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「君は……」
「え?」
僕を見つめて何か言いかけた言葉を飲み込んだのか、一瞬間をあけたあと、お兄さんは再び口を開いた。
「あ、いや。ありがとう。普段は帽子をかぶらないから忘れてた」
「お兄さんを捕まえられて良かったです。では、僕はこれで」
帽子を渡して立ち去ろうとしたら、呼び止められた。
「待って。お礼に花茶でもどうかな?」
「え? でも」
「忙しい? 今日がダメなら他の日でも」
「ただ帽子を届けただけですし……」
「でも助かったよ。後で帽子を取りに行くのも面倒だったし」
「なら……一杯だけ」
「良かった! ありがとう。私の行きつけの店でいいかな」
「はい」
本当は知らない人だしちょっと怖いけど、そんなに嬉しそうな顔をされたら、今更イヤとも言えなくなってしまった……。
よし、ちょっとだけ飲んで、すぐに帰ろう。
◇
連れてこられたのは、皇都の大通りから一本入ったところにある喫茶店だった。
色んなメニューがあったけど、僕とお兄さんは花茶だけを頼んだ。
しばらく待っていると茶葉が入ったガラスのポットとティーカップを店員さんが持ってきて、目の前でポットにお湯を入れてくれた。
甘い香りがふわっと広がって、気分が上がる。
「僕、あんまり飲めないかもしれないです。すみません……」
本当は全部飲みたいんだけど、警戒はしておかなければ。
睡眠薬が入ってないとも限らないからね。
……警戒しすぎ?
でもポットで出してくれるなんて思ってなかった……。
「なら残ったら私が引き受けよう」
「お腹たぽたぽになっちゃいますよ」
「このくらいなら問題ないよ」
甘い香りとお兄さんの笑顔にうっとりとなりかけて、首を左右に振った。
「どうしたの? えっと……名前を教えてもらえるかな?」
「僕ですか? 僕は祐です。お兄さんは?」
「私は真という。よろしく、祐」
「よろしく、お願いします……」
あれ……今日限り、だよね……?
「え?」
僕を見つめて何か言いかけた言葉を飲み込んだのか、一瞬間をあけたあと、お兄さんは再び口を開いた。
「あ、いや。ありがとう。普段は帽子をかぶらないから忘れてた」
「お兄さんを捕まえられて良かったです。では、僕はこれで」
帽子を渡して立ち去ろうとしたら、呼び止められた。
「待って。お礼に花茶でもどうかな?」
「え? でも」
「忙しい? 今日がダメなら他の日でも」
「ただ帽子を届けただけですし……」
「でも助かったよ。後で帽子を取りに行くのも面倒だったし」
「なら……一杯だけ」
「良かった! ありがとう。私の行きつけの店でいいかな」
「はい」
本当は知らない人だしちょっと怖いけど、そんなに嬉しそうな顔をされたら、今更イヤとも言えなくなってしまった……。
よし、ちょっとだけ飲んで、すぐに帰ろう。
◇
連れてこられたのは、皇都の大通りから一本入ったところにある喫茶店だった。
色んなメニューがあったけど、僕とお兄さんは花茶だけを頼んだ。
しばらく待っていると茶葉が入ったガラスのポットとティーカップを店員さんが持ってきて、目の前でポットにお湯を入れてくれた。
甘い香りがふわっと広がって、気分が上がる。
「僕、あんまり飲めないかもしれないです。すみません……」
本当は全部飲みたいんだけど、警戒はしておかなければ。
睡眠薬が入ってないとも限らないからね。
……警戒しすぎ?
でもポットで出してくれるなんて思ってなかった……。
「なら残ったら私が引き受けよう」
「お腹たぽたぽになっちゃいますよ」
「このくらいなら問題ないよ」
甘い香りとお兄さんの笑顔にうっとりとなりかけて、首を左右に振った。
「どうしたの? えっと……名前を教えてもらえるかな?」
「僕ですか? 僕は祐です。お兄さんは?」
「私は真という。よろしく、祐」
「よろしく、お願いします……」
あれ……今日限り、だよね……?
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