上 下
13 / 47

第13話   下層に浮かぶ赤い月、バジリスクとの死闘!

しおりを挟む
 あーしは目の前の異様な光景に目を奪われた。

 ダンジョンの下層なのに、まるで外界のような広大な草原が広がっている。

 それだけじゃなかった。

 夜空には血のように赤い月が浮かんでいた。

 その不気味な光景に、あーしの胸がざわつく。

 地上階層の草原エリアに似ているが、周囲から漂ってくる気配が桁違いだった。

 やっぱり、下層はすごいわね。

〈光気功〉による五感強化をしなくても、とんでもない魔物たちがそこら中に存在しているのが気配である。

 でも、あーしは逃げない。

 ここまで来たら、まだ誰も到達したことがない最深層に行ってやる。

「これはいよいよ本腰入れないとね」

 まあ、それはともかく配信配信❤

 ドローンが上空を飛び、あーしは配信を始めた。

「やっほー、みんな。今から下層での配信をするよ」

 あーしが配信を始めると、待機してくれていたリスナーたちのコメントが次々と流れてくる。

『今回の配信も楽しみにしてる』

『花ちゃん、気をつけて!』

『赤い月とかヤバそう……』

『どんな魔物が出てくるんだろう?』

 などのコメントを読みながら、あーしは慎重に草原の中を進んでいく。

 その時、突然地面が揺れ、巨大な影が草原の中から現れた。

「あれってバジリスクってやつ?」

 バジリスクは全長10メートルを超える巨大な蛇のような姿をしており、その目には石化の力を持っていると言われている。

 あーしはその威圧感に一瞬怯むが、すぐに闘志を燃やす。

「さすがに逃がす気はないようね。それじゃあ、こっちもそれなりの対応をするよ」

 バジリスクが低く唸り声を上げ、その鋭い目であーしを睨む。

 あーしはその視線をまともに受けながら、〈光気功〉を発動させる。

 身体が黄金色に輝き、身体能力が一気に引き上げられる。

「今日は最初っから全開だよ!」

 あーしはバジリスクに向かって駆け出し、その巨大な身体に向かって渾身の突きを放った。

 バジリスクもまた、鋭い牙を剥き出しにして襲いかかってくる。

「ハアアアアアアアアアァァァッ!」

 気合一閃。

 あーしの拳がバジリスクの鱗にぶつかり、激しい衝撃が走る。

 しかし、バジリスクの鱗は硬く、その一撃では倒せない。

 あーしはすぐに次の攻撃に移る。

「――〈疾風旋蹴〉!」

 あーしは空中で回転しながら強烈な蹴りを繰り出す。

 その一撃がバジリスクの側面に直撃し、巨大な体が揺れる。

「まだまだ!」

 バジリスクは怒り狂い、尻尾を振り回してあーしを攻撃してくる。

 その猛攻を〈光気功〉で強化された身体能力で避けつつ、あーしは反撃のチャンスを狙う。

 コンマ数秒後、あーしはそのチャンスを見つけた。

 そして――。

「――〈千撃拳〉!」

 あーしのパンチの豪雨がバジリスクに突き刺さる。

 そのスピードと力に、バジリスクの皮膚が凹んでいく。

 ヒギャアアアアアアアアア

 バジリスクは悲鳴を上げたものの、倒れるまではには至らなかった。

 最後の力を振り絞り、あーしに容赦なく襲いかかってくる。

「これで終わりよ、バジリスク!」

 あーしはとどめとばかりに全力で〈飛竜蹴り〉を繰り出す。

 ゴシャッ!

 その一撃がバジリスクの頭に直撃し、巨大な身体がどうと地面に崩れ落ちた。

「やった、みんな! あーしの勝利!」

 あーしが勝利の雄叫びを上げると、リスナーたちのコメントが爆発的に増え、配信画面は歓喜のコメントで溢れた。

『花ちゃん、最高!』
 
『〈飛竜蹴り〉、めっちゃカッコよかった!』

『おいおい、嘘だろ! マジで強えじゃん!』

『この強さはS級の探索者と並ぶだろ』

『これって普通の空手じゃないよね?』

『初見です。トレンドから来ました』

『さすが花ちゃん、最強!』

 あーしは満面の笑みでピースサインをする。

「いつも応援ありがと! この調子でもっと奥へ進むよ」



〈ギャル空手家・花ちゃんch〉

 最大同接数 39万4000人

 チャンネル登録者数 43万9000人

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最強のコミュ障探索者、Sランクモンスターから美少女配信者を助けてバズりたおす~でも人前で喋るとか無理なのでコラボ配信は断固お断りします!~

尾藤みそぎ
ファンタジー
陰キャのコミュ障女子高生、灰戸亜紀は人見知りが過ぎるあまりソロでのダンジョン探索をライフワークにしている変わり者。そんな彼女は、ダンジョンの出現に呼応して「プライムアビリティ」に覚醒した希少な特級探索者の1人でもあった。 ある日、亜紀はダンジョンの中層に突如現れたSランクモンスターのサラマンドラに襲われている探索者と遭遇する。 亜紀は人助けと思って、サラマンドラを一撃で撃破し探索者を救出。 ところが、襲われていたのは探索者兼インフルエンサーとして知られる水無瀬しずくで。しかも、救出の様子はすべて生配信されてしまっていた!? そして配信された動画がバズりまくる中、偶然にも同じ学校の生徒だった水無瀬しずくがお礼に現れたことで、亜紀は瞬く間に身バレしてしまう。 さらには、ダンジョン管理局に目をつけられて依頼が舞い込んだり、水無瀬しずくからコラボ配信を持ちかけられたり。 コミュ障を極めてひっそりと生活していた亜紀の日常はガラリと様相を変えて行く! はたして表舞台に立たされてしまった亜紀は安らぎのぼっちライフを守り抜くことができるのか!?

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール
恋愛
会社帰り、駅までの道程を歩いていたはずの北野 雅(36)は、いつの間にか森の中に佇んでいた。困惑して家に帰りたいと願った雅の前に現れたのはなんと実家を模した家で!? 自身が願った事が現実になる能力を手に入れた雅が望んだのは冒険ではなく、“森に引きこもって生きる! ”だった。 果たして雅は独りで生きていけるのか!? 実は神様になっていたズボラ女と、それに巻き込まれる人々(神々)とのドタバタラブ? コメディ。 ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています

配信者ルミ、バズる~超難関ダンジョンだと知らず、初級ダンジョンだと思ってクリアしてしまいました~

てるゆーぬ(旧名:てるゆ)
ファンタジー
女主人公です(主人公は恋愛しません)。18歳。ダンジョンのある現代社会で、探索者としてデビューしたルミは、ダンジョン配信を始めることにした。近くの町に初級ダンジョンがあると聞いてやってきたが、ルミが発見したのは超難関ダンジョンだった。しかしそうとは知らずに、ルミはダンジョン攻略を開始し、ハイランクの魔物たちを相手に無双する。その様子は全て生配信でネットに流され、SNSでバズりまくり、同接とチャンネル登録数は青天井に伸び続けるのだった。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

処理中です...