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最終章 最高の仲間たちと一国への治療行為
第四十六話 アメリア・フィンドラルの言動 ⑥
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このとき、私の思考は現実に追いつけなかった。
なぜ、死んだはずのアントンさまがここに?
そんな考えが脳裏をよぎった直後、アントンさまは結界部屋全体を振動させるほどの叫声を上げた。
そしてアントンさまは私に向かって猛然と駆け出してくる。
「アアアアアアアアアアアアアア――――ッ!」
生前のアントンさまからは考えられないほどの素早い動きに、私は魔力水晶石に触れることを放棄してその場から離れた。
床を強く蹴って大きく真横に跳んだのである。
一方の猪突猛進してきたアントンさまは、魔力水晶石に激しく衝突した。
ドゴオオオオオオオオオオンッ!
その衝撃力は凄まじかっただろう。
主格の魔力水晶石全体がわずかに揺れ動いたほどだ。
常人ならば即死。
肉体を鍛え抜いた人間でも重傷は免れなかったはず。
などと思った私の考えは一瞬で消し飛んだ。
私は目を見張った。
身体の前面から分厚くて固い魔力水晶石にぶつかったというのに、まったく怪我を負っていない。
それどころか、数秒後に私のほうに顔を向けて笑みを浮かべた。
私は「なるほど」と思った。
やはり、アントンさまはもう死んでいるのだ。
人間という生物としての死を迎えているのに、その死をあざ笑うかのように動いている。
私は普段よりもアントンさまを凝視した。
それでわかった。
今のアントンさまは〈魔素〉の影響で生きる屍となっているのだ。
現にアントンさまの全身からは〈魔素〉が陽炎のように立ち昇っている。
主核の魔力水晶石から流れているものと同じ、ドス黒くておぞましい負のオーラを凝縮させたような〈魔素〉がだ。
「アアアアアアアアア――――ッ!」
そんなアントンさまは再び猛進してくる。
もはや人間の自我など微塵もないのだろう。
暗闇に浮かぶ松明の炎に導かれる蛾のように、この部屋の中で生命の輝きを発している私を襲うために動く醜い屍人形だ。
「くっ!」
私はアントンさまの攻撃を避けようとしたが、リヒトなどとは違って戦闘は素人の域を超えない。
なので私はアントンさまにすぐに捕まってしまい、そして両手で首をがっしりと絞められた。
ぎりぎりぎり、と凄まじい力が両手から伝わってくる。
ダメだ、このままだと……。
死んでしまう、と絶望しかけたときだ。
「お嬢さまあああああああああ――――ッ!」
薄れていく意識の中で、その声は耳を通って脳内まで強く届いてきた。
紛れもない、この世でもっとも私の大切な人間の声。
私は力を振り絞り、声が聞こえてきた出入り口のほうへと視線を向ける。
リヒトだ。
出入り口の前には、血相を変えたリヒト・ジークウォルトの姿があった。
「アントン! その薄汚い手をお嬢さまから離せ!」
全身から凄まじい魔力を放出させたリヒト。
そんなリヒトを本能で脅威と感じたのだろう。
アントンさまはリヒトに顔を向けるだけではなく、私の首を絞めていた両手の力が一瞬だけ弱くなった。
ここだ!
