欲しいのはただ君一人

hina

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〈湊さん、湊さん〉
〈ん?〉
〈ファンタジーワールドってVRゲーム知ってますか?〉
〈あー、うん。やった事はないけど、有名だね〉
〈一緒に始めてみませんか?〉
〈んー……そうだね?〉
〈なんではてなマーク?〉

僕はクスッと笑って小型端末をテーブルに置き、いちご牛乳を飲んだ。

それは湊さんが帰ってからしばらく経った日のこと。


湊さんのことは伏せてお客さんが運命の番で、今その人は東京にいると友達に言ったら、VRゲームを勧められたのだ。

まるでそこにいるみたいに感じられて、触った感触もあるって聞いたら、湊さんとやってみたくなるのは当然で。

湊さんは必要なものを揃えるからと言って、始めるのは明後日からになった。





「こんなものかな」
「湊さん、本名で遊ぶんですか?」
「うん。律くんも?」
「ゲームを遊ぶと言うより、湊さんと会うという目的の方が重要なので」
「そっか。それにしても結構リアルだよな。びっくりした」
「湊さんの見た目は金髪碧眼にはなってますけど、顔の造形はそのままですね」
「律くんなんて更にそのまんまじゃないか」
「だって早く会いたかったし、めんどくさかったんです」
拗ねながら言ったら、湊さんが笑いながら頭をぽんぽんしてきた。
「湊さんってバレないかな?」
「寄せてると思われて終わりじゃないか?」
「そうだといいんですけど……」
「もしもの時は見た目を変えるよ」
「わかりました。あ、フレンド登録してパーティ組みましょう」
「うん」

冒険はあんまりしないかもしれないけど、機能を使うためにもフレンド登録は欠かせない。

その日は少しだけファーストタウンを歩いて、弱いモンスターがいる草原に出てみたりして、ゲームを終えた。

僕と同じで普段VRゲームをやらないと言う湊さんは、でも僕より上手にゲームを楽しんでいた。
食べ物を買ったり、自分のホームに家具を増やしたりするにはゲーム内通貨が必要なので、湊さんとの時間を充実させるためにちょっと頑張ろうと思ったりした。
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