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第10章 冒険編

第278話 証しの真相

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イグレシアでは数日かかって文献を探していたが結局は何も見つける事は出来無かった。
ロリが密かに調べた教祖の秘密部屋からもラソン以外の文献は無かったと言う。
エルヴィーノにロリ、パウリナ、シーラと喫茶室カラコルで今後の方針を思案していた。
各国の書庫を調べて、ほとんど手がかりが無かった事で閉塞感が漂う中シーラが同意を求めて来る。

「でもほら、龍の使いの話しが有ったでしょ!?」
「龍の使者に認められし者には、龍の力を授かる。その圧倒する力を持って混乱を治め大地を平定する。だよ」
「それっていつの時代の話しなの?」
「そこまでは解らないが石版に彫られていたよ」
「「「石版!」」」
ロリの質問に答えると魔導書では無く石版であれば、途方も無く古い時代だと認識できるのだ。

「ロリお姉様、私気になる事が有ります」
ロリに向かってシーラが話し出した。
「私達が授かった腕輪がその証しじゃ無いかしら?」
「シーラもそう思ったのぉ? 私もそう思ってたぁ」
パウリナも同じ様に感づいていたらしい。所が
「ダメよ。絶対にダメ。決して認める事は出来ないわ」
2人の意見を否定するロリだった。

「どうしてお姉様」
間違いないと思っていた事が大好きなパウリナの同意を得たのに全否定する姉嫁だった。
「あなたは何も解っていないわ。四聖龍の証が私達の腕輪だとしたら、もう1つの腕輪は誰が持って居るの?」
「「ええっ!?」」
驚くパウリナとシーラがロリと一緒に視線を変えた。

その激しく怒り、憎悪にも似た鋭く突き刺すような三人の視線を浴びながら、腕組みして瞼を閉じているエルヴィーノだった。
「「「あなたぁ!」」」
「どういう事か説明してもらいましょうか?」
代表してロリが凄んで来た。
面倒だなぁと思いながら仕方なく対処する事にした。

「確かに俺もその事は考えた。しかし、これはシーラの試練だからシーラが考えなければいけない事なのさ。それともう1つの腕輪の存在だが俺は知らない。だから教えようがない」
本当の事を話した。
しかし、ロリは睨みつけている。

「確かに”仲間を率いて自らが先頭に立ち、四聖龍の証を集めて古の龍に力を見せよ”と言う事はシーラが率先しなければならないわ。だけど、あなたならもう解っているのでしょ?」

自信ありげに話すロリにシーラがかぶせて来た。
「あなた、知っているなら教えて」
溜息を付いてシーラに尋ねる。
「シーラ、2人には冒険の旅に出る承諾は取ったのか?」
「うっ、それは・・・」

どうやらまだ同意を得られていないようだ。
(ロリは反対するだろうなぁ。パウリナはああ見えて行け行けだし)
勝手に想像するがシーラの困った顔を見てロリが助け船を出した。
「あなたの婚約者でしょ、だったらあなたの試練も同じじゃない! さぁ説明して」
半ば無理やり強制されるエルヴィーノだ。

「みんなが思っている様に俺も龍人の腕輪が証しだと思っている。ただし、問題は四聖龍の白龍、赤龍、青龍、黄龍の内、黄龍の腕輪が無い事だ。今までは俺の妻になる女性がその腕輪を授かって来た。だからロリが懸念するのも理解出来る。だけど、お前達以外には腕輪を持つ者は本当に居ないぞ」

「じゃ黄龍に会えないの?」
平然と事も無く言ってのけるロリだ。
「おまえなぁ、ラソンに会う事自体がどれだけ凄い事か解っているだろう!?」
「それは、そうだけど。じゃ、どうしろって言うのよぉ!!」
ロリが逆ギレしてきた。
「お姉様、私の試練でケンカは止めて」
別にケンカをしている訳では無い。
ロリはいつもキレてから甘えて来るのだ。

「じゃ、こんなのはどうだろう。それぞれの加護を持つ龍人に念話で聞いて見るとか?」
「それよ! 流石はアナタッ」
抱きしめられ唇を押し付けられた。
「ずるぅいお姉様、私もするぅぅぅ」
「じゃ私もぉ」
ご褒美を貰う列が出来てしまった。

そのあと各自念話するが、エルヴィーノはフィドキアでは無くコラソンでも無く、こっそりとバレンティアに念話したのだ。

(ああ、バレンティア? 聞こえますか? こちらはモンドリアンです)
(おおっ久しぶりですねぇモンドリアンさん。そろそろ連絡が有る頃だと思っていましたよ)

ヤハリ龍人どうしは筒抜けなのかと、余計な調べ物で時間を費やした事を後悔したが、それもシーラの試練だと思い飲み込んだ。

(四聖龍の証の件だけどさぁ、知っているよね?)
(ええ、インスがコラソン様と決めた例の試練でしょ)
(はぁ? コラソンが指示したのかぁ!?)
(あっいや、そのぉ相談されたので助言されただけですよ。決してコラソン様がお決めになられた事ではありませんからね)
丁寧に否定するが、全て理解したエルヴィーノだ。

(解かった、コラソンに聞くよ)
(ちょっ、ちっと待ったぁぁぁ! 落ち着いてくださいモンドリアンさん、とにかく一度私の所に来てもらえますか?) 
慌てるバレンティアにはカスティリオ・エスピナと城下町のペンタガラマで、多大なお世話になったので邪険にはしない黒龍王だ。
(解かったよ。何処に行けば良い?)
(ペンタガラマの私の部屋で待っていますよ)
(了解!)

妻達は全員がエルヴィーノに聞けと言われたらしい。そして
「ちょっと龍人に会って来るよ」
「私も行く」
「私も」
シーラとパウリナが名乗り出るが、1人で来いと言われたからと嘘を付いて2人には暫らくイグレシアに滞在する事をお願いした。
「シーラは魔法制御の練習をキッチリしてな。2人は子供達と観覧席から助言してやって欲しい」
シーラの為だが一ヶ所に集める事で、安心して羽を伸ばす事を考える自由な時間を欲する男だった。

ペンタガラマに転移して、まずは串を買い回った。
今回はバレンティアだけの為に串を買い試練の事を聞くつもりなのだ。
もっとも今回の件だけで無く、串をどれだけご馳走しても城と街を作ってくれた張本人にはお礼が足りないと思っているエルヴィーノだ。
フィドキアに食べさせるお土産よりも多めに買ってから、目的の場所までは歩いて向かった。

転移やブロエ・マルシベェゴォに乗れば早いのだが、ゆっくりと歩いて街並みや獣人達に他種族を見ながら活気と喧騒を浴びると自分の国を実感するのだ。
(あぁ新しく作るダークエルフの国は種族の差別が無い国にしたいよなぁ)と妄想しながら目的地に辿り着く。

龍人の塔の近くにある秘密の部屋。
街の中に四ヵ所存在するうちの一部屋に階段を昇ってやって来た。
扉を叩くと、まるで待っていたかのように扉が開いた。
「いらっしゃいモンドリアンさん」
「ああ、久しぶりだな。お邪魔していいかい?」
「勿論だとも」

迎え入れられて部屋の中に入ると良く知っている者達が居た。
「なんで2人が居るのさ」
「まぁ良いじゃないか」
「そうですわ、私達が居ると何か問題でも有るのかしら?」
龍人達を総括している親玉と、その手先だが”愛人”と言う居場所を手に入れた妖精王だ。

溜息を付いて(さては串を買っている所を見ていたなぁ)と考えているとヴィオレタが四人分の紅茶を用意しだした。
もはや確信犯だが、そんな事を言うつもりは無い。
折角だから親玉に聞くのも悪くないと考えながら買って来たブツを出した。
「ああ、久しぶりに串を食べれるなぁ」
「私達の所にも頻繁に持って来てくれれば良いのにぃ」
(聞かなかった事にしよう)と高位の存在が言う事では無いと心で思っていたエルヴィーノだ。

美味しそうに串を頬張る姿を微笑ましく見た後、問題の話しを切り出した。
「ところで四聖龍の証だけど」
「私の腕輪ですね」
「そうなんだ。どうするつもりだ?」
「どうもこうも四人目に渡せばいいでしょう」
勝手な事を言うコラソンに
「そんな相手は居ないし、俺は作くる気は無いぜ」
「おやおや、忘れたのですか?」
「・・・何を」
「候補は居ますよ。ルルディもそうですしね」
とんでもない事を言いだすコラソンに、そわそわしだすヴィオレタだ。

妻達には他に女は居ないと大見得おおみえを切った手前、今更ヴィオレタを連れ出すと立場上は非常に悪くなる。
「相談だけど、俺以外の男はダメなのか?」
「ダメ」
間髪入れずにコラソンから帰って来た返事だ。
「ではいっその事モンドリアンさんが持てば良いのでは?」
バレンティアからの提案に驚いた。
「ええっ龍人の腕輪って二つ持てるのか?」
現在エルヴィーノは棘の腕輪とフィドキアから貰った龍人の腕輪を身に付けているが、あくまでも龍人の腕輪の話しだ。

「ふぅむ。確かに二つ付けてはいけないと言う制約は無いなぁ」
そう考えるコラソン。
何故、他の男が付ける事がダメなのか理解出来ないので聞いて見た。
「そんなの、面白く無いからさぁ」
「はあぁぁ?」

「一夫多妻の中に知らない男が現れて、もしも奥さんに手を出すと殺しちゃうでしょ? 新しい嫁候補が現れる方がよっぽど楽しくなりますよ」
それを聞いて頭痛がしてきたエルヴィーノだった。





当初バレンティアは緑髪緑目でしたが黄龍なので黄色がかった緑(黄緑色)とします。
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