オメガに転化したアルファ騎士は王の寵愛に戸惑う

hina

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最近疲れやすいし、他人のフェロモンが妙に気になるようになっている。
αはフェロモンで格付けし合うが、そのフェロモンが気になるのに、自分のフェロモンがうまく出ていないような気がしていた。

これはマズいと医者に行ったのはつい先週。

そこで告げられたのは思いもしないことだった。

Ωへの転化の最中だということ。

俺は二十二歳、焦茶髪で紅眼の、侯爵家の次男でαだ。αだったはずだ。国王陛下を護る護衛騎士をしていて、身体も鍛えている。

それがΩに転化しようとしているなんて信じられなかった。

思い当たる節があるとすれば……俺よりも遥かに上位αである陛下の精を身体で受けていること────。


陛下とは幼い頃から共に育ってきて、α同士、後腐れもないからと、いつからかそういう関係になっていた。
もうやめるべきか。
Ωにはなりたくない。
でも今更やめたとして、αに戻れるのか……。αからΩへの転化は珍しくて、よく分からないことが多いそうだ。

陛下は……イゼフは納得するだろうか。


どう切り出したらいいのかもわからず、俺は途方に暮れていた。








肩までの白金髪に、灰色の瞳。
野生の獣を思わせるしなやかな迫力と美しさを持つ、二十五歳の若い王は、長い足を組みベッドに腰掛けていた。

「イゼフ様」
「二人きりの時は様も陛下もよせと言っているだろう」
「申し訳御……」
「敬語も使うなよ」
「は……うん」
「どうした。浮かない顔をしている」
「もうこういう事をやめたいんだ」
「なぜ?」

Ωになろうとしているから。
とは言い出せなくて、イゼフの隣に座ったまま俯いた。

「甘い匂いだな。ルカ」
「や、やめて」

イゼフが俺の首筋に鼻を寄せて匂いを嗅ぐ。

俺のフェロモンは、αのものからΩへと変わっているのだろうか。
完全にΩになるのはいつだろう。
一度転がりだしたら、もう止まらないのか?

俺はベッドから立ち上がり、首を横に振った。

「もうやめよう」
「ルカ。急にどうしたんだ。訳を話してくれ」
掴まれた左の手首を見て、俺は項垂れた。

「体調が優れなくて医者に行ったんだ。そしたら……俺は……Ωになりかけてるって」
「そうか。ならば、私の妃にしよう」
「は?」

今、なんて……?


「αがΩになるとはなかなかない事だが、これで誰にも反対されずにルカを娶れる」
「え、いやいや。なんでそんな話に……?」

後腐れがないから、始まった関係だったはずだ。
それがΩになってしまったら、発情期はくるし、子供もできるようになってしまう。

イゼフは今現在、妃も婚約者もいない。
周りからは色々言われているようだし、自分の娘や息子をすすめる臣下も絶えないとか……。


そんな中に放り込まれて、上手くやっていく自信なんてないし、Ωになるなんて不安しかない。


騎士だって、Ωでは続けられなくなるかもしれない。
いや、もし妃になったら、騎士ではいられないか……。



突きつけられた現実に眩暈がした。
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