16 / 78
第二章 元荷物持ち、ダンジョン協会のトップに紹介される
第十六話 この世に存在していない謎
しおりを挟む
「拳児くん……だったね。あらためて礼をさせてほしい。孫の伊織の命をよくぞイレギュラーから助けてくれた。そのことに関しては感謝のしようがない」
僕と伊織さんが茶釜を挟んだ対面に正座するなり、成瀬会長は背筋を伸ばしたまま深々と頭を下げた。
ギョッとした僕は慌てて首を左右に振る。
「そんな、やめてください。僕としては当たり前のことをしただけですから」
謙遜ではない。
あのときの僕は本当に損得なしで成瀬さんを助けようと思ったのだ。
ただし最初はイレギュラーを倒すつもりはなかった。
自分を囮にして成瀬さんを避難させるつもりだったのだが、結果的に僕は【聖気練武】の〈発勁〉なる技を使ってイレギュラーを倒したらしい。
どうして自分のことなのに「らしい」という言葉を使うのかというと、そのときの記憶が頭の中からすっぽりと消えていたからだ。
成瀬さんから〈発勁〉の使い方を教えてもらい、右手にその〈発勁〉の発動条件を満たしてイレギュラーに猛進した記憶はある。
問題なのはそのあとだった。
イレギュラーに渾身の突きを放ったあと、いきなり僕の視界は電灯をオフにしたようにブラックアウトしたのである。
そして夢の中でケンと銀髪の男との尋常ではない闘いを間近で見たあと、目の前が真っ白な閃光に包まれて、気がつけば先ほどの医務室で寝ていたというわけだ。
「うむ、そのことなのだが」
頭を上げた成瀬会長は、僕に対して射貫くような視線を向けてくる。
怒気や殺意を含んだ眼差しではない。
僕に対して何か疑問があるような目つきだ。
「事前に君が正規の探索者ではなく、無数にある探索斡旋所の1つに登録した「身分証なしの荷物持ち」ということは簡単に調べられた。むろん、本来ならばそのことに関してわしからとやかく言うことはない。この迷宮内は日本国の中でも今や特区に指定されている場所だ。地上世界とは職業選択に際しても一線を画し、どんな事情であれ個人に対して詮索することもあまりない」
とはいえ、と成瀬会長は強く言葉を区切った。
「さすがに君の活躍はあまりにも異常だった。わしの迷宮協会が定めた上位ランクの探索者でさえ油断できないイレギュラーに対して、探索者よりもはるかに戦闘技術と実戦経験が劣るただの荷物持ちが単独で闘って勝てる道理などはない。たとえこの迷宮内が地上世界には存在しない魔物が蔓延っている空想じみた地下世界であったとしてもだ」
僕はごくりと生唾を飲み込んだ。
成瀬会長からは先ほどよりも何十倍も強い威圧感が放たれてくる。
ただ見つめられているだけなのに、チリチリと肌が焼けつくような錯覚に陥ってしまう。
さすがはダンジョン協会のトップである。
やっぱり強さのレベルが他の探索者よりも桁違いだ。
僕みたいな荷物持ちでも強制的に実感してしまうほどの破格の強さ。
そんな成瀬会長は静かに言葉を続ける。
「そこでわしは君のことを他の者に頼んでもっと詳しく調べてもらった」
「ぼ、僕のことをですか……でも、どうやって?」
「わしはこれでも迷宮協会の会長だ。迷宮協会は地上世界との橋渡し的な役割も担っておるから、自然と地上世界のあらゆる行政機関の上層部と繋がりが深くなる。そこで警察関係者を中心に君のことを調べてもらった。伊織の配信映像を通じて君の顔や身体的特徴も提示しやすかったしな」
警察というのは地上世界にある、国家の治安を維持する行政機関だったはず。
確か犯罪者を取り締まる一方、個人や組織の情報を調べることにも秀でている組織だと聞いたことがある。
「何か僕のことについてわかったんですか?」
このとき、僕は思わず成瀬会長に身を乗り出した。
自分自身でさえわからない、僕個人の詳しい情報が聞けるかもしれないと思ったからだ。
「ああ、君が昏睡していた2日の間でわかったことがある。それは君がこの世に存在していない、厳密には存在していた形跡すらない謎の人間ということがな」
僕は言葉が出なかった。
この世に僕が存在していた形跡すらないとはどういうことだろう。
「出生届や戸籍謄本はもちろんのこと、住民票や犯罪履歴にいたるまで調べに調べてもらったが、君の名前と顔が一致する人物は該当なしだという。そこで君が本当に人間かどうかをここで調べさせてもらった」
