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第13章 建国

第380話 け、け、けっ・・・

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その日、建国の準備に追われる中、エルヴィーノはゲレミオが運営する高級旅館の食事店に出向いていた。

「これは一体どういうことか説明してもらおうかアルコン!」
エルヴィーノが腹立たしく思ったのも理由がある。
シーラ親衛隊の十人がダークエルフの結婚相手を要望しているので集めて欲しいと依頼したのだが、目の前にいる者達はどう見てもオッサンばかりだった。
しかも普段とは違い、身なりを整えて若作りをしているのだ。
その中に貴族のような風貌のアルコンが居た。

「我ら一族の中で独身の未婚男はこれで全部だ」
自信満々に言い放つアルコン。

「あのさぁ、まさかとは思うけどアルコンは既婚者だよね?」
「残念ながら我は未婚だ。我らは旅の途中様々な苦難を乗り越えてきたが女性が少なかったので若い世代を優先してきたのだ」
「・・・」
エルヴィーノがジト目で全員を睨んだ。
若干目が泳いでいる者がいたが、だからと言って何も言わない。
彼らが何を考えているのかは手に取るように解るからだ。

シーラの母方の種族はサキュバスだ。
シーラ自体は混血になるが、シーラ親衛隊はほとんど純潔のサキュバスだ。
成人しているが幼さも残っている。
しかしサキュバスなのだ。
全員が同じ衣装を着ていたとしても、その容姿は男をたぶらかすには十分だろう。
むしろ幼女趣味ならば完全に”やられてしまう”だろう。
エルヴィーノの目の前にいる同朋もほとんどが鼻息荒く若干高揚しているようだ。

「はぁぁぁぁぁぁっ」
それを見て深いため息を吐くエルヴィーノ。
ちょっと前までは種族の存続も危ぶまれていたのに、このだらしなく浮かれた態度を見れば溜息も出したくなる。
「とりあえず、みんなには”これ”を付けて欲しい」
そう言って一人ずつ渡したのは”魅力防御”の魔法陣が付与された首飾りだ。
効果の説明はせず、女王からの寄贈としてダークエルフの男が必ず着用するようにと嘘を付いて渡したのだ。
“まさか”とは思うが同族を虜にして、良からぬ事をさせない為の処置なのだ。
シーラに聞いたが、サキュバスも全てが魅力の魔眼持ちでは無いらしい。
しかし、備えあれば憂い無しだ。

(アルコンは俺の爺さんと同年代のはずだ。そうなれば700歳前後のはずだ。若干白髪は見えるが老人ではないし、まだまだ現役で働いてもらわなきゃいけないが・・・親衛隊と結婚となると・・・)
エルヴィーノの妄想の中でアルコンと親衛隊が仲良くしている姿を思い浮かべた。
(ジジイと孫じゃねぇか!! 俺はこいつらを鬼畜にする手助けをしているのかぁぁ?)
悶々と”あり得ない想像”をしていると親衛隊の十人が現れた。


ダークエルフのオッサンたちと、成人して間もないサキュバスの女子が向かい合って並んでいる。
オッサンたちは、エサの前で興奮するケモノの様に見えた。
親衛隊の女子は多少恥じらいも見せるが冷静に相手を見ているようだ。

なぜか司会はエルヴィーノが進め、それぞれの自己紹介が始まった。
このようなお見合いなど知識も経験も無いので、全員が個々に話すように指示して自由行動させた。

(後はどうにでも成れ)

エルヴィーノの前で繰り広げられる舌戦だ。
暫くするとアルコンが単独行動に出た。
目の前にいた女子を窓際に誘って”集中口撃”するようだ。
しかし、エルヴィーノは見た!
アルコンの後ろから付き従い歩く親衛隊の横顔の口元が歪んでいたのだ。
(あれは絶対に魅力を使うつもりだな)

エルヴィーノは確信した。
本当の目的はダークエルフを虜にする事。
もしくは城内の者達を虜にする事。
それによってシーラの立場を不動のものとする事。
事前に打った手が功を奏したのでホッとするが、城内に居る兵士や料理人にも城勤めの証として首飾りの着用を義務付けようと、残っていた首飾りを大量に複製する事にした。

