フィッツバーグ侯爵子息は婚約者の王太子と関わらないことにした

hina

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僕は学院の図書館に来ていた。
魔法に関する本を読むためだ。
もうすぐテストがあるから、二度目だけど勉強しなければ。

「んー……あとちょっとが届かない……」
「この本でいいの?」
「えっ、あっ。ありがとう、その本です」
青い装丁の本を受け取り、取ってくれた人を見上げた。

紺色の長い髪は一つにまとめられさらりと流れて、銀色の瞳が僕を見つめ返している。

き、綺麗……。

僕よりも背の高い圧倒的美人を見て少し怯んだ僕は、ぺこっとお辞儀してその場を離れる。

あれは騎士科のノイス・ニネルム辺境伯子息だ。
僕と同学年で男女問わず人気を集めている人……。

そんな人が僕をじっと見ていたなんてこの時の僕は全く気が付かなかった。





「殿下、愛らしいなんてやめて下さいー」
「本当のことを言って何が悪い」

昼休み。友人達より遅れて中庭を通りかかった時、そんな声が聞こえてきた。
食堂に行くにはここを通るしかない。
中庭を陣取るのはやめて欲しい。

明日からはお弁当を持ってこようかななんて考えつつ、会釈をして通り抜けようとしたけど、気付かれてしまった。

「あ、フィッツバーグ様ですよ。殿下」
「ああ。ミラン、久しいな。息災か」
「はい。お陰様で。お二方もお変わりないご様子で」
「私達もこの通りだ。私が変わりなくいられるのもいつもティアがそばに居てくれるおかげかもしれないな」
「もうやめて下さいってばー!」
「はは! やはり可愛いな」
「殿下、私は急ぎますのでここで失礼いたします」
「ああ。またな」

一礼してその場から離れる。
僕はどうしてネイシス様しかいないと思っていたんだろう。
三年前にはこんな場面に出会うことはなかったけど、三年前からこんな調子だったのかとがっくりくる。
隠す気もないらしい。


僕達が通う王立学院は、十四歳から二十歳までの生徒が通う学校で、平民から王族まで色んな生徒がいる。

神子は平民だけど、特別だった。
聖魔法が使えて、瘴気を払えるからだ。

一度目の時は僕も神子のような力があれば……なんて考えていたけど、今は全くそうは思わない。

国教に縛られるのは面倒そうだし。

ネイシス様は神子が神子の力を持っていなくても彼を愛したのかは気になるけど、どうしても知りたいと言うわけではないし、どちらかと言えば、それさえも最早どうでも良かった。
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