5 / 8
第五話 王子さまの登場
しおりを挟む
「ここにいる全員――特にシグルド・カスケードとミーシャ・フィンドラル! お前たちは絶対に余計な抵抗はするな! お前たちには俺を暗殺しようとした容疑がかかっている!」
明らかに動揺したシグルドに対して、ミーシャは小さく舌打ちしたあとに表情を一変させた。
急に全身をしおらしくさせ、私はか弱い少女ですアピールを始めたのだ。
「誤解です、アストラルさま! 私もシグルドさまもあなたさまの暗殺など企てておりません! 暗殺を企てたのはそこにいるセラス・フィンドラルです!」
何て白々しいの!
私は怒りを通り越して呆れた。
盗人猛々しいとは、まさにミーシャのことを言うのだろう。
だけど、まさかということもある。
アストラルさまはミーシャの言葉を信じてしまうのだろうか。
「お前がミーシャ・フィンドラルだな?」
アストラルさまはミーシャを睨めつける。
「今回の俺の暗殺計画の首謀者がお前だということは、すでに俺の子飼いであるシノビたちの情報で発覚している。他人を意のままに操る、禁術の類のような力を持っていることもな。おそらく、その力を使ってシグルド・カスケードを操っているのだろう」
違います、アストラルさま。
シグルドのカスは、何も操られていない状態で妹を手助けしているんです。
「だが、そのような力は俺たちには通用しない。俺たちにはあらかじめそのような力を相殺させる特殊な魔法を王宮の専属魔術師たちに施してもらったからな。どちらにせよ、ミーシャ・フィンドラル――お前だけは厳しい尋問を受けてもらうから覚悟しろ」
その言葉を聞いた瞬間、ミーシャは肩をすくめてため息を吐いた。
「……あっそ。さすがは麒麟児と謳われていたアストラルさまですね。この短時間でそこまでお調べになられたんですか」
「この私の力と情報網を馬鹿にするな……それに見たことろ、お前は実の姉であるセラス・フィンドラルに罪を着せようとしていたようだな」
「どうしてそう思うのですか?」
「知れたこと。セラス・フィンドラルがそのようなことをするものか。セラスは学院の中でも誰に対しても分け隔てなく接し、生徒たちはもちろん教師たちからも慕われていたのだ。そして学院内の人気のない場所でも武術の鍛錬をこなし、一方で淑女としての振る舞いも欠かさなかった。そのような立派な女性が一国の王子の暗殺など企てるはずがない」
「おやおや、アストラルさまはずいぶんとセラスお姉さまのことに詳しいのですね……もしや、学院内でセラスお姉さまをずっと気にかけていたのですか?」
え? 嘘?
だってアストラルさまはこの国の第1王子よ。
たかが男爵家の令嬢を気にかけるはずがないじゃない。
私はアストラルさまをじっと見つめた。
すると私と目が合ったアストラルさまは、両頬を赤らめながら気まずそうに顔を少しだけ背けた。
待ってください、アストラルさま。
その表情と態度は何なのですか?
もしかして、本当に私を気にかけていらしたのですか?
アストラルさまは咳払いをすると、「それはともかく」と腰の長剣を抜いてミーシャに切っ先を突きつける。
「余計な話はもう終わりだ。ミーシャ・フィンドラル、大人しく投降してもらう。いいな?」
「嫌です」
ミーシャはあっさりと断った。
「このまま捕まったら尋問どころか処刑ですよね? だったら投降ではなく別のことをいたします」
別のことって何?
私がそう思ったとき、アストラルさまも同じことを思ったのか「別のこととは何だ?」とミーシャに問いかけた。
「皆殺しです」
ミーシャはゾッとするほどの凶悪な笑みを浮かべた。
「ここにいる全員、1人残らず皆殺しにいたします」
明らかに動揺したシグルドに対して、ミーシャは小さく舌打ちしたあとに表情を一変させた。
急に全身をしおらしくさせ、私はか弱い少女ですアピールを始めたのだ。
「誤解です、アストラルさま! 私もシグルドさまもあなたさまの暗殺など企てておりません! 暗殺を企てたのはそこにいるセラス・フィンドラルです!」
何て白々しいの!
