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お茶を飲んでいたら、昼食の時間になっていた。ルネも一緒に昼食を食べるということで、三人で食堂に向かう。
前世のことを聞くのは、また後でになりそうだ。
「今日のお昼は何かなー」
「ミルク貝フライだよ」
ケーキを食べたからかあんまりお腹が空いてなくて、食べ切れるかなと思いながら、トレイにパンやフライ、スープの器をのせていく。
寮の食堂は学校の食堂と違って、その日のメニューが決まっているので迷うことがない。
でも気分じゃない時はちょっとツラい。
寮は男子寮と女子寮があるので、男子寮の生徒はもちろん男子しかいないけど、食堂にはおばちゃんがいて、生徒の皆の体調を気にかけてくれていた。
「ユーリくん、今日は元気ないみたいね」
「ちょっと寝不足で」
「あら、無理しちゃ駄目よ」
「はい。有難うございます」
おばちゃんにお礼を言って、会長の後に続く。
「午後の昼寝は添い寝しようか」
「余計に眠れませんのでやめて下さい」
「夫夫になったら同じベッドで寝るんだから、今から慣れておかないと」
「寝室は別にしましょう」
「は?」
冷気を漂わせないで欲しい。
「婚約者になっても生徒会長の片想いは続きますね」
「必ず振り向かせる」
「そう思うのは自由ですけど、僕は振り向きませんよ」
「俺はユーリが好きだ。だからユーリも俺を好きになる」
「謎理論……」
僕からしてみれば、マイナスに振り切っている会長との関係だけど、これから先プラスになることはあるんだろうか。
なかった場合、本当に別れられないんだろうか。
もしそれで僕が苦しんだとしても、見て見ぬふりされてしまうんだろうか。
それは嫌だなあ……。
「エド!寮に居たんだね」
「シモン。お前こそ街に行かなかったのか?」
「うん。今日は寮でのんびりしようと思って」
「副会長! こんにちは」
「やあ。ユーリくんとルネくんも。エドと一緒だったんだね」
半分くらい食べ進めたところで、生徒会副会長のシモン先輩が声をかけてきた。
長い銀髪に紫の瞳をした美人系の副会長だ。会長と同学年の二年生、侯爵家嫡男で、会長と人気を二分する人だ。
まだ手をつけていない食事の載ったトレイを持ったままのシモン副会長は、会長の前の席、ルネの隣に座っていいか聞いている。
ルネは「どうぞ」と笑顔を見せている。
「週明けはいよいよ新入生歓迎会だね。今年は隠れんぼで、無事制限時間を隠れ切った新入生には、購買と学校の食堂で使える商品券一万レッタ分が贈られることになってるよ。二人も頑張って隠れてね」
シモン副会長が僕達にそう教えてくれる。
新入生歓迎会は毎年恒例の行事らしくて、全校生徒が参加することになっている。
「隠れる場所の狙い目はどことかありますか?」
「それを教えてルネくんが当日その場所に隠れたとしても僕らが見つけちゃうよ?」
「ですよね。自分で探すしかないかあ」
「森の中の一定範囲内にも隠れられるから、強いて言うならその辺りに隠れるのもいいかもね」
僕は会長に見つからないようにしなきゃ。人がいないところで見つかったら、何をされるか……あまり考えたくない。
だったら分かりやすいところに隠れて会長以外の人に見つけてもらうのも手かもしれない。
商品券は魅力的だけど、背に腹はかえられない。
「制限時間ってどのくらいですか?」
「一時間半だよ。二年と三年は全員鬼だから、隠れ切れる新入生はほとんどいないと思うな」
僕が聞くと、シモン副会長が丁寧に答えてくれる。
一学年百人ちょっとくらいだから、二学年の先輩方に探されたらすぐ見つかってしまいそうだ。
「ユーリは俺が見つけてやるからちゃんと待ってろよ」
「やです。待ちません」
「ちなみに一番早く見つかったら一週間校舎のトイレ掃除だよ」
シモン副会長の言葉に愕然とする。
「えー。じゃあ僕は五番目くらいに見つかろうかな」
「ユーリくんはやる気がないんだね。準備を進めてきた生徒会役員としてはちょっと悲しいかな」
「僕は自分が大事なだけなんです」
「ん? どういうこと?」
「とにかく、そういうことです」
