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「いや、俺は妃になんてならない!」
「ルカも知っていると思うが、護衛騎士はαが多い。βもいるがΩはいない。Ωは仕事を探すのも大変だ。私と番になるのが最善だろう」
「何が最善なんだ……それに俺はまだαだ……」

αのコミュニティからこぼれ落ちるのが怖い。俺がΩなんて、何かの冗談だろう。
百八十六のイゼフよりは低いけど、背だって百七十八あるし、鍛えた筋肉だってついている。
母はΩだけど、父や兄と弟はαだ。護られるより護る側だったし、出来ればこれからもそうでありたい。

ありたいのに。


「ああ、そうだ。ネックガードを用意しなければな。私に贈らせてくれ」
「いやだ。ネックガードなんてしたくない」
「ルカ、必要なものだ。望まない番契約なんてしたくないだろう? それに私は他の人間にルカを取られたくない」
「Ωになりかけてるとは言われたけど、完全になるとは言われていない……」
「なってからじゃ遅いだろう。なったと同時に発情期が来たらどうする。備えは大事だ」

掴まれた手首を引っ張られて、ベッドに座らされる。
ふわりと抱きしめられ、頭を撫でられた。

「大丈夫。Ωになってもサポートする。発情期だって付き合う。私のものになってくれ」
「無理……」
「じゃない。私はもうお前以外は考えられない……」

切なげに言われて、何も言い返せなかった。


しばらくの沈黙の後、俺は口を開いた。
「……もしΩにならなかったら?」
「その時はその時だ。私は愛のない婚姻を結ぶかもな」
諦めたように笑うイゼフは、俺をベッドに押し倒した。

「いやだ……」
「本当に?」
「……中出しはしないで欲しい」
「Ωになるまでなら聞こう。もしΩになったら、してもいいか?」
「うん……。約束して」
「ああ。約束する。我が名にかけて」


近付いてくるイゼフの唇に、俺は瞳を閉じた。
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