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◇
土曜日、午前十時。
約束の時間に月曜寮の前に行くと、水色の半袖シャツに白いクロップドパンツの爽やかな私服姿の泰雅が待っていた。
悔しいけどかっこいいなあと思いながら、泰雅の前に立つ。
「ごめん、待った?」
「いくらでもないよ」
六月中旬。夏はすぐそこまで迫っていて、暑い日が続いていた。
「バッチをつけてあげる」
「あ、ありがとう」
僕の着ているレモンイエローの薄手の長袖パーカーの胸のあたりに、来客用の月曜寮のピンバッチを泰雅が長い指でつけてくれ、僕はいつもの様子に胸を撫で下ろした。
身長差から少し屈んだ泰雅から、いつもの泰雅の匂いがして僕は胸を弾ませた。
良い匂い……上品で甘い、久しぶりの泰雅の匂い。
「俺の部屋に行こうか」
「うん」
泰雅の後ろについて、月曜寮の中を進む。
月曜寮はまるで大きなホテルのように和モダンでお洒落で豪華な雰囲気が漂っている。
部屋は洋室だけど新しく綺麗で設備が整っていて、どこも使い込まれた様相の金曜寮とは全く違う。
「お邪魔します」
「どうぞ」
三階にある泰雅の部屋に着いて、僕は靴を脱いで上がる。
この部屋に来るのも久し振りで、また部屋に来れたことに安堵して、ソファに腰掛けていつものクッションを抱いた。
「冷たいココアでいいか?」
「うん」
泰雅は冷蔵庫からココアの入ったグラスを取り出した。どうやら準備していてくれたみたい。
駄目押しで泰雅が魔法で氷を作ってココアに入れる。
凄い冷えてそうだ。
「ありがとう」
「ああ」
沈黙が降りる。
グラスを傾けると氷がからからと鳴って、それだけで空調の効いた涼しい室内がもっと涼しくなっていくような気がした。
「泰雅は……」
「うん?」
「泰雅はなんで僕を避けてたの?」
思わずポロッと出てしまった直球すぎる言葉に僕はあっと口を押さえた。
土曜日、午前十時。
約束の時間に月曜寮の前に行くと、水色の半袖シャツに白いクロップドパンツの爽やかな私服姿の泰雅が待っていた。
悔しいけどかっこいいなあと思いながら、泰雅の前に立つ。
「ごめん、待った?」
「いくらでもないよ」
六月中旬。夏はすぐそこまで迫っていて、暑い日が続いていた。
「バッチをつけてあげる」
「あ、ありがとう」
僕の着ているレモンイエローの薄手の長袖パーカーの胸のあたりに、来客用の月曜寮のピンバッチを泰雅が長い指でつけてくれ、僕はいつもの様子に胸を撫で下ろした。
身長差から少し屈んだ泰雅から、いつもの泰雅の匂いがして僕は胸を弾ませた。
良い匂い……上品で甘い、久しぶりの泰雅の匂い。
「俺の部屋に行こうか」
「うん」
泰雅の後ろについて、月曜寮の中を進む。
月曜寮はまるで大きなホテルのように和モダンでお洒落で豪華な雰囲気が漂っている。
部屋は洋室だけど新しく綺麗で設備が整っていて、どこも使い込まれた様相の金曜寮とは全く違う。
「お邪魔します」
「どうぞ」
三階にある泰雅の部屋に着いて、僕は靴を脱いで上がる。
この部屋に来るのも久し振りで、また部屋に来れたことに安堵して、ソファに腰掛けていつものクッションを抱いた。
「冷たいココアでいいか?」
「うん」
泰雅は冷蔵庫からココアの入ったグラスを取り出した。どうやら準備していてくれたみたい。
駄目押しで泰雅が魔法で氷を作ってココアに入れる。
凄い冷えてそうだ。
「ありがとう」
「ああ」
沈黙が降りる。
グラスを傾けると氷がからからと鳴って、それだけで空調の効いた涼しい室内がもっと涼しくなっていくような気がした。
「泰雅は……」
「うん?」
「泰雅はなんで僕を避けてたの?」
思わずポロッと出てしまった直球すぎる言葉に僕はあっと口を押さえた。
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