「聞きました。僕が眠っている間に色んな検査をしたとか……でも、僕はれっきとした人間です。魔物じゃありません」
「うむ、それは検査結果を見ればわかった。だが、それはあくまでも表向きのことで実を言うと検査などしなくても君が人間であるという証があったのだが……まあ、念には念を入れてな」
そう言うと成瀬会長は、自身の右手を顔前まで持ってくる。
ズズズズズズズ…………
直後、僕は無意識に成瀬会長の右手を凝視した。
成瀬会長の右手が徐々に黄金色の光に包まれていく。
「今の君にも見えるのだろう? わしの右手を包む【聖気練武】を発現した証である黄金色の〈聖気〉の光が」
「見えます。はっきりと」
そう告げた僕に成瀬会長は【聖気練武】のことを端的に教えてくれた。
〈発剄〉――聖気を肉体の一部に集中して攻撃力を高める。
〈化剄〉――聖気の流れを別方向に逸らせて回避力を上げる。
〈聴剄〉――聖気を一定の範囲内に広げて察知力を上げる。
〈硬身功〉――全身に纏わせた聖気を固めて肉体を頑強にする。
〈軽身功〉――全身に纏わせた聖気自体に浮力を持たせる。
〈保健功〉――聖気を使って生物の自然治癒力を向上させる。
〈箭疾歩〉――聖気を両足に均等に集中させて高速移動できる。
〈気殺〉――聖気を完全に消して気配を断つことができる。
〈周天〉――聖気を増幅させて普段の数倍から十数倍の力を出せるようになる。
〈聖眼〉――聖気を両目に集中させることで、普段は見えない色々なモノが見えるようになる。
などである。
そしてこれらの技は普通の使い方とは別に様々な応用技があるらしい。
例を挙げると〈周天〉はそのまま使うと肉体を覆う〈聖気〉の量を増幅させるだけだが、その状態で無機物に触れて意識を通わせると無機物にも〈聖気〉の力が伝わるという。
僕は成瀬会長から視線を外すと、自分の右手を見つめながら〈聖気〉を集中させた。
成瀬会長と同じく、黄金色の〈聖気〉が右手を覆い尽くしていく。
「それこそ君が人間である証拠だ。この【聖気練武】は人間のみが大昔から持っていた超常的な力。時代が経つにつれて徐々に使い手が減っていったが、それでも魔物には決して使えない力だ。ゆえに君が魔物であるということはない……だからといって、君が普通の人間だという証拠もない」
成瀬会長は僕をキッと睨みつけてくる。
「なので君自身に問わせてもらう。君は本当に自分が何者であるかの記憶はないのか? どこで生まれ、どうやって育ち、誰から【聖気練武】を習ったのかを」
しばしの沈黙のあと、僕は「本当にないんです」と答えた。
「本当に僕には半年以上前の記憶がありません。今まではただパーティーの荷物持ちとして日々を生きていくために必死でしたが、そのパーティーからも追い出されて僕には何もなくなりました」
僕は成瀬会長と成瀬さんの視線を受けながら、ずっと心の中に押し込んでいた自分の願望を吐き出した。
「だからこそ、僕は知りたい。一体僕はどこで生まれ、どうやって育ち、なぜダンジョンの中で記憶を失った状態で倒れていたのか。僕は知りたいんです」
そこまで吐露したとき、隣にいた成瀬さんが「お爺さま」と口を開いた。
成瀬会長は僕から成瀬さんに視線を移す。
「何かわたしたちに協力できることはないんでしょうか? 確かに拳児くんは身元不明な謎の人物です。でも、こうして接していてわかる。彼は決して悪い人間ではありません。それどころか、自分の命を顧みずイレギュラーに立ち向かうほどの仁と義の精神を持っています。それに彼は【聖気練武】を使える。きっと記憶をなくす以前、ひとかどの使い手に師事したに違いありません」
成瀬さんの言葉を聞いて、成瀬会長の右手から黄金色の光が消えていった。
自身で〈聖気〉の力を解いたのだろう。
そんな成瀬会長を見て、僕も自分の右手を覆っていた〈聖気〉を解いた。
感覚的には目の前の蝋燭の炎を息で吹き消す感じである。
「上位探索者は常に危険と隣り合わせだ。たとえ【聖気練武】の使い手であろうとも、探索中の不慮の事故やイレギュラーに襲われて命を絶たれる者も少なくない。もしかすると、半年以上前に行方不明か死亡した上位探索者の中に彼の師に当たる人間がいたのかもしれん」
成瀬会長は再び僕に顔を戻した。
「拳児くん、君のことはひとまずわしが引き続き調べてみよう。伊織を助けてくれた礼の意味も込めてな」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
