4 / 23
4
しおりを挟む
「ん……おはよう、スバル」
寝起きの掠れ声が色っぽいイーサンが眠そうに目を擦った。
「スバル、もう少し寝てよう……」
グレンはまだ半分夢の中のようで。
「二人とも! 近いです!!」
「だってスバルは瑞々しくて、甘い、良い匂いなんだ。我慢出来ない……」
「同……感……」
イーサンが俺の顔に頭を近付けてすりすりしてきた。サラサラの髪とふわふわの耳が擽ったい。
グレンはぎゅっと後ろから抱きついてくる。
「スキンシップ過多ですって!」
それなりに力を入れても二人を振り払えなくて、俺は一瞬固まった。
「まーまー、そんなこと言わずに」
夢うつつながらもぽんぽんと言い聞かせるように腕を上下させるグレン。
「スキンシップはコミュニケーションだろ?」
イーサンもグレンに加勢する。
「だとしても俺の心はすり減ります!」
あえて言い切って、俺は全力で勢いよく起き上がった。
まだ寝起きで油断していたのであろう二人の間から抜け出す事に成功して、立ち上がり、スニーカーを履いてテントを出ようとしたところでイーサンに止められた。
「待って。まず俺が近くに魔物がいないか確認するから、まだテントから出ないで」
「は、はい……」
そうだった。ここは異世界。俺が住んでいた安全な日本とは違う。
いや、日本でもテントから出たら野生生物がなんて話はあるかもしれないけど……。
イーサンが鋭い瞳で昨日も腰に下げていた剣を手にして、硬そうなショートブーツを履いたのを見て、俺は気を引き締めた。
昨日教えてもらったのは、テントには強力な防御結界機能がついていているとのことで。
今もテントの真ん中で宙に浮いてくるくる回っている緑色の宝石がちゃんと動いてるのが、結界が発動しているサインらしいのだ。
テント内は大丈夫でも、不用意にテントから出るのは危険なんだな。
そう考えれば、昨日川のわきの巨大な石の上で寝ちゃってよく無事だったなあなんて思う。
今の俺には魔物を倒すことはまだ出来そうにないし、素直に旅慣れた二人の言うことを聞く方が良さそうだ。
イーサンもグレンもSランクの冒険者だと言うし、魔物の倒し方を教えてもらえないだろうか。
足手まといにはなりたくないのもあるし、剣も魔法も使ってみたい。
俺に剣の才能や魔力はあるのかな。
折を見て聞いてみよう。
とりあえず出て行ったイーサンが戻るまで、まだ寝ているグレンを離れた位置から見ながら、俺はテントの中で待機することにした。
寝起きの掠れ声が色っぽいイーサンが眠そうに目を擦った。
「スバル、もう少し寝てよう……」
グレンはまだ半分夢の中のようで。
「二人とも! 近いです!!」
「だってスバルは瑞々しくて、甘い、良い匂いなんだ。我慢出来ない……」
「同……感……」
イーサンが俺の顔に頭を近付けてすりすりしてきた。サラサラの髪とふわふわの耳が擽ったい。
グレンはぎゅっと後ろから抱きついてくる。
「スキンシップ過多ですって!」
それなりに力を入れても二人を振り払えなくて、俺は一瞬固まった。
「まーまー、そんなこと言わずに」
夢うつつながらもぽんぽんと言い聞かせるように腕を上下させるグレン。
「スキンシップはコミュニケーションだろ?」
イーサンもグレンに加勢する。
「だとしても俺の心はすり減ります!」
あえて言い切って、俺は全力で勢いよく起き上がった。
まだ寝起きで油断していたのであろう二人の間から抜け出す事に成功して、立ち上がり、スニーカーを履いてテントを出ようとしたところでイーサンに止められた。
「待って。まず俺が近くに魔物がいないか確認するから、まだテントから出ないで」
「は、はい……」
そうだった。ここは異世界。俺が住んでいた安全な日本とは違う。
いや、日本でもテントから出たら野生生物がなんて話はあるかもしれないけど……。
イーサンが鋭い瞳で昨日も腰に下げていた剣を手にして、硬そうなショートブーツを履いたのを見て、俺は気を引き締めた。
昨日教えてもらったのは、テントには強力な防御結界機能がついていているとのことで。
今もテントの真ん中で宙に浮いてくるくる回っている緑色の宝石がちゃんと動いてるのが、結界が発動しているサインらしいのだ。
テント内は大丈夫でも、不用意にテントから出るのは危険なんだな。
そう考えれば、昨日川のわきの巨大な石の上で寝ちゃってよく無事だったなあなんて思う。
今の俺には魔物を倒すことはまだ出来そうにないし、素直に旅慣れた二人の言うことを聞く方が良さそうだ。
イーサンもグレンもSランクの冒険者だと言うし、魔物の倒し方を教えてもらえないだろうか。
足手まといにはなりたくないのもあるし、剣も魔法も使ってみたい。
俺に剣の才能や魔力はあるのかな。
折を見て聞いてみよう。
とりあえず出て行ったイーサンが戻るまで、まだ寝ているグレンを離れた位置から見ながら、俺はテントの中で待機することにした。
41
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説


「今夜は、ずっと繋がっていたい」というから頷いた結果。
猫宮乾
BL
異世界転移(転生)したワタルが現地の魔術師ユーグと恋人になって、致しているお話です。9割性描写です。※自サイトからの転載です。サイトにこの二人が付き合うまでが置いてありますが、こちら単独でご覧頂けます。

獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた!
どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。
そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?!
いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?!
会社員男性と、異世界獣人のお話。
※6話で完結します。さくっと読めます。
優しい恋に酔いながら
すずかけあおい
BL
一途な攻め×浅はかでいたい受けです。
「誰でもいいから抱かれてみたい」
達哉の言葉に、藤亜は怒って――。
〔攻め〕藤亜(とうあ)20歳
〔受け〕達哉(たつや)20歳
藤の花言葉:「優しさ」「歓迎」「決して離れない」「恋に酔う」「忠実な」

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?


異世界に転移したら運命の人の膝の上でした!
鳴海
BL
ある日、異世界に転移した天音(あまね)は、そこでハインツという名のカイネルシア帝国の皇帝に出会った。
この世界では異世界転移者は”界渡り人”と呼ばれる神からの預かり子で、界渡り人の幸せがこの国の繁栄に大きく関与すると言われている。
界渡り人に幸せになってもらいたいハインツのおかげで離宮に住むことになった天音は、日本にいた頃の何倍も贅沢な暮らしをさせてもらえることになった。
そんな天音がやっと異世界での生活に慣れた頃、なぜか危険な目に遭い始めて……。

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる