9 / 15
9
しおりを挟む
◇
咄嗟に遮ってしまったけど、律くんはきっと俺に好きだと伝えようとしていた。
告白されたら、答えを出さなければならない。
今はそれを避けたかった。
律くんのことは好きだけど、オリバーと律くんどちらかを選べと言われたら、俺はオリバーを選んでしまうだろう。
律くんを傷付けたいわけじゃないし、運命の番にどうしても惹かれてしまう自分も否定は出来ない。
俺は利己的で優柔不断だ。
でもそんな自分になってしまうなんて、想像もしてなかった。
運命の番との出逢いは全くの偶然で想定外のものだったから……。
ただ、それも言い訳だなと思いながら、俺は地下鉄に乗るべく改札を通った。
◇
「暫く恋愛の曲を書くのはやめようと思うんだ」
「そうか。恋愛から離れるのも悪くないよな」
「正直、迷ってるんだ。見つからない前世の番か今世の運命の番か……」
「もう前世の記憶がある人達の集いには参加しないのか?」
「今は身バレの可能性があるからな。『湊』が参加してたら厄介だろ」
「ああ。確かにややこしい事になりそうだな」
「それに今まで有力な情報を得られたこともないし……」
ふうと溜息を吐いた。徒労に終わることばかりだった。
集まりにどんなに沢山の人が参加していても、自分の唯一は見つからなかった。
出来る限りのことをして、見つかるまで探す。
そう決めるのは簡単でも、現実はただ厳しく無情で。
俺には諦めの悪さだけが残り、いつしかそれは意地になっていた。
小型端末の向こうの兄が沈黙した。
「……湊。何を選んでも後悔はするかもしれないが、悩めるうちは徹底的に悩んでおけよ。迷うのは仕方ないことだし、人間だからな。でも俺はお前のこれまでを見てきてる。前に進むのは自然なことだ」
「なるべく、後悔が少なくなるように努力するよ」
「ああ。困ったことがあったら、また連絡してこい」
ふっと笑った気配を感じて、俺はうんと小さく返した。
咄嗟に遮ってしまったけど、律くんはきっと俺に好きだと伝えようとしていた。
告白されたら、答えを出さなければならない。
今はそれを避けたかった。
律くんのことは好きだけど、オリバーと律くんどちらかを選べと言われたら、俺はオリバーを選んでしまうだろう。
律くんを傷付けたいわけじゃないし、運命の番にどうしても惹かれてしまう自分も否定は出来ない。
俺は利己的で優柔不断だ。
でもそんな自分になってしまうなんて、想像もしてなかった。
運命の番との出逢いは全くの偶然で想定外のものだったから……。
ただ、それも言い訳だなと思いながら、俺は地下鉄に乗るべく改札を通った。
◇
「暫く恋愛の曲を書くのはやめようと思うんだ」
「そうか。恋愛から離れるのも悪くないよな」
「正直、迷ってるんだ。見つからない前世の番か今世の運命の番か……」
「もう前世の記憶がある人達の集いには参加しないのか?」
「今は身バレの可能性があるからな。『湊』が参加してたら厄介だろ」
「ああ。確かにややこしい事になりそうだな」
「それに今まで有力な情報を得られたこともないし……」
ふうと溜息を吐いた。徒労に終わることばかりだった。
集まりにどんなに沢山の人が参加していても、自分の唯一は見つからなかった。
出来る限りのことをして、見つかるまで探す。
そう決めるのは簡単でも、現実はただ厳しく無情で。
俺には諦めの悪さだけが残り、いつしかそれは意地になっていた。
小型端末の向こうの兄が沈黙した。
「……湊。何を選んでも後悔はするかもしれないが、悩めるうちは徹底的に悩んでおけよ。迷うのは仕方ないことだし、人間だからな。でも俺はお前のこれまでを見てきてる。前に進むのは自然なことだ」
「なるべく、後悔が少なくなるように努力するよ」
「ああ。困ったことがあったら、また連絡してこい」
ふっと笑った気配を感じて、俺はうんと小さく返した。
33
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説
異世界でゆるゆる生活を満喫す
葉月ゆな
ファンタジー
辺境伯家の三男坊。数か月前の高熱で前世は日本人だったこと、社会人でブラック企業に勤めていたことを思い出す。どうして亡くなったのかは記憶にない。ただもう前世のように働いて働いて夢も希望もなかった日々は送らない。
もふもふと魔法の世界で楽しく生きる、この生活を絶対死守するのだと誓っている。
家族に助けられ、面倒ごとは優秀な他人に任せる主人公。でも頼られるといやとはいえない。
ざまぁや成り上がりはなく、思いつくままに好きに行動する日常生活ゆるゆるファンタジーライフのご都合主義です。
君が好き過ぎてレイプした
眠りん
BL
ぼくは大柄で力は強いけれど、かなりの小心者です。好きな人に告白なんて絶対出来ません。
放課後の教室で……ぼくの好きな湊也君が一人、席に座って眠っていました。
これはチャンスです。
目隠しをして、体を押え付ければ小柄な湊也君は抵抗出来ません。
どうせ恋人同士になんてなれません。
この先の長い人生、君の隣にいられないのなら、たった一度少しの時間でいい。君とセックスがしたいのです。
それで君への恋心は忘れます。
でも、翌日湊也君がぼくを呼び出しました。犯人がぼくだとバレてしまったのでしょうか?