僕はパッと表情を明らめ、成瀬会長に深々と頭を下げる。
「それは構わん。だが、それまで君はどうする?」
顔を上げた僕は困ってしまった。
今後のことなど考えていなかったからだ。
「その顔だと考えていないようだな。無理もない。記憶をなくした状態で何もわからぬまま荷物持ちとして懸命に働き、その仕えていたパーティーからも不当な理由で追い出されたとあらば将来に関しては不安しかなかろう。身元を保証するものがなければまともな職にも就けないしな」
「……そうですね」
僕はあらためて自分の今後に一抹の不安を覚えた。
すると成瀬会長はニヤリと笑って「そこでこちらから1つ提案させてもらいたいのだが」と言った。
「拳児くん、探索者試験を受けてみないかね?」
僕と伊織さんが茶釜を挟んだ対面に正座するなり、成瀬会長は背筋を伸ばしたまま深々と頭を下げた。
ギョッとした僕は慌てて首を左右に振る。
「そんな、やめてください。僕としては当たり前のことをしただけですから」
謙遜ではない。
あのときの僕は本当に損得なしで成瀬さんを助けようと思ったのだ。
ただし最初はイレギュラーを倒すつもりはなかった。
自分を囮にして成瀬さんを避難させるつもりだったのだが、結果的に僕は【聖気練武】の〈発勁〉なる技を使ってイレギュラーを倒したらしい。
どうして自分のことなのに「らしい」という言葉を使うのかというと、そのときの記憶が頭の中からすっぽりと消えていたからだ。
成瀬さんから〈発勁〉の使い方を教えてもらい、右手にその〈発勁〉の発動条件を満たしてイレギュラーに猛進した記憶はある。
問題なのはそのあとだった。
イレギュラーに渾身の突きを放ったあと、いきなり僕の視界は電灯をオフにしたようにブラックアウトしたのである。
そして夢の中でケンと銀髪の男との尋常ではない闘いを間近で見たあと、目の前が真っ白な閃光に包まれて、気がつけば先ほどの医務室で寝ていたというわけだ。
「うむ、そのことなのだが」
頭を上げた成瀬会長は、僕に対して射貫くような視線を向けてくる。
怒気や殺意を含んだ眼差しではない。
僕に対して何か疑問があるような目つきだ。
「事前に君が正規の探索者ではなく、無数にある探索斡旋所の1つに登録した「身分証なしの荷物持ち」ということは簡単に調べられた。むろん、本来ならばそのことに関してわしからとやかく言うことはない。この迷宮内は日本国の中でも今や特区に指定されている場所だ。地上世界とは職業選択に際しても一線を画し、どんな事情であれ個人に対して詮索することもあまりない」
とはいえ、と成瀬会長は強く言葉を区切った。
「さすがに君の活躍はあまりにも異常だった。わしの迷宮協会が定めた上位ランクの探索者でさえ油断できないイレギュラーに対して、探索者よりもはるかに戦闘技術と実戦経験が劣るただの荷物持ちが単独で闘って勝てる道理などはない。たとえこの迷宮内が地上世界には存在しない魔物が蔓延っている空想じみた地下世界であったとしてもだ」
僕はごくりと生唾を飲み込んだ。
成瀬会長からは先ほどよりも何十倍も強い威圧感が放たれてくる。
ただ見つめられているだけなのに、チリチリと肌が焼けつくような錯覚に陥ってしまう。
さすがはダンジョン協会のトップである。
やっぱり強さのレベルが他の探索者よりも桁違いだ。
僕みたいな荷物持ちでも強制的に実感してしまうほどの破格の強さ。
そんな成瀬会長は静かに言葉を続ける。
「そこでわしは君のことを他の者に頼んでもっと詳しく調べてもらった」
「ぼ、僕のことをですか……でも、どうやって?」
「わしはこれでも迷宮協会の会長だ。迷宮協会は地上世界との橋渡し的な役割も担っておるから、自然と地上世界のあらゆる行政機関の上層部と繋がりが深くなる。そこで警察関係者を中心に君のことを調べてもらった。伊織の配信映像を通じて君の顔や身体的特徴も提示しやすかったしな」
警察というのは地上世界にある、国家の治安を維持する行政機関だったはず。
確か犯罪者を取り締まる一方、個人や組織の情報を調べることにも秀でている組織だと聞いたことがある。
「何か僕のことについてわかったんですか?」
このとき、僕は思わず成瀬会長に身を乗り出した。
自分自身でさえわからない、僕個人の詳しい情報が聞けるかもしれないと思ったからだ。