私は怒りを通り越して呆れた。
盗人猛々しいとは、まさにミーシャのことを言うのだろう。
だけど、まさかということもある。
アストラルさまはミーシャの言葉を信じてしまうのだろうか。
「お前がミーシャ・フィンドラルだな?」
アストラルさまはミーシャを睨めつける。
「今回の俺の暗殺計画の首謀者がお前だということは、すでに俺の子飼いであるシノビたちの情報で発覚している。他人を意のままに操る、禁術の類のような力を持っていることもな。おそらく、その力を使ってシグルド・カスケードを操っているのだろう」
違います、アストラルさま。
シグルドのカスは、何も操られていない状態で妹を手助けしているんです。
「だが、そのような力は俺たちには通用しない。俺たちにはあらかじめそのような力を相殺させる特殊な魔法を王宮の専属魔術師たちに施してもらったからな。どちらにせよ、ミーシャ・フィンドラル――お前だけは厳しい尋問を受けてもらうから覚悟しろ」
その言葉を聞いた瞬間、ミーシャは肩をすくめてため息を吐いた。
「……あっそ。さすがは麒麟児と謳われていたアストラルさまですね。この短時間でそこまでお調べになられたんですか」
「この私の力と情報網を馬鹿にするな……それに見たことろ、お前は実の姉であるセラス・フィンドラルに罪を着せようとしていたようだな」
「どうしてそう思うのですか?」
「知れたこと。セラス・フィンドラルがそのようなことをするものか。セラスは学院の中でも誰に対しても分け隔てなく接し、生徒たちはもちろん教師たちからも慕われていたのだ。そして学院内の人気のない場所でも武術の鍛錬をこなし、一方で淑女としての振る舞いも欠かさなかった。そのような立派な女性が一国の王子の暗殺など企てるはずがない」
「おやおや、アストラルさまはずいぶんとセラスお姉さまのことに詳しいのですね……もしや、学院内でセラスお姉さまをずっと気にかけていたのですか?」
え? 嘘?
だってアストラルさまはこの国の第1王子よ。
たかが男爵家の令嬢を気にかけるはずがないじゃない。
私はアストラルさまをじっと見つめた。
すると私と目が合ったアストラルさまは、両頬を赤らめながら気まずそうに顔を少しだけ背けた。
待ってください、アストラルさま。
その表情と態度は何なのですか?
もしかして、本当に私を気にかけていらしたのですか?
アストラルさまは咳払いをすると、「それはともかく」と腰の長剣を抜いてミーシャに切っ先を突きつける。
「余計な話はもう終わりだ。ミーシャ・フィンドラル、大人しく投降してもらう。いいな?」
「嫌です」
ミーシャはあっさりと断った。
「このまま捕まったら尋問どころか処刑ですよね? だったら投降ではなく別のことをいたします」
別のことって何?
私がそう思ったとき、アストラルさまも同じことを思ったのか「別のこととは何だ?」とミーシャに問いかけた。
「皆殺しです」
ミーシャはゾッとするほどの凶悪な笑みを浮かべた。
「ここにいる全員、1人残らず皆殺しにいたします」
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
まったく心当たりのない理由で婚約破棄されるのはいいのですが、私は『精霊のいとし子』ですよ……?【カイン王子視点】
空月
恋愛
精霊信仰の盛んなクレセント王国。
身に覚えのない罪状をつらつらと挙げ連ねられて、第一王子に婚約破棄された『精霊のいとし子』アリシア・デ・メルシスは、第二王子であるカイン王子に求婚された。
そこに至るまでのカイン王子の話。
『まったく心当たりのない理由で婚約破棄されるのはいいのですが、私は『精霊のいとし子』ですよ……?』(https://www.alphapolis.co.jp/novel/368147631/886540222)のカイン王子視点です。
+ + + + + +
この話の本編と続編(書き下ろし)を収録予定(この別視点は入れるか迷い中)の同人誌(短編集)発行予定です。
購入希望アンケートをとっているので、ご興味ある方は回答してやってください。
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLScCXESJ67aAygKASKjiLIz3aEvXb0eN9FzwHQuxXavT6uiuwg/viewform?usp=sf_link
少し先の未来が見える侯爵令嬢〜婚約破棄されたはずなのに、いつの間にか王太子様に溺愛されてしまいました。
ウマノホネ
恋愛
侯爵令嬢ユリア・ローレンツは、まさに婚約破棄されようとしていた。しかし、彼女はすでにわかっていた。自分がこれから婚約破棄を宣告されることを。
なぜなら、彼女は少し先の未来をみることができるから。
妹が仕掛けた冤罪により皆から嫌われ、婚約破棄されてしまったユリア。
しかし、全てを諦めて無気力になっていた彼女は、王国一の美青年レオンハルト王太子の命を助けることによって、運命が激変してしまう。
この話は、災難続きでちょっと人生を諦めていた彼女が、一つの出来事をきっかけで、クールだったはずの王太子にいつの間にか溺愛されてしまうというお話です。
*小説家になろう様からの転載です。
悪役令嬢扱いの私、その後嫁いだ英雄様がかなりの熱血漢でなんだか幸せになれました。
下菊みこと
恋愛
落ち込んでたところに熱血漢を投入されたお話。
主人公は性に奔放な聖女にお説教をしていたら、弟と婚約者に断罪され婚約破棄までされた。落ち込んでた主人公にも縁談が来る。お相手は考えていた数倍は熱血漢な英雄様だった。
小説家になろう様でも投稿しています。
農地スローライフ、始めました~婚約破棄された悪役令嬢は、第二王子から溺愛される~
可児 うさこ
恋愛
前世でプレイしていたゲームの悪役令嬢に転生した。公爵に婚約破棄された悪役令嬢は、実家に戻ったら、第二王子と遭遇した。彼は王位継承より農業に夢中で、農地を所有する実家へ見学に来たらしい。悪役令嬢は彼に一目惚れされて、郊外の城で一緒に暮らすことになった。欲しいものを何でも与えてくれて、溺愛してくれる。そんな彼とまったり農業を楽しみながら、快適なスローライフを送ります。
【完結】妹のせいで貧乏くじを引いてますが、幸せになります
禅
恋愛
妹が関わるとロクなことがないアリーシャ。そのため、学校生活も後ろ指をさされる生活。
せめて普通に許嫁と結婚を……と思っていたら、父の失態で祖父より年上の男爵と結婚させられることに。そして、許嫁はふわカワな妹を選ぶ始末。
普通に幸せになりたかっただけなのに、どうしてこんなことに……
唯一の味方は学友のシーナのみ。
アリーシャは幸せをつかめるのか。
※小説家になろうにも投稿中
逆行転生した侯爵令嬢は、自分を裏切る予定の弱々婚約者を思う存分イジメます
黄札
恋愛
侯爵令嬢のルーチャが目覚めると、死ぬひと月前に戻っていた。
ひと月前、婚約者に近づこうとするぶりっ子を撃退するも……中傷だ!と断罪され、婚約破棄されてしまう。婚約者の公爵令息をぶりっ子に奪われてしまうのだ。くわえて、不貞疑惑まででっち上げられ、暗殺される運命。
目覚めたルーチャは暗殺を回避しようと自分から婚約を解消しようとする。弱々婚約者に無理難題を押しつけるのだが……
つよつよ令嬢ルーチャが冷静沈着、鋼の精神を持つ侍女マルタと運命を変えるために頑張ります。よわよわ婚約者も成長するかも?
短いお話を三話に分割してお届けします。
この小説は「小説家になろう」でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる