奴隷と王様

hina

文字の大きさ
3 / 4

3

しおりを挟む
紅のマントの下にはふさふさの尻尾があるんだろうかと考えながら、僕はその人の動向を見守った。

獣人は珍しくないみたいだけど、石切場には少なかったので、どうしても気になってしまう。


「良い。皆、そのままで」

陛下って王様ってことだよね……?

礼を取ろうとする人達をその人が止めて、彼は迷うことなく一直線に目的の人物に近付いていく。


って、僕……!!?

彼は部屋のはじの席に座った僕の隣で立ち止まった。

「ああ、私の番! 貴方に会えて嬉しい! 私と一緒に来てくれるかい?」
「は? え、ええ!?」
スプーンからスープが滴り落ちる。僕は固まったまま驚いた。
「会ったばかりなのに、こんなにも愛しい……番にはこんなにも惹かれるものなのか……」
座ったままそっと抱きつかれて、僕はスプーンを置いた。
「あ、あの……あの」
「ん? なんだい?」
「人違い、なのでは……?」
「いや、貴方で間違いない」
「どうして……」
「どうして?」
「僕なんですか……」
「それは神のみぞ知る、かな」

髪にちゅっとキスをされ、陛下が僕の手を取る。

「食事中に申し訳ないけど、これ以上ここにいると皆が食事を続けられないし、一緒に来てくれるね。食事の続きは後でにしよう」
「は、はい」

静まり返っている周囲に気が付いて、僕は慌てて席を立った。
「すまない。ありがとう」
「い、いえ……」

手を引かれながら僕は食事室を後にした。
食べかけの食事は護衛騎士さんが持ってきてくれるみたい。
無駄にならなくて良かった。


「知っているかもしれないけれど、私は国王のディセ・アーヌ・ヴィークン。もうすぐ二十四になる。愛しい人、貴方の名前は?」
「ぼ、僕はユイト・ハシマ。十八になったばかりです」
「そうなのか! おめでとう! 今度改めてお祝いさせてくれるか?」
「いえ、そんな。お祝いなんて……」
「私の誕生日も共に祝って欲しい」
「あ、はい」
「お互いの誕生日を祝い合えるなんて幸せだ……」

うっとりしたような笑顔を浮かべる陛下を見上げて、王宮の廊下を行く。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

異世界から戻ってきた俺の身体が可笑しい

海林檎
BL
異世界転生で何故か勇者でも剣士でもましてや賢者でもなく【鞘】と、言う職業につかされたんだが まぁ、色々と省略する。 察してくれた読者なら俺の職業の事は分かってくれるはずだ。 まぁ、そんなこんなで世界が平和になったから異世界から現代に戻ってきたはずなのにだ 俺の身体が変なままなのはどぼじで??

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

つまりは相思相愛

nano ひにゃ
BL
ご主人様にイかないように命令された僕はおもちゃの刺激にただ耐えるばかり。 限界まで耐えさせられた後、抱かれるのだが、それもまたしつこく、僕はもう僕でいられない。 とことん甘やかしたいご主人様は目的達成のために僕を追い詰めるだけの短い話です。 最初からR表現です、ご注意ください。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

敗戦国の王子を犯して拐う

月歌(ツキウタ)
BL
祖国の王に家族を殺された男は一人隣国に逃れた。時が満ち、男は隣国の兵となり祖国に攻め込む。そして男は陥落した城に辿り着く。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

処理中です...