「ああ、君が昏睡していた2日の間でわかったことがある。それは君がこの世に存在していない、厳密には存在していた形跡すらない謎の人間ということがな」
僕は言葉が出なかった。
この世に僕が存在していた形跡すらないとはどういうことだろう。
「出生届や戸籍謄本はもちろんのこと、住民票や犯罪履歴にいたるまで調べに調べてもらったが、君の名前と顔が一致する人物は該当なしだという。そこで君が本当に人間かどうかをここで調べさせてもらった」
「聞きました。僕が眠っている間に色んな検査をしたとか……でも、僕はれっきとした人間です。魔物じゃありません」
「うむ、それは検査結果を見ればわかった。だが、それはあくまでも表向きのことで実を言うと検査などしなくても君が人間であるという証があったのだが……まあ、念には念を入れてな」
そう言うと成瀬会長は、自身の右手を顔前まで持ってくる。
ズズズズズズズ…………
直後、僕は無意識に成瀬会長の右手を凝視した。
成瀬会長の右手が徐々に黄金色の光に包まれていく。
「今の君にも見えるのだろう? わしの右手を包む【聖気練武】を発現した証である黄金色の〈聖気〉の光が」
「見えます。はっきりと」
そう告げた僕に成瀬会長は【聖気練武】のことを端的に教えてくれた。
〈発剄〉――聖気を肉体の一部に集中して攻撃力を高める。
〈化剄〉――聖気の流れを別方向に逸らせて回避力を上げる。
〈聴剄〉――聖気を一定の範囲内に広げて察知力を上げる。
〈硬身功〉――全身に纏わせた聖気を固めて肉体を頑強にする。
〈軽身功〉――全身に纏わせた聖気自体に浮力を持たせる。
〈保健功〉――聖気を使って生物の自然治癒力を向上させる。
〈箭疾歩〉――聖気を両足に均等に集中させて高速移動できる。
〈気殺〉――聖気を完全に消して気配を断つことができる。
〈周天〉――聖気を増幅させて普段の数倍から十数倍の力を出せるようになる。
〈聖眼〉――聖気を両目に集中させることで、普段は見えない色々なモノが見えるようになる。
などである。
そしてこれらの技は普通の使い方とは別に様々な応用技があるらしい。
例を挙げると〈周天〉はそのまま使うと肉体を覆う〈聖気〉の量を増幅させるだけだが、その状態で無機物に触れて意識を通わせると無機物にも〈聖気〉の力が伝わるという。
僕は成瀬会長から視線を外すと、自分の右手を見つめながら〈聖気〉を集中させた。
成瀬会長と同じく、黄金色の〈聖気〉が右手を覆い尽くしていく。
「それこそ君が人間である証拠だ。この【聖気練武】は人間のみが大昔から持っていた超常的な力。時代が経つにつれて徐々に使い手が減っていったが、それでも魔物には決して使えない力だ。ゆえに君が魔物であるということはない……だからといって、君が普通の人間だという証拠もない」
成瀬会長は僕をキッと睨みつけてくる。
「なので君自身に問わせてもらう。君は本当に自分が何者であるかの記憶はないのか? どこで生まれ、どうやって育ち、誰から【聖気練武】を習ったのかを」
しばしの沈黙のあと、僕は「本当にないんです」と答えた。
「本当に僕には半年以上前の記憶がありません。今まではただパーティーの荷物持ちとして日々を生きていくために必死でしたが、そのパーティーからも追い出されて僕には何もなくなりました」
僕は成瀬会長と成瀬さんの視線を受けながら、ずっと心の中に押し込んでいた自分の願望を吐き出した。
「だからこそ、僕は知りたい。一体僕はどこで生まれ、どうやって育ち、なぜダンジョンの中で記憶を失った状態で倒れていたのか。僕は知りたいんです」
そこまで吐露したとき、隣にいた成瀬さんが「お爺さま」と口を開いた。
成瀬会長は僕から成瀬さんに視線を移す。
「何かわたしたちに協力できることはないんでしょうか? 確かに拳児くんは身元不明な謎の人物です。でも、こうして接していてわかる。彼は決して悪い人間ではありません。それどころか、自分の命を顧みずイレギュラーに立ち向かうほどの仁と義の精神を持っています。それに彼は【聖気練武】を使える。きっと記憶をなくす以前、ひとかどの使い手に師事したに違いありません」
成瀬さんの言葉を聞いて、成瀬会長の右手から黄金色の光が消えていった。
自身で〈聖気〉の力を解いたのだろう。
そんな成瀬会長を見て、僕も自分の右手を覆っていた〈聖気〉を解いた。
感覚的には目の前の蝋燭の炎を息で吹き消す感じである。
