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「僕はものじゃありませんし、シェイルという人でもありませんし、会長と愛し合うつもりもありません」
毅然とした態度で拒否をする。甘い顔を見せちゃダメだ。ずぶずぶの関係になるのはごめんなんだ。
「んっ!? ふっ……!」
会長が距離を詰めたと思ったらいきなり唇を奪われる。激しい口付けに混乱するけど、力を込めて会長を突き離そうとする。
「んーー!」
無理矢理舌が入り込もうとしてきて、体も強い力で抱き締められていて、身動きが取れない。
「強情だな……」
「離して下さい」
息がかかるくらいの至近距離で呟かれて、身を固くした。
「俺はお前を諦めない。必ずお前を落として見せる」
「僕は落ちませんよ。早めに諦めて下さい。先輩ならお相手に困ってないでしょうし、僕に拘らなくてもいいんじゃないですか」
「お前はわかっていない。俺がどんな思いをしていたかなんて。今世では間違えない。お前と愛し合って、お前を守る」
「? 何のことだか分かりませんが、会長が僕に関わらないでいてくれるのが何よりの愛情ですよ」
僕の心の平穏のためにも、身の安全のためにも。
会長が腕の力を緩めたので、慌てて距離を取る。
「エドだ」
「はい?」
「会長ではなく、エドと呼べ。お前は特別だ」
「呼べません。会長と呼ばせて頂きます。というか、会長と関わる気はないんですってば」
「何故だ。何故拒む」
「何ででしょうかね。強いて言えば、親衛隊も怖いですし」
制裁とかされたくない。し、言えないけど、前世をしっかり覚えてますからね。根は深い。
逆に僕が覚えているから拒んでいるとは考えないんだろうか。いや、考えられたらそれはそれで困るんだけど。
酷いことをしていたとは思っていないんだろうか?
「親衛隊にはユーリには手を出さないように言っておく。不安ならなるべく俺と一緒にいればいい。その方が俺も安心出来るしな」
「親衛隊を抑えてくれるのはいいんですが、先輩と一緒にいるっていうのは遠慮します。一緒にいてくれる友人ならいますから」
会長の傍は僕にとっては居心地が悪いだろう。
「……ユーリ、付き合おう。まずはそれからだな」
「付き合いませんってば」
「何故」
「会長が強引だからです」
「だから譲歩しているじゃないか」
「どこらへんが譲ってるんですか」
僕を手に入れようとして譲らない。会長は諦める選択肢なんてないのかもしれないけど、僕は諦めて欲しい。
どこまで行っても平行線だ。
でもまだ今世で関わって一日目。ずっと拒んでいたら、そのうち諦めてくれるかもしれない。
その考えが甘かったことを僕は次の日から嫌というほど知る事になるのだった。
◇
「おはよう、ユーリ。お客さんが来てるよ」
寮の部屋は二人部屋だけど、二人部屋の共有部分の他に個室もあるつくりになっていて、プライベート空間は確保されている。
ベッドと勉強机だけの狭い個室の中で寝ていた僕は、扉へのノックと、同室の黒髪碧眼のノアの声に意識を浮上させた。
僕は朝が弱い。
ぼーっとしたまま、のっそりと起き上がり、しばし上を見上げる。
「ユーリ。寝起きのユーリは可愛いな」
その声に一気に目が冴える。
どうして! ここにいる!
そこには制服である紺のローブを羽織った会長が立っていた。
「ノア! なんでこんな男を部屋に入れたんだ!」
「こんな男って。酷いなユーリ。昨日あんなに愛し合った仲じゃないか」
「何も! なかったでしょう! キ、キス、以外は……」
何を言わされてるんだ。朝から気分最悪だ。ノアには何も言ってなかった僕も悪いけど、誰彼構わず部屋に入れるのはやめて欲しい。
いや、この男が無理矢理入って来たんだな、そうに違いない。
突然生徒会長が部屋に訪ねて来たら、誰でも中に入れちゃうかもしれないな。
僕はそうじゃないけど。
「ごめん。駄目だった?」
「明日からは入れないでね」
「明日からは強引に入ろう」
「「やめて下さい」」
ノアとハモる。ノアは同級生だけど、クラスは別だ。人脈を広げるために、同室者は別のクラスの人物が選ばれるらしい。毎年部屋割りを考える人は大変だろうなあなんてどうでもいいことを考えながら、僕は溜息をついた。
「じゃあ、俺は自分の用意してるので、なるべく早く帰ってあげて下さいね」
ノアがそう言って自分の個室へ戻って行く。
「何の用ですか?」
話したくなくて、冷たく言い放つ。一応聞くだけ、僕は心が広いと思う。
「朝食を一緒に食べようと思って」
「お一人で食べるか他の方と一緒にどうぞ」
「朝の登校も昼食も放課後は生徒会の仕事があるから無理だが、ユーリも部活があるからな。終わってから待ち合わせ……いや、生徒会室まで来てもらうか。それで下校の後、夕食も一緒に摂る予定だけど、何か質問は?」
朝から晩まで時間がある時は僕と共にいるつもりなのか。
頭が痛くなってきた。
「質問というか、全部遠慮します」
「遠慮はなしだ。拒否もなし」
「嫌いになりますよ?」
「なんだ、まだ好意が残っていたのか」
ニヤリと笑う会長は僕の言葉や態度が全然堪えていないようだ。
「わかってるなら、なおさら……!」
なけなしの好意なんてドブに捨ててやるー!
