欲しいのはただ君一人

hina

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咄嗟に遮ってしまったけど、律くんはきっと俺に好きだと伝えようとしていた。

告白されたら、答えを出さなければならない。
今はそれを避けたかった。

律くんのことは好きだけど、オリバーと律くんどちらかを選べと言われたら、俺はオリバーを選んでしまうだろう。

律くんを傷付けたいわけじゃないし、運命の番にどうしても惹かれてしまう自分も否定は出来ない。

俺は利己的で優柔不断だ。

でもそんな自分になってしまうなんて、想像もしてなかった。

運命の番との出逢いは全くの偶然で想定外のものだったから……。

ただ、それも言い訳だなと思いながら、俺は地下鉄に乗るべく改札を通った。




「暫く恋愛の曲を書くのはやめようと思うんだ」
「そうか。恋愛から離れるのも悪くないよな」
「正直、迷ってるんだ。見つからない前世の番か今世の運命の番か……」
「もう前世の記憶がある人達の集いには参加しないのか?」
「今は身バレの可能性があるからな。『湊』が参加してたら厄介だろ」
「ああ。確かにややこしい事になりそうだな」
「それに今まで有力な情報を得られたこともないし……」

ふうと溜息を吐いた。徒労に終わることばかりだった。
集まりにどんなに沢山の人が参加していても、自分の唯一は見つからなかった。

出来る限りのことをして、見つかるまで探す。

そう決めるのは簡単でも、現実はただ厳しく無情で。
俺には諦めの悪さだけが残り、いつしかそれは意地になっていた。


小型端末の向こうの兄が沈黙した。

「……湊。何を選んでも後悔はするかもしれないが、悩めるうちは徹底的に悩んでおけよ。迷うのは仕方ないことだし、人間だからな。でも俺はお前のこれまでを見てきてる。前に進むのは自然なことだ」
「なるべく、後悔が少なくなるように努力するよ」
「ああ。困ったことがあったら、また連絡してこい」
ふっと笑った気配を感じて、俺はうんと小さく返した。
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