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第12章 戻ってから四度目の儀式

第318話 新たな国の名

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シオンからの問題提議は国の名前だけでは無く、多岐にわたっていた。
国の行政だけでも内政と外政が必要だ。
一番近い国はノタルム国だし、付き合いのある国もエルヴィーノが関わっている国ばかりだ。
したがって外政よりも内政が早急に着手しなければならない。

新しい国土は島だが全て一から作り上げないと何も無いからだ。
ダークエルフの一族だけでは国として成り立たないであろうから、各国へ居住者の募集も必要になるだろうし、様々な商売を行なう為の規則や取り決めが必要になって来る。
そんな事は一族の誰も出来ない事だ。

しかし、まるでこの様な展開を想定したかのように準備された組織が存在する。
言わずと知れたゲレミオだ。

余談だが以前ロザリーに聞かれたが「あなたが作ったゲレミオと、冒険者が所属するギルドって何が違うの?」と言う質問だ。
「言葉が違うだけだよ。意味は同じ組合さ。方言みたいなものだけどね。違う方が区別しやすいだろ? それに言葉通りで、やってる事は全然違うよ・・・あ、似た部署もあるかな?」

どうやら所属していない者にとっては違いが良く解らなかったらしい。
(説明したし、本人には食べ物で恩恵を受けているはずだが・・・)
と心で思うが口には出さなかった。

そしてノタルム国内に生存するダークエルフの総数は32人だ。
その内、未成年の女子が三人居て30歳と20歳の子が嫁候補となっているので、少なくとも30人の仕事の役割を決めなければならない。
当然ながらそんな面倒な事は、実母と”義兄義姉兼義父義母”及びアルコンに丸投げにしようと考えているエルヴィーノだ。

ゲレミオからは商売に関してはポルトンだろう。
そうなるとロザリーが首を突っ込んでくる事も予測できる。
後はその事を聞き付けて怒涛の如くロリにパウリナと親族たちも押し寄せて来るだろう。

ここまではエルヴィーノの勝手な予定だが、リーゼロッテも同様に思っていた。そこで
「私達だけでは収まらないでしょうから各国の親族も呼んで意見を出してもらおうと思うけどアルコンさんはそれでも良いですか?」

大魔王の事を多少なりとも理解しているアルコンは、女王に意見するなど持っての他だと考えた。
「無論、何の問題もございません」

そしてリーゼロッテから発せられるエマスコで、ダークエルフ一族が興す新しい国についての意見交換会を開きたいと親族に連絡が送られた。
ゲレミオにはエルヴィーノから各部門の代表者へと送られた。

意見交換会は20日後とし、それまでに国名を幾つか考える事となり一度解散となった。
アルコンは一族の元に戻り、今回の説明をすると一族全員が喜んだと言う。
そして王族への作法見習いとして従事させる事を、快く承諾してくれた嫁候補の母親たちだった。


※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez


今は無きダークエルフの城の名はバルデモーサ城と言う。
過去にリーゼロッテが住んで居た城で、デイビットとオリビアが働いていた場所でも有る。
そして城下街はエスタシオンと言い、”季節”の移り変わりがハッキリと解る美しい町だったと聞く。

アルコンはリーゼロッテから一族にも意見を出して欲しいと依頼していたのだ。
勿論決めるのは女王であるリーゼロッテだ。

リーゼロッテ、エルヴィーノ、アロンソ、メルヴィ、デイビット、オリビアと、カスティリオ・エスピナに住むダークエルフ一族が机を囲み新たな国の名前を出し合っていた。

当初は何故かエルヴィーノ、アロンソ、デイビットと、リーゼロッテ、メルヴィ、オリビアの男女別に意見を出し合った。
その後で全体で話すのだが、これが揉めたのだ。
特にデイビットとオリビアだ。

伝統を守るために昔の名前を使いたい保守派のデイビットと、未来を切り開く為に場所も変え何もかも新しくしたい改革派のオリビアだ。
ハッキリ言って耳を塞げば只の夫婦喧嘩を見ているようだった。
流石に言葉では対抗出来ずに脱線して行くデイビットの内容は、聞くに耐えない事ばかりでメルヴィが仲裁する事となった。
そしてエルヴィーノとメルヴィが話しを進める。

エルヴィーノは妻達の意見に反対はしない。
ただし、デイビットの考えも理解している。
だからメルヴィに応える内容は1つだけだ。

「昔の事も大切にして新しくしたら良いよ」
「解かったわ、あなた」
そしてリーゼロッテとメルヴィが言葉を交わす側で2人の会話を聞いているアロンソだ。
エルヴィーノはデイビットにオリビアと一緒に下知を待っていた。

「リーゼの・・・女王様の意見を伝えます」
畏まってメルヴィが一族の前で話す。

「新天地は我ら一族の楽園となるように、種族を越えた絆で繋ぐと思いを込めた名は・・・ウナ・ファミリア・デル・パライソ。サルクロス・レギュームです」

その名を聞いて満足そうな一同だ。
「そして、町の名は・・・”エスタシオン”とします」
エルヴィーノとオリビアは普通に喜んだが、デイビットは異様に喜んでいた。
それは、旧名がそのまま採用されたからだ。

一族の楽園、円の国。円は輪であり繋がりでも有る。
本来はダークエルフ一族の国だが、未来を見据えて多民族国家を想定した名だ。
デイビットにオリビアも今は獣人達にお世話になっているし、人族共親しく付き合ってきた経緯が有る。

強いて言えば正体を隠す付き合いだったので後ろめたさが有った物の、正体を明かし新しい国に招き入れる事も可能なのだ。
正体を隠した一番の理由は長命種なので短命種に比べると年を取るのが遅く、いつまでも変わらない姿に見られるからだ。

デイビットにオリビアは思い出していた。
”季節”の移り変わりで町の景色が変わる光景を。
四季を通じて肌で感じた祖国の思い出。
その町の名前をそのまま残すと言うリーゼロッテの考えに喜んだデイビットだ。

リーゼロッテの決めた名前に五人は承諾した。
とても良い名だと全員が思っていたので、アルコンの一族に伝え異論が無いのであれば決めるとしたのだった。


※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez


取り急ぎシオンとノタルム国へ戻り、アルコンの一族と会って説明した。
「ふぅむ。流石は女王陛下、素晴らしい国名を考えられたものよ。それに我らの知る城下町の名を襲名される配慮も痛み入る。我らからは一切の不満は無い」
一族を前にアルコンが発表し、全員が満足そうな顔を見せていた。





Una familia del paraíso 一族の楽園
Circulus Regnum 円の王国
二つの言語は違います。
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