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第9章 魔王国編2

第244話 模擬戦だけど、結構本気

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夕食会を早々に切り上げて全員で夜の闘技場にやって来た。
「暗いな」
「大丈夫、シーラが明るくしてくれるから」
ぼやくジャンドール王をなだめるエルヴィーノ。
薄暗い中でシーラが明るくする魔法など持っていないはずだと思っていた三兄弟だ。
「説明はしませんら、御三方は全力で戦ってください」
鎧の凄まじさを説明したから、シーラには何もせず魔法剣を構えるだけで良いと教えて理解してくれた。

まずはデセオとレスペトがオスクロ・アルマドゥラを顕現し、三人でオスクロ・エスパーダ暗黒剣オスクロ・エスクード暗黒盾をかざした。
全ての準備が整ったのでシーラが鎧を顕現させる。
「良いですがお兄様方。では始めます。リャーマ・デ・ラ・エ爆炎魔闘鎧クスプロシオン・アルマドゥラ! 」

ドゴオォォォォン!
爆炎が天を焦がす火柱と成り、辺り一面を熱気で明るく照らすと、驚いたのはエルヴィーノ以外全員だった。
「こ、これは!」
「炎の鎧か!」
「すっげぇ」
「ジャンドール王、御覧ください」
「うむ、見ておる」
「ああ、シーラ姫様!」
「両手にエスパーダ・リャーマ炎の剣を持っておるのぉ。防御はどうなのだ?」
「見てのお楽しみですよジャンドール王」

その全身鎧から煌々こうこうと闘技場を照らす炎は熱量も凄まじく、離れて居ても分かるほどの危険な熱さだった。
「では行くぞ、シーラ!」

覚悟を決めたデセオが呼びかけても剣を構えようともしないシーラにイラついたのは三人とも同じだった。
戦闘における基本を教えたのは他ならぬ三兄弟だ。
それが剣を構えようともしないのは力に依存した自惚うぬぼれと判断し、教育のやり直しが頭を過ったほどだ。

駆けだす三人に微動だにしないシーラ。
そして一斉に剣を振った。
そのオスクロ・エスパーダが鎧に当った瞬間。
ド、ド、ドオォォォンと連続して爆発音が聞こえたと同時に、シーラから勢い良く吹き飛ばされる三人だった。
「あぁ、ちょっと火傷して無いか見て来るよ」
そう言って観覧席から離れるエルヴィーノ。
「大丈夫か?」
一番近くに居たブスカドールに声を掛けると
「アチチチ、ひっでぇなぁ、あの攻撃は何なんだ」

髪は焦げ、顔は多少火傷が有り、盾で防いだのか服は半分ほど焦げていた。他の2人も同様だったので直ぐトドス・マキシモ・ク全体に全回復ラールを使った。

「モンドリアン殿、あれは一体」
「爆裂魔法が付与されているので、鎧に触れると大変な事になりますよ」
「「「先に言えぇぇぇ!」」」
「そんな事したら面白く無いでしょ」
「クッ」
「どうしますか? まだ戦いますか?」
「ぬうぅぅあの爆裂が付与されているなら直接攻撃は難しいなぁ」
「フエゴ系の魔法は無駄だし、グラキエース系やアグア系の魔法はどうなのだモンドリアン殿」

デセオとレペストが座りながらシーラの鎧の攻略を検討しだした。
「想像される通り効果は無いですね。もっとも秘匿されるような高等呪文で有れば多少の痛手を与える事が出来るでしょう」
「あと我らに使える攻撃魔法はティエラ系とビエント系位だけど、期待できないなぁ」
ブスカドールもあきらめた様子。

四人で話しているとジャンドール王もやって来た。
「しかし、凄い熱量だ。シーラは熱く無いのか?」
「大丈夫ですよ」
「そうか、しかし凄い。大したものだ、リャーマ・デ・ラ・エクスプロシオン・アルマドゥラと言ったか? 爆炎魔闘鎧か。戦場では誰も近づけんな」
親子は戦場を思い浮かべシーラが前線に出る事を想定していた。
「この鎧を着てシーラに戦わせるのは反対です」
「「「何でだ!」」」

一斉に質問してきた。
シーラに魔法を解かせ呼び寄せて話したエルヴィーノ。
「シーラはまだこの鎧に成れていません。爆発の威力や熱量の制御を習得しないと魔素の消費が多いから負担が多いので戦闘にはまだ早いでしょう」
「確かにモンドリアン殿の言う通だ」
なんとかジャンドール王を納得させて戦場に出向く事を回避させた。

