上 下
370 / 430
第13章 建国

第369話 準備中2

しおりを挟む
慌ただしくしていたエルヴィーノにシオンとガンソから連絡が有った。

それも”会いたいと”と一言だけだ。
何事が起こったのかと心配してラ・ノチェ・デル・カスティリオ夜の帝國城・インペリオに訪れた。

謁見の間では、従者として仕える身だが信頼深さから先陣を任されているシオンが申し立てていた。
「我らは陛下の特命を受けている身なれば、建国の準備よりも侵略のご命令を優先するべきだと何度も話し合ったのですが・・・」
シオンが困った表情で説明してくれた。

「陛下、何故我らを使っては下さらないのですか!?」
強面のガンソが涙ぐんで迫って来ると焦るエルヴィーノだ。

「何故だと? それは、かの国をゲレミオの配下に置く事を何よりも優先しているからで、その事を一番信頼しているお前達に託したからだ。余計な手間を取らせずに進めて欲しかったのだが・・・2人の言わんとする事も理解する」

「「陛下」」

「現状の計画準備を部下に任せるのか、一旦中断するのかは2人に任せる」
怖いオッサンが笑顔になった。

「確かに順調に進んだ計画も途中で変更を余儀なくされる事もあるだろう・・・何事も経験か。では、計画の変更を伝える。かの国の侵略計画を一旦中止し、ゲレミオの総力を挙げて我が国の建国に助力してくれ」
「「はは、畏まりました」」

「計画変更は侵略開始の延長だが、それに対しての対策を練ってからにしてくれよ。突発的だろうが偶発的だろうが、臨機応変に対応できるような体制を維持するようにしてくれ。今回の件を利用して部下の訓練をすれば良いだろう」
「は、このガンソとシオンにお任せあれ」
「早急に手配してサルクロスに馳せ参じます」

(ふぅ・・・とりあえず、本人達の意思を尊重しようかな)


※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez


事前にエマスコして、直系聖女達に集まってもらった場所に向かう国王だ。

「国王、連絡の内容だけどもう調べたわよ」
(はやっ、そんなに時間経ってないけど・・・)
「あなたの念願だもの、みんな協力してくれたわ」

それは公式に各国から来賓を呼んで開催される新しい国のお披露目の日だ。

しかし、その場に居る親族の顔を見れば解かるのだ。
目が輝いて、口元が緩んでいる。
(もう誰かに聞いたのかなぁ、自分達が旅行気分で楽しみたいだけだろうに・・・)

「ありがとうございます。既に占ってもらったのですね。それで運気的に何日が良いのですか?」

一族を代表して教祖であるエネロが説明してくれた。
「ふむ。国王よ、占いでは今から六ヶ月後の始まりの日が最も良いと出たのだが・・・」
「どうしました?」
「いや六ヶ月も先だと長くは無いかのぅ?」
「そんな事無いですよ、むしろホッとしてます。準備に時間が掛っているからその位が丁度良いと思ったんだ」
「そうか、国王が良ければ問題無しじゃ」


そしてエルヴィーノから一族に依頼した。
その内容は簡易宿泊施設などの増築だ。
国内には旅館は存在するが、圧倒的に足りないと予測される。
高級旅館は親族やゲレミオの重役の為に確保して、問題視される種族間の価値観を考慮した種族専用の簡易宿泊施設を大量に増設したいと提案したのだ。
勿論、アルモニアの親族からは”収益”が入るので大賛成された。
そして大まかな配置だが、アルモニア人及び旅のエルフ、獣人、クエルノ族の間隔で簡易宿泊施設を地域分けする予定だ。
種族に寛容な獣人の宿泊施設が緩衝剤のように区分けされれば、多少なりとも人族達の争いは少なくなるだろう。


さて、問題の収益だか参考までに前回のペンタガラマではバリアンテとアルモニアでは金銭の移動はほぼなかった。
理由は神龍に敬意を示したのだ。
実際にバリアンテからアルモニアに動いた金はブロマルの購入金額だけなのだ。
今も続いている教会の建設は、資材と労働者は現地調達でバリアンテ負担し、教会関係者が陣頭指揮をとる場合はアルモニア負担で、司祭の配置はアルモニア教の負担なのだ。
また、ペンタガラマの郊外に設置された仮設宿泊施設はアルモニア負担で収益はアルモニアの物となったからだ。
報告ではそれなりに収益は有ったらしく、バリアンテではそこまで手が回らなかったのも事実だ。


したがってサルクロスの場合も同じ作戦で依頼した。
面倒なのは宿泊施設が隣接しているとアルモニア人とクエルノ族が対立する可能性だが、エルヴィーノはさほど感じては無かった。
むしろ他種多様な種族が存在する獣人達の寝床が心配だったのだが、前例が有るのでマルソ殿に丸投げするエルヴィーノだ。

獣人族の”寝台の種類”は大人用で3mから0.5mまで有るのだから、まさに他種族だ。
便所も種族用で用意する必要が有る。


そして転移場所だが、式典期間は三か所に増やし入国規制も予定する。
これは一度に大量に入国しても対処できないからだ。
各国の一日における入国数を3,000人までとして、宿泊施設は完全予約制だ。
当然だが、初日は各国の主要な人物を厳選して選ぶ事となる。
当たり前だが、全ての親族と打ち合わせをして選ぶのだ。

またアルモニア、バリアンテ、ノタルムの王城付近に専用転移場所を設置する。
流石にメディテッラネウスには必要無いと判断した。
ただし、これは一般様だ。
親族は専用の部屋に直接転移出来るようにする。
その位の気は使わないと、後から妻達に”正座”させられるからだ。
同じ過ちは犯さないと、自分には学習能力が有ると自負するも、新たな失敗でちょくちょく”正座”するエルヴィーノだった。




“まっぱ”の正座で聞くのは御小言とエロティックな体罰です。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

レベル596の鍛冶見習い

寺尾友希(田崎幻望)
ファンタジー
旧副題:~ちなみに勇者さんは、レベル54で、獣の森をようやく踏破したところだそうです~  オイラはノア。  オイラの父ちゃんは、『神の鍛冶士』とまで言われた凄腕の鍛冶士……なんだけど、元冒険者の母ちゃんが死んでからというものの、鍛冶以外ダメダメの父ちゃんは、クズ同然の鉱石を高値でつかまされたり、伝説級の武器を飲み屋のツケに取られたり、と、すっかりダメ親父。  今では、いつも酔っぱらって、元・パーティメンバーからの依頼しか受けなくなっちゃった。    たまに依頼が入ったかと思うと、 「ノア!  オリハルコン持ってこい!」 「ないよ、そんなの!?」 「最果ての亀裂にでも行きゃ、ゴロゴロ落ちとるだろ!」 「どこだよ、そのムチャクチャ遠そうなトコ!?」  てなわけで、オイラの目下の仕事は、父ちゃんが使う鉱石拾いと素材集めってわけ。  そして、素材を集めるため、何度も強敵に挑み続けたオイラは、ついに気付いてしまった。  魔獣は、何も、殺さなくても素材をドロップしてくれること。  トドメさえささなければ、次に行くときまでに、勝手に回復して、素材を復活させてくれていることに!  かくして、オイラの地下倉庫には、伝説の勇者が、一生を通して数個しか入手できないような素材が、ゴロゴロ転がることとなる。 「父ちゃん、そろそろオイラにも、売り物の剣。打たせてくれよ」 「百年早いわ、バカモノ……ひっく」 「……じゃあしょうがない、ご近所さんに頼まれた草刈り鎌でも作るか。  マグマ石とアダマンタイトの合金に、火竜のウロコ、マンティコアの針を付与して。  出来た、ノア特製・雑草の燃える鎌!」 「……!?  お前、なんでそんなの持ってるんだ!?」 「え?普通に、火竜からプチッと」  最強鍛冶見習い・ノアの、常識外れの日常と冒険の物語。  三巻以降のストーリーを加筆修正中。今まで公開してきたお話を引き下げることがあります。

妖魔大決戦

左藤 友大
ファンタジー
中学三年生 草壁正輝は、鳥取県の自然豊かな田舎町 大山町で母親 真理子、祖父の有蔵と三人で暮らしている。両親が離婚し妹の愛菜と別れてから4年が経った夏のある日、親友の克己に誘われ一緒に大山寺の「麒麟獅子舞」を観に行き見事に麒麟獅子に頭を噛まれたが正輝は何の違和感もなく普通に過ごしていた。しかし、麒麟獅子に噛まれた後から正輝は不思議な体験をするようになった。そして今、日本だけでなく世界は危機に直面していた。憎悪と闇の神 黑緋神之命と滝夜叉姫が妖怪を悪霊化させ日本を滅ぼそうと企んでいたのだ。そして、正輝は遥か昔、日本を守った英雄「聖戦士」の子孫として黑緋神之命が率いる悪霊軍団と戦わなければならなかった。 日本を含め世界の未来を守る為に聖戦士 正輝が妖怪達と共に黑緋神之命と滝夜叉姫、そして悪霊軍団に立ち向かう─

