4 / 4
4
しおりを挟む
ポットの中で茶葉と白い小さな花がいくつも舞っている。
月花という花らしいけど、僕は聞いたことがなかった。
花茶は自分では選ばなかっただろうなあと思いながら、ティーカップに淡い緑の花茶を移し、そっと口をつけた。
「匂いに反して、飲んでみるとすっきりしてるんですね」
「ああ、だろう? 匂いは甘いけど、味は飲みやすくて気に入ってるんだ」
「ごくごくいっちゃいそうですね」
「とくに冷たいと飲み過ぎてしまうんだよな」
「確かにこれは危険ですね」
ちょっとだけ飲んで済ますのも勿体無い気がして、ティーカップ一杯だけは飲むことにする。
異変を感じたら、そこで飲むのをやめようと思って。
「祐は皇都の人?」
「いえ。僕は少しの間、滞在してるだけです」
僕は首を左右に軽く振って微笑んだ。
「じゃあ、帰ってしまうのかい?」
「どこかに部屋を借りてしばらく皇都に住んでみるのも良いかなあとも思うんですけど、皇都には詳しくないんでどのあたりがいいんだろうと思ったりもして」
「私が住んでいるところは部屋が余っているが……」
「真さんは、皇都に住んでるんですね」
「ああ。中心部からは離れているが」
「静かで良さそうですね」
「まあ、そうだな」
「見に行ってもいいですか?」
「いつでもおいで! 話は通しておく」
言ってから、警戒はどうした自分と思って、頭を抱えたくなった。
で、でも真さんは悪い人では無さそうだし、身なりもちゃんとしてるし、となると家賃とかも高いかな……。
「参考までに家賃は高いですか?」
聞いてみると、真さんは迷わずに信じられない答えを返してきた。
「いや、家賃は取らないよ」
「えっ!?」
「私の家だから、祐から家賃を取ることはない」
「いえ、そういうわけには……」
「使用人はいるけど、広い家に暮らしてるから寂しくて。一緒に暮らしてくれる人を探してたんだ」
「真さんなら、一緒に暮らしたいっていう人沢山いるんじゃ……」
「そうでもないよ」
「そうかなあ……」
上手い話にはきっと裏があるよなあ……と思いつつ、温かい花茶を口に含んだ。
月花という花らしいけど、僕は聞いたことがなかった。
花茶は自分では選ばなかっただろうなあと思いながら、ティーカップに淡い緑の花茶を移し、そっと口をつけた。
「匂いに反して、飲んでみるとすっきりしてるんですね」
「ああ、だろう? 匂いは甘いけど、味は飲みやすくて気に入ってるんだ」
「ごくごくいっちゃいそうですね」
「とくに冷たいと飲み過ぎてしまうんだよな」
「確かにこれは危険ですね」
ちょっとだけ飲んで済ますのも勿体無い気がして、ティーカップ一杯だけは飲むことにする。
異変を感じたら、そこで飲むのをやめようと思って。
「祐は皇都の人?」
「いえ。僕は少しの間、滞在してるだけです」
僕は首を左右に軽く振って微笑んだ。
「じゃあ、帰ってしまうのかい?」
「どこかに部屋を借りてしばらく皇都に住んでみるのも良いかなあとも思うんですけど、皇都には詳しくないんでどのあたりがいいんだろうと思ったりもして」
「私が住んでいるところは部屋が余っているが……」
「真さんは、皇都に住んでるんですね」
「ああ。中心部からは離れているが」
「静かで良さそうですね」
「まあ、そうだな」
「見に行ってもいいですか?」
「いつでもおいで! 話は通しておく」
言ってから、警戒はどうした自分と思って、頭を抱えたくなった。
で、でも真さんは悪い人では無さそうだし、身なりもちゃんとしてるし、となると家賃とかも高いかな……。
「参考までに家賃は高いですか?」
聞いてみると、真さんは迷わずに信じられない答えを返してきた。
「いや、家賃は取らないよ」
「えっ!?」
「私の家だから、祐から家賃を取ることはない」
「いえ、そういうわけには……」
「使用人はいるけど、広い家に暮らしてるから寂しくて。一緒に暮らしてくれる人を探してたんだ」
「真さんなら、一緒に暮らしたいっていう人沢山いるんじゃ……」
「そうでもないよ」
「そうかなあ……」
上手い話にはきっと裏があるよなあ……と思いつつ、温かい花茶を口に含んだ。
12
お気に入りに追加
21
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
気づいて欲しいんだけど、バレたくはない!
甘蜜 蜜華
BL
僕は、平凡で、平穏な学園生活を送って........................居たかった、でも無理だよね。だって昔の仲間が目の前にいるんだよ?そりゃぁ喋りたくて、気づいてほしくてメール送りますよね??突然失踪した族の総長として!!
※作者は豆腐メンタルです。※作者は語彙力皆無なんだなァァ!※1ヶ月は開けないようにします。※R15は保険ですが、もしかしたらR18に変わるかもしれません。
総受けなんか、なりたくない!!
はる
BL
ある日、王道学園に入学することになった柳瀬 晴人(主人公)。
イケメン達のホモ活を見守るべく、目立たないように専念するがー…?
どきどき!ハラハラ!!王道学園のBLが
今ここに!!
無自覚美少年のチート劇~ぼくってそんなにスゴいんですか??~
白ねこ
BL
ぼくはクラスメイトにも、先生にも、親にも嫌われていて、暴言や暴力は当たり前、ご飯もろくに与えられない日々を過ごしていた。
そんなぼくは気づいたら神さま(仮)の部屋にいて、呆気なく死んでしまったことを告げられる。そして、どういうわけかその神さま(仮)から異世界転生をしないかと提案をされて―――!?
前世は嫌われもの。今世は愛されもの。
自己評価が低すぎる無自覚チート美少年、爆誕!!!
****************
というようなものを書こうと思っています。
初めて書くので誤字脱字はもちろんのこと、文章構成ミスや設定崩壊など、至らぬ点がありすぎると思いますがその都度指摘していただけると幸いです。
暇なときにちょっと書く程度の不定期更新となりますので、更新速度は物凄く遅いと思います。予めご了承ください。
なんの予告もなしに突然連載休止になってしまうかもしれません。
この物語はBL作品となっておりますので、そういうことが苦手な方は本作はおすすめいたしません。
R15は保険です。
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった
なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。
ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる