【完結】追放された実は最強道士だった俺、異国の元勇者の美剣女と出会ったことで、皇帝すらも認めるほどまで成り上がる

岡崎 剛柔

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第五十一話  因縁

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笑山しょうざんさま……いや、孫笑山そん・しょうざん。どうしてあんたがこんなところにいたのかは知らないが、人を襲う妖魔となったからには容赦ようしゃしない。すぐに本当に殺して冥界めいかいへ送ってやる」

 俺がそう言うと、笑山しょうざんは「ふひひ」と下卑げびた笑い声を発した。

「わ、わしを……ど、ど、どうするって? そ、そ、孫家そんけの……と、と、当主たる……わ、わ、わしを……殺す? こ、こ、殺す? こ、こ、こ、殺す?」

 次の瞬間、笑山しょうざんは一転してギロリと俺をにらみつける。

「こ、こ、このわしを殺すだとおおおおおおおおおお――――ッ!」

 笑山しょうざん大広間ホール全体が揺れるほどの叫び声を上げると、死体をみつけながら俺に向かって突進してきた。

 普通の人間のように2本足で走りながらではない。

 獰猛どうもうな肉食獣のような4足歩行でだ。

 しかも生前とは比べ物にならないほど動きが速かった。

 この位置だとアリシアも巻き込まれる。

 俺はそう判断した直後、距離をちぢめてきた笑山しょうざん疾走しっそうする。

 もちろん、死体に足を取られないような場所を選びながらだ。

 またたく間に間合いがまると、最初に攻撃を仕掛けてきたのは笑山しょうざんだった。

 笑山しょうざん獲物えものに食らいつく虎のように、大口を開けて俺に襲い掛かってくる。

 大きく開けた口からは、生前にはなかった鋭くて太いきばが何本も見えた。

 吸血鬼ヴァンパイアという妖魔になった笑山しょうざんは、その鋭くて太いきばを使って俺をみ殺すつもりなのだろう。

 だが、易々やすやすまれるほど俺は甘くはない。

 俺はそんな笑山しょうざん口撃こうげきを紙一重でかわすと、そのままき出しだった首の付け根に破山剣はざんけんを振り下ろす。

 ガキンッ!

 しかし、俺の斬撃はあっさりと弾き返されてしまった。

 俺は心中で舌打ちする。

 くそっ、生身の状態で硬度は〈硬身功こうしんこう〉以上か。

 僵屍キョンシーと同じぐらいの強さかと思えば、どうやら総合的に西方の吸血鬼ヴァンパイアという妖魔のほうが強さにおいては上のようだ。

 とはいえ、それで攻撃の手をゆるめてはジリひんになるのは目に見えている。

 なので俺は、再び襲い掛かってきた笑山しょうざんに攻撃を仕掛けた。

 裂帛れっぱくの気合とともに、あらゆる角度から笑山しょうざんの身体に剣を走らせていく。

 けれども、どの部分を斬りつけても笑山しょうざんの身体に剣は深く食い込まない。

 すべて硬い金属を打ちつけたように弾かれてしまう。

 どれぐらい笑山しょうざん口撃こうげきを避け、どれぐらい笑山しょうざんに斬撃を放っただろうか。

 俺は笑山しょうざんの顔面を蹴り飛ばして身体を転倒させると、床にある死体の位置を把握しながら後方へと大きくんだ。

 これ以上の接近戦は無意味だとさとったからだ。

 あの笑山しょうざんがこれほどの化け物になるなんてな……。

 どうやら破山剣はざんけんの状態では吸血鬼ヴァンパイアとなった笑山しょうざんを倒すのは非常に難しかった。

 それこそ寸分すんぶんの狂いもなく同じ場所を何十回と斬り続ければ話は違うだろうが、相手は置かれた場所から動かない陶物すえものではない。

 鋼鉄以上の肉体と、猛獣の敏捷性びんしょうせいあわせ持つ妖魔なのだ。

 だとすると、やはり破山剣はざんけんを形状変化させるしかない。

 もしくは〈周天しゅうてん〉で高めた精気を〈発勁はっけい〉にして斬り込むかである。

 そうすれば破山剣はざんけんの状態でも、時機タイミングさえ間違えなければ硬質化している皮膚をつらぬいて心臓を突けるはず。

 などと俺が考えたときだ。

 笑山しょうざんはむくりと起き上がって2足立ちとなった。
 
「や、や、やはり……お、お、お前も……あ、あ、あ、あの糞兄貴くそあにき……く、く、糞兄貴くそあにきと……お、お、同じだ……い、い、忌々いまいましい……い、い、忌々いまいましい……」

 こめかみにいくつもの青筋あおすじを浮かべた笑山しょうざん

 そんな笑山しょうざんは、ひどくどもった言葉で話を続ける。

「く、く、糞兄貴くそあにきと……ゆ、ゆ、ゆ、優炎ゆうえんは……か、か、簡単に……こ、こ、こ、殺せたのに……お、お、お前は……か、か、簡単に……こ、こ、殺せない……い、い、忌々いまいましい……い、い、忌々いまいましい……」

 このとき、俺の片眉かたまゆがぴくりと反応した。

「おい……それは一体どういうことだ?」

 俺は震えた声で笑山しょうざんたずねる。

 優炎ゆうえんはそのまま優炎坊ゆうえんぼっちゃんのことであり、糞兄貴くそあにきとは笑山しょうざんの実兄であった仁翔じんしょうさまのことだろう。

 その2人を笑山しょうざんが殺した?

 数瞬後、ぞくりと俺の全身が粟立あわだった。

「まさか、仁翔じんしょうさまと優炎坊ゆうえんぼっちゃんの事故は――」

 わしだ、と笑山しょうざんは赤い舌をべろんと出す。

「わ、わ、わしが画策かくさく……か、か、か、画策かくさくしたのだ……ふひひ……す、す、すべては……わ、わ、わしが……そ、そ、そ、孫家そんけの……と、と、と、当主になる……た、た、ためにな……ふひひひひひひひひひひ……」

 俺は頭部を金槌かなづちで叩かれたような衝撃を受けた。

 ぐわんぐわんと耳鳴りもしてくる。

 同時に仁翔じんしょうさまと優炎坊ゆうえんぼっちゃんの顔が鮮明に浮かんできた。

 俺を本物の家族同然に接してくれた2人の笑顔が。

「……よくも俺の大切な人たちを殺したな」

 喪失そうしつしそうだった意識をこらえ、俺は吸血鬼ヴァンパイアという妖魔と化した笑山しょうざんに強烈な殺意を飛ばす。

「きさまは絶対に許さん!」

 えるように言い放った俺は、手にしていた破山剣はざんけんに精気を集中させた。

 恩人のかたきと分かった笑山しょうざんをこの世からほうむり去るべく、破山剣はざんけんを別の武器へと形状変化させようとする。

 と、そのとき――。

「笑わせるなよ」

 どこからか不気味な声が聞こえた。

 俺はその声が聞こえたほうに顔を向ける。

 大広間《ホール》の真ん中には巨大な龍の形をした彫像が置かれていたのだが、その龍の彫像の上に全身黒ずくめの長身の男が立っていたのだ。

孫龍信そん・りゅうしん、お前にそんなことを言う権利など微塵みじんもないわ」
 
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