(いや、待てよ。城内だけじゃなくて国内にいるすべての者達が対象になるよなぁ。そうなるとこの十人に”魅力防止”の魔導具つけさせた方が早いな。良しそうしよう)

シーラに命令してシーラが装備している魅力防止の魔導具を複製し全員に強要してもらう事を思いつく。

(あ、駄目だ。ノタルム国からもサキュバスが来ることを踏まえれば主要人物には装備の義務化が必要だな。まずは城内と教会にあとは順番だ)

国の事を考えながら楽しそうにするオッサンと少女を眺めていると、ふと思った。
(どう見てもオッサンたちはメロメロみたいだけど首飾りの効果は効いているのか?)

魅力効果は従順に従うだけだが、オッサンたちの態度はそれとは違い、美少女たちにデレデレなのだ。
(だめだこりゃ。完全に本物の魅力に落ちやがった)

種族特有の魔眼の魅力では無く、少女達の本来の容姿がオッサン達のエロい心を鷲掴みにしたようだ。
オッサン達は目の前の若い小娘を娶り、”ウリャウリャ”出来る事で理性がぶっ飛んでいるようにしか見えないエルヴィーノだ。


良い雰囲気で一旦は終了し、あとは個々に行動してもらう事となった。
エルヴィーノは即座にシーラに説明して命令した。
「あの子たち、そんなことするかなぁ」
「でもあいつらの種族からの命令もあるかもしれないぞ」
「でも・・・」
「だからこれを付ければ心配なしだ。な、頼む」
「解ったわ。その代わり・・・」
抱きつかれて強引に舌を吸われてしまった。

そのあとはダークエルフ王女であるリーゼロッテに適当な嘘を言って城の兵士と重要な物には城勤めの証を義務付けてもらった。

最後は大聖堂で司教二人に特定の魔法防御が付与されている事を説明し、管理者に装備させるように依頼した。

一通り巡った後で思いついた。
(エルフの女性の出入りを禁止するように、サキュバスの出入りを禁止した方が良いのかなぁ? あれ? 親衛隊はシーラの魅力が効いているならシーラの命令だけでいいのか!?)

どうやら無駄な行動をしていた事に気づいた大魔王だった。


その後10日ほど経つと、一組の男女が女王の前に現れた。

「女王陛下、実はこの者と結婚する事を報告に参りました」
「・・・アルコン。その者は理解しているのか?」
「女王陛下、私はアルコン様と共にこの国の為に働きとうございます」
「・・・本気のようね。シーラさんには説明したのかしら?」
「女王陛下のお許しをうかがってから報告いたします」

自分が許可しなければ先に進まないし、責任も重大だが今まで見なかったアルコンの笑顔に、つい許してしまったのだ。

「解りました。あなたたちが納得しての事であれば良いでしょう」

女王の許可を得た二人はシーラとエルヴィーノに報告に向かった。
シーラは普通に驚いたようだがエルヴィーノは、それはもう驚きを超えて椅子から転げ落ちた。

「何ぃぃぃ、け、け、結婚だとぉぉぉ!! 自分の年を考えているのかぁぁ!!」
「何を言う。我らは結婚を誓いあったのだ。うとましい事などしておらん」

新妻になる予定の召使いである親衛隊を見つめて顔が赤くなるアルコン。
(何だとぉぉ、どうせ長年ジャンドール王にこき使われてきた腹いせにクエルノ族の女を征服して楽しみたいだけだろうがっ!! しかも変態だ。アルコンは少女趣味の変態だったのか)
などと勝手な妄想をして同朋を睨みつけるエルヴィーノだった。
しかしエルヴィーノが何を思っても、周りには二人を祝福する者が大勢いたのだった。

そして、衝撃はそれだけでは無かった。
翌日以降、連日ダークエルフのオッサンと親衛隊の少女が一組ずつ訪れては結婚の報告をしたのだった。






人族の年齢で例えるならで言うならば、50前後のオッサンと16、7の小娘が結婚だとぉぉぉ!!
何てうらやましいんだぁぁぁ!!
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