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第四章 元荷物持ち、とある理由でダンジョン配信を始める
第三十四話 逆異世界転移の謎 ②
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「魔王が俺たちを地球に転移させた?」
この言葉を聞いた俺は、成瀬さんに歩み寄った。
「君はどうしてそう思ったんだ? 何か詳しく知っているのか?」
俺は真剣な表情で成瀬さんに問いただす。
どうして彼女がそんなことを知っているのか。
もしも本当に理由を知っているのなら聞く必要がある。
「ち、違うんです。あくまでもそう思っただけで詳しくは何も知りません。でも、こういった展開は漫画やゲームではお馴染みなので……もしかしたらと」
などと言われても要領を得ない。
だが、漫画やゲームという娯楽がこの地球――特に日本の地上世界や地下世界に関係なく盛んなことは俺も亮二さんから聞いて知っていた。
アースガルドで民衆の娯楽といえば「祭事、演劇、賭博、音楽、小説」だったが、この日本にはそれらをはるかに高度に発展させた娯楽があるという。
とはいえ、俺はそれらを知識として知っているだけで詳しく見たことがない。
なので「お馴染みでしょう?」と言われてもピンとこなかった。
一方で成瀬さんの言葉の続きを聞きたいと思った。
ときとして第三者の意見というのは核心をつく場合があるからだ。
俺はアースガルドで勇者パーティの一員として長旅をしていたので、そのことを骨身に染みて知っていた。
「成瀬さん、想像だろうと別にいい。君の意見を聞かせてくれ」
「わ、わかりました。ちなみに異世界……私たちからした異世界ですけど、そのアースガルドには転移魔法というものは存在していますか? もしくは召喚魔法といったものは」
「召喚魔法というのは知らないが、転移魔法というのはある……いや、正確にはあったいうのが正しいな」
俺は成瀬さんたちにも転移魔法の存在を伝えた。
そして転移魔法のことを教えるということは、魔族と魔王ニーズヘッドのことも詳しく語らなければならない。
なので俺は魔族と魔王ニーズヘッドのことも説明した。
魔族は人間よりも寿命がはるかに長く、人間の魔法使いよりも魔法の技と知識に長けていたこと。
特に魔族の王である魔王ニーズヘッドの魔法の技と知識は桁違いだったこと。
勇者パーティーで討伐に当たったものの、俺を除いた他の仲間たちが魔王ニーズヘッドに半ば返り討ちにあったこと。
すべてを語ったとき、3人は絶句していた。
先ほど俺がアースガルドの住人だと伝えたとき以上に困惑した顔をしている。
無理もないと、俺は思った。
この日本という国にしかないダンジョンには、おそらくアースガルドにおいて中級クラスまでの魔物しか存在していない。
俺が倒したイレギュラーもそうだ。
あの程度の魔物ならアースガルドではそう珍しくない。
最後に闘ったメタル・タートルは魔王軍の兵隊長クラスだったが、それでも冒険者ギルドのA級以上の冒険者ならば楽とは言わないまでも倒せることができた。
けれども、アースガルドにはあの2体以上の魔物などいくらでもいる。
魔王ニーズヘッドを中心に魔王直属の軍団長クラスの魔物になれば、もしも1体でもこの迷宮街に現れれば数時間も経たずに壊滅するだろう。
などと思った俺は、同時にロイド、シャルル、ミザリーの顔を思い出す。
あのとき――ようやく魔王を追い詰めたとき、仲間たちは自分たちの限界を悟って魔王討伐を俺に賭けた。
自分たちにかけられていた〈大周天〉を解き、本来の力を取り戻して魔王を倒してくれて懇願してきたのだ。
【聖気練武】を若くして極めた俺に、魔法を極めていた魔王を単独で打ち倒してほしいと。
「では、その転移魔法を魔王が使えたかもしれないんですよね?」
「確証はない。ただ、俺たち人間が知っていたことだ。魔王ならば転移魔法のことも当然知っていただろう」
「そうですか……では、もう1つ質問させてください。その転移魔法を使って魔王が過去にこの世界――地球に来たという可能性はありますか? もしくは転移魔法で誰かを地球に転移させた可能性は?」
俺は小首をかしげた。
「そこまではわからない。でも、なぜ君はそんな考えに至った?」
成瀬さんは「私たちも使う【聖気練武】の存在です」と答えた。
「話を聞く限り、ケンさんがいたアースガルドと私たちがいるこの地球の共通点は【聖気練武】です。そして私たちの使う【聖気練武】はここにいるお爺さまが若かりし頃に創始した武術」
そう言うと成瀬さんは、成瀬会長に顔を向けた。
俺も釣られて成瀬会長を見やる。
「なるほどな……これでようやく長年の謎が解けた」
と成瀬会長はぼそりとつぶやく。
「成瀬会長、1つ伺いたい。あなたはなぜ自身の創始した武術に【聖気練武】と名付けた?」
