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グレンもこの人も凄いイケメンだ。グレンは白いローブを、この人は濃紺のマントを羽織っていて、異世界感が凄い。
「ああ、起きたんだね。初めまして、俺はイーサン。白狼獣人の魔法剣士で二十三歳の冒険者だ。君は?」
「俺は昴です。学生で十八歳の人間です」
イーサンの水色の瞳を見ながら、グレンの時と同じように答えた。
グレンは蒼色の瞳をしている。
イーサンは腰まである長くサラサラな髪を後ろで一つに纏めていて、グレンはごく緩いパーマがかかっているような癖のある髪を耳朶のあたりで切り揃えている。
イーサンは凄く背が高くて、百九十を超えてそうだ。
グレンも座ってはいるけど、身長が高そう。
異世界基準はどうなってるんだと思いつつ、イーサンから差し出された手を握った。
「答えたくなかったらいいんだけど、君はどこからきたんだ? あぁ、グレンが聞いていたらすまない」
「遠いところから、とだけ……」
竜には思わず地球のことを話してしまったけど、異世界から来ました! なんて怪しすぎるもんな……。
異世界人がどういう扱いをされてるかも分からないし……。
「でも、その見た目は街では目立つから、少し僕に弄らせてくれないかな」
「え! 俺、街に行きたいんですけど、道を知らないんです……もしご迷惑でなければ、街まで着いて行ってもいいですか?」
「それは構わないよ。というか、何か訳ありっぽいし、スバルさえ良ければ、僕達と一緒に来ない? 僕もイーサンもSランク冒険者だから、スバルのこと守ってあげられるよ」
「え、でも……そんな、悪いですし……」
「そうだな……。スバル。一緒に来てくれ。スバル一人では心配だ」
イーサンがグレンに同調する。俺はそれ以上断ることも出来なくて、二人について行くことにした。
「じゃ、じゃあ……同行させて下さい」
「うん。よろしく」
「よろしくお願いします」
「さ、じゃあ、まずは黒髪黒目を変えようか」
「え!?」
「んー……淡いベージュの髪に紫眼でどうかな?」
「変えられるんですか!? というか、変えなきゃマズいですか?」
「迷い人の色だからねー……。兵に連行されて城で監禁なんて避けたいでしょう?」
「え、いや、ハイ……」
迷い人……あの竜も言っていた。俺は迷い人というものなのかもしれない。
でも城で監禁!? ってどういう事だろう……。
聞きたいけど、あんまり深くつっこむと墓穴を掘りそうで怖い。
「魔術を使うよ」
「はい、お願いします」
グレンが頷いて、グレンの両手からキラキラした細かい粒子が放たれる。
綺麗だななんて思いながら粒子に包まれていると、どうやら魔術は成功したようだ。
「はい」
グレンがどこからともなく手鏡を取り出して、僕に渡した。
「わあ……」
グレンが言った通り、鏡には淡いベージュの髪に濃い紫の瞳の俺が映っていた。
「うん。可愛い」
「か、可愛い!?」
「ああ、可愛いな」
俺、可愛いというより男だけど綺麗系だと言われていたんだけどな……。
グレンにもイーサンにも可愛いと言われてしまい、居た堪れない。
「あとは少し大きいと思うけど、街でスバルに合うマントを買うまで僕のマントを我慢して着てくれるかな? 夜は冷えるし、街でもスバルの外見は隠した方が良さそうだ」
「あ、でも俺お金持ってなくて……街で仕事を探そうと思うんですけど……」
「旅に必要なものは俺達が買うから気にするな。仕事は俺達に着いてくるだけで良い。護る者がいると強くなるからな。危険なこともあるから、もちろん報酬も渡す」
「そんな、ダメですよ……! 俺じゃ絶対足手まといだろうし」
「だが、スバルが街で一人になると拐われる可能性がある」
「え」
「うん、危ない」
「そ、そんな。まさか」
にわかには信じられない。
「スバルは隠しの嵐か、竜に連れてこられたかでこの国まで来たんだろう? この世界にはまだ街間転移魔術陣がない未開の地と言える場所もあるからな。……もしくは本当に迷い人か……。教えてはくれないんだろうが、この近辺の国では気を抜かない方がいい」
「分かりました……」
二人になら本当の事を言っても大丈夫だろうか?