私のその刹那に訪れたチャンスを逃さなかった。
両手に力を込めてアントンさまを突き飛ばす。
それでも今のアントンさまには子供程度の力しか感じなかったのだろう。
わずかに2、3歩だけ後退したのみで間合いの射程内にいる。
そこで私は一か八かの賭けに出た。
よろけていたアントンさまの腹部に向かって飛び蹴りを食らわせたのだ。
もちろん、思いっきり反動と体重を込めた両足での飛び蹴りである。
するとアントンさまの身体は今度こそ吹き飛び、私の間合いから大きく遠のいた状態になった。
私はリヒトにアイコンタクトを送る。
きっとリヒトは私の意図に気づいてくれるはず。
次の瞬間、リヒトは地面を蹴ってアントンさまに疾駆した。
リヒトは気づいたのだ。
私に被害がない場所までアントンさまを遠ざけたことで、リヒトがアントンさまに致命傷を与えられるようになったことを。
やがてリヒトとアントンさまの間合いが瞬く間に縮まり、リヒトは魔力を込めた右拳をアントンさまの顔面に叩き込んだ。
ゴシャッ、という衝撃音が部屋中に響き渡った。
直後、魔力水晶石まで吹き飛んだアントンさまの身体が爆裂四散する。
リヒトの〈魔力発勁〉による内部破壊が起こったのだ。
「お嬢さま!」
リヒトは木っ端微塵となったアントンさまから私に視線を転じる。
大丈夫ですか、と温かな声をかけてくれるのだろうか。
などと普段なら私は思っただろう。
けれど、今はそんな気持ちにふけっている場合ではない。
こうしている間にも、主核の魔力水晶石の誤作動は暴走の域まで高まっている。
私はこくりとうなずくと、魔力水晶石まで走った。
今度こそ誰にも邪魔されずに魔力水晶石に両手で触れる。
そして私は両目を閉じた。
脳内で魔力水晶石の内部を覗き見る。
やっぱり、魔力水晶石がとんでもない誤作動を起こしている。
それはもはや魔術技師がどうこうできるレベルを大きく超えていた。
すべては力不足なミーシャと、そんなミーシャを〈防国姫〉に任命したアントンさまのせいだ。
この2人のせいで主核の魔力水晶石は、カスケード王国の建国以来の大規模な誤作動を起こした。
私は最後の力を振り絞る。
これからすることは手術だ。
人間の身体にたとえるなら、悪性の腫瘍が全身に転移している状態と似ている。
大抵の治癒術師や医者は匙を投げるだろう。
しかし、ここにいるのは私のみ。
そして私は元〈防国姫〉だ。
ならば最後の最後までこの国を救うために全力を尽くす。
「はああああああああああああああッ!」
裂帛の気合一閃。
私は両手から大量の魔力を放出し、その魔力を魔力水晶石の中でメスの代わりにして人生最大の手術を始めた。
そう、それは一国を救うための手術だった。
著しく狂っていた魔力の流れを正常な状態に戻す外科手術。
「お嬢さま!」
遠くからリヒトの声が聞こえる。
私を心配するリヒトの声が。
……大丈夫よ、心配しないで。
私は心の中で答えると、どんどん体力が削られていく実感を味わいながら手術を行っていく。
やがて――。
なぜ、死んだはずのアントンさまがここに?
そんな考えが脳裏をよぎった直後、アントンさまは結界部屋全体を振動させるほどの叫声を上げた。
そしてアントンさまは私に向かって猛然と駆け出してくる。
「アアアアアアアアアアアアアア――――ッ!」
生前のアントンさまからは考えられないほどの素早い動きに、私は魔力水晶石に触れることを放棄してその場から離れた。
床を強く蹴って大きく真横に跳んだのである。
一方の猪突猛進してきたアントンさまは、魔力水晶石に激しく衝突した。
ドゴオオオオオオオオオオンッ!
その衝撃力は凄まじかっただろう。
主格の魔力水晶石全体がわずかに揺れ動いたほどだ。
常人ならば即死。
肉体を鍛え抜いた人間でも重傷は免れなかったはず。
などと思った私の考えは一瞬で消し飛んだ。
私は目を見張った。
身体の前面から分厚くて固い魔力水晶石にぶつかったというのに、まったく怪我を負っていない。
それどころか、数秒後に私のほうに顔を向けて笑みを浮かべた。
私は「なるほど」と思った。
やはり、アントンさまはもう死んでいるのだ。
人間という生物としての死を迎えているのに、その死をあざ笑うかのように動いている。
私は普段よりもアントンさまを凝視した。
それでわかった。
今のアントンさまは〈魔素〉の影響で生きる屍となっているのだ。
現にアントンさまの全身からは〈魔素〉が陽炎のように立ち昇っている。
主核の魔力水晶石から流れているものと同じ、ドス黒くておぞましい負のオーラを凝縮させたような〈魔素〉がだ。
「アアアアアアアアア――――ッ!」
そんなアントンさまは再び猛進してくる。
もはや人間の自我など微塵もないのだろう。
暗闇に浮かぶ松明の炎に導かれる蛾のように、この部屋の中で生命の輝きを発している私を襲うために動く醜い屍人形だ。
「くっ!」
私はアントンさまの攻撃を避けようとしたが、リヒトなどとは違って戦闘は素人の域を超えない。
なので私はアントンさまにすぐに捕まってしまい、そして両手で首をがっしりと絞められた。
ぎりぎりぎり、と凄まじい力が両手から伝わってくる。
ダメだ、このままだと……。
死んでしまう、と絶望しかけたときだ。
「お嬢さまあああああああああ――――ッ!」
薄れていく意識の中で、その声は耳を通って脳内まで強く届いてきた。
紛れもない、この世でもっとも私の大切な人間の声。
私は力を振り絞り、声が聞こえてきた出入り口のほうへと視線を向ける。
リヒトだ。
出入り口の前には、血相を変えたリヒト・ジークウォルトの姿があった。
「アントン! その薄汚い手をお嬢さまから離せ!」
全身から凄まじい魔力を放出させたリヒト。
そんなリヒトを本能で脅威と感じたのだろう。
アントンさまはリヒトに顔を向けるだけではなく、私の首を絞めていた両手の力が一瞬だけ弱くなった。
ここだ!
