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僕は今、ものすごく緊張している。


王城の一室で国王陛下を待っているからだ。

というのも一週間前、国王陛下からの手紙を持って、使者の人が僕のお店を訪れた。
手紙には僕と陛下が運命の番かもしれないこと、そのことを確かめたいから城まで来て欲しいとの旨が書かれていた。

僕は運命の番なんてあり得るんだろうかという思いでいっぱいだったけど、一週間後に使者の人が迎えに来るということを手紙と口頭で伝えられ、ひとまず使者の人は帰っていった。

僕は国王陛下に会うのに相応しい服を買いに行ったり、もし運命の番だったらどうなるのかを調べたりと、落ち着かない一週間を過ごした。

そして今日。
ついに来てしまった。

使者の人は馬車の中で「陛下はお優しい方ですから大丈夫ですよ」と僕を気遣ってくれたけど、僕は気が気じゃなかった。

不敬罪とかイヤですよー!
王族に対する礼の取り方とかも知らないし、全然大丈夫な気はしない。

何より、発情しちゃったら……?
僕は陛下と身体を重ねるのだろうか……。
なんでオメガに生まれちゃったんだなんて思考を飛躍させつつ、出来ることもないので深呼吸を繰り返していた。


何度目かに大きく息を吐いたところで、「陛下、入られます」と部屋の外から男の人の声がした。

扉が開き、豪華な衣装の凄く美しい人が入ってくる。僕はその人を凝視した。
上がっていく体温を感じ、力が抜けていく。
座っていた2人がけのソファに倒れ込む自分をコントロール出来なくて、僕はこれ以上なく焦っていた。

「す、すみません……」
「いい。構わないよ。私の番」

淹れたてのコーヒーのような良い香りがする。香りを吸うと下腹部がジンと痺れ、脈が早くなる。

こんなの、知らない。

「私は国王のレトビアス・ヒューネ・ファルマンテ。君がハーシェルで間違いないみたいだね」

陛下が隣に腰掛けて俺の上半身を支え、顔を覗き込んできた。

苦し紛れに静まれ心臓と念じてみたけど、効果は全くなかった。
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