七曜学園高等部

hina

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「瑠衣、秋山先輩はこの後予定があるらしい。俺達は月曜寮の俺の部屋に行こう」
「え、やだよ」
「なぜ」
放課後。校舎の階段で偶然秋山先輩と鉢合わせたのに、泰雅はそんなことを言う。


寮は……自分の寮とは違う寮に出入りする時は、その寮の住人に受付で来客用のピンバッチを借りて来てもらうことになる。
友達の部屋に行ったりすることは出来るけど、泊まりは基本的には許可されていない。

月曜寮は一人部屋だけど、その他の寮は基本的には二人部屋だ。

僕にもルームメイトがいて、まだぎこちないけど、うまくやっていけそうだから不安はない。


「僕、泰雅と居すぎだと思うんだよね」
「足りないな。もっと親睦を深めよう」
「やだ」
「なら無理矢理攫ってく」
「やめて」
「雨野くん、好きな子には優しくね」
「優しくしてます」
「そうかな」
浮遊魔法で一気に階段を下りることも出来るけど、今日は先輩と一緒に足を動かす。

そして泰雅の言葉に首を傾げる秋山先輩に、ですよねと同意して、僕は何度も首を縦に振った。

泰雅は不服そうだ。

放課後に生徒会がない日には泰雅は僕と居ようとする。

僕の友達は泰雅に遠慮して、僕と泰雅を二人きりにしようとするから、僕と泰雅はそんなんじゃないよと言うと泰雅の機嫌が悪くなって、結局泰雅と二人きりになることになってしまう。

解せない。


それにしても、秋山先輩は優しいのに泰雅は秋山先輩に冷たい。
秋山先輩は相手にしてないみたいだけど、優しい先輩をないがしろにするのはやめて欲しい。
秋山先輩みたいな人が怒ると怖いと思うんだけどな。

「瑠衣さん、俺と来て下さい」
「えー……どうしようかなあ」
「瑠衣、お願い」
「まあ、予定もないしいいよ。だけど、一時間で帰るからね」
「やった! ありがとう瑠衣」

とびっきりの笑顔を見せる泰雅に、まあいいかと思ってしまったのは、ここだけの話。
僕も泰雅に甘いのかもしれない。





「瑠衣、何飲む?」
「ココア」
「了解」

魔法で一瞬で牛乳を温めた泰雅はスプーンで缶のココアの粉を掬っている。
その後姿を見つめて、モスグリーンのソファに置かれた紺色のクッションをぎゅっと抱えた。
中等部の頃から僕に抱きしめられてるクッションはくったりしている。
泰雅はそれを分かっていて、このクッションだけは新しく変えないでいる。

「入ったよ」
「ありがとう」
「どういたしまして」

泰雅からカップを受け取って一口口をつけた。

泰雅のいれてくれるココアは、学園内のスーパーで売られているココアの中で一番高いココアだからか、コク深い気がする。
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