七曜学園高等部

hina

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「ん~、幸せ……」
搾りたてのミルクで作られたアイスは濃くて甘くて、幸せの味がする。

ガラス張りで牛が放牧されているのが見える牧場の売店のイートインスペースは今は僕達の貸切で。

「顔が蕩けてるな」
「だって、一番の目的だったし……」
「キスしたい」
「え……!?」
「冗談だ」

ふっと笑って目を逸らして隣でアイスを食べる泰雅に怒ることも出来ず、僕も静かにアイスを食べる。

絶対本気だったよね……そう思うものの、藪をつついて蛇を出すのは賢明じゃない。

今はアイスに集中したい。のだ。


「食べると無くなっちゃうけど、食べない選択肢はない……」

うーん、悩ましい……。

溶けない程度にゆっくりと食べた僕は、ふうと息を吐き出した。
カップのアイスも買っていこう。そうしよう。


その後、牧場の売店でお土産に持ち帰り用のアイスと牛乳と家族分のレトルトのビーフカレーを買った僕と泰雅は牧場の魔法陣から白王の転移場に移動し、東都へと帰った。

いっぱい動いていっぱい食べて幸せな一日だった。




「兄ちゃん、泰雅さん来たよ」
「あ、啓(けい)。ありがと」
二歳下の弟の啓が実家の僕の部屋に泰雅を連れてきた。
啓も七曜学園の中等部に通っている。
僕は二人兄弟で、泰雅は一人っ子だ。
啓の方が僕よりしっかりしてるし、発育もいいし、兄としては形なしだ。

「啓、ありがとな」
「いえ、ゆっくりしていってください」

泰雅が啓の肩をぽんぽん叩いた。
啓も笑顔で二人の仲も良好だ。


「じゃ、俺はこれで」

啓はリビングへ戻り、泰雅が部屋に入ってきて僕の隣に座った。

「何してたんだ?」
「少ない魔力で魔力操作の練習」

そう言って、小さい水の輪を作る。
「瑠衣の魔力操作はここ数ヶ月で格段に良くなったな」
「本当? 嬉しい」
「魔力も増えたし、学業の成績も良くなったし、来年は水曜寮か木曜寮に入れるかもな」
「だといいな」
「瑠衣は努力して偉いな」

泰雅に髪をくしゃくしゃとかき混ぜられながら、ぽつりと呟く。

「泰雅は凄いよな」
「だろ?」
「そういうところがなければもっと凄いのに」
「それは失礼」

厚みのある敷物に直に座る僕達の距離はそれほどない。
横に座る泰雅に引き寄せられて、僕は泰雅の胸に収まった。

「瑠衣、可愛い」
「そう言うのは泰雅だけだよ」
「みんな思ってても言えないだけだよ」
「そうかなー?」
「そうだよ」

僕は疑問に思うけど泰雅には確信があるみたいで、でも穏やかな表情なので、それ以上は突っ込まなかった。

今日は出かける予定もないから部屋で泰雅とのんびりすることにした。
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