「上位探索者は常に危険と隣り合わせだ。たとえ【聖気練武】の使い手であろうとも、探索中の不慮の事故やイレギュラーに襲われて命を絶たれる者も少なくない。もしかすると、半年以上前に行方不明か死亡した上位探索者の中に彼の師に当たる人間がいたのかもしれん」
成瀬会長は再び僕に顔を戻した。
「拳児くん、君のことはひとまずわしが引き続き調べてみよう。伊織を助けてくれた礼の意味も込めてな」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
僕はパッと表情を明らめ、成瀬会長に深々と頭を下げる。
「それは構わん。だが、それまで君はどうする?」
顔を上げた僕は困ってしまった。
今後のことなど考えていなかったからだ。
「その顔だと考えていないようだな。無理もない。記憶をなくした状態で何もわからぬまま荷物持ちとして懸命に働き、その仕えていたパーティーからも不当な理由で追い出されたとあらば将来に関しては不安しかなかろう。身元を保証するものがなければまともな職にも就けないしな」
「……そうですね」
僕はあらためて自分の今後に一抹の不安を覚えた。
すると成瀬会長はニヤリと笑って「そこでこちらから1つ提案させてもらいたいのだが」と言った。
「拳児くん、探索者試験を受けてみないかね?」
146
お気に入りに追加
329
あなたにおすすめの小説
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
勇者、追放される ~仲間がクズばかりだったので、魔王とお茶してのんびり過ごす。戻ってこいと言われても断固拒否。~
秋鷺 照
ファンタジー
強すぎて勇者になってしまったレッグは、パーティーを追放され、一人で魔王城へ行く。美味しいと噂の、魔族領の茶を飲むために!(ちゃんと人類も守る)
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
借金背負ったので兄妹で死のうと生還不可能の最難関ダンジョンに二人で潜ったら瀕死の人気美少女配信者を助けちゃったので連れて帰るしかない件
羽黒 楓
ファンタジー
借金一億二千万円! もう駄目だ! 二人で心中しようと配信しながらSSS級ダンジョンに潜った俺たち兄妹。そしたらその下層階で国民的人気配信者の女の子が遭難していた! 助けてあげたらどんどんとスパチャが入ってくるじゃん! ってかもはや社会現象じゃん! 俺のスキルは【マネーインジェクション】! 預金残高を消費してパワーにし、それを自分や他人に注射してパワーアップさせる能力。ほらお前ら、この子を助けたければどんどんスパチャしまくれ! その金でパワーを女の子たちに注入注入! これだけ金あれば借金返せそう、もうこうなりゃ絶対に生還するぞ! 最難関ダンジョンだけど、絶対に生きて脱出するぞ! どんな手を使ってでも!
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
【完結】若き最強のサムライ、異世界でも剣を振るう ~神威一刀流の秘剣を伝授された拙者、異世界に誘拐された婚約者を見つけるため剣鬼とならん~
岡崎 剛柔
ファンタジー
片桐進之介は、江戸で最強の流派の1つと言われていた神威一刀流の正統継承者。
その進之介には剣の師匠の1人娘であり婚約者でもあった梓がいたのだが、ある日、梓は神隠しに遭ったように姿が消えてしまった。
進之介は行方不明の婚約者・梓を探すため、「神隠し」の噂が絶えない時坂神社へ向かう。
そこで進之介は異世界から来た謎の人物――クラウディオスと出会い、梓を攫った犯人だと思い戦いを挑む。
人間を超えた激闘の末、クラウディオスは進之介から逃げるように古池に飛び込んで姿を消してしまう。
進之介は驚愕しながらも、クラウディオスのあとを追って古池に飛び込む。
そして気づいたときには、進之介は見知らぬ異世界へ転移していた。
行方不明の婚約者・梓がいるかもしれない、南蛮国のような異世界へと――。
果たして進之介は、異世界で梓を見つけられるのか?
若き最強のサムライが、異世界で婚約者を見つけるために剣を振るう壮絶な冒険譚、ここに大開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる