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第14章 Sin fin
第426話 家族旅行8
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例によって少年王ガルダと挨拶を交わし、ガルガンダがお土産の入った箱を渡した。
前日にロリからパウリナへ連絡の有ったカマラダとインスティントの小型の石像と、元の石像を題材にした絵画だ。
「凄い、これが火の神と海の神ですか!!」
本当は火の属性と水の属性だが、ロリは不問にするようだった。
本来の説明を聞き意味を知っていれば、通称で呼ばせても原住民に浸透しやすいと判断したからだ。
「でも何で片方は人型なの?」
「あら、ロリ姉様から聞いてなかったの?」
「経典を渡されて、まだ読んでないの・・・」
「じゃ教えてあげるわ。女人像は愛情を司る赤龍としての象徴よ。そして愛情を信じる者には湧き上がる闘志がもたらされるの。愛情には思い人と結ばれる可能性と融和が訪れ、知性ある者の慈しむ感情と同時に、愛情に対する裏切りは身を滅ぼす厄災が降りかかると言われてるわ。愛情とは愛国心、家族愛、友愛、恋愛、万物に対する慈愛の事よ」
「凄い・・・じゃ海の神様も?」
「カマラダ様は生命を司る藍龍と呼ばれているの。生命には優しさと他者への思いやりに友愛の加護を与え、慈悲無き者には海の怒りを持って償いがもたらされるそうよ」
「ええっ神様の名前を知ってるのぉ、お姉さま!!」
「勿論よ。だって私の守護龍様だもん」
「ええぇぇぇぇっ!!」
「何ぃぃぃぃぃぃ!!」
パウリナの説明にフロルとボノスが大声で驚いた。
「お姉さまの守護龍ぅぅ!!」
「そうよ、お会いした事もあるわよ」
「「・・・」」
開いた口が閉じないフロルとボノスだ。
「親父殿と出会ってから、いろんな事に驚いたが神の名を知り、会っていたとはな・・・」
「貴方達も会ってるでしょ?」
「私たちはお会いして無いわ」
「あー見ただけ?かも?」
「なんですのお姉さま、教えてください!!」
「ほら、大きな黒龍様よ。あの方も神様のお一人よ。”ウチのお城”の裏に大きな石像が有るでしょ? あれよ」
「あの巨大な黒龍様が神様だったなんて・・・私、神様の頭に乗っちゃってる・・・」
フラフラになったフロルは衝撃の余り自室で休む事にした。
「初代様は暫く休憩なさいますが、モンドラゴン様とお子様方は寛いでくださいませ」
アポストルがその場をしのぎ、体裁を保ちながら今まで通りお持て成しをしていた。
「兄者、姉者、先程の話は本当なのか?」
「俺たちは会った事は無いけどよ、他の母ちゃんたちも言ってたぜ」
「多分真実でしょうね。お母さんに力を授ける程だから」
「・・・」
子供たち同士で話しているがガルダは緊張している。
身近で獣人と接しているからだ。
しかも、すぐ横に尻尾の先がピコピコ動いているのが気になって仕方ないのだった。
アポストルに重臣たちは、渡された石像と絵画を見て騒いでいた。
これを元にした巨大な石像をどこに作るかで検討している様だった。
そこに、落ち着いたフロルが現れて昼食となる。
エルヴィーノは終始、ガルガンダとグラナダに国の説明をしていた。
それはゲレミオとしてどのような体制を取るかだ。
市場規模としては小さいが、自国や参加国に無い食材を探す事と、どの部門を先行させるか。
今は現地での信用できる者はほとんど居ないので、こちらに出向く者が居るのか選別して欲しい事に、獣人を受け入れるか調べる事などだった。
黒龍繋がりのパウリナ親子とフロル親子は、イスラの関係者の目にはどの妻よりも仲良く見えた。
実際、移住先でも同居しているし、自国に龍種を迎え入れる体制をボノスが熱弁しているからだ。
今までとは違い、午後の観光も新しく作る龍種の施設を視察しに行くようだ。
初日は神龍の話題が尽きなかったようなので、二日目は朝から家族で上空からの観光になった。
二日目の夜も同様だが、フロルとボノスの対応が違った。
前日の午後に獣人を見てどう感じたか意見を聞いたと言う。
ボノスから龍種の世話係として受け入れたいと、目的を聞かされた重臣たちは誰一人反対する者は居なかったらしい。
龍に騎乗して大空を翔る。
それが他国に対してどれほどの脅威になるか計り知れないからだ。
空からの攻撃は勿論であり、偵察や移動手段など敵対国に対して優位性を得るのだから、重臣たちの鼻息は荒かったと聞いたのだ。
そして夕食の宴席ではフロル親子がパウリナ親子に獣人の移民を猛烈な勢いで説得しているのだ。
「クスクス、フロルって本当に面白いわ」
「ええっ何でぇ?」
「だって私たちは王妃よ。誰も龍に騎乗したりしないもの」
そこはお国柄なのか、危険なのか、性別が問われるのか定かでは無いが、フロルも戦闘を指揮して戦った経験があり、龍騎士の優位性を踏まえるよりも騎乗したい欲求が高いからだ。
だが、最終的には決まり文句で逃げるパウリナだ。
「”あの人”と相談して決めましょう」
あの人とは、夫であり黒龍王だ。
無論フロルもそれは理解している事だ。
しかし、獣人達を招き入れるにはパウリナ親子の許可が必要だと、事前に防衛線を張っていたので、この場では気楽なエルヴィーノだ。
翌朝も、過度な手土産を用意されて驚くパウリナだったが、どんな見返りにするか帰国してからゆっくりと考えようと思っていた。
「母上、しつこくなかったか?」
「印象が悪かったかしら?」
「どうだろう・・・しかし我らの下心は見透かされているようだな」
「だって、しょうがないじゃない!!」
「やはり親父殿の説得を強化した方が良いのではないか?」
「解ったわ。明日のお姉さまが終われば返事をもらうまで、とことん”くっついて”いるわ」
☆
またもや災難か?
前日にロリからパウリナへ連絡の有ったカマラダとインスティントの小型の石像と、元の石像を題材にした絵画だ。
「凄い、これが火の神と海の神ですか!!」
本当は火の属性と水の属性だが、ロリは不問にするようだった。
本来の説明を聞き意味を知っていれば、通称で呼ばせても原住民に浸透しやすいと判断したからだ。
「でも何で片方は人型なの?」
「あら、ロリ姉様から聞いてなかったの?」
「経典を渡されて、まだ読んでないの・・・」
「じゃ教えてあげるわ。女人像は愛情を司る赤龍としての象徴よ。そして愛情を信じる者には湧き上がる闘志がもたらされるの。愛情には思い人と結ばれる可能性と融和が訪れ、知性ある者の慈しむ感情と同時に、愛情に対する裏切りは身を滅ぼす厄災が降りかかると言われてるわ。愛情とは愛国心、家族愛、友愛、恋愛、万物に対する慈愛の事よ」
「凄い・・・じゃ海の神様も?」
「カマラダ様は生命を司る藍龍と呼ばれているの。生命には優しさと他者への思いやりに友愛の加護を与え、慈悲無き者には海の怒りを持って償いがもたらされるそうよ」
「ええっ神様の名前を知ってるのぉ、お姉さま!!」
「勿論よ。だって私の守護龍様だもん」
「ええぇぇぇぇっ!!」
「何ぃぃぃぃぃぃ!!」
パウリナの説明にフロルとボノスが大声で驚いた。
「お姉さまの守護龍ぅぅ!!」
「そうよ、お会いした事もあるわよ」
「「・・・」」
開いた口が閉じないフロルとボノスだ。
「親父殿と出会ってから、いろんな事に驚いたが神の名を知り、会っていたとはな・・・」
「貴方達も会ってるでしょ?」
「私たちはお会いして無いわ」
「あー見ただけ?かも?」
「なんですのお姉さま、教えてください!!」
「ほら、大きな黒龍様よ。あの方も神様のお一人よ。”ウチのお城”の裏に大きな石像が有るでしょ? あれよ」
「あの巨大な黒龍様が神様だったなんて・・・私、神様の頭に乗っちゃってる・・・」
フラフラになったフロルは衝撃の余り自室で休む事にした。
「初代様は暫く休憩なさいますが、モンドラゴン様とお子様方は寛いでくださいませ」
アポストルがその場をしのぎ、体裁を保ちながら今まで通りお持て成しをしていた。
「兄者、姉者、先程の話は本当なのか?」
「俺たちは会った事は無いけどよ、他の母ちゃんたちも言ってたぜ」
「多分真実でしょうね。お母さんに力を授ける程だから」
「・・・」
子供たち同士で話しているがガルダは緊張している。
身近で獣人と接しているからだ。
しかも、すぐ横に尻尾の先がピコピコ動いているのが気になって仕方ないのだった。
アポストルに重臣たちは、渡された石像と絵画を見て騒いでいた。
これを元にした巨大な石像をどこに作るかで検討している様だった。
そこに、落ち着いたフロルが現れて昼食となる。
エルヴィーノは終始、ガルガンダとグラナダに国の説明をしていた。
それはゲレミオとしてどのような体制を取るかだ。
市場規模としては小さいが、自国や参加国に無い食材を探す事と、どの部門を先行させるか。
今は現地での信用できる者はほとんど居ないので、こちらに出向く者が居るのか選別して欲しい事に、獣人を受け入れるか調べる事などだった。
黒龍繋がりのパウリナ親子とフロル親子は、イスラの関係者の目にはどの妻よりも仲良く見えた。
実際、移住先でも同居しているし、自国に龍種を迎え入れる体制をボノスが熱弁しているからだ。
今までとは違い、午後の観光も新しく作る龍種の施設を視察しに行くようだ。
初日は神龍の話題が尽きなかったようなので、二日目は朝から家族で上空からの観光になった。
二日目の夜も同様だが、フロルとボノスの対応が違った。
前日の午後に獣人を見てどう感じたか意見を聞いたと言う。
ボノスから龍種の世話係として受け入れたいと、目的を聞かされた重臣たちは誰一人反対する者は居なかったらしい。
龍に騎乗して大空を翔る。
それが他国に対してどれほどの脅威になるか計り知れないからだ。
空からの攻撃は勿論であり、偵察や移動手段など敵対国に対して優位性を得るのだから、重臣たちの鼻息は荒かったと聞いたのだ。
そして夕食の宴席ではフロル親子がパウリナ親子に獣人の移民を猛烈な勢いで説得しているのだ。
「クスクス、フロルって本当に面白いわ」
「ええっ何でぇ?」
「だって私たちは王妃よ。誰も龍に騎乗したりしないもの」
そこはお国柄なのか、危険なのか、性別が問われるのか定かでは無いが、フロルも戦闘を指揮して戦った経験があり、龍騎士の優位性を踏まえるよりも騎乗したい欲求が高いからだ。
だが、最終的には決まり文句で逃げるパウリナだ。
「”あの人”と相談して決めましょう」
あの人とは、夫であり黒龍王だ。
無論フロルもそれは理解している事だ。
しかし、獣人達を招き入れるにはパウリナ親子の許可が必要だと、事前に防衛線を張っていたので、この場では気楽なエルヴィーノだ。
翌朝も、過度な手土産を用意されて驚くパウリナだったが、どんな見返りにするか帰国してからゆっくりと考えようと思っていた。
「母上、しつこくなかったか?」
「印象が悪かったかしら?」
「どうだろう・・・しかし我らの下心は見透かされているようだな」
「だって、しょうがないじゃない!!」
「やはり親父殿の説得を強化した方が良いのではないか?」
「解ったわ。明日のお姉さまが終われば返事をもらうまで、とことん”くっついて”いるわ」
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