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第12章 戻ってから四度目の儀式

第347話 大魔王杯闘技大会その後5

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「無理無理無理無理、ピラタ怖いし」
確かに顔は怖いとエルヴィーノも同意する。

「解ってるよ。だけどな、あのピラタが今凄い状態異常で死にそうな容姿なんだ」
「それは一体・・・」
「なるほどね、ファルソに恋しちゃった訳でしょ」
ここに来てロリが言い当てて来た。

「ああ、俺も言ったけど本人がどうしても直接返事を聞きたいってさ」
そう言うと何故かロリも真剣に考えている。
やはり今後もファルソを多用する気なのだろう。

「じゃファルソが直接言って断れば終わりでしょ、簡単な事じゃない」

確かにその通りだ。
他人事のロリはあっけらかんとして言い切った。
しかしそれを聞いたフォーレは嫌な顔をしている。

問題はピラタが簡単に引き下がるかだ。
同じ立場を想定できるエルヴィーノとフォーレの思考は深くなっていた。

その深い思慮の中では様々な憶測が予定を立てていった。
既に結婚している人妻だから無理。
もしくは婚約者存在する。
好きな男が居る。
聖騎士は婚姻できない。
聖騎士は異性と付き合えない。
などなど・・・

やはり既婚者か婚約者が存在する設定が良いと思われた。
聖騎士として戦い以外は異性に触れる事は力が落ちると言う嘘も有りだろう。

フォーレと2人で真剣に話しているとロリが突拍子も無い事を言い出した。

「じゃあさ、以前にも噂になった元国王であり師匠の愛人にしたらどう?」
「しかし、それではリアム様とペリマベラ様にご迷惑が掛るのでは?」
「大丈夫よ、お父様とお母様はフォーレの事を知っているし信用も有るから力になってくれると思うわ」
「確かにロリの言う通りだ。ファルソの相手が王族であれば、流石のピラタも諦めるしかないだろう。ロリ、2人に説明してくれるか?」
ロリの案を採用する事でゴマをる事を考えた夫だ。

「解かったわ。だけど、この借りは高くつくわよぉ」
イヤらしい顔で国王を見る王妃だ。
「なっ何で俺なんだよぉ」
「だって、あなたの大会であなたの部下の問題でしょ? あなたが責任取らなきゃどうするのよぉ」

迫り寄る王妃にゴリ押しされて妥協した国王だ。

「うぅ、それは・・・解かったよ、解かりましたぁぁ。フォーレ、後はロリからの連絡を待ってから向こうに行こうか」
「解かった、陛下に任せるよ」

そう言ってフォーレと別れ、廊下を歩く国王と王妃。

「最近は二番目と五番目ばかりじゃない」
その言葉にピンと来たエルヴィーノ。

「それは、みんな納得しただろぉ。シーラは子供を欲しがっているし、メルヴィは長らくご無沙汰だったから・・・」
「解ってるわよぉ。だから借りよね」

壁に押し付けられた国王に、巨大な双丘を押し当てながら鼻先が付きそうな距離で言い放つ王妃だ。

「タップリと返してもらうからね」
「わ、解かったからぁ・・・」

その後、リアム殿とプリマベラに説明して快諾をもらい、フォーレを安心させてからロリへの借りを放置せずに”夜遅くまで支払った”エルヴィーノだった。


※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez


翌朝、予定通りカスティリオ・エスピナへ移動してパウリナに宴会の説明を聞いた。

どうやら巨漢のヒラファ族とエレ族は移動する速度が遅く、どちらの部族も午後の到着らしいのだ。
したがって準優勝を記念する宴会は夕方からの始まりとなる。
それまでの間は関係各所に急ぎ足で駆けまわり、頑張って作った時間を子供達と過ごす事に使う黒龍王だ。

双子の長男セサルと次女アナは虹彩異色症で、どちらも右目が碧眼で左目が金眼で黒髪なのだ。
獣人らしからぬ”人族並み”の魔素を保有する孫達に祖父母が大層喜んだと言う。

まだ幼い双子だが、既に血族の片鱗を見せていた。
セサルの方は何にでも興味を示し、子供らしい暴れっぷりで周りに苦労させている。
対するアナも好奇心旺盛で単独で何処にでも行きたがる節が有るが、大人たちが慌てていても平然として家族の元に戻って来るのだ。

そんな祖父母に良く似た子供達も母であるパウリナの教え方が良いのか、父であるエルヴィーノには素直で良い子に見えていた。

セサルの目標は龍騎士隊になる事だ。
アナの楽しみは単独での城内散策だ。

お爺ちゃんからの言い付けで体力作りを毎日の日課にしているセサル。
お婆ちゃんからの言い付けで行き先を召使いに言付けるか紙に書いて予定を作り行動するアナ。

まだまだ幼いが大人の階段を少しずつ登っている姿を見て至福の一時を過ごすエルヴィーノだ。

また、種族は違うがアロンソと良く似た容姿なのでリーゼロッテにも可愛がってもらっている2人は、既に魔法を扱う事が出来るがリーゼロッテとの約束で秘密にしているそうだ。

双子はアロンソに連れられて別荘に行き、エアハルトにロリの長女クララと共に魔法の特訓もしている。
因みにロリの次女ベルダーはまだ幼いので王宮から出る事は許されていない。

双子の魔法練習は兄達から指導を受けて” ビダ・マヒア生活魔法”を主軸にエスパシオ・マヒアにサント・マヒアとディオス・マヒアにオスクロ・マヒアを順番に練習させられていた。

双子の属性的にオスクロ・マヒアは容易に習得出来ると判断したのか、難しいディオス・マヒアの操作から叩き込まれていった。

当たり前だが幼い双子にディオス・マヒアは難しすぎるが、そこは兄であるアロンソが子供心をくすぐりながらヤル気を出させる手本を見せているようだった。

「俺無理だよ、出来ないし」
「私ももう嫌ぁ」

「まぁまぁ、そう言うなよ。俺だって最初は出来なかったから」
「その通り。最初は誰も出来ないさ。私もオスクロ・マヒアが出来なくて苦労したよ」
「へぇお兄ちゃんもぉ?」

エアハルトは相対する属性であるオスクロ・マヒアが余り使えない。
とは言え、仕える事が奇跡のようなモノなのだ。
アロンソも然りで、クララも最近は操作できるようになってきたと言う。
そして双子のやる気を出させる手段こそ兄達が行使できる”魔法の短剣”なのだ。

エアハルトとアロンソも同じ様に習得の壁にぶつかり、乗り越えるのが困難だった時に父に見せてもらった魔法剣の輝きにヤル気を出して頑張ったと言うのだ。

「すっげぇぇぇっ!!」
「綺麗っ!!」
「この剣で切れない物は無いんだ」
「しかし、この剣を顕現させるには他人の何倍も努力しないと習得出来ないからな」
「俺達も今は短剣だけど、将来はとうさんのように立派な剣を顕現させるまで頑張るつもりだ」
「まぁ私はまだだけどね、あなた達も頑張りなさい」

クララはまだ顕現出来無いそうだが、兄達に言わせれば時間の問題だと言う。





そんな子供達のやり取りを、大木の陰から見守っているエルヴィーノ
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