まだ、見極められない。
「さて、そろそろ火を起こして、釣った魚と晩御飯を食べよっか」
「そうだな。街に行くのは明日にして、今日は夕食をとったあと、平原まで出てそこで野宿だな」
「決まりだね!」
「ああ」
俺は火を見守る役目を任されて、火が消えないように気をつけて木をくべた。
「ああ、起きたんだね。初めまして、俺はイーサン。白狼獣人の魔法剣士で二十三歳の冒険者だ。君は?」
「俺は昴です。学生で十八歳の人間です」
イーサンの水色の瞳を見ながら、グレンの時と同じように答えた。
グレンは蒼色の瞳をしている。
イーサンは腰まである長くサラサラな髪を後ろで一つに纏めていて、グレンはごく緩いパーマがかかっているような癖のある髪を耳朶のあたりで切り揃えている。
イーサンは凄く背が高くて、百九十を超えてそうだ。
グレンも座ってはいるけど、身長が高そう。
異世界基準はどうなってるんだと思いつつ、イーサンから差し出された手を握った。
「答えたくなかったらいいんだけど、君はどこからきたんだ? あぁ、グレンが聞いていたらすまない」
「遠いところから、とだけ……」
竜には思わず地球のことを話してしまったけど、異世界から来ました! なんて怪しすぎるもんな……。
異世界人がどういう扱いをされてるかも分からないし……。
「でも、その見た目は街では目立つから、少し僕に弄らせてくれないかな」
「え! 俺、街に行きたいんですけど、道を知らないんです……もしご迷惑でなければ、街まで着いて行ってもいいですか?」
「それは構わないよ。というか、何か訳ありっぽいし、スバルさえ良ければ、僕達と一緒に来ない? 僕もイーサンもSランク冒険者だから、スバルのこと守ってあげられるよ」
「え、でも……そんな、悪いですし……」
「そうだな……。スバル。一緒に来てくれ。スバル一人では心配だ」
イーサンがグレンに同調する。俺はそれ以上断ることも出来なくて、二人について行くことにした。
「じゃ、じゃあ……同行させて下さい」
「うん。よろしく」
「よろしくお願いします」
「さ、じゃあ、まずは黒髪黒目を変えようか」
「え!?」
「んー……淡いベージュの髪に紫眼でどうかな?」
「変えられるんですか!? というか、変えなきゃマズいですか?」
「迷い人の色だからねー……。兵に連行されて城で監禁なんて避けたいでしょう?」
「え、いや、ハイ……」
迷い人……あの竜も言っていた。俺は迷い人というものなのかもしれない。
でも城で監禁!? ってどういう事だろう……。
聞きたいけど、あんまり深くつっこむと墓穴を掘りそうで怖い。
「魔術を使うよ」
「はい、お願いします」
グレンが頷いて、グレンの両手からキラキラした細かい粒子が放たれる。
綺麗だななんて思いながら粒子に包まれていると、どうやら魔術は成功したようだ。
「はい」
グレンがどこからともなく手鏡を取り出して、僕に渡した。
「わあ……」
グレンが言った通り、鏡には淡いベージュの髪に濃い紫の瞳の俺が映っていた。
「うん。可愛い」
「か、可愛い!?」
「ああ、可愛いな」
俺、可愛いというより男だけど綺麗系だと言われていたんだけどな……。
グレンにもイーサンにも可愛いと言われてしまい、居た堪れない。
「あとは少し大きいと思うけど、街でスバルに合うマントを買うまで僕のマントを我慢して着てくれるかな? 夜は冷えるし、街でもスバルの外見は隠した方が良さそうだ」
「あ、でも俺お金持ってなくて……街で仕事を探そうと思うんですけど……」
「旅に必要なものは俺達が買うから気にするな。仕事は俺達に着いてくるだけで良い。護る者がいると強くなるからな。危険なこともあるから、もちろん報酬も渡す」
「そんな、ダメですよ……! 俺じゃ絶対足手まといだろうし」
「だが、スバルが街で一人になると拐われる可能性がある」
「え」
「うん、危ない」
「そ、そんな。まさか」
にわかには信じられない。
「スバルは隠しの嵐か、竜に連れてこられたかでこの国まで来たんだろう? この世界にはまだ街間転移魔術陣がない未開の地と言える場所もあるからな。……もしくは本当に迷い人か……。教えてはくれないんだろうが、この近辺の国では気を抜かない方がいい」
「分かりました……」
二人になら本当の事を言っても大丈夫だろうか?
まだ、見極められない。
「さて、そろそろ火を起こして、釣った魚と晩御飯を食べよっか」
「そうだな。街に行くのは明日にして、今日は夕食をとったあと、平原まで出てそこで野宿だな」
「決まりだね!」
「ああ」
俺は火を見守る役目を任されて、火が消えないように気をつけて木をくべた。
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