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第9章 魔王国編2

第262話 苦境、窮地、危機と極秘指令

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「実は我らの大陸も様々な種族が存在し現在も覇権を争っている。遠隔地で小競り合いの場合が多いが、それが我が国の現状だ。我が一族が王と成り長き時間を平定してはいるが、たまに内戦が起こる場合が有る。それも結構大きな内戦だ」

静寂が支配する室内。
良く無い事が起こっている感じがするが黙って聞いているエルヴィーノだ。

「実はちょうど示し合わせたかのように、大群を率いて城に攻めてくる”イディオタ共”がいるのだ」
「理由は?」
「下らん理由ばかりだ。2人の婚姻を妬む者、シオンが無罪となった事に腹を立てる者や新たな宗教に反対などだ。しかし実際は、我を葬りたい口実だろう」

バンッと激昂して机を叩くデセオだ。
(ビックリするだろぅ急にデカい音出しやがって)
驚いたエルヴィーノが心で抗議するが、確かに激怒している事も納得できる。

「それで、どうするの?」
「ふむ。当然撃退する。しかし、これから友好を結ぶ国の国賓が来ている最中となると、一度帰って頂いた方が良いかと考えていたのだ」
「相手の戦力は?」
「不本意ながら数人の将軍が先導して全国から集められた兵がおよそ5万」
「そんなに沢山!? 何処に集めたんだ?」
「城の西側が荒廃しているが、かなり広い平野なのだ」
「それでぇ、いつ攻めて来るの?」
「我らの出した答えは、今夜か明朝」
「城や街の兵達は何人居るんだ?」
「掻き集めれば1万5千ほどか」
「勝算は?」
「まずは籠城し、手配した味方が来るまでの辛抱だ」
エルヴィーノの問いかけに答えるジャンドール王だった。

すでにエルヴィーノはイラつき腹を立てていた。
今までの経緯は別として、自分の婚約者のしろに攻めようなどと万死に値すると。
更にマルソ達が訪問している今、戦争を起こされると”3ケ国の王”の面目が丸潰れなのは、この場所に居る兄弟も同じ様に思っていた。

エルヴィーノはスッと立ち上がって答えた。
「俺とシーラで何とかします」
「おい、何とかって5万だぞ」
デセオが喰いかかって来た。
「一応聞くけど、殺して良いだろ?」
全員が頷いたが納得していない様子だ。

「これはノタルム国とアルモニア教を含む、赤龍が守護する王城を国民に魅せしめる為にジャンドール王が用意した余興を、たまたま起こった内乱に使った事にしましょう」
ピンと来た義父王が「婿殿!」大声で叫ぶから煩いジャンドール王を余所に説明した。

「俺が龍を召喚する事は知っていますよね? まぁ5万をブレスで焼き払うのは多少時間がかかると思うけど”二体”で行なえば早いでしょう」
クイクイと袖を引くシーラ。
言いたい事は分かっている。
インスティントにもお願いして召喚できるようにするのだ。
三兄弟からは先ほどまでの不安気な表情が無くなり笑みがこぼれ、余裕の表情になっている。

「まぁ5万全て殺さなくても三割残す程度にしますけど、御三方には龍が戻り生き残った者達を相手して頂く重要な役目がありますからお願いしますね」
「「「うむ」」」と頷く三兄弟だ。

不穏分子を一掃し、新たな神龍を目の当たりにするアルモニア教の者達と、力の象徴たる黒龍をお披露目する絶好の機会へと変換させようとするエルヴィーノの考えに、災いを葬りさり、噂の神龍を見たい衝動と、圧倒的な龍の力で王国を不動のものとする事が瞬時に理解したジャンドール王だ。

「出来れば明朝の開戦にしたいけど、敵側に堂々と攻めて来させる事は可能ですか?」
「我が種族は、戦いの申し出に対しては正面から受けて立つ者がほとんどだ。日時を指定すれば乗って来るだろう」
「では、お願いします。こちらは戦後処理部隊だけで大丈夫だとおもうから、城下街の国民達には明日の朝、空を見る様に通達した方が良いね」
「何故だ、平民に危害が被る事は無いのか?」
「いや、折角の機会だし、召喚魔法は簡単に行う物じゃ無いから、国民にも見せた方が良いと思うぜ」

