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第12章 戻ってから四度目の儀式

第321話 建国予定地視察

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無事に日程を終えてノタムル国へ戻るアルコン一派。
送り届けた後も去り際に築城の時機などしつこく聞いて来るので困った顔をしているとシオンとアルコンから「陛下を困らせるな」と注意が入ったほどだ。
だがエルヴィーノは理解している。
自分もそれが目的で今まで頑張って来たのだから。

前日、アルコンには特別にエマスコを渡した。
今後始まる建国で様々な諸問題を”丸投げ”する為に、ダークエルフの王族派とシオンに一部のゲレミオ幹部と連絡を取れるようにしたのだ。
また、同族が訪れていた際にリーゼロッテから要望が有った。
それは、一度現地を視察したいらしい。
もちろんデイビットとオリビアにアロンソも賛同していた。

そうなれば、行動は早いリーゼロッテ。
住み込みとなった嫁候補の母娘も引き連れて現地の視察に向う事になった。
総勢10人だ。

転移すると、みんな思い思いの行動に出た。
奇声を上げて駆け出す者がほとんどだ。
祖国の有った元の場所と同様に緑あふれる森と湖に海も有り、それなりに険しい山脈も見える。
エルヴィーノは預かっていた専用のブロエ・マルシベェゴォをエスパシオボルザから出して飛んで視察出来る様に準備した。

昔デイビットと一緒に作った家族専用のブロエ・マルシベェゴォだ。
因みにアロンソはメルヴィの膝の上に座り、物凄い速さで飛んで行った。
嫁候補が二組居るがオリビア専用が荷物運び用なので前方に四人を乗せて飛んで行った。
デイビットは言うまでも無い。
速さを求める親子なのだ。
アロンソにもその血が影響しているだろうと思っていたエルヴィーノだ。

リーゼロッテも相変わらずに優雅にたたずんで、ゆっくりと移動している。
そしてエルヴィーノだが考え事をしていた。
それはバレンティアからの申し入れの事だ。
カスティリオ・エスピナは自分で決めたと言うよりも龍人たちの勢いで出来てしまったが、今回は勝手にしては駄目だと理解しているつもりだ。

自らも黒い毛布を取り出してリーゼロッテの後を追い掛けた。
「母さん、ちょっと相談したい事が有るけど良い?」
「どうしたの? 改まって。まさか・・・」
“まさか又新しい嫁なの?”と聞かれそうだったので全力で否定したが、詰まらなさそうな顔をされてしまった。

「以前カスティリオ・エスピナの話しはしたよね」
「ええ、聞いたわ。数日で作ったって。今でも信じられないわ」
「それでさぁ、前回は俺が頼んだ事だけど、今回は龍人が申し出て来てさ、困ってんだ」
「あら、何故あなたが困るの?」
「そりゃだってほら、余り貸しを作りたくないだろ?」
「どうして?」
「どうしてって・・・悪いからさ」
「じゃ対価を渡せば良いじゃないの」
「対価かぁ・・・あいつら金品なんて欲しがらないと思うけどなぁ」
そう言いながら、考え込むエルヴィーノだ。

(あの時はペンタガラマにそれぞれの私室を作る事で賛同してもらえたけど、今回はどうだろう。街自体はペンタガラマよりも小さいしなぁ)

エルヴィーノが考え込んでいるとリーゼロッテが声を掛けて来た。

「エルヴィーノ、見て。川が海に流れ込んでいるわ。森も近いし平坦な土地も有るから、ここで街を作ってはどうかしら?」
そう言われ、辺りを見渡すとかなり広く平坦な土地が有った。雑木林に岩がゴロゴロとしているが大した問題では無い。

「良いんじゃない? でも城はどうするんだ?」
「そうねぇ・・・やはり上の湖の近くが良いわねぇ」
「確かに水源は重要だ。ロザリーが別荘を作った時もこだわっていたからなぁ」

そしてエマスコで全員に集まる指示を出した。
「みんな、初めて見る土地だと思うけど、この島の何処に城を作り、街を作るか意見を出して欲しいんだ。因みに母さんからは既に案をもらったけど、全員の意見も聞いて参考にするよ」

全員の意見を元にメルヴィが簡単な地図を描き、川や山に湖と建設予定地を書き込んで行く。
リーゼロッテとエルヴィーノが見た入江の様な場所が他にも点在している事が判明したり、城は砦とみなす場合も有るので山の近くや、丘の上に”湖に浮かぶ城が良いなどと無茶を言う嫁”に賛同する女性陣だったりした。

勿論直ぐに決まるとは思っていないし、湖の中心に城を立てるなんて出来る訳が無いと、ちょっと強く言うと女性陣から想像力が無いだとか、夢が無いとか言われ、揚句に多数決まで取らされる始末だ。
反対したのはデイビットと2人だけで以外にもアロンソは女性陣の術中にハマっているようだった。

とは言え、現実に不可能だろうし湿気も酷いだろう。
「直ぐにカビが生えて臭くなると思うぜ」
「そんなの換気しておけば済む事よ」
そんな感じで夫婦の言い合い極地戦争とも言うが二か所で始まる始末だった。

結局、第三者でも有り当事者でもあるアルコンの意見を聞いてからとなった。
別の日にアルコンとシオンを連れだって訪れ2人にも意見を考えてもらい、リーゼロッテの前で説明してもらう事となった。
2人の意見は一致しており場所はともかく、立地条件的な事だ。

「確かに入り江に街を築き、高台に城を作るのが定石だろう。我らもその意見に賛成します。だが、もしも可能であれば湖の中心に城が有り、周りに城下町がある景色は理想だな」
アルコンとシオンの理想とは、攻防に優れ、外観も優美だと言う事だ。

「では可能であればアルコンさんとシオンさんも湖の城に賛成なのね?」
「そんな不可能な事を・・」
「黙ってて」
娘に怒られてシュンとするデイビット。

だが既にメルヴィの思惑は察していたエルヴィーノだ。
(龍国に居たならばバレンティアの事も知っているはずだよなぁ。あぁまた大げさな事になりそうだよなぁ)

メルヴィの質問に首を縦に振る2人を確認して、満面の笑みで夫を見るメルヴィだ。
(あの顔は”何を言いたいのか解っているでしょう”って言う目だよなぁ)

溜息をしながらバレンティアに念話するエルヴィーノだった。
(ああバレンティア、聞こえますか?)
(どうしましたかモンドリアンさん)
(あのさぁ、本当に申し訳ないけど・・・)
(築城の依頼ですねぇ!)
(あ、あぁ。そうなんだけど、今回は面倒な要望が出てるんだ。出来なくても構わないし、無理に作らなくても良いからさ)
(大丈夫ですよ、我らに任せてください)
(それがさぁ、湖の中心に城を立てたいなんて馬鹿な事を言いだしているんだよぉ。やっぱ無理だよな。ゴメンゴメン。出来ないって言っとくから・・・)
(可能ですよ、モンドリアンさん)
(・・・ええっっ!!)
(だから我らに不可能は有りませんよ、モンドリアンさん)
(ええっと、湖の中心だぜ!?かなり深いはずだぜ!?)
(勿論可能ですよ。期待してください。カスティリオ・エスピナよりも美しい城を作りましょう!)
(えぇっマジか!)






それはそれで別の軋轢が起こりそう・・・特に女性陣から。
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