俺が問いかけると、成瀬会長は「とある占い師の助言だ」と言った。
続けて成瀬会長は【聖気練武】と名付けた詳細を教えてくれた。
この言葉を聞いた俺は、成瀬さんに歩み寄った。
「君はどうしてそう思ったんだ? 何か詳しく知っているのか?」
俺は真剣な表情で成瀬さんに問いただす。
どうして彼女がそんなことを知っているのか。
もしも本当に理由を知っているのなら聞く必要がある。
「ち、違うんです。あくまでもそう思っただけで詳しくは何も知りません。でも、こういった展開は漫画やゲームではお馴染みなので……もしかしたらと」
などと言われても要領を得ない。
だが、漫画やゲームという娯楽がこの地球――特に日本の地上世界や地下世界に関係なく盛んなことは俺も亮二さんから聞いて知っていた。
アースガルドで民衆の娯楽といえば「祭事、演劇、賭博、音楽、小説」だったが、この日本にはそれらをはるかに高度に発展させた娯楽があるという。
とはいえ、俺はそれらを知識として知っているだけで詳しく見たことがない。
なので「お馴染みでしょう?」と言われてもピンとこなかった。
一方で成瀬さんの言葉の続きを聞きたいと思った。
ときとして第三者の意見というのは核心をつく場合があるからだ。
俺はアースガルドで勇者パーティの一員として長旅をしていたので、そのことを骨身に染みて知っていた。
「成瀬さん、想像だろうと別にいい。君の意見を聞かせてくれ」
「わ、わかりました。ちなみに異世界……私たちからした異世界ですけど、そのアースガルドには転移魔法というものは存在していますか? もしくは召喚魔法といったものは」
「召喚魔法というのは知らないが、転移魔法というのはある……いや、正確にはあったいうのが正しいな」
俺は成瀬さんたちにも転移魔法の存在を伝えた。
そして転移魔法のことを教えるということは、魔族と魔王ニーズヘッドのことも詳しく語らなければならない。
なので俺は魔族と魔王ニーズヘッドのことも説明した。
魔族は人間よりも寿命がはるかに長く、人間の魔法使いよりも魔法の技と知識に長けていたこと。
特に魔族の王である魔王ニーズヘッドの魔法の技と知識は桁違いだったこと。
勇者パーティーで討伐に当たったものの、俺を除いた他の仲間たちが魔王ニーズヘッドに半ば返り討ちにあったこと。
すべてを語ったとき、3人は絶句していた。
先ほど俺がアースガルドの住人だと伝えたとき以上に困惑した顔をしている。
無理もないと、俺は思った。
この日本という国にしかないダンジョンには、おそらくアースガルドにおいて中級クラスまでの魔物しか存在していない。
俺が倒したイレギュラーもそうだ。
あの程度の魔物ならアースガルドではそう珍しくない。
最後に闘ったメタル・タートルは魔王軍の兵隊長クラスだったが、それでも冒険者ギルドのA級以上の冒険者ならば楽とは言わないまでも倒せることができた。
けれども、アースガルドにはあの2体以上の魔物などいくらでもいる。
魔王ニーズヘッドを中心に魔王直属の軍団長クラスの魔物になれば、もしも1体でもこの迷宮街に現れれば数時間も経たずに壊滅するだろう。
などと思った俺は、同時にロイド、シャルル、ミザリーの顔を思い出す。
あのとき――ようやく魔王を追い詰めたとき、仲間たちは自分たちの限界を悟って魔王討伐を俺に賭けた。
自分たちにかけられていた〈大周天〉を解き、本来の力を取り戻して魔王を倒してくれて懇願してきたのだ。
【聖気練武】を若くして極めた俺に、魔法を極めていた魔王を単独で打ち倒してほしいと。
「では、その転移魔法を魔王が使えたかもしれないんですよね?」
「確証はない。ただ、俺たち人間が知っていたことだ。魔王ならば転移魔法のことも当然知っていただろう」
「そうですか……では、もう1つ質問させてください。その転移魔法を使って魔王が過去にこの世界――地球に来たという可能性はありますか? もしくは転移魔法で誰かを地球に転移させた可能性は?」
俺は小首をかしげた。
「そこまではわからない。でも、なぜ君はそんな考えに至った?」
成瀬さんは「私たちも使う【聖気練武】の存在です」と答えた。
「話を聞く限り、ケンさんがいたアースガルドと私たちがいるこの地球の共通点は【聖気練武】です。そして私たちの使う【聖気練武】はここにいるお爺さまが若かりし頃に創始した武術」
そう言うと成瀬さんは、成瀬会長に顔を向けた。
俺も釣られて成瀬会長を見やる。
「なるほどな……これでようやく長年の謎が解けた」
と成瀬会長はぼそりとつぶやく。
「成瀬会長、1つ伺いたい。あなたはなぜ自身の創始した武術に【聖気練武】と名付けた?」
俺が問いかけると、成瀬会長は「とある占い師の助言だ」と言った。
続けて成瀬会長は【聖気練武】と名付けた詳細を教えてくれた。
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