより、ラクターはジョブ【楽園創造者】に目覚める。
その能力は、文字通り理想とする空間を自由に創造できるチートなものだった。
しばらくひとりで暮らしたかったラクターは、ふと気付く。
――一生懸命生きてるのは、何も人間だけじゃないよな?
こうして人里離れた森の中で動植物たちのために【楽園創造者】の力を使い、彼らと共存生活を始めたラクター。
そこで彼は、神獣の忘れ形見の人狼少女や御神木の大精霊たちと出逢い、楽園を大きくしていく。
さらには、とある事件をきっかけに理不尽に追放された人々のために無料で楽園を創る活動を開始する。
やがてラクターは彼を慕う大勢の仲間たちとともに、自分たちだけの楽園で人生を謳歌するのだった。
一方、ラクターを追放し、さらには彼と敵対したことをきっかけに、スカルを始めとした勇者パーティは急速に衰退していく。
(他サイトでも投稿中)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる