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「はあ~……」

テントの中できちんと寝具が整えられたマットレスに寝転んで、俺はゆっくり息を吐いた。
今日はグレンの色を身に纏っている。

マットレスの寝心地は抜群だ。
吟味した布団もフカフカで、潰してしまうのが忍びない。

「んー……」
布団に顔を擦り付けて、身体を横向きにする。

「スバル、寝るならちゃんと布団の中に入るんだよ」
「うん……」
心地よい疲れはすぐに睡魔を連れてきて、俺はグレンの言うことに返事をしながらも、半分以上寝てしまっていた。

「仕方ないな」

身体が浮いた気がして、ふわふわする中、俺は完全に意識を手放した。




「あま……」

シンプルに輪切りにして出された紫色のトマトは凄く凄く甘かった。
砂糖で煮詰めたみたいに。

そのトマトはデザートに食べることにして、他のものを平らげていく。
サラダ、ベーコンエッグ、パン。
ダンジョンに入る前の朝食も美味しかった。

でも。


……つやつやのご飯が食べたい。出汁の香るお味噌汁に、ふっくらとしただし巻き卵。ほうれん草のおひたしに梅干し。紅鮭がついてたら朝食としては完璧。

そう、和食に飢えていた。


この世界ではまだお米料理に出会っていない。
食べられていないだけなのか、お米がないのか。

それは分からないけど、イーサンとグレンについて行けば、いつか白米にありつけるだろうか。

というか、俺はもう日本に帰ることは出来ないのだろうか?

家族や友人達に会いたい。

迷い人のことももう少し知りたいけど、どうしたらいいだろう。

そんな気持ちを抱えながら、今日も一日が始まる。






「スライム……」

圧倒的だった。
イーサンもグレンも現れた魔物なんて一瞬で倒してしまって、俺は面食らっていた。

イーサンの剣で真っ二つになったスライムだった何かはぷるんと一揺れしたあと、ダンジョンに吸い込まれていった。

それも怖いけど、人は吸い込まれないのだとか。
良いのか悪いのか……。
ダンジョンにとっては異物なんだろう。ということにしておく。

なんの危なげもなく魔物を倒して少し迷いながら階段を見つけては下におり、十階毎にあるセーフティエリアで休憩を取りつつ、ダンジョンの中で一夜を明かし、ついに三十階層にたどり着いた。

「そろそろボスが出る頃かもしれない。気を引き締めていこう」
グレンの言葉にイーサンと頷いて、でも俺二人に挟まれて歩いてきただけで何もしなかったな……と悲しい気持ちになった。

でも、俺の出る幕はなかった。
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