【完結】追放された実は最強道士だった俺、異国の元勇者の美剣女と出会ったことで、皇帝すらも認めるほどまで成り上がる

岡崎 剛柔

文字の大きさ
上 下
31 / 67

第三十一話  仙獣との対決 其の二

しおりを挟む
 俺は2人から火眼かがん玉兎ぎょくとへと視線を移した。

「どういった理由で人間界にとどまっているのかは知らないが、もう大昔と違って人間界も仙獣せんじゅうがのんびり暮らせる場所じゃなくなっているんだ」

 だから、と俺は破山剣はざんけんの状態である〈七星剣しちせいけん〉に精気を強く込めた。

「俺がお前を神仙界しんせんかいへとかえしてやる」

 そして俺は最終形態となった今の火眼かがん玉兎ぎょくとを倒すべく、破山剣はざんけんより効率よく相手に致命傷を与えられる、を思い浮かべた。

 するとどうだろう。

 リイイイイイイイイイン――――…………

 全長3しゃく(約90センチ)の破山剣はざんけんは鈴のような音を発したあと、柄頭つかがしらに取り付けられた装飾品に【】と書いてある、全長7しゃく(約2メートル強)を超える長兵器ちょうへいきへと姿を変えたのだ。

 それは通常の槍のような形状でありながら、穂先ほさきの左右に三日月状の刃が取り付けられた方天戟ほうてんげきに似た武器だった。

 ただし長兵器ちょうへいきの中でも一般的な方天戟ほうてんげきと違って、〈七星剣しちせいけん〉の番目の形状武器――旋天戟せんてんげきには特殊な力が備わっている。

 その力でお前を倒す!

 俺は左半身を前にした左半身になると、腰を落として肩幅以上に両足を広げた。

 続いて旋天戟せんてんげきを中段に構え、穂先ほさきの先端を火眼かがん玉兎ぎょくとに突きつける。

 刺突しとつの構えだ。

 通常の剣でも高い威力を発揮はっきする刺突しとつという技は、長物の武器で自在に使いこなせれば剣を超えるほどの恐ろしい威力を発揮はっきする。

 そして修練を積んだ人間の武人ならば、刺突しとつ厄介やっかいさを理解できただろう。

 だが火眼かがん玉兎ぎょくとは、人間との会話ができるほどの高い知能を持っていた高位の仙獣せんじゅうではない。

 ただ本能に従って行動する中位ちゅうい仙獣せんじゅうだったため、俺がなぜ武器を変化できたのかも理解できず、それどころか俺の構えを挑発ちょうはつだと勘違いしたのだろう。

「キイイイイイイッ!」

 次の瞬間、火眼かがん玉兎ぎょくとは俺に猛然もうぜんと襲い掛かってきた。

 手にしていた一本つのを最大限に使って、俺を武器ごと叩きつぶすつもりだ。

 もちろん、そんなことを許す俺ではない。

 俺は時機タイミングを正確に見計みはからうと、鋭く踏み込んで必殺の突きを繰り出した。

 ズンッ!

 空気を裂いて伸びた旋天戟せんてんげき穂先ほさきが、火眼かがん玉兎ぎょくとの胸部に突き刺さる。

 けれども、分厚くなった筋肉に食い止められて内部まで深く入らなかった。

 このとき、火眼かがん玉兎ぎょくとは内心せせら笑ったに違いない。

 その程度の攻撃では自分を倒せない、と。

 それは火眼かがん玉兎ぎょくとの表情からもうかがい知れた。

 にやりと笑ったような表情を見せると、続いて俺の武器から破壊しようとしたのか一本つのを大きく振りかぶる。

 ――ここだッ!

 俺はカッと両目を見開くと、旋天戟せんてんげきの特殊な力を発動させた。

 穂先ほさきの両側に取り付けられていた三日月状の刃が、独りでに高速回転して火眼かがん玉兎ぎょくとの肉をえぐり始めたのだ。

 旋天戟せんてんげきの特殊技――〝旋纏絲せんてんし〟である。

 キイイイイイイイイイイイイ――――ッ!

 火眼かがん玉兎ぎょくと絶叫ぜっきょうとともに、えぐられた傷口からは大量の血と肉の破片が周囲に飛び散っていく。

 これで、とどめだ!

 俺は〝旋纏絲せんてんし〟を発動させたまま、全身の筋肉の動きを一致させながら旋天戟せんてんげきをさらに突き込んだ。

 旋天戟せんてんげき火眼かがん玉兎ぎょくとの肉と内臓をえぐりつつ、背中まで貫通かんつうしていく。

 俺は致命傷を与えたことを確信して旋天戟せんてんげきを引き抜いたものの、それでも残心ざんしんを取るため後ろに飛んで間合いを取る。

 ほどしばらくして、致命傷を負った火眼かがん玉兎ぎょくとは前のめりに倒れた。

 それだけではない。

 火眼かがん玉兎ぎょくとの全身が淡い光に包まれ、地面に飛び散っていた肉や血とともに身体ごと消滅したのだ。

 魂魄こんぱく神仙界しんせんかいへとかえったのだろう。

 やがて俺は残心ざんしんと〈周天しゅうてん〉を解いた。

 同時に現出げんしゅつ時間が決まっている旋天戟せんてんげきから、現出げんしゅつ時間が決まっていない破山剣はざんけんへと形状変化させる。

 そこでようやく俺は破山剣はざんけんさやに納め、アリシアと春花しゅんかの二人に「終わったぞ」と伝えようとした。

 ところが、そう伝える前に2人は俺の身体に抱き着いてくる。

「兄さん、あんたホンマは第5級の道士どうしやなんて絶対に嘘やろ! めちゃくちゃ強いやないか!」

龍信りゅうしん、あなたの剣は魔道具だったのね……ううん、そんなことはこの際どうでもいい。まさか、剣だけじゃなくて槍まで達人級なんて本当に凄いわ!」

 あまりにも興奮こうふんしていた2人の勢いに押され、俺は2人を抱き締めているような格好かっこうで地面に倒れた。

 そして仰向あおむけに倒れた俺は、そのまま青い空と流れる雲を見ながら思う。

 悪い気はしないが……とりあえず退いてくれ、と。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

勇者パーティー追放された解呪師、お迎えの死神少女とうっかりキスして最強の力に覚醒!? この力で10年前、僕のすべてを奪った犯人へ復讐します。

カズマ・ユキヒロ
ファンタジー
解呪師マモル・フジタニは追放された。 伝説の武器の封印を解いたあとで、勇者パーティーに裏切られて。 深い傷と毒で、死を待つばかりとなったマモル。 しかし。 お迎えにきた死神少女との『うっかりキス』が、マモルを変えた。 伝説の武器の封印を解いたとき、体内に取り込んでいた『いにしえの勇者パーティー』の力。 その無敵の力が異種族異性とのキスで覚醒、最強となったのだ。 一方で。 愚かな勇者たちは、魔王に呪いを受けてしまう。 死へのタイムリミットまでは、あと72時間。 マモル追放をなげいても、もう遅かった。 マモルは、手にした最強の『力』を使い。 人助けや、死神助けをしながら。 10年前、己のすべてを奪った犯人への復讐を目指す。 これは、過去の復讐に燃える男が。 死神少女とともに、失ったはずの幼なじみや妹を取り戻しながら。 結果的に世界を救ってしまう、そんな物語。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?

さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。 僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。 そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに…… パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。 全身ケガだらけでもう助からないだろう…… 諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!? 頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。 気づけば全魔法がレベル100!? そろそろ反撃開始してもいいですか? 内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

処理中です...