説明したらややこしくなりそうなので、僕は頷くだけにした。
前世のことを聞くのは、また後でになりそうだ。
「今日のお昼は何かなー」
「ミルク貝フライだよ」
ケーキを食べたからかあんまりお腹が空いてなくて、食べ切れるかなと思いながら、トレイにパンやフライ、スープの器をのせていく。
寮の食堂は学校の食堂と違って、その日のメニューが決まっているので迷うことがない。
でも気分じゃない時はちょっとツラい。
寮は男子寮と女子寮があるので、男子寮の生徒はもちろん男子しかいないけど、食堂にはおばちゃんがいて、生徒の皆の体調を気にかけてくれていた。
「ユーリくん、今日は元気ないみたいね」
「ちょっと寝不足で」
「あら、無理しちゃ駄目よ」
「はい。有難うございます」
おばちゃんにお礼を言って、会長の後に続く。
「午後の昼寝は添い寝しようか」
「余計に眠れませんのでやめて下さい」
「夫夫になったら同じベッドで寝るんだから、今から慣れておかないと」
「寝室は別にしましょう」
「は?」
冷気を漂わせないで欲しい。
「婚約者になっても生徒会長の片想いは続きますね」
「必ず振り向かせる」
「そう思うのは自由ですけど、僕は振り向きませんよ」
「俺はユーリが好きだ。だからユーリも俺を好きになる」
「謎理論……」
僕からしてみれば、マイナスに振り切っている会長との関係だけど、これから先プラスになることはあるんだろうか。
なかった場合、本当に別れられないんだろうか。
もしそれで僕が苦しんだとしても、見て見ぬふりされてしまうんだろうか。
それは嫌だなあ……。
「エド!寮に居たんだね」
「シモン。お前こそ街に行かなかったのか?」
「うん。今日は寮でのんびりしようと思って」
「副会長! こんにちは」
「やあ。ユーリくんとルネくんも。エドと一緒だったんだね」
半分くらい食べ進めたところで、生徒会副会長のシモン先輩が声をかけてきた。
長い銀髪に紫の瞳をした美人系の副会長だ。会長と同学年の二年生、侯爵家嫡男で、会長と人気を二分する人だ。
まだ手をつけていない食事の載ったトレイを持ったままのシモン副会長は、会長の前の席、ルネの隣に座っていいか聞いている。
ルネは「どうぞ」と笑顔を見せている。
「週明けはいよいよ新入生歓迎会だね。今年は隠れんぼで、無事制限時間を隠れ切った新入生には、購買と学校の食堂で使える商品券一万レッタ分が贈られることになってるよ。二人も頑張って隠れてね」
シモン副会長が僕達にそう教えてくれる。
新入生歓迎会は毎年恒例の行事らしくて、全校生徒が参加することになっている。
「隠れる場所の狙い目はどことかありますか?」
「それを教えてルネくんが当日その場所に隠れたとしても僕らが見つけちゃうよ?」
「ですよね。自分で探すしかないかあ」
「森の中の一定範囲内にも隠れられるから、強いて言うならその辺りに隠れるのもいいかもね」
僕は会長に見つからないようにしなきゃ。人がいないところで見つかったら、何をされるか……あまり考えたくない。
だったら分かりやすいところに隠れて会長以外の人に見つけてもらうのも手かもしれない。
商品券は魅力的だけど、背に腹はかえられない。
「制限時間ってどのくらいですか?」
「一時間半だよ。二年と三年は全員鬼だから、隠れ切れる新入生はほとんどいないと思うな」
僕が聞くと、シモン副会長が丁寧に答えてくれる。
一学年百人ちょっとくらいだから、二学年の先輩方に探されたらすぐ見つかってしまいそうだ。
「ユーリは俺が見つけてやるからちゃんと待ってろよ」
「やです。待ちません」
「ちなみに一番早く見つかったら一週間校舎のトイレ掃除だよ」
シモン副会長の言葉に愕然とする。
「えー。じゃあ僕は五番目くらいに見つかろうかな」
「ユーリくんはやる気がないんだね。準備を進めてきた生徒会役員としてはちょっと悲しいかな」
「僕は自分が大事なだけなんです」
「ん? どういうこと?」
「とにかく、そういうことです」
説明したらややこしくなりそうなので、僕は頷くだけにした。
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