確かにエルヴィーノの見立てではリャーマ・デ・ラ・エクスプロシオン・アルマドゥラは攻撃力だけならば、オスクロ・アルマドゥラやロリのサント・アルマドゥラにパウリナの神獣降臨より上かも知れない。

しかし、魔素の消費が半端無く多そうだ。
あれでは如何にクエルノ族の魔素量だとしても長くは持たないだろう。
一度インスティントに会って調整してもらう必要が有ると思っていた。

「では皆さん、一度戻りシーラ姫の素晴らしい鎧に祝杯を挙げようではないですか?」
「「「おおおっ」」」
「それは良い提案ですなシオン殿」
「確かにあの魔法鎧は素晴らしかった」
「土産話がまた一つ出来ましたな」

親衛隊とシオンが三兄弟を巻き込んで騒いでいた。
一方のシーラは専用の召使いに取り囲まれ、大泣きされていた。
途轍もない力を手に入れた主に歓喜しているのだろう。


※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez


場所を先ほどまでの食事会の席に戻し宴が始まった。
もはや宴と言うよりも単に騒ぎたいだけに見えたのは気のせいかと思ったエルヴィーノにシーラが耳打ちしてきた。

「そろそろ行きましょう」
ここから向かう場所はシーラの寝室だ。
確かにこのまま酒を飲まされてベロベロになったら、”何もできなくて”シーラに怒られてしまうだろう。
用を足しに行くと言って部屋を出て、一路お望みの場所へ向かう2人だ。

(勿論、タップリと萌えさせて頂きましたよ。俺の秘宝、二つのハートに・・・)
明日には、また戻る事を知っているので激しく求めて来るシーラに答えるべく頑張るエルヴィーノだった。

翌朝、早めに起きてシーラにある物を渡した。
それはエマスコだ。
ペンタガラマに作られた龍人の塔は五つ存在し、今まで四人まで会ってきた。
そして最後の1人であろうインスティントとの邂逅はシーラと結婚するのが宿命のような気になっていたエルヴィーノは、遂にいつでも連絡が取れる手段を渡す決心をした。

「シーラに渡す物がある」
「何ぃ?」
エマスコの使い方を一通り説明し試しに使わせてみる。
「すごぉい。離れて居ても連絡できるなんて、あなたっ!」
そのまま舌を嬲られてしまう。
ぐっと引き離し説明しようとする。
「聞いてくれシーラ」

だが目が淫乱状態になっているシーラだ。
現在はエルヴィーノとシオンにだけ連絡できるようにしてある事と親兄弟の前で使用しない事。
それは軍事用に使いそうだからだ。

あくまでも、家族とのやり取りに、王家とゲレミオの連絡を重要視ているエルヴィーノだ。
身体をまさぐって来るシーラに言い聞かせながら風呂場に入る。
温かいお湯を浴びながら我慢出来ないシーラを激しく攻めた。
狭い室内で濡れた身体が激しくぶつかり合う音とあえぎ声が凄かった。
突然の淫乱状態を発散させて気怠い身体と欲望を洗い流し何事も無かったように風呂場から出て来た2人だ。

シーラは新しい魔導具に夢中だ。
目の前に居るにも関わらずエマスコしてくる。
"つぎは何時戻るの?"
"シオンから聞いた向こうの串を買って来て"
など送って来るので口頭で答えると
「ダメェ! 紙に書いて」
「はいはい」
そこは面倒くさがらずに言う事を聞く。
些細な事だが三人の妻を持つ身は妻の我が儘に付き合う事が円満の秘訣だと自負している。

そしてシオンにも送った様だ。
しかし、返信が無く文句を言って来るシーラ。
「何で見て無いのよぉ。早く送って来なさいよねぇ」
本人にでは無くエマスコに向かって話している。
相手の事情にその場の都合にもよるが返信が遅い時もあると、今から自分の為に予防線を張って置いた。
「もしかしたら、昨日飲み過ぎて、まだ寝てるんじゃないか?」

エルヴィーノの予想は的中し、シオンと親衛隊は昨日の食事会の部屋で寝ていたのだ。
召使い達に起こされると頭がガンガンするらしい。
結局最後まで飲んでいたのは、この四人でポヨォの変わり様が面白かった。
あれだけシオンを怖がっていたのに今では普通に友達の様に見えるからだ。







シーラに歯が立たない男三兄弟。
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