君が好き。

hina

文字の大きさ
上 下
13 / 14

13

しおりを挟む



「え、貸切温泉風呂、一緒に入らないの?」
「手を出してしまいそうだからな。一時間じゃ足りなくなる……私は大浴場に入ってくるよ」
「明日も?」
「この街にいる間はな」
ホテルの貸切温泉風呂をカイルが一時間だけ予約してくれていたのに、一緒に入れないなんて悲しい。
「レイリア、ベッドで甘やかすから我慢してくれ」
「一緒に入りたかった……」
「屋敷に帰ったら入れるさ。レイリアが自分のアパートに帰ってしまったのが痛いな。定期的に通ってはくれてるが、早く結婚してまた屋敷に住んで欲しい」
「僕、その言葉本気にするよ?」
「是非してくれ。レイリア、私の大切な人……」

触れるだけのキスをするカイルにぎゅっと抱きつく。
切なくて愛しくて、でも幸せで胸がいっぱいだ。



その後一緒に入れると思っていたのに、一人で入った貸切温泉風呂は気持ち良かったけど、凄く寂しかった。



波の音が耳に心地良い。
雨も降ってないし風も強くなくて、海岸の散策にはいい天気だった。

「走りたくなっちゃう」
「どこまででも追いかけていきたい」
「ふふ、僕はカイルには敵わないよ」
「レイリア」
「ん?」
カイルが僕の手を取ってそっと撫でた。
ふと足を止めて、見つめられる。

「どうしたの?」

カイルが上着のポケットから小さな布張りの箱を取り出して、パカッと開いた。
中には小ぶりのピアスが。
きらきら輝く透明な澄んだ石が眩しい。

「一生君を幸せにすると誓う。愛してる。どうか私と結婚して下さい」
「カイルの粘り勝ちだね……はい。これからもよろしくお願いします」
「レイリア……!」

カイルが僕を持ち上げてその場でくるくると回った。

「結婚って昨日もだけどいつも言ってたもんね」
「はは、そうだな」
「ピアス、あけてくれる?」
「もちろん」
「痛いかな?」
「大丈夫だよ」
「ん……」

深い口付けを受けて、力が抜けた。

「幸せだ、レイリア」
「僕も……。ありがとう、カイル……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完】名前すら知らない、僕のつがい

325号室の住人
BL
突如、【狼(?)耳の男のつがい】になったらしい僕。 会えば深く愛される関係の僕らだけど、実はまだ、僕らは互いの名前を知らなかった。 「」日本語 『』異世界語 《》心の声(テレパシー) ☆全8話 完結済み

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

番だと言われて囲われました。

BL
戦時中のある日、特攻隊として選ばれた私は友人と別れて仲間と共に敵陣へ飛び込んだ。 死を覚悟したその時、光に包み込まれ機体ごと何かに引き寄せられて、異世界に。 そこは魔力持ちも世界であり、私を番いと呼ぶ物に囲われた。

「今夜は、ずっと繋がっていたい」というから頷いた結果。

猫宮乾
BL
 異世界転移(転生)したワタルが現地の魔術師ユーグと恋人になって、致しているお話です。9割性描写です。※自サイトからの転載です。サイトにこの二人が付き合うまでが置いてありますが、こちら単独でご覧頂けます。

俺の体に無数の噛み跡。何度も言うが俺はαだからな?!いくら噛んでも、番にはなれないんだぜ?!

BL
背も小さくて、オメガのようにフェロモンを振りまいてしまうアルファの睟。そんな特異体質のせいで、馬鹿なアルファに体を噛まれまくるある日、クラス委員の落合が………!!

宰相がいきなり現れた覆面男に襲われる

ミクリ21 (新)
BL
いきなり現れた覆面男に宰相が襲われる話。

ゲーム世界の貴族A(=俺)

猫宮乾
BL
 妹に頼み込まれてBLゲームの戦闘部分を手伝っていた主人公。完璧に内容が頭に入った状態で、気がつけばそのゲームの世界にトリップしていた。脇役の貴族Aに成り代わっていたが、魔法が使えて楽しすぎた! が、BLゲームの世界だって事を忘れていた。

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

処理中です...