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第13章 建国
第367話 リカルド再び
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「リカルド・・・最近退屈して無いか?」
「・・・いいえ、そのような事は全く・・・」
困った顔で言い返すがエルヴィーノには通用していない。
「じゃお前にコレを頼む」
そう言って束になった書類を机の上に置いた。
「拝見します。・・・これは」
「俺の種族の国が出来たけどさ、お披露目するにあたって兵士や側近の衣装を統一しようと思ってるんだ、そこで全て用意する物に種族の紋様を付けるようにしたい」
エルヴィーノの説明を聞きながら書類に目を通すリカルドだ。
「それでさぁ、個人の寸法も記載されてるけど、これを任せていいか?」
「ハ、早急に手配致します」
「頼んだぞ。現地に行って着用する者達と打ち合わせるも良し、工場や職人達にも直接指示してくれ」
「は、畏まりました。それでは早速行動いたします」
慌ただしく動き回り出て行ったリカルドだった。
そこに紅茶を持って現れたのはリリオだ。
「あれで良かったか?」
「ええ、ありがとうございます」
「いや、感謝するのはこっちの方だよ」
話しはこうだ。
リカルドはゲレミオの中枢を担っている。
それはエルヴィーノの信頼が厚いからだ。
内心、歳を取ったら無理やりでも若返りさせようと企んでいる。
そんなリカルドが最近愚痴をこぼしていると聞いた。
曰く、以前は陛下と共に未知の冒険をしていた時があった。
曰く、最近は書類仕事が多く、現場も知らないし身体がなまっている。
曰く、重責の有る仕事は充実しているが物足りない。
曰く、念願の建国に何かしら携わりたい欲求がふつふつと込み上げている。
曰く、ああ、昔が懐かしい。
そんな内容を耳元で聞く者から、巡り巡ってエルヴィーノの耳に入って来たのだ。
勿論報告では無く他愛も無い世間話を意図的にしている者からだ。
しかしそんな内容でも心配して発信源に会って聞いた所、最近は直接陛下の役に立っていない事に不満が有ったらしい。
エルヴィーノ的には十二分に役立っているし、二度と危険な仕事はさせないと誓っていたのだが、ずっと放置していたのも事実だった。
そんな時に、全ての鎧と衣装を一新して紋様を付ける事が決まったのだ。
お互いの思惑が一致した瞬間だった。
役に立ちたい者と、面倒だから誰かに丸投げしたい者だ。
水を得た魚の様に楽しそうに飛んで行ったリカルドを見ていたエルヴィーノとリリオだった。
リカルドは精力的に回って説明した。
今までの鬱憤を撒き散らすかのように護衛の聖騎士を2人引き連れて主要箇所を回っていた。
資料を基に発注先であるイグレシアの甲冑工房に武器工房、ペンタガラマの兵士予定の獣人達との打ち合わせに、こちらの工房にも立ち寄り説明する。
クラベルのブロマル工場で紋様の大きさを決めたり、新しい国として準備しているサルクロスに転移してダークエルフ達と打ち合わせをしたり、細かな要望を聞き入れてイグレシアの高級服屋に衣装の発注を行なったりと、充実した日々を過ごしているとリリオから聞いていた。
そしてリカルトが当初から想定していた問題が現実となる。
それは女王の衣装だ。
リカルドの見解で五着用意していたが、ダークエルフの女性達と男性達の意見が分かれたようだ。
女王らしい美しい”お召し物”を想定する男達と、強い女王に相応しい衣装を要望する女性達だ。
この要望は種族だけの要望であり、本人からは派手で無い物が言い渡されていた。
流石に困ったリカルドは再度服屋に相談し、サンクタ・フェミナにもお伺いを立てた。
「お義母様の衣装かぁ・・・リカルド、この件はお姉様に相談しましょう」
取り急ぎ別荘で打ち合わせする事になったリカルドだ。
「女王の衣装ねぇ・・・考えた事も無かったわぁ」
「お姉様、やはり種族が違うと着る物も変わるのかしら?」
「見当もつかないわ。そもそも私が知る限り女王は居ないもの・・・」
「お姉様、エルフ王に聞いたらどうかな?」
「そうねぇ、もしかしたら昔何処かの国に女王が居たかも知れないわね」
そして王宮へ。
「さて、儂も長く生きてはいるが女王は初めてだからなぁ。ロザリー、良い物を仕立ててやってくれよ」
「はい、心得ております」
頼みのエルフ王も女王に相応しい衣装は解らなかったらしい。
「ねぇ、シーラはどうかしら?」
「そうだわ、シーラを忘れてたわ。あの国なら参考になるかも知れないわ」
そして三人でシーラの元に転移した。
当たり前なのかノタルム国でも過去に女王は存在しなかったらしい。
「ごめんなさい、力になれなくて」
「良いのよシーラ、お義母様に確認しましょうロリ」
「はいお姉様」
結局は振り出しに戻った。
「お義母様、女王の衣装ですが・・・」
「大丈夫よロザリーさん、こちらで手配したの。リカルドさんは他の者達の衣装をお願いしますね。それから、前回の衣装は全部頂くわ。本当にありがとう」
全員が呆気に取られた様だった。
どうやらリカルドの取越苦労だったようだ。
肝心の女王の衣装はリーゼロッテがメルヴィに相談していたのだった。
2人の間ではメルヴィが女王の衣装を受け継ぐ事で決まっていた。
ならばメルヴィが考えても問題無いとリーゼロッテの許可を得て自らの案を採用する事となったメルヴィだ。
それは頭の先からつま先までに至る物で、”某国”で用意される事となる。
王冠、首飾り、耳飾り、指輪、小振りの杖に、ひらひらとした衣装、肘まで有る手袋、脚を細く小さく見せる女性用の靴だ。
そのすべてに攻撃や防御の魔法が付与された物になる。
金属や魔石以外は全て漆黒の衣装だ。
☆
側近の衣装も多少は揉めたようだった。
「・・・いいえ、そのような事は全く・・・」
困った顔で言い返すがエルヴィーノには通用していない。
「じゃお前にコレを頼む」
そう言って束になった書類を机の上に置いた。
「拝見します。・・・これは」
「俺の種族の国が出来たけどさ、お披露目するにあたって兵士や側近の衣装を統一しようと思ってるんだ、そこで全て用意する物に種族の紋様を付けるようにしたい」
エルヴィーノの説明を聞きながら書類に目を通すリカルドだ。
「それでさぁ、個人の寸法も記載されてるけど、これを任せていいか?」
「ハ、早急に手配致します」
「頼んだぞ。現地に行って着用する者達と打ち合わせるも良し、工場や職人達にも直接指示してくれ」
「は、畏まりました。それでは早速行動いたします」
慌ただしく動き回り出て行ったリカルドだった。
そこに紅茶を持って現れたのはリリオだ。
「あれで良かったか?」
「ええ、ありがとうございます」
「いや、感謝するのはこっちの方だよ」
話しはこうだ。
リカルドはゲレミオの中枢を担っている。
それはエルヴィーノの信頼が厚いからだ。
内心、歳を取ったら無理やりでも若返りさせようと企んでいる。
そんなリカルドが最近愚痴をこぼしていると聞いた。
曰く、以前は陛下と共に未知の冒険をしていた時があった。
曰く、最近は書類仕事が多く、現場も知らないし身体がなまっている。
曰く、重責の有る仕事は充実しているが物足りない。
曰く、念願の建国に何かしら携わりたい欲求がふつふつと込み上げている。
曰く、ああ、昔が懐かしい。
そんな内容を耳元で聞く者から、巡り巡ってエルヴィーノの耳に入って来たのだ。
勿論報告では無く他愛も無い世間話を意図的にしている者からだ。
しかしそんな内容でも心配して発信源に会って聞いた所、最近は直接陛下の役に立っていない事に不満が有ったらしい。
エルヴィーノ的には十二分に役立っているし、二度と危険な仕事はさせないと誓っていたのだが、ずっと放置していたのも事実だった。
そんな時に、全ての鎧と衣装を一新して紋様を付ける事が決まったのだ。
お互いの思惑が一致した瞬間だった。
役に立ちたい者と、面倒だから誰かに丸投げしたい者だ。
水を得た魚の様に楽しそうに飛んで行ったリカルドを見ていたエルヴィーノとリリオだった。
リカルドは精力的に回って説明した。
今までの鬱憤を撒き散らすかのように護衛の聖騎士を2人引き連れて主要箇所を回っていた。
資料を基に発注先であるイグレシアの甲冑工房に武器工房、ペンタガラマの兵士予定の獣人達との打ち合わせに、こちらの工房にも立ち寄り説明する。
クラベルのブロマル工場で紋様の大きさを決めたり、新しい国として準備しているサルクロスに転移してダークエルフ達と打ち合わせをしたり、細かな要望を聞き入れてイグレシアの高級服屋に衣装の発注を行なったりと、充実した日々を過ごしているとリリオから聞いていた。
そしてリカルトが当初から想定していた問題が現実となる。
それは女王の衣装だ。
リカルドの見解で五着用意していたが、ダークエルフの女性達と男性達の意見が分かれたようだ。
女王らしい美しい”お召し物”を想定する男達と、強い女王に相応しい衣装を要望する女性達だ。
この要望は種族だけの要望であり、本人からは派手で無い物が言い渡されていた。
流石に困ったリカルドは再度服屋に相談し、サンクタ・フェミナにもお伺いを立てた。
「お義母様の衣装かぁ・・・リカルド、この件はお姉様に相談しましょう」
取り急ぎ別荘で打ち合わせする事になったリカルドだ。
「女王の衣装ねぇ・・・考えた事も無かったわぁ」
「お姉様、やはり種族が違うと着る物も変わるのかしら?」
「見当もつかないわ。そもそも私が知る限り女王は居ないもの・・・」
「お姉様、エルフ王に聞いたらどうかな?」
「そうねぇ、もしかしたら昔何処かの国に女王が居たかも知れないわね」
そして王宮へ。
「さて、儂も長く生きてはいるが女王は初めてだからなぁ。ロザリー、良い物を仕立ててやってくれよ」
「はい、心得ております」
頼みのエルフ王も女王に相応しい衣装は解らなかったらしい。
「ねぇ、シーラはどうかしら?」
「そうだわ、シーラを忘れてたわ。あの国なら参考になるかも知れないわ」
そして三人でシーラの元に転移した。
当たり前なのかノタルム国でも過去に女王は存在しなかったらしい。
「ごめんなさい、力になれなくて」
「良いのよシーラ、お義母様に確認しましょうロリ」
「はいお姉様」
結局は振り出しに戻った。
「お義母様、女王の衣装ですが・・・」
「大丈夫よロザリーさん、こちらで手配したの。リカルドさんは他の者達の衣装をお願いしますね。それから、前回の衣装は全部頂くわ。本当にありがとう」
全員が呆気に取られた様だった。
どうやらリカルドの取越苦労だったようだ。
肝心の女王の衣装はリーゼロッテがメルヴィに相談していたのだった。
2人の間ではメルヴィが女王の衣装を受け継ぐ事で決まっていた。
ならばメルヴィが考えても問題無いとリーゼロッテの許可を得て自らの案を採用する事となったメルヴィだ。
それは頭の先からつま先までに至る物で、”某国”で用意される事となる。
王冠、首飾り、耳飾り、指輪、小振りの杖に、ひらひらとした衣装、肘まで有る手袋、脚を細く小さく見せる女性用の靴だ。
そのすべてに攻撃や防御の魔法が付与された物になる。
金属や魔石以外は全て漆黒の衣装だ。
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側近の衣装も多少は揉めたようだった。
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