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ポットの中で茶葉と白い小さな花がいくつも舞っている。
月花という花らしいけど、僕は聞いたことがなかった。
花茶は自分では選ばなかっただろうなあと思いながら、ティーカップに淡い緑の花茶を移し、そっと口をつけた。
「匂いに反して、飲んでみるとすっきりしてるんですね」
「ああ、だろう? 匂いは甘いけど、味は飲みやすくて気に入ってるんだ」
「ごくごくいっちゃいそうですね」
「とくに冷たいと飲み過ぎてしまうんだよな」
「確かにこれは危険ですね」
ちょっとだけ飲んで済ますのも勿体無い気がして、ティーカップ一杯だけは飲むことにする。
異変を感じたら、そこで飲むのをやめようと思って。
「祐は皇都の人?」
「いえ。僕は少しの間、滞在してるだけです」
僕は首を左右に軽く振って微笑んだ。
「じゃあ、帰ってしまうのかい?」
「どこかに部屋を借りてしばらく皇都に住んでみるのも良いかなあとも思うんですけど、皇都には詳しくないんでどのあたりがいいんだろうと思ったりもして」
「私が住んでいるところは部屋が余っているが……」
「真さんは、皇都に住んでるんですね」
「ああ。中心部からは離れているが」
「静かで良さそうですね」
「まあ、そうだな」
「見に行ってもいいですか?」
「いつでもおいで! 話は通しておく」
言ってから、警戒はどうした自分と思って、頭を抱えたくなった。
で、でも真さんは悪い人では無さそうだし、身なりもちゃんとしてるし、となると家賃とかも高いかな……。
「参考までに家賃は高いですか?」
聞いてみると、真さんは迷わずに信じられない答えを返してきた。
「いや、家賃は取らないよ」
「えっ!?」
「私の家だから、祐から家賃を取ることはない」
「いえ、そういうわけには……」
「使用人はいるけど、広い家に暮らしてるから寂しくて。一緒に暮らしてくれる人を探してたんだ」
「真さんなら、一緒に暮らしたいっていう人沢山いるんじゃ……」
「そうでもないよ」
「そうかなあ……」
上手い話にはきっと裏があるよなあ……と思いつつ、温かい花茶を口に含んだ。
月花という花らしいけど、僕は聞いたことがなかった。
花茶は自分では選ばなかっただろうなあと思いながら、ティーカップに淡い緑の花茶を移し、そっと口をつけた。
「匂いに反して、飲んでみるとすっきりしてるんですね」
「ああ、だろう? 匂いは甘いけど、味は飲みやすくて気に入ってるんだ」
「ごくごくいっちゃいそうですね」
「とくに冷たいと飲み過ぎてしまうんだよな」
「確かにこれは危険ですね」
ちょっとだけ飲んで済ますのも勿体無い気がして、ティーカップ一杯だけは飲むことにする。
異変を感じたら、そこで飲むのをやめようと思って。
「祐は皇都の人?」
「いえ。僕は少しの間、滞在してるだけです」
僕は首を左右に軽く振って微笑んだ。
「じゃあ、帰ってしまうのかい?」
「どこかに部屋を借りてしばらく皇都に住んでみるのも良いかなあとも思うんですけど、皇都には詳しくないんでどのあたりがいいんだろうと思ったりもして」
「私が住んでいるところは部屋が余っているが……」
「真さんは、皇都に住んでるんですね」
「ああ。中心部からは離れているが」
「静かで良さそうですね」
「まあ、そうだな」
「見に行ってもいいですか?」
「いつでもおいで! 話は通しておく」
言ってから、警戒はどうした自分と思って、頭を抱えたくなった。
で、でも真さんは悪い人では無さそうだし、身なりもちゃんとしてるし、となると家賃とかも高いかな……。
「参考までに家賃は高いですか?」
聞いてみると、真さんは迷わずに信じられない答えを返してきた。
「いや、家賃は取らないよ」
「えっ!?」
「私の家だから、祐から家賃を取ることはない」
「いえ、そういうわけには……」
「使用人はいるけど、広い家に暮らしてるから寂しくて。一緒に暮らしてくれる人を探してたんだ」
「真さんなら、一緒に暮らしたいっていう人沢山いるんじゃ……」
「そうでもないよ」
「そうかなあ……」
上手い話にはきっと裏があるよなあ……と思いつつ、温かい花茶を口に含んだ。
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