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第9章 魔王国編2

第251話 新しい魔法の伝授

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「アンタ達、乳繰り合うのは帰ってからにしなさい」
急に声を掛けられて驚いたエルヴィーノとシーラだ。
「イ、インスティント様ぁ」
「驚かすなよぉ」
「驚いたのはこちらの方だ。まったくシーラの為にイロイロと考えて・・・」
ブツブツと文句を言っているが無視して問いかけるエルヴィーノ。

「じゃアルマドゥラの調節を頼むよ」
フィドキアとの貸が有るので、気を取り直してシーラの腕輪に手を添える下心を見空かれている龍人だ。
すると腕輪が赤く輝きだした。
「綺麗・・・」
ウットリと見ているシーラに「終わったぞ」と告げたインスティント。
そして説明と実戦だ。
「まずはリャーマ・デ・ラ・エクスプロシオン・アルマドゥラの仕様変更だ」

通常用のリャーマ・ラ・アルマ炎の魔闘鎧ドゥラ。
鎧だけの顕現で身体能力が10倍になる。
中級のフエゴ系アグア系グラキエース系までの魔法が無効になる。
シーラが操るフエゴ系の魔法の効果が三倍になる。

戦闘用の制限付きリャーマ・デ・ラ・エクスプロシオン・アルマドゥラ。
初期値の三分の一程度の威力に落としたものでシーラが一日使用しても魔素切れにならない仕様。
リャーマ・ラ・アルマドゥラ自体に炎を纏い、鎧に触れると爆発してしまう。
本人に影響は無い。

制限解除のリャーマ・デ・ラ・エクスプロシオン・アルマドゥラは、初期値の能力が戦闘用の三倍だが、シーラが任意で能力を上げる事が可能。
必然的に使用魔素も多くなる。

説明の後でそれぞれを体感して見せるシーラ。
リャーマ・ラ・アルマドゥラで一番低級な火の魔法でもかなりの威力で驚いた2人だった。
鎧に触れても爆発しないので城内でも着用出来るのが嬉しい配慮だ。

「まだまだ有るわよぉ」
そう言ってシーラの手を持つと伝わった魔法だ。
「これはっ!?」

リャーマ・デ・プリモ原初の炎ルデイアールと言って術者の想像力が示す範疇で、どのような攻撃や防御にも変化出来る炎を、術者の周りに発現させる事が可能なの。見た目は火の玉が数個、宙に浮くはずよ。それから練度により個数が多くなるけど、この魔法は習得に時間が掛るがシーラならば出来るでしょう」
「はい、頑張りますインスティント様」

嬉しそうなシーラだが、気になる事が有ったエルヴィーノだ。
「なぁそれってマヒア・デ・コントレ禁忌の魔法インディカシオネスじゃないのか?」
「あら、良く知っているのねぇ」
「以前古い魔導書に書いてあったような気がしたからさ」
心配になったので念話で確かめてみた。

(良いのか、こんな魔法を伝授して)
(大丈夫よ。多分)
(多分じゃダメだろう。どうするんだ)
(ちゃんと教えるわよ)
(本当か? シーラにもしもの事が有ったらフィドキアと仲良く出来ないようにするからな)
「分かった。任せて欲しいモンドリアン」

急に態度が変わったのに驚いたエルヴィーノ。
要はシーラが魔法を使いこなせるようになればフィドキアとの間を上手に取り持ってくれると自己中心的に考えたインスティントだ。

「最後にシーラ、今後あなたは”宿命に導かれるまま運命の者達と未来を切り開く選ばれし炎の勇者”。略して勇者と名乗りなさい」
「ええっ私が勇者ですか!?」
「そうです。最後に勇者専用の魔法を伝授します」
(スッゴイ略してる)

再度手から伝わった魔法はラヴィアドと言う。
「その魔法は体の底から湧き上がる力と勇気を絞り出してくれるでしょう。あと回復も発動するわ」
「凄いなシーラ、勇者の魔法だってよ」
「うん」
エルヴィーノに聞こえない様に念話で話すインスティント。
(あぁシーラ。この魔法はベッドでも役に立つから使ってみるが良いわ)
(ええっ!? ありがとうございますインスティント様)
驚いたが内心喜んでいるシーラだ。
(早速今夜使ってみようかしら・・・)

「シーラ、早速魔法を使ってみなさい。リャーマ・デ・プリモルデイアールはどんな形にするかを強く念じて発動するのです」
「はい、分かりました・・・リャーマ・デ・プリモルデイアールッ!」
シーラの前に出たのは火の玉が1つだった。

「あれっ可笑しいなぁ」
「何を思い描いたの?」
「天を焦がす大きな火柱です」
「もう一度その火の玉に命令しなさい。向こうで火柱になれと」
「ハイ」
言われた通りに念じると火の玉が飛んで行き着弾すると大きな火柱が出来た。

「初めてにしては良く出来たわ」
褒められて嬉しそうなシーラだ。
「じゃお手本を見せるわね」
目を瞑ったインスティントが魔法を唱えると10個の火の玉が顕現した。

「良い? この魔法は想像力よ、炎の矢、爆炎、火の鳥、炎の壁、炎の竜巻・・・」
10種類の違う魔法に変わった。
「凄い!!」
「大丈夫、シーラも練習すればこの位直ぐに出来るようになるわ」

(さすがは原初の炎だ。固有名称では無く、特別な詠唱も必要とせず、魔法陣も省略されて、術者の想像力だけで炎の形態を変えれるだなんて、とんでもない魔法だ)
感心よりも呆れた魔法だと思っていたエルヴィーノ。

「後は、あなたの想像力次第よ」
「はい、頑張ります」
嬉しそうにするシーラを横目に話しかけて来た。
「ではモンドリアン、例の連絡を楽しみにしているわよ」
「ああ、待って居てくれ」
そう告げると転移して消えたインスティント。
「俺達も戻ろうか?」
「はい、あなた」



城に戻る頃は既に夕暮れだった。
シーラ専用の応接室に戻ると召使いが待ち侘びていた。
「シーラ姫様、パウリナ様がお待ちかねでございます」
「呼んで来て」
ニヤリと微笑み新しい魔法をもらい負ける気の無いシーラだ。

城下街オリゾンを観光して戻って来たパウリナは上機嫌だった。
親衛隊同様に自国ともアルモニアとも違う街並みにクエルノ族達。
食べ物も初めて見る物ばかりで、ベルフメとカメルシーにグラナダも多少食べ過ぎていたが「そのように食べられていますと夕食に出てくる王宮自慢の料理が食べられなくなりますよ」と案内してくれた召使いが助言してくれた。

だが、時既に遅く女性四人は結構お腹一杯で、後悔の念が顔に出ていた。
「だから食べ過ぎだと言っただろう」
ガルガンダはその場の雰囲気には流されず、グッと我慢していたのだ。
だがパウリナは夕食前にシーラとひと暴れすれば、小腹も空いて来ると思っていたのだ。


「遅かったわね」
「龍人様にお会いしてたの。じゃ行きましょうか?」
ゾロゾロと闘技場に向う一行だ。
ガルガンダとグラナダは城下町の報告をゲレミオにしているそうだ。

「2人共聞いてくれ。これから行うのは戦いでは無く、見せ合うだけだ。どちらが上では無く、相手にお披露目して自慢する物だと思ってくれ」
「「・・・」」
(大丈夫かなこの2人。一応、アレをしておくか)
「2人共、龍人の腕輪を出してくれ」
2人の腕輪をくっつけて説明する。

「念話する時の様に魔素を送ってくれ」
「「・・・」」
ボワッと二つの腕輪が光った。
「じゃ2人が特別な対象になった事を教えよう」
「えっ?」
「何?」

「2人共、龍人に念話するように目の前の相手に念話して見な」
(・・・シーラ)
(・・・パウリナ)
「「えっ!?」」
「嘘!!」
「私達が念話出来るの?」

それは念話特有の頭に直接語りかけるような言葉だった。
ロリと念話が出来るのは、”夜の間”に偶然にも同じ状況になり発動したと後に教える事にする。

「2人が念話出来る事と、龍人からさずかった特殊な魔法はお互いが中和する事になる」
「「ええぇっ!」」
異議申し立てが2人から出たが、2人の安全の為だと説き伏せた。

2人が闘う姿など見たくも無いし、ロザリーとロリの時でもう懲り懲りと思っているエルヴィーノだ。
「じゃ、2人共同時にしてくれ、パウリナは神獣降臨で、シーラは制限付きリャーマ・デ・ラ・エクスプロシオン・アルマドゥラだぞ」






見せ合うだけで済むのか?
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