欲しいのはただ君一人

hina

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「夢の中で僕はオリバーという人になっていて」
「……律くんがオリバー……!」
「はい。って湊さん!?」

思わず律くんを抱き締めていた。
込み上げてくるものがあったけど、VRだからか、涙は出なかった。

それが不思議で、だけど胸はいっぱいで、律くんがオリバーであったことが本当に嬉しくて、でもこれが現実なのか信じられなくて、俺は混乱していた。

「続けて?」
「でも、この体勢じゃ……」
「そうだな、ごめん」

律くんを離して、姿勢を正した。
気分はこれ以上ないほど高揚しているけど、冷静にならなければ。

「初めて見たのは……よく繰り返して見るのは、リアムが命を落とすところなんですけど……でもいつからか、二人で幸せに暮らしている場面も見るようになって……」
「命を落とすところ……。それは辛かったね」
「はい。目覚めたらいつも頬が濡れていて……オリバーの気持ちが痛いほど伝わってきて……」
「うん。そっか、よく耐えたね」
「湊さん……」
律くんの頭を撫でると、律くんは俺を見つめてほのかに微笑んだ。

「僕、どうしてこんな夢を見るんだろう、何か意味があるのかなって思って……。僕は何もしてあげられないのに……」
「それは多分、ただの夢じゃないからだよ」
「え……夢じゃないって……?」
「律くん。突拍子もないことを言うようだけど、それは前世の記憶だよ。俺は覚えてるんだ。自分がリアムであったことも、オリバーを深く愛していたことも……そして、俺がずっと探していたのは君だったんだ。律くんがオリバーの生まれ変わりで本当に良かった」
「え? え……それって……?」
混乱した様子の律くんをもう一度抱き締めた。
感触を確かに感じたくて目を閉じる。

VRであることがもどかしい。
感覚は確かにあるけど、出来るならリアルで感じたかった。
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