不安に思いましたが、そんな事はありませんでした。
「犯人が誰か分からないんだ。ねぇ、柚月。しばらく俺と一緒にいて。俺の事守ってよ」
ぼくはガタイが良いだけで弱い人間です。小心者だし、人を守るなんて出来ません。
その時、湊也君が衝撃発言をしました。
「柚月の事……本当はずっと好きだったから」
なんと告白されたのです。
ぼくと湊也君は両思いだったのです。
このままレイプ事件の事はなかった事にしたいと思います。
※誤字脱字があったらすみません
ひとりぼっち獣人が最強貴族に拾われる話
かし子
BL
貴族が絶対的な力を持つ世界で、平民以下の「獣人」として生きていた子。友達は路地裏で拾った虎のぬいぐるみだけ。人に見つかればすぐに殺されてしまうから日々隠れながら生きる獣人はある夜、貴族に拾われる。
「やっと見つけた。」
サクッと読める王道物語です。
(今のところBL未満)
よければぜひ!
【12/9まで毎日更新】→12/10まで延長
溺愛お義兄様を卒業しようと思ったら、、、
ShoTaro
BL
僕・テオドールは、6歳の時にロックス公爵家に引き取られた。
そこから始まった兄・レオナルドの溺愛。
元々貴族ではなく、ただの庶子であるテオドールは、15歳となり、成人まで残すところ一年。独り立ちする計画を立てていた。
兄からの卒業。
レオナルドはそんなことを許すはずもなく、、
全4話で1日1話更新します。
R-18も多少入りますが、最後の1話のみです。
婚約破棄をしたいので悪役令息になります
久乃り
BL
ほげほげと明るいところに出てきたら、なんと前世の記憶を持ったまま生まれ変わっていた。超絶美人のママのおっぱいを飲めるなんて幸せでしかありません。なんて思っていたら、なんとママは男!
なんとこの世界、男女比が恐ろしく歪、圧倒的女性不足だった。貴族は魔道具を使って男同士で結婚して子を成すのが当たり前と聞かされて絶望。更に入学前のママ友会で友だちを作ろうとしたら何故だか年上の男の婚約者が出来ました。
そしてなんと、中等部に上がるとここが乙女ゲームの世界だと知ってしまう。それならこの歪な男女比も納得。主人公ちゃんに攻略されて?婚約破棄されてみせる!と頑張るセレスティンは主人公ちゃんより美人なのであった。
注意:作者的にR15と思う箇所には※をつけています。
浮気三昧の屑彼氏を捨てて後宮に入り、はや1ヶ月が経ちました
Q.➽
BL
浮気性の恋人(ベータ)の度重なる裏切りに愛想を尽かして別れを告げ、彼の手の届かない場所で就職したオメガのユウリン。
しかしそこは、この国の皇帝の後宮だった。
後宮は高給、などと呑気に3食昼寝付き+珍しいオヤツ付きという、楽しくダラケた日々を送るユウリンだったが…。
◆ユウリン(夕凛)・男性オメガ 20歳
長めの黒髪 金茶の瞳 東洋系の美形
容姿は結構いい線いってる自覚あり
◆エリアス ・ユウリンの元彼・男性ベータ 22歳
赤っぽい金髪に緑の瞳 典型的イケメン
女好き ユウリンの熱心さとオメガへの物珍しさで付き合った。惚れた方が負けなんだから俺が何しても許されるだろ、と本気で思っている
※異世界ですがナーロッパではありません。
※この作品は『爺ちゃん陛下の23番目の側室になった俺の話』のスピンオフです。
ですが、時代はもう少し後になります。
捨てられオメガの幸せは
ホロロン
BL
家族に愛されていると思っていたが実はそうではない事実を知ってもなお家族と仲良くしたいがためにずっと好きだった人と喧嘩別れしてしまった。
幸せになれると思ったのに…番になる前に捨てられて行き場をなくした時に会ったのは、あの大好きな彼だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる