鬼の皇子と恋仲になりました

hina

文字の大きさ
上 下
3 / 4

3

しおりを挟む
「君は……」
「え?」
僕を見つめて何か言いかけた言葉を飲み込んだのか、一瞬間をあけたあと、お兄さんは再び口を開いた。

「あ、いや。ありがとう。普段は帽子をかぶらないから忘れてた」
「お兄さんを捕まえられて良かったです。では、僕はこれで」
帽子を渡して立ち去ろうとしたら、呼び止められた。

「待って。お礼に花茶でもどうかな?」
「え? でも」
「忙しい? 今日がダメなら他の日でも」
「ただ帽子を届けただけですし……」
「でも助かったよ。後で帽子を取りに行くのも面倒だったし」
「なら……一杯だけ」
「良かった! ありがとう。私の行きつけの店でいいかな」
「はい」

本当は知らない人だしちょっと怖いけど、そんなに嬉しそうな顔をされたら、今更イヤとも言えなくなってしまった……。

よし、ちょっとだけ飲んで、すぐに帰ろう。





連れてこられたのは、皇都の大通りから一本入ったところにある喫茶店だった。
色んなメニューがあったけど、僕とお兄さんは花茶だけを頼んだ。

しばらく待っていると茶葉が入ったガラスのポットとティーカップを店員さんが持ってきて、目の前でポットにお湯を入れてくれた。
甘い香りがふわっと広がって、気分が上がる。

「僕、あんまり飲めないかもしれないです。すみません……」

本当は全部飲みたいんだけど、警戒はしておかなければ。
睡眠薬が入ってないとも限らないからね。
……警戒しすぎ?

でもポットで出してくれるなんて思ってなかった……。

「なら残ったら私が引き受けよう」
「お腹たぽたぽになっちゃいますよ」
「このくらいなら問題ないよ」

甘い香りとお兄さんの笑顔にうっとりとなりかけて、首を左右に振った。

「どうしたの? えっと……名前を教えてもらえるかな?」
「僕ですか? 僕は祐です。お兄さんは?」
「私は真という。よろしく、祐」
「よろしく、お願いします……」

あれ……今日限り、だよね……?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

ふたなり治験棟

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

処理中です...