そう叫びたくなるのを我慢しながら、僕は拳を握った。
毅然とした態度で拒否をする。甘い顔を見せちゃダメだ。ずぶずぶの関係になるのはごめんなんだ。
「んっ!? ふっ……!」
会長が距離を詰めたと思ったらいきなり唇を奪われる。激しい口付けに混乱するけど、力を込めて会長を突き離そうとする。
「んーー!」
無理矢理舌が入り込もうとしてきて、体も強い力で抱き締められていて、身動きが取れない。
「強情だな……」
「離して下さい」
息がかかるくらいの至近距離で呟かれて、身を固くした。
「俺はお前を諦めない。必ずお前を落として見せる」
「僕は落ちませんよ。早めに諦めて下さい。先輩ならお相手に困ってないでしょうし、僕に拘らなくてもいいんじゃないですか」
「お前はわかっていない。俺がどんな思いをしていたかなんて。今世では間違えない。お前と愛し合って、お前を守る」
「? 何のことだか分かりませんが、会長が僕に関わらないでいてくれるのが何よりの愛情ですよ」
僕の心の平穏のためにも、身の安全のためにも。
会長が腕の力を緩めたので、慌てて距離を取る。
「エドだ」
「はい?」
「会長ではなく、エドと呼べ。お前は特別だ」
「呼べません。会長と呼ばせて頂きます。というか、会長と関わる気はないんですってば」
「何故だ。何故拒む」
「何ででしょうかね。強いて言えば、親衛隊も怖いですし」
制裁とかされたくない。し、言えないけど、前世をしっかり覚えてますからね。根は深い。
逆に僕が覚えているから拒んでいるとは考えないんだろうか。いや、考えられたらそれはそれで困るんだけど。
酷いことをしていたとは思っていないんだろうか?
「親衛隊にはユーリには手を出さないように言っておく。不安ならなるべく俺と一緒にいればいい。その方が俺も安心出来るしな」
「親衛隊を抑えてくれるのはいいんですが、先輩と一緒にいるっていうのは遠慮します。一緒にいてくれる友人ならいますから」
会長の傍は僕にとっては居心地が悪いだろう。
「……ユーリ、付き合おう。まずはそれからだな」
「付き合いませんってば」
「何故」
「会長が強引だからです」
「だから譲歩しているじゃないか」
「どこらへんが譲ってるんですか」
僕を手に入れようとして譲らない。会長は諦める選択肢なんてないのかもしれないけど、僕は諦めて欲しい。
どこまで行っても平行線だ。
でもまだ今世で関わって一日目。ずっと拒んでいたら、そのうち諦めてくれるかもしれない。
その考えが甘かったことを僕は次の日から嫌というほど知る事になるのだった。
◇
「おはよう、ユーリ。お客さんが来てるよ」
寮の部屋は二人部屋だけど、二人部屋の共有部分の他に個室もあるつくりになっていて、プライベート空間は確保されている。
ベッドと勉強机だけの狭い個室の中で寝ていた僕は、扉へのノックと、同室の黒髪碧眼のノアの声に意識を浮上させた。
僕は朝が弱い。
ぼーっとしたまま、のっそりと起き上がり、しばし上を見上げる。
「ユーリ。寝起きのユーリは可愛いな」
その声に一気に目が冴える。
どうして! ここにいる!
そこには制服である紺のローブを羽織った会長が立っていた。
「ノア! なんでこんな男を部屋に入れたんだ!」
「こんな男って。酷いなユーリ。昨日あんなに愛し合った仲じゃないか」
「何も! なかったでしょう! キ、キス、以外は……」
何を言わされてるんだ。朝から気分最悪だ。ノアには何も言ってなかった僕も悪いけど、誰彼構わず部屋に入れるのはやめて欲しい。
いや、この男が無理矢理入って来たんだな、そうに違いない。
突然生徒会長が部屋に訪ねて来たら、誰でも中に入れちゃうかもしれないな。
僕はそうじゃないけど。
「ごめん。駄目だった?」
「明日からは入れないでね」
「明日からは強引に入ろう」
「「やめて下さい」」
ノアとハモる。ノアは同級生だけど、クラスは別だ。人脈を広げるために、同室者は別のクラスの人物が選ばれるらしい。毎年部屋割りを考える人は大変だろうなあなんてどうでもいいことを考えながら、僕は溜息をついた。
「じゃあ、俺は自分の用意してるので、なるべく早く帰ってあげて下さいね」
ノアがそう言って自分の個室へ戻って行く。
「何の用ですか?」
話したくなくて、冷たく言い放つ。一応聞くだけ、僕は心が広いと思う。
「朝食を一緒に食べようと思って」
「お一人で食べるか他の方と一緒にどうぞ」
「朝の登校も昼食も放課後は生徒会の仕事があるから無理だが、ユーリも部活があるからな。終わってから待ち合わせ……いや、生徒会室まで来てもらうか。それで下校の後、夕食も一緒に摂る予定だけど、何か質問は?」
朝から晩まで時間がある時は僕と共にいるつもりなのか。
頭が痛くなってきた。
「質問というか、全部遠慮します」
「遠慮はなしだ。拒否もなし」
「嫌いになりますよ?」
「なんだ、まだ好意が残っていたのか」
ニヤリと笑う会長は僕の言葉や態度が全然堪えていないようだ。
「わかってるなら、なおさら……!」
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