単にネル殿の見せびらかしたい気持ちに感化されただけだが、ジャンドール王と三兄弟は国民には王族が神龍の加護が有ると思わせた方が好都合だと考えていた。
重要な問題なのは、敵が日程を合わせて来た事、内乱を先導して居る者、城内に諜報員が紛れている事だ。

それらを話すと
「解っておる」
「それは我ら一族が必ず突きとめよう」
ジャンドール王と三兄弟は同様に返事をして、調査と内通者を捕らえる事は一任した。
もっとも自国内の事なのでエルヴィーノが口を出す必要も無いし、そこまでされたら沽券に係わる事だと理解している三兄弟だ。

只でさえ、反乱を起こされて面子が潰れているのに、その尻拭いを”まだ正式に家族では無い者”が対処すると言っているのだ。
既にボコボコに潰れている三兄弟の面子だがジャンドール王はそうでも無い。
むしろ面白そうに喜んでいるように見えた。

歓迎会の準備は既に終わっていて、ジャンドール王と三兄弟は”明日”の準備に取り掛かった。
そうなると”主役の2人”はする事が無いのでシーラに自室へ連行される事になる。
途中、シオンからのエマスコでシーラがシオンと合流しアルコンに会うと言う。
エルヴィーノは龍人達に説明すると言って別れてシーラの自室へ向かいコラソン、フィドキア、インスティントに念話で説明した。

以外にもフィドキアから串の要求は無く、そのかわりにペンタガラマの”学校”の設備を充実しろと要望が有った。
それも細かく指示が入ってだ。
全くの見当違いな話に意味が解らず、今回の件が終わってから対処する事で納得してもらった。
コラソンは二つ返事で了解してくれた。
インスティントも”数日前の事”が有ったので快く引き受けてくれた。

(たやすい事だ。いや待て、フィ、フィ、フィドキアも同時にか!)
(ああ、2人を同時に召喚して5万の反乱軍をブレスでなぎ倒して欲しい。オイ、聞いているのか!)

この時、既にインスティントは妄想の中に居た。
成龍形態で大空をはばたく二体の龍が1つの事を成しとけようと協力している姿にドキドキしている赤い人だった。

(オイ、聞いているのかインスティント!) 
何度か呼んでいると 
(勿論だともモンドリアンよ。全て”私達”に任せなさい!)
(じゃ頼んだぜ)
一抹の不安を感じたがフィドキアが居るから大丈夫だろうと考えていたエルヴィーノだ。


※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez


シオンとシーラがアルコンの一族とに会いに向かう。
厳密に言うと将来アロンソの嫁候補としてアルコンの一族に居る女子2人と親に会い、大人になった時の女性として魅力、容姿を判断する事。
それがリーゼロッテからの指令なのだ。
再度シーラに説明し、まだ会っていないアロンソを思うと、正妻はリーゼロッテの意見が絶対だが側室には自身の母方の血族を密かに考えていたシーラだ。

そんな妄想をしているとアルコン達の居住する場所に着いた。
城下町の一角に与えられた家は一般的なクエルノ族と同様の物だった。
決して豪華では無く、貧相な建物では無い。
長い流浪の旅の終着点がこの場所であれば誰も文句を口にする者は居なかった。

ノタルム国内に生息するダークエルフの総数は32人。
その内、未成年の女子が三人居て、30歳と20歳の子とそれぞれの両親に会い、報告せよとのリーゼロッテからの指令なのだ。
シオンからアルコンにはエルヴィーノの息子の嫁候補として説明されてあり、全てを理解したアルコン。
ただし、一族には内密にする事で先入観を持たせず自然に育った子供を希望していると”女王”からのお達しだった。

アルコンに案内されて面談する親子達。
建前はシーラの召使い見習いとして面談する為に来たと言う事にしてある。
しかし、流石に30歳と20歳の子の女性的魅力を推し量る事はシーラでも難題で、母親を見ての判断となるが、特筆出来るような点は無く困ってしまう。

母親たちは長い旅のせいで女性らしさよりもたくましさの方が強く感じるからだ。
とりあえず、内々的に許可を出し見習いで勤めても良いと許可を出したシーラだった。
自分の召使いに教育させた方が良いと判断したシーラは妻として先を見据えた考えがあった。





自分が産む子とアロンソは兄弟になるので、いろんな意味で発言権を確保したいシーラの野望だ。
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