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第11章 分岐点

第295話 La Torre infinita

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翌日、準備を整えて転移魔法陣を使い塔にやって来た。
内部を良く見回すと昨日同様の一階の中央に机と椅子が置いて有るが二階に登る階段が無い。
そのかわりに入口に対して対極の場所に別の扉が有る。
どう考えてもその扉を開けるしかないと思われるので、妻達に押されてエルヴィーノが扉を開けた。

警戒しながら扉を開けて中に入ると、先程と同様の部屋だが倍以上の広さだと感じた。
「結構広いわねぇ」
「でも何も無いよ」
「おい、ちょっとは警戒したらどうだ!」
無警戒に歩くシーラ達に注意をうながしたと同時に部屋の中央で魔法陣が発動した。

魔導具の明かりで照らされた室内に浮かび上がる魔法陣から現れたのは一体の魔物。
それはゴーレムだ。
しかも見るからに青いその体躯は容易に属性系統が想像出来た。
「シーラ、アレは水系か氷系の属性ゴーレムだぞ」
「解かったわ、私に任せて!」
シーラが得意とする炎系の魔法であれば特に問題無いと思ったので誰も手を出さずに観戦する事となった。

シーラは魔法で炎の剣と盾を出して向って行った。
たかが一体のゴーレムであれば特に心配する事が無いと踏んだ三人は、内心ドキドキしていたが次の瞬間には安堵した。
シーラの放つ剣の一閃で、ゴーレムが崩れていったのだ。

“どう? 見た? 当然よね”
と言わんばかりの自慢げな顔で戻ってくるシーラの後ろで発光する魔法陣が有った。
「シーラ、後ろ!」
パウリナが叫び振り向くシーラが見たのは、軽く切り倒したゴーレムをひとまわり大きくした体躯が二体現れていた。
「大丈夫よ」
そう言って中央のゴーレムに向って行くシーラ。
シーラの力量からすれば特に問題は無いと思っている三人だ。
同じ作業だが、またしても軽く倒すシーラは先ほどと同様に瞬殺し戻ってくる。

すると
「シーラ・・・後ろ」
中心で輝く魔法陣が幾つか現れた。
出て来たのは四体だが、先程の二体よりも大きい。
「どうせなら、一度に出せば良い物を・・・」
文句を言いながら掛けて行く。
「なぁ、もしかして」
「えぇ、多分」
「なになに」
エルヴィーノが思った事をロリも感じ取ったらしい。
パウリナは楽しそうだ。

倒すごとに倍の数で現れて、体躯も大きくなるゴーレムだ。
力も大きさと比例するだろう。
そうなるといつまで続くのかだ。
「この部屋を見る限り100体は出るかもな」
「だけど、どんどん大きくなるのよ」
「そうだけど、俺達四人で対処できるだろう?」
「まぁね。問題無いと思うけどね」
パウリナが応援している横で、ロリとエルヴィーノは先の展開を予測していた。

四体のゴーレムを倒しシーラが走って戻って来た。
「ねぇこれってもしかしてさぁ」
シーラも感じ取ったようだ。
「シーラ、両手とも剣にして。エスクード・ザラガドを使うわ」
次を予測してロリがそう言い切った。
どこまで倒せばいいのか解らないのでシーラの体力を温存させる為にロリが魔法防御すると言う。

あくまでもシーラの試練なので最初は応援だけだ。
「私が頼むまで手を出さないでね」
シーラも理解している。
本来は魔法の盾も自分で対処したいが、そこは第二夫人のお節介に甘える事にする。
何だかんだと言ってロリもシーラの事を認めている様ので、傷つく事を懸念しての事だ。

そんな状況で三人は壁際で戦いを見ている。
ゴーレムの数は8体、16体と増え、流石に32体となったら手を出そうと思ったが「まだまだぁぁ!」と気合の入った掛け声が聞こえ、64体は流石に辛そうだったが、剣と魔法を駆使して倒していくシーラだ。
そして128体が現れた。
その体躯は最初の一体の倍以上の大きさだ。

たった数人を相手に、部屋の半分以上を占めている数の意味が無いのでは? と思ったが、龍人の考える事は理解出来ないのでそのまま観戦していると、こちらに振り返ったシーラが「パウリナお姉様」と叫んだ。
事前に打ち合わせしていた通りパウリナが嬉しそうに飛び出して行った。

パウリナが「神獣降臨」と叫び、シーラの隣に銀色の神獣が現れた。
因みに3分の1の力で通常神獣降臨だ。
3mの体長はゴーレムよりも大きく感じる。
サッと飛び乗ると”三人”は念話で話した。

(お姉様、防御魔法を)
(解かったわ)
サントゥアリオ・ディ神の聖域オス」
自分とエルヴィーノに広域防御壁を使うロリ。
エスクード・サガラド聖なる盾ではこれから使う魔法に耐えられないからだ。

(準備は良いわよ)
(じゃお姉様、一緒に)
エルヴィーノの耳にはパウリナの鳴き声が「グルグルグルシャァァァ」と聞こえていた。
(いくよぉ、イラ・デ・ディオォォス)
「ほのおのとりぃぃ!」
シーラが叫んだ炎の鳥としか聞こえないが、目視するのはいつも練習していた炎の鳥では無く、いかずちを纏った炎の鳥だ。
「おおおっ!」
初めて見た2人の合体魔法を見て思わず声が出てしまったエルヴィーノだ。

羽ばたきながら突進する炎の鳥は体当たりでゴーレム達が弾け飛んで行く。
爆散と言っても過言では無いだろう。
しかし、比較的大きな部屋だが2人の合成魔法を使うには狭いようだ。
くるくると室内を狭そうに飛んでいる鳥の形をした炎だ。
部屋の片隅でロリと一緒に小さくなっているエルヴィーノ。
自慢げに大きな神獣とシーラが微笑んでいる。

「見て、扉が出たわ!」
室内を飛び回シーラ自慢の魔法の鳥を物珍しく見ているとシーラの呼びかけに前方を見ると扉が有った。
室内は何も無い状態だ。
ゴーレム達は倒されると魔素に分解されるように消えて行ったので、先程までのゴーレムで込み合った室内が嘘の様だ。
時間が経過しゴーレムが魔法陣から現れ無い事を確認して移動する事にした一行。

エルヴィーノは違和感を体感していた。
外からは細長い塔だが、中に階段は無く前方に進んでする状態だ。
(扉自体が転移装置になってるのかなぁ?) と考えても仕方が無いし、この仕様を自分たちの城に使う事も考えたが、行き過ぎた機能は不測の事態をもたらす場合があると思ったエルヴィーノは考えを躊躇ちゅうちょした。

親族が使うとすれば、緊急の脱出装置としてだ。
特定の場所に行ける・・・これは転移魔法と同じなので意味が無い。
(扉自体に魔法陣が備わっているのか? 獣人族が使用する場合は扉に魔石をハメ込む必要が有るなぁ) 
カスティリオ・エスピナのそれぞれの親族の部屋から緊急脱出口としての採用を、考えながら歩いていると気になる事が有った。

次の扉を開けようとした向かう途中、外部の光が窓から差し込んでいるのが解かった。
窓側に行き、何気に覗くと青い空と海が見えた。
「あれっ、ここって・・・どうなってんだ?」

一階から扉を開けて入った場所なのだが、今居る部屋の窓から見た景色のはるか下に島が有った。

全員が覗き込む。
「不思議ねぇ」
「流石は龍人様が用意された塔ね」
「どういう仕組みなのかしら」
それぞれの感想を聞きながら、解らない事をあれこれと悩んでも仕方が無いので次の扉を開ける事にしたエルヴィーノだ。

「ここは三階になるんだよなぁ」
先ほどの部屋と同様の作りで、大きさも同じ様だった。
「また魔法陣で出て来るかな?」
パウリナの問いかけに対して一行は慎重に前に進む。
「流石に同じ手法は無いだろう」
「そうよねぇ。毎回ゴーレムじゃ倒しがいが無いわ」
言葉では虚勢を張るが態度は慎重な四人だ。

部屋の中心まで来る。
「やっぱり出て来なかったね」とパウリナが口にした瞬間。
「あっ魔法陣が光った」シーラが口にするのと同時に
「何か出て来るわ」ロリが呼びかけ
「みんな、出て来たぞ」エルヴィーノが注意をうながすと
「あっ、さっきのゴーレムだ」パウリナが教えてくれた。
それぞれの四方に赤、青、黄、白のゴーレムが現れた。





La Torre infinita=無限の塔
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