グラティールの公爵令嬢―ゲーム異世界に転生した私は、ゲーム知識と前世知識を使って無双します!―

てるゆーぬ(旧名:てるゆ)
ファンタジー
ファンタジーランキング1位を達成しました!女主人公のゲーム異世界転生(主人公は恋愛しません) ゲーム知識でレアアイテムをゲットしてチート無双、ざまぁ要素、島でスローライフなど、やりたい放題の異世界ライフを楽しむ。 苦戦展開ナシ。ほのぼのストーリーでストレスフリー。 錬金術要素アリ。クラフトチートで、ものづくりを楽しみます。 グルメ要素アリ。お酒、魔物肉、サバイバル飯など充実。 上述の通り、主人公は恋愛しません。途中、婚約されるシーンがありますが婚約破棄に持ち込みます。主人公のルチルは生涯にわたって独身を貫くストーリーです。 広大な異世界ワールドを旅する物語です。冒険にも出ますし、海を渡ったりもします。

AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武
ファンタジー
All Free Online──通称AFOは、あらゆる自由が約束された世界。 主人公である少年は、チュートリアルを経て最速LvMAXを成しえた。 Q.有り余る力を何に使う? A.偽善の為に使います! これは、偽善を行いたい自称モブが、秘密だらけの電脳(異)世界を巻き込む騒動を起こす物語。 [現在修正中、改訂版にはナンバリングがされています] 現在ハーレム40人超え! 更新ノンストップ 最近は毎日2000文字の更新を保証 当作品は作者のネタが続く限り終わりません。 累計PV400万突破! レビュー・感想・評価絶賛募集中です。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

離縁された妻ですが、旦那様は本当の力を知らなかったようですね? 魔道具師として自立を目指します!

椿蛍
ファンタジー
【1章】 転生し、目覚めたら、旦那様から離縁されていた。   ――そんなことってある? 私が転生したのは、落ちこぼれ魔道具師のサーラ。 彼女は結婚式当日、何者かの罠によって、氷の中に閉じ込められてしまった。 時を止めて眠ること十年。 彼女の魂は消滅し、肉体だけが残っていた。 「どうやって生活していくつもりかな?」 「ご心配なく。手に職を持ち、自立します」 「落ちこぼれの君が手に職? 無理だよ、無理! 現実を見つめたほうがいいよ?」 ――後悔するのは、旦那様たちですよ? 【2章】 「もう一度、君を妃に迎えたい」 今まで私が魔道具師として働くのに反対で、散々嫌がらせをしてからの再プロポーズ。 再プロポーズ前にやるのは、信頼関係の再構築、まずは浮気の謝罪からでは……?  ――まさか、うまくいくなんて、思ってませんよね? 【3章】 『サーラちゃん、婚約おめでとう!』 私がリアムの婚約者!? リアムの妃の座を狙う四大公爵家の令嬢が現れ、突然の略奪宣言! ライバル認定された私。 妃候補ふたたび――十年前と同じような状況になったけれど、犯人はもう一度現れるの? リアムを貶めるための公爵の罠が、ヴィフレア王国の危機を招いて―― 【その他】 ※12月25日から3章スタート。初日2話、1日1話更新です。 ※イラストは作成者様より、お借りして使用しております。

危険な森で目指せ快適異世界生活!

ハラーマル
ファンタジー
初めての彼氏との誕生日デート中、彼氏に裏切られた私は、貞操を守るため、展望台から飛び降りて・・・ 気がつくと、薄暗い洞窟の中で、よくわかんない種族に転生していました! 2人の子どもを助けて、一緒に森で生活することに・・・ だけどその森が、実は誰も生きて帰らないという危険な森で・・・ 出会った子ども達と、謎種族のスキルや魔法、持ち前の明るさと行動力で、危険な森で快適な生活を目指します!  ♢ ♢ ♢ 所謂、異世界転生ものです。 初めての投稿なので、色々不備もあると思いますが。軽い気持ちで読んでくださると幸いです。 誤字や、読みにくいところは見つけ次第修正しています。 内容を大きく変更した場合には、お知らせ致しますので、確認していただけると嬉しいです。 「小説家になろう」様「カクヨム」様でも連載させていただいています。 ※7月10日、「カクヨム」様の投稿について、アカウントを作成し直しました。

処理中です...