1 / 7
1
しおりを挟む
VRが一般家庭にも普及し始め、VRMMOも一般的になった今。
僕永里空(ながさとそら)も今話題のVRMMOゲーム、フェアリーテイル・オンライン通称FTOを初めて早数ヶ月が経とうとしている。高校一年の夏休みが近付いているある日、僕は思いがけない誘いを受けることになる。
〈縁(えにし)さん……! このメッセージ、本気ですか?〉
〈本気だよ。リアルで空くんに会いたい。ダメかな?〉
〈だ、ダメじゃないです……! でも何で?〉
〈気になるんだ、君の事〉
縁さんはFTOで偶然見かけて惹かれた僕の憧れの人だ。
月蝕という大規模ギルドのギルドマスターで、FTO内でも人気のあるプレイヤーで、月蝕はさながら縁さんのファンクラブのようになっている。
キャラメイクが出来るとは言え、リアルがいくらか影響するという顔の作りも美しく、身長も百八十いくつかあるだろうすらっとした長身だ。
百六十八センチしかない僕とは大違い。僕は可愛いとは言われるものの、それは男の僕にとって褒め言葉なのかは疑問である。
突然だけど、僕はΩだ。α、β、Ωの三種の第二性の中のΩ。
ヒートはまだ経験がないけど、抑制剤はお守りとして持っている。近いうちに必要になるかもしれないと思うと、気が重かった。
VRはΩであることを気にしないでいられるから、僕は余計にハマっているのかもしれない。
銀髪蒼眼の縁さんは、今日もみんなの輪の中心にいる。月蝕のギルドホームは広くて大きい。広間は高い天井で大きな窓のある開放感がある造りで、三百人近くいるギルドメンバーが全員集まっても問題なさそうだ。
今は二十人ほどが広間にいて、縁さんを交えて談笑している。
そんな中でメッセージ機能を使って、縁さんから個人的にメッセージが来たのだ。
ゆ、夢じゃない……よね?
初めて縁さんを見かけた時、ゲームの中だと言うのにただならぬオーラを感じて、目が釘付けになった。
はじまりの街ですれ違っただけだけど、その時から既に大勢の人を引き連れていた。
月蝕に入ってから知ったことだけど、ローテーションが組まれていて、いくつかのグループに分かれて縁さんは平等にギルドメンバーと遊んでいるらしかった。
その中の一つに僕も入って、縁さんとゲーム内で遊んだ。
縁さんのジョブは魔法剣士で、レベルはカンスト。攻撃スタイルもカッコ良くて、僕はますます夢中になった。
僕のジョブは聖職者だから、後ろから縁さんを見守っていた。
〈僕、何の魅力もないですよ?〉
〈……どう感じるかは俺の自由だろう?〉
〈がっかりされたくないなあ〉
〈しないよ。だいじょーぶ〉
〈だといいんですけど……〉
会えるのは嬉しい。だけど、素の自分が受け入れてもらえるのか今から不安になってきた。
ゲームの中みたく、目が金色に輝いているわけでも、髪が水色なわけでもなくて、黒髪に黒眼だし、私服だっていつもはテキトーだ。
リアルの縁さんがどんな人かは想像がつかないけれど、きっとリアルでも人目を集める人だろう。
隣を堂々と歩けるだろうか。
〈空くんは、どこに住んでるの?〉
〈僕は関東です〉
〈じゃあそんなに遠くないね。俺は都内だから。最寄駅を教えて? 会いに行くよ〉
〈いえ、遊ぶところもそんなにないので、僕が都内に行きます。案内して下さい!〉
〈んー……いいの? じゃあ行きたいところ考えておいてね。案内は任せなさい〉
そうして僕は憧れの人とリアルで会う約束をした。
僕永里空(ながさとそら)も今話題のVRMMOゲーム、フェアリーテイル・オンライン通称FTOを初めて早数ヶ月が経とうとしている。高校一年の夏休みが近付いているある日、僕は思いがけない誘いを受けることになる。
〈縁(えにし)さん……! このメッセージ、本気ですか?〉
〈本気だよ。リアルで空くんに会いたい。ダメかな?〉
〈だ、ダメじゃないです……! でも何で?〉
〈気になるんだ、君の事〉
縁さんはFTOで偶然見かけて惹かれた僕の憧れの人だ。
月蝕という大規模ギルドのギルドマスターで、FTO内でも人気のあるプレイヤーで、月蝕はさながら縁さんのファンクラブのようになっている。
キャラメイクが出来るとは言え、リアルがいくらか影響するという顔の作りも美しく、身長も百八十いくつかあるだろうすらっとした長身だ。
百六十八センチしかない僕とは大違い。僕は可愛いとは言われるものの、それは男の僕にとって褒め言葉なのかは疑問である。
突然だけど、僕はΩだ。α、β、Ωの三種の第二性の中のΩ。
ヒートはまだ経験がないけど、抑制剤はお守りとして持っている。近いうちに必要になるかもしれないと思うと、気が重かった。
VRはΩであることを気にしないでいられるから、僕は余計にハマっているのかもしれない。
銀髪蒼眼の縁さんは、今日もみんなの輪の中心にいる。月蝕のギルドホームは広くて大きい。広間は高い天井で大きな窓のある開放感がある造りで、三百人近くいるギルドメンバーが全員集まっても問題なさそうだ。
今は二十人ほどが広間にいて、縁さんを交えて談笑している。
そんな中でメッセージ機能を使って、縁さんから個人的にメッセージが来たのだ。
ゆ、夢じゃない……よね?
初めて縁さんを見かけた時、ゲームの中だと言うのにただならぬオーラを感じて、目が釘付けになった。
はじまりの街ですれ違っただけだけど、その時から既に大勢の人を引き連れていた。
月蝕に入ってから知ったことだけど、ローテーションが組まれていて、いくつかのグループに分かれて縁さんは平等にギルドメンバーと遊んでいるらしかった。
その中の一つに僕も入って、縁さんとゲーム内で遊んだ。
縁さんのジョブは魔法剣士で、レベルはカンスト。攻撃スタイルもカッコ良くて、僕はますます夢中になった。
僕のジョブは聖職者だから、後ろから縁さんを見守っていた。
〈僕、何の魅力もないですよ?〉
〈……どう感じるかは俺の自由だろう?〉
〈がっかりされたくないなあ〉
〈しないよ。だいじょーぶ〉
〈だといいんですけど……〉
会えるのは嬉しい。だけど、素の自分が受け入れてもらえるのか今から不安になってきた。
ゲームの中みたく、目が金色に輝いているわけでも、髪が水色なわけでもなくて、黒髪に黒眼だし、私服だっていつもはテキトーだ。
リアルの縁さんがどんな人かは想像がつかないけれど、きっとリアルでも人目を集める人だろう。
隣を堂々と歩けるだろうか。
〈空くんは、どこに住んでるの?〉
〈僕は関東です〉
〈じゃあそんなに遠くないね。俺は都内だから。最寄駅を教えて? 会いに行くよ〉
〈いえ、遊ぶところもそんなにないので、僕が都内に行きます。案内して下さい!〉
〈んー……いいの? じゃあ行きたいところ考えておいてね。案内は任せなさい〉
そうして僕は憧れの人とリアルで会う約束をした。
11
お気に入りに追加
123
あなたにおすすめの小説
可愛い男の子が実はタチだった件について。
桜子あんこ
BL
イケメンで女にモテる男、裕也(ゆうや)と可愛くて男にモテる、凛(りん)が付き合い始め、裕也は自分が抱く側かと思っていた。
可愛いS攻め×快楽に弱い男前受け
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる