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第12章 戻ってから四度目の儀式

第348話 大魔王杯闘技大会その後6

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獣王国バリエンテの王都ペンタガラマの中心に聳え立つカスティリオ・エスピナの宴会場では既に盛大な宴会が始まっていた。

壁面には大きな横断幕が垂れ、大魔王杯闘技大会準優勝、五位入賞おめでとう!! と書かれていた。

(あれ? ゾゾは五位なのか?)
疑問に思ったエルヴィーノだが、折角の雰囲気を台無しにはしないのだ。
どうせ、多分、きっと例の人が無断で進めたに違いないのだから。
そして、あながちウソでは無い。
本当でも無いがと心で思いながら祝賀会を用意した者達の労力を無駄にはしない黒龍王だ。

会場の左右に別れヒラファ族とエレ族が大勢で料理と酒精を酌み交わしていた。
それぞれの種族にはクビクとゾゾを中心とし会話が盛り上がっている。


実の所、エルヴィーノとパウリナは会場に入るのが遅れたのだ。


子供達と至福の時を過ごしていたら、この城に住む”淫獣”に捕まり予定の時間に間に合わなかったのだ。
とは言え、国王と王妃が揃って遅刻なので何かしらの諸問題に対応していると、気の利く家臣が場を繋ぎ、前獣王であるネル殿が現地で見た事を”ありのまま”に説明した様だ。

そうなると準優勝と五位で種族の態度が変わってくる。
片や準優勝の方が部族的に上だと言わんばかりだ。
必然的に下位入賞部族に辛辣な態度をとる。

事実なので認めるしかないゾゾだが、そんな我が儘な種族に腹を立てる者が居た。

「その態度は何だ!! 我が種族の者達よ、我とゾゾはかの地で死闘を繰り広げて来たのだぞ。それを見もしないお前達が偉そうな事を言うな!!」
怒鳴り散らすクビクにゾゾが落ち着けと宥めている。

「あの対戦がもしも、我とゾゾが逆であればゾゾが準優勝していたに違いない。それほどの・・・それほどの強者と激闘したゾゾを見下す事は我が許さんぞぉぉぉぉ!!」

会場が騒然とした。
これはネル殿が怒るよりも、クビクが同族に諫言する方がより効果的だった。

席を立ち、エレ族の族長の横で頭を下げて詫びを入れたクビクだ。
「我が種族の非礼、申し訳なかった」

すると慌てて駆けてくるヒラファ族の族長だ。
折角の祝宴にケチが付き、その原因が自らの種族となれば黒龍王に申し開きが出来ないからだ。
まだ、会場に来ていない内に、和解する事が最善と考えた族長はクビクの行動に便乗するのだった。

「申し訳ない、エレ族の者達よ。今後はゾゾとエレ族を称えると黒龍王の名に誓い約束するぞ」
「ふむ、ヒラファ族の族長よ。ワシ等は気にしとらん。黒龍王様に睨まれんようにのぉ」

ふわっはっはっは
と笑って、最大の嫌味を言って手を打ったエレ族の族長だった。

席に戻ったクビクにゾゾが気を効かせた様だ。
「クビクすまん」
「何を言う、我の方こそ申し訳なかった」

同じ時、同じ場所で激戦を繰り広げて来た者同士かばい合っての事だ。
2人は既に種族の垣根を越えた同士の意識が存在していた。

「さぁ、皆の者よ。踊り子たちも大勢呼んである。大いに騒ごうでは無いか!!」
珍しく場の空気を呼んでネル殿が酒宴を仕切っているかのように思えた。

その時。
会場の入り口が開くと同時に、兵士が大きな声で宣言した。

「黒龍王様と聖戦士様の御入場であらせられます」

一瞬で会場の物音が消えて全員が入口を凝視した。

何事も無く2人が席に着くと少しずつ賑わいが戻って来た。
全員が2人に”気付かれ無い様”に楽しい祝宴を装っているようだった。
それぞれの族長が挨拶に来ては剣闘士として戦った者を褒め称え満足して戻って行った。

「黒龍王様、1つお尋ねしたい事があるのですが宜しいでしょうか?」
クビクが何やら質問が有るらしい。

「黒龍王杯も同様でしたが、大魔王杯闘技大会も何故命のやり取りでは無く、寸止めにするのでしょうか?」

説明したはずだと思いながらも面倒臭がらずに対応する黒龍王だ。

「これはかの国のジャンドール王にも説明して了承を取ったし、黒龍王杯でも通知を出したはずだが・・・まぁ良い。俺は大切な兵士を再起不能にしたり、死亡させては国力の低下に繋がると考えたからだ。奴隷や犯罪者ならいざ知らず兵士は国の宝だ。怪我なんかされたら本当に必要な時に働けないだろう?! だから急所攻撃は禁止にしてるし、切断しても良いのは簡単に治る四肢だけだ。俺が関与する闘技大会では誰も死ぬ事は許さない。この事を理解してもらっていると思っていたのだが?」

「そこまで我らの事を考えて下さっていたとは・・・」
「これからも陛下の為、獅子奮迅する次第です」

2人から更なる忠誠を決意させ和やかに会話が続き、その後も何事も無く酒宴は夜遅くまで続き種族別で朝まで飲み明かしたと翌朝聞いた黒龍王だった。





獣人が飲む時は朝までが常識なのか?
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