私のその刹那に訪れたチャンスを逃さなかった。
両手に力を込めてアントンさまを突き飛ばす。
それでも今のアントンさまには子供程度の力しか感じなかったのだろう。
わずかに2、3歩だけ後退したのみで間合いの射程内にいる。
そこで私は一か八かの賭けに出た。
よろけていたアントンさまの腹部に向かって飛び蹴りを食らわせたのだ。
もちろん、思いっきり反動と体重を込めた両足での飛び蹴りである。
するとアントンさまの身体は今度こそ吹き飛び、私の間合いから大きく遠のいた状態になった。
私はリヒトにアイコンタクトを送る。
きっとリヒトは私の意図に気づいてくれるはず。
次の瞬間、リヒトは地面を蹴ってアントンさまに疾駆した。
リヒトは気づいたのだ。
私に被害がない場所までアントンさまを遠ざけたことで、リヒトがアントンさまに致命傷を与えられるようになったことを。
やがてリヒトとアントンさまの間合いが瞬く間に縮まり、リヒトは魔力を込めた右拳をアントンさまの顔面に叩き込んだ。
ゴシャッ、という衝撃音が部屋中に響き渡った。
直後、魔力水晶石まで吹き飛んだアントンさまの身体が爆裂四散する。
リヒトの〈魔力発勁〉による内部破壊が起こったのだ。
「お嬢さま!」
リヒトは木っ端微塵となったアントンさまから私に視線を転じる。
大丈夫ですか、と温かな声をかけてくれるのだろうか。
などと普段なら私は思っただろう。
けれど、今はそんな気持ちにふけっている場合ではない。
こうしている間にも、主核の魔力水晶石の誤作動は暴走の域まで高まっている。
私はこくりとうなずくと、魔力水晶石まで走った。
今度こそ誰にも邪魔されずに魔力水晶石に両手で触れる。
そして私は両目を閉じた。
脳内で魔力水晶石の内部を覗き見る。
やっぱり、魔力水晶石がとんでもない誤作動を起こしている。
それはもはや魔術技師がどうこうできるレベルを大きく超えていた。
すべては力不足なミーシャと、そんなミーシャを〈防国姫〉に任命したアントンさまのせいだ。
この2人のせいで主核の魔力水晶石は、カスケード王国の建国以来の大規模な誤作動を起こした。
私は最後の力を振り絞る。
これからすることは手術だ。
人間の身体にたとえるなら、悪性の腫瘍が全身に転移している状態と似ている。
大抵の治癒術師や医者は匙を投げるだろう。
しかし、ここにいるのは私のみ。
そして私は元〈防国姫〉だ。
ならば最後の最後までこの国を救うために全力を尽くす。
「はああああああああああああああッ!」
裂帛の気合一閃。
私は両手から大量の魔力を放出し、その魔力を魔力水晶石の中でメスの代わりにして人生最大の手術を始めた。
そう、それは一国を救うための手術だった。
著しく狂っていた魔力の流れを正常な状態に戻す外科手術。
「お嬢さま!」
遠くからリヒトの声が聞こえる。
私を心配するリヒトの声が。
……大丈夫よ、心配しないで。
私は心の中で答えると、どんどん体力が削られていく実感を味わいながら手術を行っていく。
やがて――。
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