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第9章 魔王国編2

第259話 デート

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(インスティント聞こえますかぁ?)
(聞こえているぞ! それで、どうなった?)
連絡をずっと待っていたインスティントが痺れを切らせて問いただしてきた。

(コラソンから準備が出来たって連絡が有ったよ)
(い、いつだ!?)
(セッカチだなぁ、お前の都合も有ると思って明日以降3日以内に来て欲しいだっさ)
(じゃ明後日だ)
間髪入れずに答えて来た。

(分かった。それからコラソンが、くれぐれも他言無用だったさ)
(勿論だとも)
(あ、確認だけど同行は俺とシーラだけか? コンソンはいいの?)
(・・・考えさせて欲しい)
(分かった。時間と転移場所が決まれば連絡するよ)
(ああ、モンドリアン!)
(ん? どうした?)
(・・・ありがとう)
(いいよ、お互い様だろ。これからも宜しくな)

念話を終えたインスティントは燃え盛っていた。
長らく個人的に会う機会が無くて寂しい思いをしていたが、”噂のダークエルフ”がフィドキアとの間を取り持ってくれたのだ。
エルヴィーノやシーラの事を思いだし、成功の暁には相応のお礼をしなければならないと、律儀に恩を返そうと考えた、”盲目”になっている赤い龍人だった。

シーラに会って、その事を伝えた。
「これはインスティントに恩を売る行為だからパウリナには秘密だぞ」
「解かったわ」
龍人と直接会う事が出来るのは、ロザリーを除く妻と婚約者とエルヴィーノの四人だけなのだ。
だから抜け駆けすると後が怖い事も教え、今回は龍人から呼び出された事にする。
パウリナには数時間ノタルム国へ戻ると告げてイグレシアに行くのだ。
召使いにも適当な嘘を話し、休憩時間とする。

シーラは角を消したままで、エルヴィーノは金髪に変化し準備を整えて転移する。
余談だが金髪にした事で別人エルフの様に変わった姿を見てシーラの目の色が変わった。
獲物に襲い掛かる淫獣の目になったのだ。
これからインスティントントと会う事を思い出させて落ち着かせ、今度2人っきりの時まで”御預け”にされたシーラだった。

転移した場所はイグレシアの王都の絶景が見える丘公園だ。
インスティントにも事前に連絡して有ったが、結構早くから来て公園を散策していたらしい。
「うわぁぁぁぁ綺麗!」
首都のイグレシアを一望できる丘の上からの眺めに目を輝かせて質問してくるシーラだ。
「シーラ、正式に訪問した時の感動が無くなるから知らない方が良いぞ」
「だってぇぇ」
エルヴィーノは勘の鋭い第二夫人を警戒していた。
内緒で来ている事、龍人と食事会をしたなど”あの2人”に知れたらチクチクと小言を言われるからだ。

今までは2人だったが3人の秘密と成れば、抜け駆けに相当の計画が必要だと思っている。
さもないと容易に感づいて詰め寄って来るからだ。
まして妻同士(婚約者含む)なので違う予防線を張られてはたまったものでは無い。

聖魔法王国アルモニアの王都イグレシアの一角にあるダイコン亭。
その料理店はゲレミオの傘下で比較的低価格でボリュームが有り美味しくて評判の店だ。
店主のカラミは二つ名が有り、朝から晩まで止まらない”踊る鉄鍋”の異名で呼ばれるほど絶え間なく鍋を振っているのだ。

いつの間にか改装された店は、格子になった窓から見える調理する姿と香りが通りに流れ、フラフラと引き寄せられる者が多いと聞く。
通りから厨房が見えて店主のカラミが振り続ける鍋をずっと見ている者で溢れているようだった。
風通しの良くなった厨房からは威勢の良い掛け声と共に次々と料理が作られていた。

“踊る鉄鍋”の由来は以前フィドキアと料理勝負をした時に引き分けた結果もらった”癒しの腕輪”のおかげだった。
一日中、立ったまま鍋を振っても一切疲れる事無く仕事が出来る。
一般人には無縁の代物で、戦士や冒険者であればいざ知らず安価な料理店の店主が使用するには勿体ない魔導具だ。
”あの時”開発した料理を食べやすくした物が名物料理になり、魔導具のお蔭で商売繁盛していた。

事前にカラミに連絡予約して有り「今回は今までのように大量には必要無いが・・・対応できるようにして欲しい」と匂わせて置いた。
インスティントもアルモニアには来た事が無いらしくシーラと三人で街を歩く事にしたのだ。
シーラはバリアンテ同様にキョロキョロと見回しながら歩き、インスティントは何故か不機嫌な表情で街並みを見ていた。
今回の訪問は秘密の行動なので街の質問は答えない事を説明し、三人で無言のまま歩いていた。
当然だがシーラはエルヴィーノの腕に絡み付いている。

新しい店にも驚いたが、案内された部屋には三人居たのだ。
「モンドリアン、どういう事だ?」
インスティントが小声で聞いて来た。
事前にやり取りした内容は”コラソン様は良いけど他の龍人の同席は嫌だ”と言う内容だ。
インスティントは久しぶりに会うフィドキアと話す内容を考えるだけで頭がクラクラしたそうで、平常心を保つためにコラソンの同席を許したのだ。

「フィドキア、久しぶりね」
「ふむ。元気そうだな」
「ええ、貴男も昔と変わらないわね」
一方的にインスティントの世界へ引きずり込もうと話していた。
そこにコラソンから声が掛る。
「インス、アルセ・ティロを覚えているだろう?」
もう1人の若い男を見て驚いた。
「えっ? アルセ? 嘘、本当に!?」
インスティントの記憶では老紳士のアルセ・ティロだったが、若造に生まれ変わった姿でそこに居た。
老木と成り朽ち果てる寸前だった所、コラソンが探しだして若返らせてくれた経緯を説明した。

どうやらアルセ・ティロとインスティントは昔、仲が良かったらしい。
龍人では無いし旧知の間柄を知っているので連れて来たコラソンだ。
「元気そうだねインス」
「良かったわ、貴男が無事で。しかもそんな若い姿で会えるとは思わなかったわ」
「そうだね。これもモンドリアンさんのお蔭だよ」
「えっ俺は何もしてないと思うけど」
急に振られて驚くエルヴィーノ。
「確かに全て貴男のお蔭の様ね」
インスティントに言われても理解出来ないが、コラソンにまつわる事だと思っていた。

今回は円卓では無く通常の四角い卓だ。
エルヴィーノの横にシーラが並び、対面にコラソンとアルセ・ティロが座る四人席だ。
少し間隔を開けて2人席にフィドキアとインスティントが座る。
(知らない人が見るとお似合いの2人ですよ)とシーラが念話で茶化すと真っ赤に沸騰するインスティントだった。

料理は既に注文されているらしく、次々と運ばれてくる。
どうやらコラソンが好きな物を勝手に注文したのだろう。
そもそも龍人の好みが解らないエルヴイーノだ。
何を出しても食べるし否定も肯定も無い。
食事をする必要性さえ疑問に思うのだが、本来食事を必要としない事は秘密にしている龍人達だ。
食事と言う退屈しのぎも楽しみの1つだからでエルヴィーノには知られたくない事なのだ。

(こうして貴男と2人で向き合って食事を出来るなんて夢の様だわ)
(・・・)
(覚えてる? 昔・・・)
はたから見ると黙って食事をしている恋人同士の様に見えるが念話で一方的に話しかけているインスティントと、黙々と食べているフィドキアだ。
2人の世界に居る様なので自分達は楽しく食事するのだが、初めて会うコラソンとアルセ・ティロに緊張しているシーラだ。

「シーラ、フィドキアとアルセ・ティロは種族の違う兄弟なんだって」
「全然似て無いけど」
「そうだよねぇ、兄は龍族だけど僕は樹木全般の祖と言われているが、本当はコラソン様が始祖なんだけどさ」
サラッと重大な事を言うアルセ・ティロ。
「樹木って魔法で生やすのですか?」
何気ないシーラの質問に、本人に替わりに答えてやった。。
「そうだよ。ペンタガラマの周りにある森や果物畑は全部アルセ・ティロが瞬時に作ったんだぜぇ」
「すごぉい」
自国の城の周りにも作って欲しいとおねだりするシーラを違う話しで誤魔化しているアルセ・ティロ。

「ところで普段は何処に居るんだ?」
「ペンタガラマの森の中ですよ」
「えええっ!」
聞く所によると太い木の中に入り込み、好きなだけ休めるのだと言う。
その驚きの告白で思い出した事が有った。

「コラソン、例の場所って、もしかすると・・・」
ピンと来たコラソン。
今だに石像が無くて立ち入り禁止にしている龍人の塔が存在する。
「確かにモンドリアンさんの考えている通りですよ」
「じゃ」
「そうですねぇ」
何の事か解らないシーラに教えてあげた。

「凄い、あの街に龍人の塔が有るのぉ!」
驚くがエルヴィーノを睨んでいた。
「何でもっと早く教えてくれなかったのよぉ」
「ごめん」
忘れていた事を素直に謝りコラソンに確認した。
「じゃバレンティアに頼みますか」
すぐ隣だが、こちらの話しは聞こえていない様だったので念話してやった。
(フィドキア)
(む、何だ)
(ペンタガラマの塔にインスティントの彫刻を作るからバレンティアを呼ぶそうだけど、フィドキアがあの場所に転移で連れて行ってもらえるか?)
(かまわん)
(インスティントに説明もヨロシク)
暫く様子を見ていると、驚いた表情のインスティントがこちらを向いた。
笑顔で答えると髪と肌の区別が解らない程赤くなって照れていた。

余談だが食事が始まって早々コラソン達の食べっぷりに、呆気に取られるシーラは直ぐに負けを認めたようだった。
どうやらコラソンとアルセ・ティロを見た目で判断し、自分の方が多く食べると思っていた様だ。
”世の中は広い”と教え、2人でずっと見ていた。





食事の後はペンタガラマへ
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