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第12章 戻ってから四度目の儀式

第328話 疑問と問題

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ある日の事。
アロンソに呼び止められて質問された。

「とうさん」
「ん、どうした?」
「とうさんの仕事って何?」
「・・・えっ? 仕事ぉ?」

アロンソが学校の授業で答えるのに苦労したらしい。
無理も無い話だ。
何しろ今一族が住んで居る獣王国の国王なのだから。
しかも内緒にしてあるのだ。
実際は兵士と答えたらしいが、目の前でアロンソが応えているが耳に入らず、自問自答して行くお父さんだった。

(俺の仕事は・・・あれ? 俺って普段何してるんだぁ?)

思い出しても国の重要な事は全て嫁側の親族が取り仕切っている。
ダークエルフの国はまだ無いに等しい状態だし、建設はコラソンまかせの部分が大半なのだ。
腕組みして瞼を瞑り過去から思い返すも・・・明確な内容は出て来ない。
フィドキアを召喚したり、空飛ぶ魔導具で国を挙げての遊びを楽しんだり・・・
それ以外は性奴隷の日々だ。

思い起こせば遊ぶか”妻達への奉仕”しか無い生活だったかも。
と自分の生活態度を見直すべきではないかと真剣に考えだしてしまった。

元からいろんな会議に出席しても、目の前で話しが進んで行き確認されるだけの御飾国王なのだから。

悶々と思考の渦にハマり、自己中心的な答えを見つけて我が子に説明しようと振り返ると、そこにアロンソの姿は無かった。
探しながら呼べども、その姿は無く家族に聞くと遊びに出かけたと言う。
ガックリだ。

「あなたが考え事をしているから、あの子が気を効かせて遊びに出て行ったのよ。いったい何を悩んでいたの?」
母であるリーゼロッテに問われて答える。

「何言ってるの。あなたは立派に二か国の国王としてやっているじゃない」
「そうだけど。実際は何もしてないんだぜ!?」
「あなたがそう思っているだけでしょう? 回りの者はそんな事思っていないわよ」
「・・・そうかなぁ?」
「もっと自信を持ちなさい」

母親に励まされる情けない国王でした。


※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez


珍しくマルソ殿が困っているらしいので、クラベルのブロエ・マルシヘェゴォの工場に出向く事にした。

指定の工場で案内されて応接室に入ると、マルソと数人の男達が待って居た。
「国王、来てくれたか」
何故か嬉しそうなマルソ殿だ。
「いったい、どうしたのですか?」
「それがなぁ、例のシーラさん達の専用機の事で職人達が騒ぎ出したのだ」
全く話しが見えないエルヴィーノは、しかめっ面の男達に問いただした。

「おまえ達、一体どうしたと言うんだ?」
「陛下、私はこの工場を仕切っているフィールと言います」
工場長らしき年季の入った風貌のオッサンが話しかけて来た。

「マルソ様から指示をもらった数台の専用機ですが、どうもこうも見た目が宜しく無ぇ。ハッキリ言わせてもらうと・・・人族以外の乗り物に見えるんでさぁ」

確かに人族用では無い。
それは知っているし、説明はしていないはずだ。
しかし、その事を何故工場長達が目くじら立てて嫌悪するのか理解出来なかったのだ。

「それで、作るのは嫌だと言うのか?」
「いえ、ある程度作った段階で気づいたんでさぁ」
「一体何が気づいたと言うんだ!?」
「それはぁ・・・ちょっと見て頂きてぇ」
マルソ殿も職人達も周りの顔を見て話しずらそうにしているのが解かった。

見れば解るのならば見に行こうと、全員で移動する事となった。
まずは兵士達が乗る2人乗りで汎用型の100台だ。
前面にノタルム国の紋様が浮き彫りになっている。
仕様はアルモニアの物と同じだ。

そして婚礼用のエルヴィーノとシーラが乗る物だ。
“ゲッ、マジかよ”と思ったがあきらめた。
このキンキラキンで目立つ派手な仕様に乗る間、少しだけ我慢すればいいのだから。
どうせジャンドール王の指示に決まっていると、勝手に決めつけていた。

そして更に奥へと案内されると、先程とは違う異様な佇まいの存在が目に入って来た。
「な、なんだぁこれは!?」
流石にエルヴィーノも、その異様な仕様に声が出てしまった。

あくまでも見た目だけだが、まるで時代が変わる転換期や反乱者達が装備しそうな、攻撃的で、禍々しく、異様な雰囲気を醸し出している。

中央の高台に玉座らしき椅子が有り、周りに何人も兵士が乗れるようになっている。
全機黒を基調としジャンドール王専用機は金色の飾りだ。
デセオ専用機は銀色の飾りだ。
レスペト専用機は全部漆黒の飾りだ。
ブスガドール専用機は多色使いの飾りつけだ。
そしてシーラ専用機は赤色の飾りだ。
それぞれの造形は違うが一様に従来型とは一線をかくすのだ。

そして問題なのは、この飾りなのだ。
それでも良くここまで作ったと言える。
間違い無く威嚇行為を意識した装飾になっているのだ。

それはブロエ・マルシベーゴォから、大小の巨大な角が沢山出ているのだ。
前後左右に規則的に並べられ、威圧感が半端無く、確かにアルモニア人の考えではここまでの仕様は思いつかないだろう。

何と無く職人たちの思考と、マルソ殿の答え辛さを理解したエルヴィーノだ。
「職人達よ。聞いてくれ」
高速思考でその場限りの言い訳を考えた。

「これは極秘だが、未だに他国との警戒体勢を敷いている事は知っているな? これは、ある地域で試験的に先行して投入する事になった敵対種族に対する威圧用の機体なのだ。だからお前達が不快に思ったり、警戒するように感じたのであれば、既に半分は成功したとも言えるだろう」

「「「おおおおっ」」」
職人たちの顔つきが明らかに変わって見えた。
余程”魔族”の先入観が有るのだろう。と勝手に決めつけていたエルヴィーノだ。
マルソ殿のホッとした表情を確認した。

しかし、あの時ジェンマに呼び出されて席を離れた結果がこれだ。
マルソ殿を残したから心配無かったが、考えが甘かったようだ。
如何に狡猾なエルフでも、魔族四人を相手に交渉は難しかったのかも知れない。
少し後悔したが今さらだ。





着々とシーラとの婚儀の準備が進んで行くのだった。
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