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◇
夜の街を一人で歩く。
ネックガードが隠れる服を着て、歓楽街まで。
娼館の前まで来て、知らない男の人に肩を叩かれた。
「ルカ様、なりません。騎士団寮までお帰り下さい」
「あの、あなたは一体……」
「私は王家の影です。王より命を受けております。これ以上はなりません」
「Ωの方と話がしたいだけなんですが……」
その人は厳しい表情で首を左右に振った。
「そうですか……」
監視、されていた。
それとも護られていたのだろうか?
聞いてみなければ分からない。
だけど、俺は信用がないのだろうか。
悲しくていじけた気持ちになる。
「帰ります……」
「お聞き入れいただき、ありがとうございます」
「いえ……」
その人は闇に紛れ、俺は一人帰路につく。
イゼフに絡め取られてる。息苦しさを覚えて、胸を押さえた。
◇
「Ωの人を呼んだ。話したいことがあったのだろう? だからもう娼館には行くな。後でお仕置きだからな」
昼間にイゼフに呼び出され、何だろうと思ったら、どこかで見たことがあるΩの若い男性がいた。
どこで見たのだろうと思い返していたら、夜会で見かけた事があるのだと気付く。
貴族のΩの人には、聞いても仕方ないんだけどな……。
イゼフには言えないが、もし全てを捨てて、この国も出て暮らすとしたら……と考えて、その場合の生活の参考になればと考えたのだ。波瀾万丈な生き方をしていそうな娼夫ならばと。
我ながら、突拍子もない考えだった。
でもこれまでとは全く違う可能性も考えたのだ。
イゼフに縛られない生き方を。
でも王家の影がついていることを知り、逃げるタイミングも逃していたことを知った。
もう覚悟を決めるしかないみたいだ。
Ωになったら、妃になるしかないか……。
ふうと溜息を吐き、イゼフが出ていった部屋の中、Ωの男性と雑談を始めた。
夜の街を一人で歩く。
ネックガードが隠れる服を着て、歓楽街まで。
娼館の前まで来て、知らない男の人に肩を叩かれた。
「ルカ様、なりません。騎士団寮までお帰り下さい」
「あの、あなたは一体……」
「私は王家の影です。王より命を受けております。これ以上はなりません」
「Ωの方と話がしたいだけなんですが……」
その人は厳しい表情で首を左右に振った。
「そうですか……」
監視、されていた。
それとも護られていたのだろうか?
聞いてみなければ分からない。
だけど、俺は信用がないのだろうか。
悲しくていじけた気持ちになる。
「帰ります……」
「お聞き入れいただき、ありがとうございます」
「いえ……」
その人は闇に紛れ、俺は一人帰路につく。
イゼフに絡め取られてる。息苦しさを覚えて、胸を押さえた。
◇
「Ωの人を呼んだ。話したいことがあったのだろう? だからもう娼館には行くな。後でお仕置きだからな」
昼間にイゼフに呼び出され、何だろうと思ったら、どこかで見たことがあるΩの若い男性がいた。
どこで見たのだろうと思い返していたら、夜会で見かけた事があるのだと気付く。
貴族のΩの人には、聞いても仕方ないんだけどな……。
イゼフには言えないが、もし全てを捨てて、この国も出て暮らすとしたら……と考えて、その場合の生活の参考になればと考えたのだ。波瀾万丈な生き方をしていそうな娼夫ならばと。
我ながら、突拍子もない考えだった。
でもこれまでとは全く違う可能性も考えたのだ。
イゼフに縛られない生き方を。
でも王家の影がついていることを知り、逃げるタイミングも逃していたことを知った。
もう覚悟を決めるしかないみたいだ。
Ωになったら、妃になるしかないか……。
ふうと溜息を吐き、イゼフが出ていった部屋の中、Ωの男性と雑談を始めた。
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